“ライ獲る”-。阪神の糸井嘉男外野手(39)が20日、大阪・東大阪市にある「ウィルチェアスポーツコート」を訪問し、車いすソフトボールの試合に出場した。原点の場所に立ち来季、新助っ人・ロハス&ドラフト1位・佐藤輝(近大)らとの競争に勝って、右翼のポジションを死守する強い決意を明かした。不惑を迎える21年シーズン。不退転の覚悟で定位置争いに挑む。
新しく施工されたコートで、糸井は競技用の車いすに乗った。無心で白球を追い掛け、人一倍の大声で盛り上げた。そこにはプロやアマ、健常者も障害者も…一切の垣根がない。野球に夢中になった童心に戻った瞬間。原点の場所に立ち、来季への思いを強くした。
「僕にとっては力をもらえる場所です。年に数回ですけど、もうみんなの顔も知っているので。会いたいなと思いますね、毎年」
昨年10月、左足首の手術を受けた。術後、リハビリの一環とし、車いすソフトボールの練習に参加した。「ホンマに足が動かへんとか、ない人とかね。目の当たりにすると。恵まれていると言ったら、あれですけどね」。下半身不随や、脊髄を損傷した人らと交流し、また力をもらった。
今季で4年契約が終了し、単年で契約を更新。不惑を迎える21年シーズンに向けて「また全部、試合に出られるように」とレギュラー再奪取を誓う。既に矢野監督はテレビ番組で、現時点での来季開幕オーダー構想を披露。左翼は韓国リーグ2冠の新助っ人・ロハス、右翼にはドラフト1位・佐藤輝を挙げた。
ベテランにとってはいばらの道。ただここまで、結果を残して勝ち抜いてきた。「僕もそうですし、すごい先輩を蹴落としてきた。そういう世界なので。試合に出るにはチーム内の競争もある。僕はしっかり体を万全にしてね、やるだけだと思っています」
今季は、体のコンディションが良化した終盤、猛烈な巻き返しを見せた。9月は月間打率・352。10月に入っても同・290のアベレージを残した。オフも休まずトレーニングを続ける。体さえ整えば技術、経験だけでなく人気、実力ともにチームの顔として不可欠な存在に違いない。
車いすソフトボールの試合では、「ホームランが見たい」の声に応え、最終打席に立った。最後はフェンス手前の大飛球を放ち、捕球した男性の“アシスト”でスタンドイン。「活躍して毎年、報告できるようにしたい」。支えられる声にも背中を押され、強い覚悟で不惑のシーズンに備える。
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