cat_12_issue_oa-vi-gokyouryoku oa-vi-gokyouryoku_0_52c7h7wtss8g_佐藤雅彦研究室の『またまた、ご協力願えますか』 第1回「得も言われぬ気持ち、ふたたび」 52c7h7wtss8g 52c7h7wtss8g 佐藤雅彦研究室の『またまた、ご協力願えますか』 第1回「得も言われぬ気持ち、ふたたび」 oa-vi-gokyouryoku 0

佐藤雅彦研究室の『またまた、ご協力願えますか』 第1回「得も言われぬ気持ち、ふたたび」

皆様、ご無沙汰いたしております。2019年に配信された映像実験番組『ご協力願えますか』の新シーズンが始まります!
この番組は、視聴者の皆さんに、ちょっと変わった「協力」をしてもらう事で初めて成立する少し変わった番組です。どうぞ全画面でお楽しみください。

映像をただ観るのではなく、観ながらスマートフォンを斜めに傾けたり、角を指でつまんだり、上下逆さまにしたり… そんな妙な「協力」の数々によって、今までに体験したことのない「得も言われぬ気持ち」が、皆さんの胸の中に沸き起こります。

こんなにも面白く、新しい体験が生まれるのは、人類が、スマートフォンというメディアによって、初めて映像を手に持てるようになったからに他なりません。つまり映像は観るだけのものだったのが、それだけでなく自らの手で持ち上げたり、斜めにしたり、というように扱えるものにもなったのです。そして、スマートフォン上の映像と身体の関係を研究すると、そこには、今までにない表現が生まれる可能性が溢れていたのです。

私たちは今回、シーズン1の反響も受けて更なるチャレンジを続け、再び、全4回のエピソードを構成しました。
この記事では、その第1回に収録されている内容を、一つ一つ解説していきます。本編映像を見てから、この解説を読んで理解を深めてください。

そして、スマートフォンの持つ新しい表現の可能性を、またまた、お楽しみください。

ご協力その1「机上のかんな」 ー 触覚情報が視覚情報に変換される

あなたがスマートフォンの裏面に指先を擦り付けると、映像上の「かんな」からかつお節が出てきました。まるで、かんなという変換マシンによって、指が削られ、かつお節という「イメージ」に置き換えられ、あなたは、かつお節が自分の身体の一部であったかのような気持ちを抱きます。そして、それが猫に食べられてしまうという体験は、生まれて初めてのとんでもない体験なはずです。

ご協力その2「トントンプラモデル」 ー 映像手法と身体感覚のマッチング

プラモデルが組み立てられるこの映像は、ストップモーションアニメーションと呼ばれる映像手法によって作られています。これ自体は、目にすることの多い一般的なものですが、それをスマートフォンの角を指先でトントン叩きながら観ることによって、まるでそこに関係性があるかのような、新しい感覚が芽生えます。

ご協力その3 「ご協力ねずみ 冷蔵庫のうら」 ー "物語" への積極的参加

“ねずみが50円玉を手に入れ損ねる”という物語を見ていると、途中で突然、ねずみがあなたに「あるご協力」を求めてきます。あなたがスマートフォンを斜めに傾けると、ねずみの思惑通りに50円玉が戻ってきますが、それが起因して500円玉も出てくるという想定外の結末を、あなたとねずみは同時に享受することになります。

加藤小夏の “ちょっと” ご協力願えますか「物干し竿」 ー 身体の拡張とその失敗

前回は「ご休憩コーナー」の担当だった加藤小夏さんが、今回はご協力をお願いして来ます。第一回は「物干し竿」編。映像の中の物干し竿を、外側から指で支えるという「身体の拡張」が起こりますが、小夏さんがお気に入りのワンピースを体に当てがってこちらに見せてくれるタイミングで、物干し竿が落ちてしまいます。ワンピースに意識を奪われて指の力を緩めてしまった人にとってはそれを見抜かれたような気持ち、しっかり押さえていた人にとっては、あたかも濡れ衣を着せられたような気持ちが起こるかも知れません。

ご協力その4「ろうそく東京タワー」 ー 身体の不条理な拡張

スマートフォンに息をフーッと吹きかけると、ろうそくの灯が消えるかと思いきや、わずかに炎が揺らぐだけで、消えずに持ちこたえます。しかし次の瞬間、背景にぼやけて見える東京タワーの照明が消灯します。成立するはずのない因果関係が、ろうそくの存在が橋渡しとなって、理解されてしまいます。

