分かりやすいニュース解説でテレビに引っ張りだこの経済ジャーナリスト・池上彰氏。
そんな彼がイマドキの女子が抱える、答えが出ない疑問や悩みを聞く“女子会”に参加するというテレビ番組の企画が話題となり、書籍化までされたことを知っているだろうか。
しかも、あの軽快な語り口で、答えが出ないと思われていた疑問や悩みについて、データに基づいて解決の糸口を教えてくれるというのだ。
そこで今回はTBSテレビ「池上彰と“女子会”」を書籍化した「池上彰が「結婚」「お金」「仕事」についての疑問に答えます!」で実際に紹介された、気になる女子会の様子を覗いてみよう。
登場人物紹介
40代独身女子(以降、40代独女)=結婚願望はあるものの、仕事と趣味で楽しく自由な毎日を送る。生活力はあるが、昭和らしい古風な考えを持つ一面もあり、なかなか前進できない。今は、とにかく老後が心配。
30代既婚女子(以降、既婚ママ)=20代で結婚、現在3人の子供のママ。協力的な夫と共に、子育てに専念中。働きたい気持ちもありつつ、家事と育児で日々の暮らしに精一杯。
30代バツイチシングル女子(以降、バツイチ)=20代で結婚し、2人の子供を授かるものの数年前に離婚。困ったときは実母に頼りつつ仕事と育児を両立している。結婚はお金ではなく愛だと言い切る。
20代キラキラ女子(以降、キラキラ)=若さゆえ、仕事も恋愛もSNSも全力投球。でも実は、自分にちょっと自信がない。夢は20代のうちにかっこいい彼氏と結婚して、仕事と子育てを両立すること。でも結婚が本当に幸せかは分からない。
Q.どうしたらいい人に出会えますか?(美容師・22歳)
池上:男女の出会いについて、女子150人にアンケートを取ったところ、80%が「出会いが欲しい!」と回答したようです。残り17%は「彼氏ありもしくは既婚者」、3%は「彼氏はいらない」と答えました。
キラキラ:私も出会いは欲しいけれど、自分からは動けません。一方で周りの友達が結婚し始めているので、焦りだけはあります。
40代独女:私は年齢のこともあり、パッと出会ってサッと結婚したいですね。
バツイチ:私もいい出会いがあればとは思っています。結婚相手の条件はある程度掲げておいた方が、出会ったときに逃さないだろうし、紹介してもらいやすくなりますよね。
池上:なるほど。
バツイチ:私は「常識がある人」「真面目な人」「仕事ができる人」でしょうか。
理想の相手には出会えません!
池上:はっきり言いましょう。その理想の相手には出会えません!
実は、サイエンスナビゲーターの桜井進氏によると、普通に生活している中で理想の男子と出会える確率は0.00006%であるというデータが出ています。
つまり167万人に1人という確率。横浜市の全男性がそれに近いそうですから、横浜市内をくまなく歩いて、その1人に偶然出会うかどうかということですね。どうでしょう、ほぼ不可能に近いと思いませんか?
