現在、浦和レッズのトップチームに所属するGKは西川周作、岩館 直、福島春樹、石井 僚の4選手。そのGKたちを指導し、まとめているのが浜野征哉GKコーチだ。そんな浜野GKコーチにクラブで仕事することの充実と指導するGKたちへの思いを聞いた。
身が引き締まる思い
【浜野征哉GKコーチ】
今シーズンから浦和レッズでGKコーチを務めさせてもらっています。
これほどのビッグクラブで仕事ができることに日々、充実していますが、ファン、サポーターのみなさんの大きな期待も感じ、身が引き締まる思いです。
この10年、僕は日本サッカー協会で年代別の代表やA代表のGKコーチを務めてきました。代表とクラブの最大の違いはやはり、選手と毎日トレーニングを積めるという点。西川周作、福島春樹、岩館直、石井僚の4人と毎日向き合い、彼らの成長を日々感じられるのが、クラブワークの醍醐味です。
その一方で、毎週末、ときには週半ばにも公式戦があるので、毎日緊張感と責任を感じながら、取り組んでいます。
昨年夏にはFIFA ワールドカップ ロシアにGKコーチとして参加しました。子どものころに夢見た大会に、選手としてではありませんでしたが、指導者として参加できたのは、言葉で言い表せない経験でした。
と同時に、サッカー選手なら誰もが夢見る場に立った日本代表選手たちの努力や生き様を目の当たりにし、夢や目標を持つことの尊さを改めて感じました。
今こうしてクラブワークに移り、1人でも多くの選手に日本代表として輝いてほしいし、そうした選手を育てていくことが自分の責任であり、使命だと思っています。あの舞台に参加させてもらったからこそ、自己満足で終わらせるのではなく、日本サッカー界に、浦和レッズに還元していかなければならないと肝に銘じています。
GKはサッカーにおいて、特別なポジションです。クラブには3〜4人のGKがいますが、試合に出られるのは1人だけ。しかも、簡単に入れ替わるポジションではありません。
そこで選手たちに話しているのは、常に平常心でいることの重要性。好パフォーマンスをしたからといって有頂天になってはいけないし、ミスをしたからといって下を向く必要もない。どんな試合でも同じ態度で臨み、どんな局面でも同じように振る舞い、同じ質、同じ精度を出せるようにする。その質や精度をトレーニングで少しずつ向上させていく。螺旋階段のようにぐるぐる回りながら少しずつ上に登っていくイメージ、といえば分かりやすいでしょうか。
すごく難しいことですが、これがGKマインドであり、GKに求められることなんです。それには、「立ち返るべき自分」というものを持っておくことが大事。立ち居振る舞い、心構え、身構えはどうなのか、常に自分に問いかける必要があるのです。
だから、選手たちには「もうひとりの自分を置きなさい」と伝えています。いつも冷静にもうひとりの自分とコミュニケーションを取る。「今の振る舞いは違ったんじゃないか」「もっとこういうことができたんじゃないか」。つまり、自分を客観視することが大事なんです。
ポジションがひとつしかないし、最も失点の責任を追うポジションなので、ときには理不尽なこともあります。でも、それはGKの宿命だし、この理不尽さを噛み締めてこそ成長がある。その厳しさを教えていきたいし、だからこそ、楽しいんだということも教えたい。
浦和で仕事をさせてもらうことになり、嬉しい再会もありました。日本代表でともに戦った周作との再会です。今、毎試合ごとにプレーをまとめた映像をふたりで見て、改善点を話し合っています。こうして少しずつ、少しずつ積み上げていくしかない。
もちろん、周作だけではありません。春樹も直も僚も成長しています。GKはひとりしか出られないポジションですが、4人の成長をしっかり見ていただきたいし、応援していただけたらうれしいです。
(取材/構成・飯尾篤史)
外部リンク