ご協力その5「ヨット」 ー 身体によるトリミング

折り紙の遊びのひとつに「だまし舟」というものがあります。それは、折り紙で作ったヨットの向きを、相手が持ったままで、縦から横に変えるというものです。この映像はそれを包み隠さずに写しているだけなのですが、テロップによって、途中から画面の下半分を手で隠すことを要求されます。その隠された部分で何が行われていたのか、それは映像をもう一度、手で隠さずに再生してみない限りは見ることができません。どのようにトリミングするかによって意味の変わる映像を、身体によって実体験することができます。

以上、第1回に収録されている「ご協力」全6つの解説でした。
身体に最も近い映像メディア「スマートフォン」でしかできない表現によって、みなさんの中に「得も言われぬ気持ち」が芽生えたのだとしたら、幸いです。

それでは、全4回の「またまた、ご協力願えますか」を、どうぞお見逃しなく!

東京藝術大学 佐藤雅彦研究室

NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』『テキシコー』『0655・2355』の監修などで知られる佐藤雅彦(東京藝術大学大学院映像研究科教授)による研究室。「メディアデザイン」をテーマとして、研究生たちが日々作品制作に励む。本番組『ご協力願えますか』は、佐藤教授と研究室の卒業生たちによって、「メディアデザイン」の教育番組として制作された。

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佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第4回「最終回はちょっとアドバンスト」

スマートフォンを使って数々の新しい体験を模索してきた『ご協力願えますか』も、いよいよ最終回。全4回の本編映像を、楽しんでいただけたでしょうか?
『ご協力願えますか』は、視聴者の皆さんに、ちょっと変わった「ご協力」をしてもらう事で初めて成立する映像実験番組です。


次々と求められる様々な「ご協力」をすることで得られる、初めての映像体験をご鑑賞ください。

この記事では、第4回に収録されている内容を、一つ一つ解説していきます。
最終回となる第4回は、今まで体験していただいた「ご協力」たちを土台とした、ちょっとアドバンストな内容になっています。
どうぞ、本編映像を見てから、解説を読んで理解を深めてください。

ご協力その1「砂糖バキューム」 ー イメージの保持と変換

あなたが息を吸い込むと、砂糖があなたの口元へと吸い込まれていきます。そして、次の指示で息を吐くまでの間、その「砂糖」はあなたの身体の中にイメージとして保持されることになります。
さらに、吐き出したときにそれが「金平糖」に姿を変え、カラフルに色まで着いているという結果について、その原因があなたの身体に依拠しているような気持ちがもたらされます。

ご協力その2「流砂」 ー 視覚と触覚の感覚的親和性による、意味を超えた表象

スマートフォンを持っている手の甲の皮膚を指でつまんで引っ張ると、画面上の砂がその一点へ流れ込んできます。要求される手の動作も、映像も、慣れない非日常的なものであり、その因果関係も意味の通らない不条理なものです。しかし、実際に体験してみると、この映像からは他の「ご協力」に負けずとも劣らない強い表象(気持ち)がもたらされます。それを成り立たせているのは、流砂のベクトルと手の皮膚の引っ張られるベクトルが同期していることに加え、映像の中で起こっている現象と、手の皮膚の触覚との間に、意味を超えた感覚的親和性があることなのではないでしょうか。

ご協力その3 「ご協力ガエル 嫉妬」 ー 存在するレイヤーの違いを利用した共謀

舞台は、ご協力ガエルくんの結婚式。幸せそうなケロ美に嫉妬したネタ美とソネ美(右側の二人)は、カラスのカー吉と共謀して、ケロ美への嫌がらせを企てます。そして、いち早く、その企てに気づいたご協力ガエルくんは、視聴者であるあなたに協力を求め、それをなんとか阻止しようと試みます。ご協力ガエルくんは物語の中で唯一、あなたの存在を知っている仲介役のようなキャラクターです。そのご協力ガエルくんと共謀することで、完全に「物語の外側」にいるあなたは、完全に「物語の内側」にいるネタ美の頭にフンを落とす張本人になってしまいます。

ご協力その4「反抗期」 ー 表象の成立と裏切り

スマートフォンを手前に傾けると、色とりどりのボールが転がってきます。傾きを検知する「加速度センサー」を使っていなくても、ただタイミングが合うだけで、自分の動作とコンテンツとの間に因果関係を感じてしまいます。これだけなら、とてもストレートなご協力の関係性ですが、この「反抗期」では最後に一つだけ、それに逆らう動きをするボールが現れます。わざわざご協力をして成立させた関係性を、わざわざ裏切られたとき、あなたはどのような気持ちになったでしょうか?

