「DeNA5-4阪神」(19日、東京ドーム)
あきらめない思いとともに、怪物ルーキーが歴史の扉を開いた。2点を追った九回、阪神・佐藤輝明内野手(22)が左翼席に23号ソロを放ち、田淵幸一と並んでいた球団最多新人記録を更新した。八回には好守でDeNAの追加点をはばむなど、意地の追い上げをけん引。チームの連勝こそ4で止まったものの、仕切り直して20日からの中日戦3連戦でも勝利を目指していく。
ファインプレーで魅せた直後に、バットでそれをはるかに上回るようなシーンを演出した。決して失投ではない。それでも佐藤輝は怪力でスタンドへ23号ソロを突き刺した。半世紀以上前の1969年、球団新人だった田淵幸一が打ち立てた球団新人本塁打記録を簡単に抜き去った。
「記録を超えることができたというのは、しっかり自分のスイングをしてきた結果なので。すごいうれしい」
2点を追う九回先頭。マウンドにはDeNAの守護神・三嶋が君臨したが「残り一回しかなかったので」と佐藤輝は打席の中で極限まで集中力を高めた。
カウント1-2からの4球目、156キロの低めの速球をガツン。ローボールヒッターならではの対応力で仕留めた打球は、左翼席ギリギリに着弾。球団史を塗り替える一発に「いい本塁打だった」と涼しい顔で振り返った。
この日のように逆方向に飛距離を飛ばせることが佐藤輝の特長だ。球宴2戦目(楽天生命)ではソフトバンク・柳田と“逆方向打ち談義”を交わしたが、柳田からは「1年目から、練習(の段階)から(逆方向に)打てるのはありえない」と絶賛された。佐藤輝も「一流の選手でも(逆方向に打つことを)意識してやっている」と認識し、後半戦も逆方向に強く打つ練習は継続させている。
本塁打を放った数分前の八回1死満塁の守備では、宮崎の飛球に一度前進しながらジャンプで捕球。スタートを切った三走・桑原を正確な送球で本塁生還を防ぎ「落ち着いていいボールを投げられた」。2点を追う五回先頭に坂本から右前打で出塁した後は、ロハスの適時打で一塁から本塁まで一気に激走。走攻守にわたる全力プレーを披露し、東京ドームで躍動した。
矢野監督は「さらにもっと高い目標を持っていると思うし、もちろんその可能性を秘めた選手なんで」と本塁打記録の大幅更新を期待。佐藤輝もその思いは強い。「まだこれから積み重ねて、もっとホームランを打ちたい」。打席で挑戦できる機会がある限り、虎の背番号8が果敢に本塁打を狙っていく。
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