1stステージ第8節でそれまで無敗の川崎フロンターレに何もさせず、武藤雄樹のゴールで1-0と下して首位に浮上したとき、誰もがこう思ったはずだ。
「今年の浦和レッズは、本当に強い」
ミハイロ ペトロヴィッチ監督就任4シーズン目。チーム全体が連動してボールを動かす攻撃的なスタイルの質は一段と高まり、エースの興梠慎三も第3節のアビスパ福岡戦での2ゴールを皮切りに、シーズン序盤からゴールを量産していく。
この年に湘南ベルマーレから加入した遠藤航も3バックの一角として開幕からポジションを奪取。戦力は充実の一途を辿っており、死角がないように思われた。
ところが、AFCチャンピオンズリーグ参戦の疲労が噴出したのか、6月に入って鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島に3連敗。1stステージは3位で終えた。
その悔しさを晴らすかのように、7月に開幕した2ndステージで1stステージを上回る圧倒的な強さを見せつける。
第8節の名古屋グランパス戦にズラタン、武藤雄樹のゴールで勝利して首位に浮上。その後、2位に転落したが、第12節のFC東京戦に相手のオウンゴール、興梠、李忠成のゴールで快勝して再び首位に立った。
快進撃はノックアウトステージからの出場となったYBCルヴァンカップでも続く。
高木俊幸の2試合3ゴールの活躍もあり、準々決勝でヴィッセル神戸を2試合合計6-1で下すと、準決勝のFC東京戦では第2戦で興梠がハットトリックを達成。2試合合計5-2でファイナルに駒を進めた。
10月15日の決勝の舞台は、ホームの埼玉スタジアム。相手は前年のJリーグチャンピオンシップ準決勝で辛酸をなめさせられたG大阪である。
リベンジを果たすのに、またとない好機――。この一戦に浦和レッズは次のようなメンバーで臨んだ。
FW:㉚興梠慎三
MF:③宇賀神友弥、⑨武藤雄樹、⑩柏木陽介、⑬高木俊幸、㉒阿部勇樹、㉔関根貴大
DF:⑤槙野智章、⑥遠藤航、㊻森脇良太
GK:①西川周作
17分に先制点を許したが、76分に李忠成が同点ゴール。120分を終えても決着が付かず、PK戦へともつれ込んだ。
G大阪は4人目の呉屋大翔が失敗したのに対し、浦和レッズは4人全員が決め、5人目のキッカー、遠藤のPKが決まった瞬間、実に10年ぶりとなる国内タイトル獲得が決まった。
ピッチでは柏木陽介が、関根貴大が涙を流し、勝利の美酒に酔っていた。
「この喜びを、今のチーム全員で味わえたことを嬉しく思う」
興梠はそう言って、チームメイトをねぎらった。
だが、戦いはこれで終わったわけではない。
YBCルヴァンカップ優勝の勢いをそのままに、浦和レッズはリーグ戦の残り3試合を2勝1分でフィニッシュ。2ndステージで優勝を飾るとともに、年間勝ち点1位として、Jリーグチャンピオンシップ決勝進出を決めた。
11月29日に行われた決勝第1戦の相手は、準決勝で川崎Fを下した鹿島。浦和レッズにとって天皇杯の川崎F戦から17日ぶりの公式戦とあって、連係面でやや息が乱れる場面があったが、守備陣が奮闘。槙野智章が相手のエース、金崎夢生を抑え込む。
0-0出迎えた57分には興梠が西大伍(現浦和レッズ)に倒されてPKを獲得。これを阿部勇樹が沈めて先制すると、虎の子の1点を守り抜き、敵地から帰還する。
0-1で負けても浦和レッズの優勝――。
大きなアドバンテージを得て迎えた12月3日のホームでの第2戦。浦和レッズはYBCルヴァンカップ決勝とまったく同じ、ベストメンバーを送り出す。
7分には高木のクロスから興梠の会心のボレーシュートで先制。この時点でリードは2点。念願のリーグタイトルをグッと引き寄せた。
ところが、40分に1点を返されると雲行きが怪しくなり、56分に高木に代えて青木拓矢を送り出す采配が、攻撃に出るのか、そのままのスコアを維持するのか、ピッチ上に混乱を生じさせてしまう。
78分、第1戦で好守を見せた槙野がペナルティエリア内で鈴木優磨を倒してしまう――。
このPKを決められ、スコアをひっくり返されると、ゲーム終盤に槙野を前線に上げるパワープレーも実らず1-2で終了。2試合合計2-2のタイスコアながらアウェーゴールの多い鹿島の戴冠が決まった。
「ホームでたくさんの人が見に来てくれたなかで勝てなかったのは申し訳ない。結果がすべてを物語っている。結果を出せなかった。ただ、それだけ」
阿部は言葉を振り絞るようにして、語った。
この年、浦和レッズが勝ち点を最も稼いだチームだということは、紛れもない事実だ。
61得点はリーグ2位、28失点はリーグ最少と、攻守両面で好成績を残し、“ミシャスタイル”の完成形が示されたのは間違いない。
それでもリーグタイトルを逃したという現実が、チームに重く伸し掛かった。
Jリーグ・1stステージ:3位
Jリーグ・2ndステージ:優勝
YBCルヴァンカップ:優勝
天皇杯:4回戦敗退
ベストイレブン:西川周作、槙野智章、阿部勇樹、柏木陽介
(取材/文・飯尾篤史)
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