更に込み入ったご協力「卵CTスキャン」 ー 拡張現実的表象

水平に持ったスマートフォンをゆっくり上下させると、CTスキャンのようにゆで卵の断面が表示されていき、スクリーンを目に見えないゆで卵が通過したかのような拡張現実的表象が得られます。第1回に収録されていた、りんごをキャッチする「ニュートン」と違い、ただそこに物体があるかのような感覚だけではなく、物体の断面が見えるという不思議なことが起こっていますが、それすらも何ということはなく理解してしまう自分がいることに気がつくはずです。

以上、第4回に収録されている5つの「ご協力」の解説でした。
今回は、最終回ということもあり、今までの「ご協力願えますか」よりも、少し進んだ内容で、鑑賞が難しかったかもしれません。少しでも楽しんでいただけた皆様は、かなりのご協力マニアかもしれません。

また、最終回の「加藤小夏のご休憩タイム」は、一見なんてことのないシンプルな映像に見えるかもしれませんが、実は、影と光源に関するある一つの真理が、とてもわかりやすく露見しています。
机の上にLINEという文字を描き出す鉛筆の影。それを照らしていた光源の位置に、カメラを移動させると…、なんとまたLINEの文字が。しかも、今度は、実体の鉛筆で。果たして、何が、どうなって、こんなことになったのでしょうか?考えてみると、楽しいですよ。


さて、全4回の「ご協力願えますか」、いかがでしたでしょうか?
スマートフォンの持つ新しい表現の可能性を、感じていただけたでしょうか。

スマートフォン上の映像と身体の関係。本作の制作を通して、私たちは、そこに鉱脈を掘り当てたかのように、たくさんのアイデアと出会うことができました。そして、まだまだ、新しい表現の可能性は尽きていないと感じています。
皆様にとってこの番組が、メディアと身体の関係や、新しい映像表現について、考えるきっかけになったとしたら、幸いです。

またいつか、ご協力いただける日が来るのを楽しみにいたしております!

東京藝術大学 佐藤雅彦研究室

NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』『0655・2355』の監修などで知られる佐藤雅彦(東京藝術大学大学院映像研究科教授)による研究室。「メディアデザイン」をテーマとして、研究生たちが日々作品制作に励む。本番組『ご協力願えますか』は、佐藤教授と研究室の卒業生たちによって、「メディアデザイン」の教育番組として制作された。

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佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第3回「一筋縄ではいきません」

全4回の『ご協力願えますか』も、いよいよ後半戦に突入です。あなたは、もう体験していただけましたでしょうか?

『ご協力願えますか』は視聴者の皆さんに、ちょっと変わった「ご協力」をしてもらう事で初めて成立する、スマートフォン専用の映像実験番組です。

次々と求められる様々な「ご協力」をすることで得られる、初めての映像体験を、どうぞお楽しみください。

この記事では、第3回に収録されている内容を、一つ一つ解説していきます。
今回は、一筋縄ではいかないツワモノ揃いの内容になっています。
どうぞ、本編映像を見てから、解説を読んで理解を深めてください。

ご協力その1「にぎにぎサスペンス」 ー 自分は、どこまでを自分と認めるのか。映像と行為のシンクロが生む自己の拡張

映像の中の手を見ながら、それに合わせて自分の手を動かしていると、ある瞬間、映像の中の手が自分の手であるかのような妙な錯覚が起こります。その錯覚がうまく立ち上がった人ほど、最後にナイフが差し出されたときに「ギョッ」となったのではないでしょうか。
この「にぎにぎサスペンス」は、「映像の中の身体であっても、視覚情報と行為が同期したら、自分と認めるのではないか」という仮説に基づいています。
赤ん坊は、自分の手をにぎにぎしながら、それを見つめることによって、自分の存在を確認し、さらには自分という意識を持ち始めると言われています。
そのような原初的な身体の動きを使って、スマートフォンという映像装置と身体の関係性を探ろうと試みました。