理想の男子と出会える確率は上げることができる
既婚ママ:私は夫がまさに理想の男子で、もちろんひと目ボレでしたし、フラれ続けていましたけれど、それでもあきらめませんでした。
池上:あなたは努力をしたのですね。しかし、ただ何もしないで普通に生活していては、理想の男子と出会うことはほぼあり得ないということです。
しかし、安心してください。日本の「男女の出会いの歴史」をたどると、あなたたち女子の力で、この確率は上げることができると言えそうです。
奈良時代には“合コン”がすでに存在していました
池上:まず、今から1300年前の奈良時代には、今で言うところの”合コン”がすでに存在していました。当時は「歌垣(うたがき)」と言って、本来は豊作を願う行事でしたが、若い男女がたくさん集まる行事でもあったことから、いつしか即興の和歌の掛け合いなどが行われ、出会いの場になっていったそうです。
40代独女:和歌は、今で言うところのラブレターですもんね。
池上:さらに室町時代以降には、今で言う”盆踊り”が行われるようになりました。実はこの盆踊りも、若い男女が集まるので、自然と出会いの場になっていったのです。夕闇の中で、若い男女が一緒に踊りながら交流し、いい人がいれば結ばれるという具合でした。
既婚ママ:日本女子は大和撫子のイメージがあるので、特に昔の女子がこういう場に積極的に出かけていたとは知りませんでした。
江戸時代、男女混浴の銭湯が出会いの場になっていました
池上:さらに積極的になるのが、江戸時代。盆踊りもより盛んに行われるようになりましたが、加えてなんと、銭湯が出会いの場になっていました。江戸時代の銭湯は男女混浴だったので、そこに若者たちが出会いを求めて通ったそうです。
キラキラ:当時の資料を見ると、着物を着ている女子もいますが、裸の男女が大半ですね!男子はまだわかるけれど、女子がこんなに積極的というのは驚きです。
池上:しかも文献によると、気合いの入った女子は、顔に塗るおしろいを内腿にも塗って入浴したということです。そして理想の男子を見つけると、女子は相手のおしりをつねってアプローチをしたのだそうです。
バツイチ:出会いが裸なら、その後の話はスムーズかもしれませんね。女子も恥ずかしさを押し切って、理想の相手を探すために積極的に動いていたということですね。
池上:銭湯が今で言う”婚活”の場になっていたのかもしれませんね。
新聞広告をチェックして自ら応募
池上:そして、明治時代になって新聞が普及すると、男女は新聞の中に出会いを求めに行くようになりました。当時の新聞広告を見てみると、例えば25歳の中尾藤三郎さんという男性が載せた広告は、「離婚した独身です。家事が行き届かず困っているので、ご希望の方は貧乏でもお金持ちでも構いません。年齢は17~25歳でお願いします」という内容です。
キラキラ:今で言う”出会い系アプリ”や”婚活サイト”みたいですね。
バツイチ:再婚相手は見つかったのでしょうか。
池上:はい、19歳の若い女子と再婚できたそうです。相手が見つかったということは、女子はしっかり新聞広告をチェックして、自ら応募したということですよね。
婚活パーティーの先駆け!?戦後の「日高パーティー」
そして戦後になると、出征により若い男子の数が少なくなっていたため、出会いがないと嘆く女子が多かったそうです。そこで昭和21年、当時の東京大学教授であった日高孝次氏が、自宅を開放して若い男女交際の仲介を目的とするパーティーを開きました。これは昭和53年まで続き、後の”婚活パーティー”につながっていったと言われています。
私が大学生の頃は”合ハイ”というのもありましたね
池上:ちなみに”合コン”、いわゆる”合同コンパ”という言葉は、東京大学の学生が作り出したとも言われています。”仲間同士”という意味の「company」が派生して「コンパニー」となり、「コンパ」に落ち着いたようです。
そう言えば、私が大学生の頃は”合ハイ”、いわゆる”合同ハイキング”というのもありましたね。独身の男女が一緒に、近場にハイキングへ行くのです。終日共に過ごすので、相手の人間性を見るのには絶好の催しでした。
40代独女:池上さんも合ハイに参加なさったのですか?
池上:私は合ハイの幹事を引き受けたのに、直前になって就職試験が入ってしまい、私だけ参加できなかったという苦い思い出があります。結局カップルは一つも成立しなかったので「ざまあみろ」でしたが(笑)。
積極的になりさえすれば、出会いの確率は各段に上がるはず
池上:このように、昔の日本女子はその時代の波に乗りながら、積極的に相手を見つけるべく自ら行動していたのです。現代の日本女子にはインターネットがあり、移動手段も充実しています。積極的になりさえすれば、出会いの確率は各段に上がるはずでしょう。
キラキラ:私たち女子はつい待ってしまうけれど、告白もプロポーズも男子からしなければいけないというルールはないですもんね。
恋愛結婚よりお見合い結婚の方が幸福度が高い
40代独女:現代は便利になりすぎて、逆にどの方法を選べばいいのかわからない女子も多いのではないでしょうか。今思いつくだけでも、「合コン」「街コン」「相席屋」「婚活パーティー」「出会い系アプリ」などがありますが、例えば池上さんは、どれが一番いい出会いにつながると思われますか?
