「ヤクルト5-11阪神」(4日、神宮球場)
会心の一撃で試合を決定づけた。阪神のドラフト6位・中野(三菱自動車岡崎)がうれしいプロ初本塁打。打球がフェンスを越えるのを確認すると、力強く右拳を握りしめ、喜びを全身で表現した。
1点リードの八回1死二塁。シーソーゲームの中、完全に流れを引き寄せた。見逃せばボールの内角高め直球に、クルッと体を回転させフルスイング。白球は前進守備だった右翼のはるか頭上を越え、無観客の右翼席に突き刺さった。
「感触は非常に良かったので、あとは入ってくれという願いを込めた」と、一発を確信すると満面の笑顔。本塁生還後には「よっしゃ~」と叫び、ナインとタッチを交わした。
九回には同期入団の同1位・佐藤輝(近大)もアーチを描き、新人アベック弾を達成。新人2人が同じ試合で本塁打を放つのは、72年5月30日・大洋戦(川崎)での望月充・中村勝広以来、球団49年ぶりの快記録だ。
六回2死一塁では左前打を放ち、続く代打・陽川の同点打をお膳立て。九回2死でも遊内野安打を放ち、今季2度目の猛打賞とした。さらに、先発復帰してからは4戦連続安打。それでも「まだまだアピールが必要」と浮かれることはない。
中野には脳裏から離れない虎戦士の一発がある。まだ、幼かった頃、札幌ドームで見た金本のアーチだ。山形出身で数少ない観戦機会だった中野少年は魅了された。今は、自分がタテジマを着て、テレビの前の虎党に豪快な一撃を届けている。
記念球は「両親に送りたい」とはにかんだ背番号51。初安打、初本塁打と記念球がどんどん増え「里帰りが楽しみ」と、山形の両親は心待ちにしている。これからも勝利のため、そして虎党へ元気を届けるために。中野の快進撃は止まらない。
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