ご協力その2「3本の色鉛筆」 ー 身体性の拡張と、都合のいい満足と快感の受容

指示に従ってスマートフォンの背面で指を滑らすと、3本の色鉛筆がスパッと切断され、先端がバラバラと散らばります。
このとき、触れることのできないはずの映像の中の色鉛筆に影響を及ぼす、という身体性の拡張が起こっていますが、レーザーのように鉛筆が綺麗に切れるという結果は、そんなこと自分では無理無理という気持ちを引き起こすどころか、自分にはこんな凄いことが出来るんだと肯定的に捉えさせ、そのスパッと切った時の快感さえも享受させてしまいます。

ご協力その3 「ご協力ガエル ケロ美の部屋」 ー "物語=向こう側" と "現実=こちら側" の中間的存在

今回のご協力ガエルには、ケロ美という「視聴者の存在を知らない普通のキャラクター」が、初めて登場します。ご協力ガエルくんがドアの外からあなたに話しかけたとき、ケロ美は眠りに落ちていますし、最後にご協力ガエルくんがこちらにウィンクを投げるときも、私たちの存在に気が付きません。
そんな設定の中で、あなたはご協力ガエルくんのサプライズに協力し、物語はハッピーエンドを迎えます。ご協力ガエルくんは、「フィクションの世界=向こう側」と「現実=こちら側」の世界を繋ぐ中間的な存在と捉えることもできるかもしれません。

ご協力その4「頑張れ!キューブ」 ー 身体的な負荷と映像

映像の中で、2つのキューブが吸着し、また分離するという不思議なことが起こります。これをあなたは、息を吸って止めたり、吐いたりしながら見ることで、自分の呼吸の状態と2つのキューブの状態に関連性を感じます。息を止めているのは苦しいものです。その身体的な負荷が映像の内容と関係を持つという点が、「頑張れ!キューブ」の特徴かもしれません。

更に込み入ったご協力「背中黒板」 ー 身体性の拡張によるエラーの体験

指先で背中に文字を書いて、書いた文字を当てる遊びをした経験のある方は多いと思います。それが何という文字をなぞっているかということを読み解こうとするのですが、思いの外、当てるのが困難だったりします。この女の子も、くすぐったそうに笑みを浮かべた後、画用紙に「め」ではなく、誤って「ぬ」と書いてしまいます。そんなあなたとこの女の子とのかわいいディスコミュニケーションを、この映像とスマホの背中に字を書くという行為によって、体験することができます。
もしあなたが、指示文を無視して「ぬ」と書いてみたら、どのような気持ちになるのでしょうか…気になった方は、ぜひ試してみてください。

以上、第3回に収録されている5つの「ご協力」の解説でした。
応用的な要素を含んだ、一筋縄ではいかない内容になっていたかと思います。

また、今回の「加藤小夏のご休憩タイム」では、なにやら今までで最も大掛かりな装置を小夏さんが作っています。奮闘する小夏さんの姿を見ながら、ひとときのご休憩をお楽しみください。


残すところあとわずか!
「ご協力願えますか」全4回を、どうぞお見逃しなく!

東京藝術大学 佐藤雅彦研究室

NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』『0655・2355』の監修などで知られる佐藤雅彦(東京藝術大学大学院映像研究科教授)による研究室。「メディアデザイン」をテーマとして、研究生たちが日々作品制作に励む。本番組『ご協力願えますか』は、佐藤教授と研究室の卒業生たちによって、「メディアデザイン」の教育番組として制作された。

cat_12_issue_oa-vi-gokyouryoku oa-vi-gokyouryoku_0_2974e5dd90cf_佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第2回「広がる"ご協力"の世界」 2974e5dd90cf 2974e5dd90cf 佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第2回「広がる"ご協力"の世界」 oa-vi-gokyouryoku 0

佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第2回「広がる"ご協力"の世界」

新しく配信が始まった『ご協力願えますか』、もう体験していただけましたでしょうか?

『ご協力願えますか』は視聴者の皆さんに、ちょっと変わった「ご協力」をしてもらう事で初めて成立する映像実験番組です。

映像に請われるまま、妙な「ご協力」をこなしていくうちに、今までに体験したことのない「得も言われぬ気持ち」が沸き起こった方も多いのではないでしょうか。

番組が提供したいのは、この新しい「気持ち」そのものなのです。

前回の第1回「こんな気持ち、初めてだ」では、映像と身体の関係性から生まれる"新しい表現"の入り口を、皆さんに感じていただけたのではないかと思います。

第2回では「ご協力」のさらなる広がりをお楽しみください。
映像を見ながら手をあげたり、スマートフォンの縁を指先で一周したり…そんな、日常生活ではあまりやらないような「ご協力」にも、すごく自由な表現の可能性が潜んでいます。

