チームの活動中止期間が長引くなか、選手たちはオンラインの合同トレーニングなどをこなしがらコンディション維持に励んでいる。いまはチームメイトとはいえ、直接顔を合わせることもできないが、心はひとつ。今回は息の合ったボランチ・コンビ、青木拓矢と柴戸海がTV電話対談企画に登場する。
――2人の対談取材は、これまでもあったのですか?
青木
初めてです。需要はありますかね。このキャスティングをしたのは誰ですか?
――柴戸海選手からのご指名です。
青木
本当なの?
柴戸
真面目な話、青木くんに聞きたいことがありまして。試合の中でうまくいっていないときは、どのように修正しているのですか?
青木
俺の場合は2パターンあるかな。攻撃がうまくいかなければ、守備をめちゃくちゃ頑張る。このパターンが多いんだけどね。当然、逆パターンもあるよ。年齢を重ねてきて、ミスをあまり気にしなくなってきたのもある。
柴戸
僕はその一つのミスに引っ張られてしまうんです。調子が悪いときも、悪いなりにプレーしようとするのですが、なかなかうまくいかなくて……。
青木
海はミスしたあと、少し消極的になっているかもね。でも、気にしないのが一番。気持ちは分かるけど。俺も若い頃はそうだったから。ただ、気にしている素振りを見せると、相手はガツッとくるよ。特に俺たちボランチは狙われやすい。だからこそ、相手にそう思われないようにしないと。
柴戸
ほんと、そのとおりですね。僕自身も理解しているんですけど……。青木くんはミスをした後も気にせず、チャレンジしますよね。周りがよく見えていて、狙ったところにパスを出しますし。やっぱり、同じボランチとして越えないといけない壁です。
--先輩の青木選手から柴戸選手に聞きたいことはありますか。
青木
ほかの選手たちが、どのような感覚で試合の入っているのかは気になるんですよね。海は緊張とかするの?
柴戸
ほとんどしないです。リーグ戦デビューとなったホームでの神戸戦だけは、埼スタに5万5000人以上入っていて、緊張しましたけど。普段はどうすれば、自分の良さを出せるか、味方の持ち味を引き出せるかなどを考えています。青木くんは、どんな感じですか?
青木
何も考えていない。むしろ、考えないようにしている。いざゲームが始まり、きょうは調子がいいな、ちょっと微妙かもとかね。そこから調整していく。
柴戸
僕も冷静になって振り返ってみれば、調子がいいときは、考えすぎていないかも……。
青木
ツボにはまったときの海は相手の間合いにすっと入って、ボールを奪ってしまうよね。あの守備はすごい。紅白戦で対峙しても、感じるよ。距離の詰め方がうまい。自分から入っていけるのがいい。俺もそこは見習いたい。
柴戸
僕はレギュラーじゃないから、アピールも含めて自分から仕掛けないといけないので。とはいえ、そのまま体を入れ替えられる場面もまだあるんですけどね。
青木
誰かを参考にしているの?
柴戸
ガツガツとボールを奪いにいくチェルシー(イングランド)のエンゴロ・カンテは見ています。あとリバプール(イングランド)の名前は忘れましたけど、あの14番。誰でしたっけ?
青木
名前は忘れるなよ(笑)。イングランド代表のジョーダン・ヘーダソンだろ。俺もカンテのプレーは見るかな。ボールの奪い方がうまいよね。自分から仕掛けて、相手に間合いに入っていくところは海に似ているかも。海外サッカーはよく見るんだ?
柴戸
(照れ笑い)。以前よりは見ています。青木くんは、よく見る選手とかいるのですか。
青木
バルセロナのセルヒオ・ブスケツ、レアル・マドリードのカゼミーロ、マンチェスター・シティのフェルナンジーニョは見ている。アンカータイプの選手に自然と目がいく。今季、フェルナンジーニョはセンターバックでプレーしているけど、参考にしているよ。海はJリーグの選手も手本にすることはあるの?
柴戸
他チームの映像は、ハイライトで見ています。
青木
ハイライトは、みんな見てるだろ(笑)
柴戸
(苦笑)。自分の出た試合はトレーニングマッチを含めて、自宅でじっくり見返します。客観的な視点で見ているんです。あの場面はもっとこうすればよかったとか。
青木
俺も数年前から見るようになった。若いときは見てなかったけど、いまは必ず見る。試合後すぐに見るのはいいよね。プレーの記憶が鮮明にあるから。海と一緒で、あの局面の判断は、こうだったよなとか一人で振り返っているよ。恥ずかしくなることもあるけど、それに気づくことが大事。
柴戸
それ、すごく分かります。
青木
自宅で試合を見るとき、奥さんはどうしているの?
柴戸
ナイトゲームの後は、「先に寝てて」と断りを入れてから、一人で見ています。
青木
え、そうなの。うちはもっとドライだよ。自宅の中で行動は別々だから。俺は自由に一人で見ている。何もしないわけではないよ(笑)。役割が決まっているので、それをこなしていればOK。
柴戸
子育てはどうなんですか?
青木
それは海の方が先輩だろ。むしろ、俺の方から聞かせてよ。赤ちゃんがすごく泣いているときのあやし方が知りたいんだけど。止まらないことがあって。
柴戸
うちの場合、基本的に抱っこしたら泣き止みます。それでも、夜はママ、ママとなるので、最終的には任せます。参考になりましたか?
青木
やっぱり、お母さんがいいんだよね。最後は母。参考になったよ! まあ、どれだけ泣いても、かわいいから。
柴戸
うちの子はハイハイして、つかまり立ちもするようになり、笑いかけてくれるんですよ。寝顔にも癒やされています。
青木
いつか我が子を連れて、埼スタに入場したいよなあ。子どもが幼い間に。
柴戸
僕もその気持ちは分かります。抱っこして入場したいですよね。
青木
レッズは一緒に入場する選手は、あまりいなくない?
柴戸
マウリ(シオ)くらいしか思い浮かばないですね。
--では、2人そろって先発で試合に出て、一緒に子どもを連れて入場するのを楽しみにしています。次回は外出自粛の生活から2人の高校時代のことまで聞きます。
》後編に続く
(取材/文・杉園昌之)