「阪神3-1中日」(29日、甲子園球場)
土壇場からの6連勝で逆転CS進出を勝ち取った昨年がフラッシュバックする。阪神が負ければ終戦という土俵際から執念の5連勝。天敵・大野雄を打ち崩して貯金を今季最多の5として、再び2位に浮上した。中日を倒したことで巨人のマジックは1となったが、勝つって気持ちいい。
土俵際で踏みとどまった。むしろ、逆境から押し返している。無双状態の左腕まで止めた。矢野阪神が敗れればV逸の状況から5連勝。16日ぶりの2位浮上だ。
矢野監督は目を細めた。「順位は最後には決まる。できることは全員でどう戦うか。みんながしっかりやってくれている」。優勝は絶望的でも、来季以降へつながる試合だった。
大野雄は防御率リーグトップで、45イニング連続無失点中だった。阪神にとって2試合連続完封負けを喫している天敵。初回には1点を先制され、嫌なムードが漂った。
それでもすぐさま強気で振り払った。先頭・近本が右前打を放って無死一塁。先発には西勇を送っており、失点は計算できる。まずは同点を考えたくなる場面だったが、指揮官は送りバントではなく、強攻策を採った。
「近本が出ると相手は無警戒でいられない。健斗も右、左関係なく対応してくれるんで」。近本は3度スタートを切り、大野雄を揺さぶる。ファウルで粘った糸原は、徐々にタイミングが合い、7球目のフォークを捉えた。打球は右中間を突破。大野雄から20イニングぶりの得点となる同点の適時二塁打となった。
糸原はマルテの三遊間寄りの遊撃内野安打で三塁に進塁。大山の遊ゴロ間に生還して勝ち越し点も演出した。「積極的な走塁で三塁へ行ったのもすごく生きた」。1、2番コンビでの逆転劇が、天敵攻略のムードを作った。
三回2死一、二塁は陽川が左中間へ適時二塁打。2死無走者から奪った1点に「相手に与えるダメージがあった」と指揮官。出番が限られている選手が、価値ある仕事を果たす。歯車がかみ合っていることを象徴する画面だった。
大野雄の進撃を止め、今季最多の貯金5。昨秋を思い出すような快進撃だ。昨季は敗れればBクラス決定の状況から、6連勝で逆転CS進出を果たした。「みんなが『全員でやる』というところで、諦めずにやり切ってくれているのが、こういうところにつながっていると思う」。今季はCSがなく、目標設定が難しい状況。それでも一戦必勝の戦いは、必ず来季への糧となる。
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