この記事では、その第2回に収録されている内容を、一つ一つ解説していきます。本編映像を見てから、解説を読んで理解を深めてください。

ご協力その1「タクシー」ー身体の記憶による解釈

ただ、目の前にタクシーが停止するだけの映像にも関わらず、片手をあげながら見たことによって、あなたは不思議な気持ちを覚えたのではないでしょうか。

その理由は、私たちの中で「片手をあげる」という動作と「タクシーが止まる」という結果が、つなぎ合わされていることにあります。特に、日常的にタクシーを拾うことの多い人ほど強く、その習慣が、身体に記憶として残っているのです。

この映像の中でタクシーが止まったときに、あなたに不思議な納得感をもたらすものの正体は、その「身体の記憶」です。

ご協力その2「足の裏」ー因果性の捏造による濡れ衣

女性がくすぐったそうに足をジタバタとするのを見て、あなたは自分がスマートフォンの裏面をこちょこちょとなぞっているからだと感じ、決まり悪さ、あるいはこの女性に対する申し訳なさまで感じてしまったのではないでしょうか。

スマートフォンの裏面と女性の足の裏には位置関係の整合性がないにも関わらず、あなたの指先は、それを軽々と乗り越えて、女性の足の裏に届いてしまいます。
そんな揺るぎない「身体性の拡張」が、結果的にあなたに濡れ衣を着せてしまうのです。

ご協力その3 「ご協力ガエル 紹介」ー"物語"への積極的参加

第1回と同様、ご協力ガエルのテーマは「"物語"への積極的参加」です。
今回、あなたのご協力によって動き出す水たまりは、第1回における岩と違って、初めから画面の中に描かれています。つまり、本当は自分の動作がその対象に作用しているわけではないということがより明白です。
それにも関わらず、またしてもあなたは、自分の関与によって水たまりが移動したと感じたのではないでしょうか。タイミングがおおよそ合いさえすれば、わたしたちはあらゆることを乗り越えて、やはりそこに因果関係を感じてしまうのです。

ご協力その4「空気穴」ー身体の記憶による解釈

映像の中の醤油差しのてっぺんには、空気穴が空いています。
そして、指を離し、醤油が流れ出した瞬間、あなたは自分の動作とその結果に何らかの関係性を感じると同時に、「自分の指が空気穴を押さえていた」という最も整合性の取りやすい解釈をしたのではないでしょうか。

「タクシー」と同じく、このようなタイプの醤油差しを使った経験がある人ほど、その「身体の記憶」によって、より強い表象(気持ち)がもたらされるはずです。

更に込み入ったご協力「脱走犯」ー漢字の成り立ちの体感

スマートフォンの縁を指先でなぞると、なぜか逃げている脱走犯が枠によって囲われていきます。説明のつかない現象も、因果性の力によって簡単に自分の意図的な操作に置き換わってしまいます。
そして、枠を一周させると、逃げていた「人」が囲われて「囚」の字が完成します。「囚」という漢字の成り立ちは、このように「人を囲う」という事に端を発しますが、この映像では、その成り立ちを体験的に学習できるのではないかと考えました。

以上、第2回に収録されている5つの「ご協力」の解説でした。
スマートフォンでしかできない新しい表現の、さらなる可能性を感じていただけたとしたら幸いです。

また、今回の「加藤小夏のご休憩タイム」では、鏡を使った難易度の高い映像実験に挑戦しています。悪戦苦闘する小夏さんの姿を見ながら、ひとときのご休憩をお楽しみください。

まだまだ続く「ご協力願えますか」全4回を、どうぞお見逃しなく!

東京藝術大学 佐藤雅彦研究室

NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』『0655・2355』の監修などで知られる佐藤雅彦(東京藝術大学大学院映像研究科教授)による研究室。「メディアデザイン」をテーマとして、研究生たちが日々作品制作に励む。本番組『ご協力願えますか』は、佐藤教授と研究室の卒業生たちによって、「メディアデザイン」の教育番組として制作された。

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佐藤雅彦研究室の『ご協力願えますか』 第1回「こんな気持ち、初めてだ」

『ご協力願えますか』は、視聴者の皆さんに、ちょっと変わった「協力」をしてもらう事で初めて成立する映像実験番組です。どうぞ全画面でお楽しみください。

スマートフォンを強く握ったり、裏面を指でなぞったり、はたまた、画面を見ながら息を止めたり… そんな妙な「協力」の数々によって、今までに体験したことのない「得も言われぬ気持ち」が、皆さんの胸の中に沸き起こります。