池上:そうですね。少し話がそれてしまいますが、街で「相席屋」という看板を見かけたときは、どんなビジネスなのか推理しましたね。男女が相席するということであれば、女子の料金はうんと安くする、もしくは無料にすると集まるだろう。それを目的に来店した男子に飲食代を払ってもらえれば、経営は成り立つだろうなと。新しいビジネスとして勉強になりました。
本題に戻りますと、個人的に出会いの場としてすすめたいのはお見合いです。
最近は恋愛結婚が主流ですよね。今や、お見合い結婚は全体の5.3%でしかないそうです(出所:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(2015)」)。しかし、アメリカの経済学者アイエンガーによると、なんと恋愛結婚よりお見合い結婚の方が、幸福度が高いというのです。
それが、54頁のグラフデータに示されています。恋愛結婚した夫婦とお見合い結婚した夫婦の、幸せの度合い(愛情の強さ)の変化を数値化したものです。恋愛結婚は、途中でカクッと幸福度が下がっていきますね。逆にお見合い結婚は、時間が経つほど幸福度が緩やかに上昇しています。
バツイチ:何となくわかる気がします。恋愛結婚は結婚した日がピークだから、あとは減点方式になっていきますよね。
池上:最初の期待が大きすぎると、必要以上に幻滅してしまうことを心理学用語で「ロス効果」と言います。反対に、最初の期待が少ないお見合い結婚は、結婚生活中に少しでもいい印象を受けると、相手に対する評価が一気に上がります。これを「ゲイン効果」と言います。
さらにお見合い結婚の利点を申し上げるならば、お互いを知っている第三者が仲介しているという点でしょうね。知り合いのお膳立てがあるので、ヘタな相手に当たる確率は少ないという安心感がありますから、カップルになりやすいのではないでしょうか。
合コンの幹事と“お見合いおばさん”では安心感が違います
キラキラ:それなら、合コンでもいいのではないですか? お互いを知っている人が幹事になりますよね。
池上:合コンは、幹事自身も出会いを求めて来ている場合が多いですよね。その時点で、中立な仲介役とは言えないかもしれません。お見合いの仲介役は、例えば”お見合いおばさん”のイメージのように、人生経験が豊富な第三者であることが多いですし、相手の身元もハッキリしていますから、安心感が違います。
40代独女:確かに、合コンで出会った男子の中には、経歴や名前を詐称している人がゴロゴロいますよね。でも私がお見合いで気がかりなのは、お見合いをした後にお断りする場合です。かなり気まずいし、下手したら人間関係にヒビが入ることにもなりかねないのではないでしょうか。
池上:なるほど。ただ、お見合いの仲介役は「うまくいけばラッキーよね」くらいにしか思っていないでしょうね。もっと気楽に構えてもいいと思います。
結婚式の二次会もお見合いに近い、いい出会いの場
また、出会いというのは、ある人が引き合わせてくれたから、知り合うことができたとか、本人同士は恋愛のつもりだけれど、実は周りがお見合いを仕掛けてくれたといった部分もあるかもしれません。
そういう意味では、結婚式の二次会もお見合いに近い、いい出会いの場でしょうね。自分の結婚式に素性を知らない友人は呼びませんから、結果的に、新郎新婦が仲介役になる”集団お見合い”となるのでしょうね。
もしかしたら「いい出会いがない」と嘆く女子は、運命の出会いを期待しすぎているのかもしれませんね。
しかしもう、みなさんは知ったはずです。ただ待つだけの女子の前には、未来の結婚相手は現れません。
A.いい出会いの確率は0.00006%です。ただし、自分から手に入れようと思えばその確率は高くすることができます
書籍「池上彰が「結婚」「お金」「仕事」についての疑問に答えます!」では、池上彰氏初の“女性の悩み”に特化。このほかにも「結婚って得なのですか? 損なのですか?」「どうしたらいい人に出会えますか?」など、女性ならではの質問に対し、的確な池上氏の回答が掲載されている。
そして池上彰氏は本書の最後に「想定内の悩みや疑問がたくさん聞かれました。想定外だったのはみなさんの知識不足。少しの知識さえあれば、その悩みは解消します。そういう思いで丁寧に解説をしました」と締めくくっている。
女性が幸せに生きるためのヒントが詰まった本書は、池上彰氏からの応援メッセージでもあるようだ。
(東京ウォーカー(全国版))