「阪神0-4巨人」(10日、甲子園球場)
思い出が脳裏を駆け巡った。引退セレモニーのフィナーレ。阪神・矢野監督はミットを持って定位置へ向かい、藤川の最後の一球を捕球した。直後の会見。目は潤み、声が震えた。
「すごく幸せな瞬間でした」
藤川の配慮で、10年の時を経てバッテリーが再結成された。自身の引退試合だった2010年9月30日・DeNA戦(甲子園)。九回に藤川が村田に逆転3ランを浴び、出番がなくなっていた。
「俺は聞いてなかった。気遣いというか、それがうれしかった」。駆け出しの頃から全盛期まで、誰よりも火の玉ストレートを受けてきた自負がある。最後の捕手を任されたことは感慨深かった。
試合では万感の思いを込めて送り出した。最後の登板はもちろん九回。交代を告げると、自らマウンドへ向かった。「本当に最後になってしまうんだな」。ボールを手渡すとハグ。最後の雄姿を目に焼き付けた。
藤川は意識し続けてきた巨人に最後まで真っ向勝負を挑んだ。代打・坂本に投じた初球は148キロの直球。「特に初球を見た時、すごくいい球がいっていた。最後の思いを込めた球だなと」。続く代打・中島への初球には、この日最速の149キロを投じた。全12球の直球勝負に、藤川の生きざまを見た。
藤川からは引退セレモニーのスピーチで「矢野監督を日本一の監督にさせてあげましょう」と背中まで押された。現役時代からの“戦友”の思いもくみ取り、来季の悲願達成を心に誓った。
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