レジェンドの勇姿、旧友と共に奏でる阿吽のコンビネーション、メッセージのこもったスピーチ……。
多くの感動を覚えると同時に、シーズン後半戦への期待感も覚えていた。
7月22日に聖地・浦和駒場で行われた三菱重工カップ 平川忠亮引退試合は、主役である平川忠亮のプレーと、彼がいかにファン・サポーターから愛されているかを強く、強く実感するものだった。
最後まで戦う姿勢を体現するレジェンドのプレーと共に、目を引いたのが対戦相手としてピッチに立った浦和レッズの背番号33だった。
江坂任である。
6月26日に加入が発表された江坂にとって、レッズのファン・サポーターの前で初めてプレーする機会だった。
平川の引退試合ということもあり、最初は多くのファン・サポーターと同じく、主役のプレーと、レジェンドたちの共演に注目していたが、気がつけば背番号33のプレーを追っていた。
加入からまだ1カ月も経っていないというのに、周囲とのコンビネーションが抜群に良かったからだ。
34分には武田英寿からのパスをワンツーすると、武田のゴールをアシスト。主役である平川が2得点をしたあとの45分には、さらに試合を面白くしようと言わんばかりに、自らゴールを決めてみせた。
ヘディングで決めたその得点は、左サイドの汰木康也のクロスに走り込み、的確に合わせたものだった。
武田のゴールシーンではシンプルに周りを活かすプレーを見せれば、ゴールという結果でストライカーとしての存在感も示したのである。
もちろん、試合自体は引退試合ということもあり、エキシビションの要素を多分に含んでいたが、相手の中盤には現役である小野伸二、柏木陽介がいた。
相手のディフェンスラインにも槙野智章や宇賀神友弥がいて、ゴールを守っていたのは西川周作である。
ファン・サポーターを楽しませるプレーも多かったが、ときには槙野がスライディングで食い止めたように、特に前半は随所で激しい攻防もあった。
そのなかにあって江坂は、前線でボールをキープするとタメを作り、サイドに展開。ゴール前では小気味いいパスワークを見せ、マークをかいくぐる気の利いたプレーを見せていた。
その光景を見て、小泉佳穂やキャスパー ユンカーとのパス交換から中央をこじ開ける場面は、容易に想像できた。
また、ゴールを決めた場面も、公式戦を連想すれば、同じく新加入となる酒井宏樹からのクロスに合わせて飛び込む姿が思い浮かんだ。
ふと、江坂のキャリアを振り返れば、プロのキャリアをスタートさせたザスパクサツ群馬でも13得点、大宮アルディージャでも8得点、柏レイソルでも9得点と、加入した初年度からいずれのチームでも結果を残している。
周りを活かすこともできれば、自分自身の特長を引き出す動きもできる。
彼のキャリアを示しているゴールという数字とともに、浦和レッズの一員としてファン・サポーターの前で初めてプレーする姿を見て、シーズン後半戦の活躍と爆発に期待は増した。
(取材/文・原田大輔)