赤いハートのロゴをあしらった2トントラックで浦和の街を走っていると、「あ、ハートフルだ」と子供たちから手を振られるようになった。
浦和レッズが、2003年にハートフル活動を開始してから17年。すっかり地域に浸透している。活動方針は昔もいまも変わらない。テーマはこころを育むこと。
コロナ禍の中でも、感染予防対策をしながらブレずに活動を続けている。ハートフルクラブのコーチを務めるOBの室井市衛はしみじみと話す。
「いままでやってきたことを継続しています。あらためて、継続する大切さを知りました。制限があるなかでも活動はできます。楽しみに待ってくれている子供たちがいますから」
活動は小学生を対象とした定期的なサッカースクール、サッカークリニック、小学校の体育授業のサポートなど、多岐にわたる。レッズOBの鈴木慎吾、盛田剛平、池田学らもコーチになっているが、技術の向上と体を鍛えることだけを目的にしていない。むしろ大事にしているのは、仲間を信頼し思いやるこころ、お互いに楽しむこころ、何事も一生懸命にやるこころ。指導する上でも、最も気を使う点だ。
「仲間のため、チームのために、頑張ったところをよくみて、声がけをしています。簡単そうですが、コーチの質が問われます。選手育成とはまた違います。学校の先生に近い感じですね。僕も最初はできるのかどうか戸惑いましたが、いまはやりがいを感じています」
スクールには街クラブで挫折した子供もいれば、親に半ば強引に手を引っ張られて来るタイプまでいる。どのような子供に対しても、指導方針は一貫している。
「参加した子供に、サッカーって面白いな、楽しいなって、思ってもらえるようにしたいです。ただ楽しいだけではなく、挨拶することや約束は守ることなど、言うべきことは言います」
普及活動の一環ではない。レッズが来る前からサッカーが深く根付いている土地である。ハートフルは、あくまでサッカーを通じて、思いやりを伝えていくことを徹底している。コロナ禍の影響で人と人の距離ができ、疑心暗鬼になりそうなこともある。
「こういう状況だからこそのハートフル」
実際に小学校、幼稚園、保育園に足を運ぶことで子供たちから喜んでもらったりもした。これこそが浦和における、レッズの存在意義だろう。これからも心の土台が揺らぐことはない。
(取材/文・杉園昌之)
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