番組が提供したいのは、この新しい「気持ち」そのものなのです。
では、なぜこんなにも新しい体験が生まれるのでしょうか ーー

人類は、スマートフォンというメディアによって、初めて映像を手に持てるようなりました。これは、映像は身体の一部になった、と言い換えることもできます。そして、スマートフォン上の映像と身体の関係を研究すると、そこには、今までにない表現が生まれる可能性が溢れていたのです。

今回、私たちは、わかりやすいものから挑戦的なものまで、選りすぐりの映像を集め、全4回のエピソードを構成しました。
この記事では、その第1回に収録されている内容を、一つ一つ解説していきます。本編映像を見てから、この解説を読んで理解を深めてください。

スマートフォンの持つ新しい表現の可能性を、どうぞ、お楽しみください。

ご協力その1「空き缶」 ー 視覚情報と触覚情報の共謀

あなたがスマートフォンをギュッと握ると、同時に、映像の中で空き缶が見事につぶれます。握るという感触(触覚情報)と缶が潰れたという視覚情報を同時に得ると、人は自分が缶を潰したかのような気持ちを覚えます。映画の4DX上映など、視覚・聴覚以外の刺激を取り入れた映像コンテンツは世の中にみられますが、その根本は、視覚情報とその他の身体感覚情報の共謀です。

ご協力その2「砂」 ー 動きの記憶と身体性のマッチング

画面一杯に広がった砂。その一部が動いているのを見て、あなたは子供の頃に公園の砂場で遊んだ記憶などから、直感的に、砂の下をちょうど指先くらいの大きさの物がうごめいていると感じます。そして同時に、あなたはスマートフォンの裏側を、指先で縦にゆっくりとなぞっています。あなたは、その両方をマッチングさせ、自分の指が砂を後ろからなぞっているという気持ちを抱きます。

ご協力その3 「ご協力ガエル 脱出したい」 ー "物語" への積極的参加

"カエルが谷底から脱出する" という物語を見ていると、途中で突然、カエルがあなたに「特殊な協力」を求めてきます。あなたがスマートフォンを斜めに傾けたことと、岩が転がってきたという出来事との間には、あるはずのない「因果関係」という結びつきが生まれ、あなたは傍観者の立場から一転して、カエルが無事に脱出に成功するという物語に参加したような気持ちになります。

ご協力その4「新たな支点」 ー 理由の補完

5円玉の振り子が、空中の何もない位置で不思議と折れ曲がります。人は不可解な物事に対峙した際、それをわからないままにするのではなく、本能的に何かしらの理由を求めます。この場合、スマートフォンの裏面に添えられたあなたの指が、そこで糸が折れ曲がることの理由を補完しているかのようです。

更に込み入ったご協力「ニュートン」 ー 拡張現実的表象

カメラに向かってリンゴが落ちて来る映像と、次に映像の中の手にリンゴがキャッチされる映像。それらの映像があなたの手の動きとシンクロすると、まるで目の前の空間でリンゴが落下し、それをあなたが見事、キャッチしたかのような表象(気持ち)が得られます。身体の記憶と視覚情報のマッチングです。

以上、第1回に収録されている「ご協力」全5つの解説でした。
身体に最も近い映像メディア「スマートフォン」でしかできない表現によって、みなさんの中に「得も言われぬ気持ち」が芽生えたのだとしたら、幸いです。

番組では他にも、連続して求められる様々な「ご協力」から開放され、リラックスして観る「加藤小夏のご休憩タイム」も用意されています。

番組のナビゲーターでもある加藤小夏さんが、机に向かってスマートフォンならではの "ハッとする" 映像実験に挑戦する、手作り感満載なかわいいコーナーです。毎週、加藤小夏さんが挑戦する様々な映像実験を見ながら、ひとときのご休憩をお楽しみください。

それでは、全4回の「ご協力願えますか」を、どうぞお見逃しなく!

東京藝術大学 佐藤雅彦研究室

NHK Eテレ『ピタゴラスイッチ』『0655・2355』の監修などで知られる佐藤雅彦(東京藝術大学大学院映像研究科教授)による研究室。「メディアデザイン」をテーマとして、研究生たちが日々作品制作に励む。本番組『ご協力願えますか』は、佐藤教授と研究室の卒業生たちによって、「メディアデザイン」の教育番組として制作された。