「普段、(試合に)出ていない選手や若手選手も(試合に)出ていたので、うまくいかなくても、しっかりとサポートしたいと思っていました」
4月21日に行われたYBCルヴァンカップ・グループステージ第3節の横浜FC戦。アウェイにもかかわらず、1000人を超えるサポーターが駆けつけてくれたスタジアムで、杉本健勇は、その思いをゴールという結果で示した。
「前半20分くらいまでは思うようにいかず、ずっとボールを持たれている状態だった。そこから失点してしまい流れはよくなかった」
杉本がそう語るように、14分にはマギーニョからのクロスをクレーベに決められ失点。公式戦デビューとなった17歳の工藤孝太や18歳のルーキー福島竜弥には堅さが見られたものの、杉本や興梠慎三、宇賀神友弥がチームを牽引することで、徐々に横浜FCから流れを引き戻した。
杉本の思いが結実したのは、前半終了間際の45分。右サイドバックの宇賀神からダイナミックかつ正確なサイドチェンジが通る。左サイドを駆け上がり、そのパスをトラップしたのは、左サイドバックの福島だった。相対するマギーニョに押し込まれていた福島だったが、まさにやり返す格好となった。
「しっかりとクロスを蹴りやすいところにトラップしてボールを置くことができました」(福島)
左足から放たれたクロスをヘディングで合わせたのが杉本だった。福島は言う。
「健勇くんに合わせるというよりは、慎三さんもいたので、しっかりあそこに放り込もうという考えで上げました。あとは健勇くんが決めてくれたのでよかったです」
57分に杉本が奪った決勝弾も福島が突破口を開いた。工藤の縦パスを汰木康也が受けて、走る福島に展開すると、福島は左サイドを独走する。追随する相手を振り切ると、今度は左足でグラウンダーのクロスを入れた。逆サイドまで流れたボールを、走り込んだ田中達也が折り返すと、再び杉本が頭でゴールに流し込んだ。今度は杉本が言う。
「練習では竜弥のクロスが前で引っかかることが多かったのですが、今日はすごくいいボールを上げてくれた。彼にとっても初アシストになるので決められてよかったです。2点目も達也からすごくいいボールが来ましたし、ワンタッチで上げてくるとは僕も思っていなかったですけど、うまく合わせられてよかったなと思っています」
福島が2得点に絡む活躍を見せたように、公式戦デビューとなった工藤も2点目の起点を作るなど、時間が経つにつれてピッチで躍動した。ゴールマウスを守った鈴木彩艶にしても、15分に手塚康平のミドルを弾けば、18分には伊藤翔のシュートを防ぎ、20分にもクレーベのヘディングを止めるなど、セーブで、キックでチームに貢献した。
「今日のルヴァンカップの試合に負けてしまえば、あとがなくなると思っていましたし、勝つことができて、自分も点が取れてよかったなと思います。(ファン・サポーターの後押しが)すごく心強かったです」(杉本)
若手が躍動すれば、経験のある選手たちが支える。リーグ戦の出場機会に恵まれていない選手たちのプレーからも、戦術が浸透していることを感じられた以上に、チームとしての総合力が見られた一戦だった。
若手が躍動する背景には、いつだって経験者たちの支えがある。それがチームを向上させ、循環させ、そして強固にしていく。
(取材/文・原田大輔)