「阪神4-0広島」(15日、甲子園球場)
阪神・大山が、ようやく心の底から笑った。大きな拍手が降り注ぐ甲子園。そのど真ん中をゆっくりと回った。プロ5年目で最も遅い、シーズン68打席目で飛び出した待望の一発は、2つの不敗神話を紡ぐ先制の1号2ランだ。
「自分の中で、焦りがなかったって言ったらウソになると思うんですけど。周りのみんなが助け合いながらやってくれていたので、今日は自分がと思って打席に入りました」
初回2死一塁。フルカウントから床田の低めツーシームに体勢を崩されたが、最後は左手一本で振り切った。「入ってくれ」-。思いを乗せた打球は左翼席に着弾した。打球速度161キロ、飛距離は120メートル。一塁ベンチに戻ると、出迎えてくれた仲間たちも虎党と同様に歓喜していた。
昨季はリーグ2位タイの28本塁打、同3位の85打点を記録。主砲として確固たる地位を築き、新主将に任命された。しかし、開幕から絶好調のチームとは裏腹に、波に乗れない日々が続く。前日まで本塁打はゼロだった。
そんな悩める4番に救いの手を差し伸べてくれた一人が矢野監督だった。「(大山)悠輔はどうしても手の意識が強い」。試合前練習時に声を掛け続けた。下半身が止まれば、上体が前に泳いでも「ヘッドがゴンって一番強く返ったところで打てる」と指揮官。「本当うれしそうにベースを回っている姿が印象的でしたし、これで乗っていってくれると思います」と期待した。
先制すれば13連勝。さらに、大山が打点を挙げれば昨季から引き分けを挟んで17連勝だ。試合後のお立ち台。主将が「コロナでなかなかいいニュースがない中ですが、僕たちタイガースが頑張ることで、少しでも元気になってもらえればと思っています」と熱く語ると、聖地には再び大きな拍手が降り注いだ。
外部リンク