真っ赤に染まった聖地の光景は圧巻だった。
11月25日、ホームにアルヒラルを迎えたAFCチャンピオンズリーグ決勝の第2戦。敵地サウジアラビアでの第1戦を1-1で乗り切ったこともあり、埼玉スタジアムは10年ぶり2度目となるアジア制覇への期待感で包まれていた。
選手入場のアナウスが流れると、会場に詰めかけた5万7727人でつくった特大のビジュアルサポートが浮かび上がってくる。
興梠慎三はスタジアムをすっと見上げただけで、気持ちがこみ上げてきたという。
「サポーターがすごい雰囲気をつくってくれていた。俺たちはその思いを裏切ってばかりだったから、今回こそは絶対にタイトルを取らないといけないって」
特別の舞台を用意され、ほかのイレブンたちも気合が入らないわけがない。試合前の表情は否応でも引き締まる。
FW:⑧ラファエル シルバ、㉚興梠慎三
MF:⑨武藤雄樹、⑩柏木陽介、⑮長澤和輝、⑯青木拓矢
DF:③宇賀神友弥、⑤槙野智章、⑥遠藤航、㉒阿部勇樹
GK:①西川周作
熱のこもった歌声に乗せられるように選手たちは、開始直後からエンジン全開。前線からプレスをかけ、次から次にボールを奪取していく。敵陣に押し込み、完全にペースを掌握。アウェーゴールを先取しており、スコアレスドローでも優勝は転がり込んできたが、前半からアグレッシブな姿勢を貫いた。
後半こそ守勢に回ったが、焦らず守備ブロックをつくって対応。そして、0-0で迎えた88分、武藤のパスを受けたラファル シルバが裏へ抜け出し、勝負を決定付けるゴールをマークする。
2017年シーズンに加入したばかりのブラジル人FWは大会通算9得点を挙げ、ACL制覇に大きく貢献した。
前線に好パスを何度も供給し、大会MVPに選ばれた柏木陽介は自らの手柄を誇るよりも、照れ笑いを浮かべて仲間を称賛していた。
「MVPは俺じゃないでしょ、ラファだよ」
ホームでは7戦全勝。ACLでは圧倒的な強さを誇った。
ただ、この1年を振り返れば、順風満帆なシーズンだったわけではない。
7月に就任6年目を迎えていたミハイロ ペトロヴィッチ監督が成績不振で解任となり、堀孝史コーチが監督に昇格。リーグ戦では思うような結果を残せず、最終的には7位に終わった。
12月にはFIFAクラブワールドカップUAEに出場し、攻撃に軸足を置いて世界に真っ向から勝負に挑んだが、高い壁に阻まれて5位に終わった。
17年シーズン、最大のハイライトはACL決勝かもしれないが、大きな衝撃を与えた真夏のゴールも記憶にとどめている人もいるはずだ。
7月1日、ホームで開催されたサンフレッチェ広島戦。湿った空気がべたっとまとわりつき、終了間際には両軍の足も止まりかけていた。
3-3で迎えたアディショナルタイム、ハーフウェーライン付近でボールを持った背番号24は、左サイドからドリブルを開始する。関根貴大の目はゴールに向けられていた。スピードをぐんぐんと上げ、次から次に相手をかわしていく。一気に敵陣のペナルティーエリア内に侵入すると、鮮やかにゴールネットまで揺らしてみせた。
5人抜きの離れ業から生まれた得点は、Jリーグが選ぶ年間優秀ゴール賞に選ばれ、いまも歴史の1ページに刻み込まれている。8月にドイツのインゴルシュタットへ移籍したため、ACL優勝メンバーの写真に顔こそないものの、関根の名前は2017年を語る上で触れないわけにはいかないだろう。
J1リーグ:7位
YBCルヴァンカップ:ベスト8
天皇杯:4回戦敗退
AFCチャンピオンズリーグ:優勝
クラブワールドカップ:5位
ベストイレブン:興梠慎三
(取材/文・杉園昌之)