経済産業省は、4月末に成立した補正予算に組み込まれた「GO TOキャンペーン」内で、ファッション関連商品の需要振興を行っていく考えがあると明かした。同キャンペーンは新型コロナウイルス感染症拡大を受けた緊急経済対策の一環で、観光業、飲食業、イベント等に対する支援として1兆6794億円が計上されている。具体的には、旅行や飲食店を予約する際に使えるクーポンを配布すると発表されていたが、「その中でファッション商品購入の際に使用できるクーポンも構想している」(経済産業省商務・サービスグループの三牧純一郎クールジャパン政策課長)という。
クーポン使用の対象は、企業規模やブランドの大小を問わず、ファッション商品全般で検討しているという。こうした考えは、「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」青田行社長とイーストランド島田昌彦社長が、5月18日に牧原秀樹経済産業副大臣や自民党の福田達夫衆議院議員、経産省の担当者などと面会した際に明かされたもの。青田社長、島田社長らは、ファッション小売業支援のためのオンライン署名活動を8日にスタートし、「GO TOキャンペーン」を例にあげつつ「ファッション小売業が政府の支援の枠組みから漏れている」(青田社長)現状や、「業種を限らない経済活性化策が必要」と訴えていた。そうした声を受けて、ファッションの需要振興が盛り込まれる見込みとなった。
青田社長らは18日に先立ち、11日に福田議員や同じく自民党の山田美樹衆議院議員、経産省の担当者らと面会。「18日に牧原副大臣にお会いできることになり、再度われわれの業界の現状や要望を伝えようと思っていたが、11日からのたった1週間で要望に対する回答をもらうことができた」(青田社長)。「業種を限らない経済活性化策」に加え、「貸付支援の速やかな審査や支給」「雇用調整助成金の速やかな支給や上限額アップ」「物件家賃の一部負担」を要望として掲げてきたが、雇用調整助成金は上限額が1万5000円となり、家賃補助については今まさに国会で審議中。各要望に一定の手応えを感じているという。
18日に牧原副大臣に提出した書面には、そうした当初からの要望に加えて、ファッション業界特有の悩みといえる「在庫の負担軽減に対する補助案の検討」も追加した。「在庫の負担軽減策に関しては、今後どのような可能性があるかをこれから検討をする。また、コロナショック以前からある枠組みとして、10社以上まとまった形での展示会、販売会、実店舗やEC構築などの販路開拓事業に対し、上限5000万円で予算の3分の2を負担する、中小企業庁の『共同・協業販路開拓支援補助金』もある。こうした制度を活用していただくのもいいかもしれない」と三牧課長は話す。同補助金は、「若手デザイナー支援コンソーシアム」として、これまでもファッション業界で活用実績がある。年2回公募しており、今年度の第一期公募の締め切りは5月22日、第二期公募は9月末から10月末の予定。
ファッション小売業は緊急事態宣言下で休業要請対象に指定されず、補償のない自主的な休業を続けてきた。そうした状況を不安視する声は業界内では非常に強まっているが、「今後は経済状況を見ながら、ファッションなど単価の高い小売業やレストランなどの支援もしっかり行っていきたいと考えている。業界が置かれた現状に対する声や要望などがあれば、われわれに伝えてほしい」と三牧課長は話す。
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