残りは13日。7月22日、浦和駒場スタジアムで開催される「三菱重工カップ 平川忠亮引退試合」に向けて、最終調整に入っている。
準備期間は、1年半にも及んだ。当初は昨夏に開催予定だったものの、コロナ禍の影響で1年延期。それでも、平川忠亮コーチはいつ開催されてもいいように体をずっと動かしてきた。
思い返せば、始動したのは2020年の沖縄キャンプ。浜野征哉GKコーチと同部屋になったことがいいきっかけとなった。
「ハマ(浜野)さんは自主的に毎日、走っているのですが、それに付き合わせてもらっているんです。沖縄では早朝の4時45分に起床し、まだ薄暗い5時からランニングをしていました」
浦和の大原練習場に戻ってからも浜野コーチの隣で走り続けた。
チーム練習の前に5km、6kmのランニングから始まり、仕事に支障をきたさない範囲内で、午後からも一緒に汗をかいたりもした。
昼下がりの定番コースは8km。時間があるときは、10kmのロングコースになる。
昨年のシーズン最終日には朝5時に集合し、大原から埼玉スタジアムまでを往復した。走行距離はざっと16km。地道にコツコツと続けてきた"浜トレ"の効果はてきめん。一時期、77kgまで増えた体重はみるみるうちに減少。あまりの変化に、本人も思わず苦笑する。
「現役時代よりも落とせているくらいです」
現在は71kg前後。体は十分に絞れた。
目下、取り組んでいるのは筋力強化。本格的に筋力トレーニングを取り組んでおり、今年4月からの3カ月で体脂肪率はぐっと下がった。
別表通り、16.2%から13.8%までダウン。意識していた筋肉量、アスリート指数はアップしており、数値には手応えを感じている。
「ジムで下半身を中心に鍛えています。お尻周り、太ももの裏など、大きな筋肉に刺激を入れていますね。選手時代に近いトレーニングを取り入れているので」
ただ、どれだけマシンで鍛えても、グラウンドで必死に戦って身につく筋力はつかないと言う。
「そこは限界を感じますね。ぎりぎりの状態でサッカーをやらないとダメ。機械だけのトレーニングでは、なかなかたどり着けません。90分間、プレーするスタミナは80%くらいはついています。あとは強度。100%のスプリントができるのかどうか。試したいのですが、リスクがあります。1本、2本走って、(筋肉が)切れてしまったら、元も子もないので」
平川コーチの目は真剣そのものである。浦和駒場スタジアムに集まってくれるファン・サポーターへの思いは強い。
「現役時代、献身的に90分走るのが信条だったので、やっぱりそこは見せたいですね。走行距離10kmは超えたらいいなと思っています。それくらいのトレーニングはしてきました」
7月1日には参加予定メンバーも発表。同期の坪井慶介をはじめ、山岸範宏、田中達也、鈴木啓太らも名を連ねた。胸躍る旧知のホットラインにも期待が集まる。
「(清水商)高校時代も、レッズのときも、(小野)伸二からのパスは、常に意識していました。どこを向いていても、もしかしたら出てくるかもしれないと思って、準備しないといけません。
昔は少し反応が遅れても間に合いましたが、いまはいい予測でいいスタートを切らないと間に合わないと思います。ほかに僕を走らせてくれるパサーがそろっていますから、神経を研ぎすましておきます。タイミングよくスプリントしてクロスをあげたいですね」
当然、この日は主役の座も狙う。
「誰かにPKを取ってもらい、そのPKを決めたいと思います」
茶目っ気たっぷりに笑う42歳の顔は、まだまだ若々しい。浦和駒場のピッチでも元気あふれる姿を見せるつもりだ。
(取材/文・杉園昌之)
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