「実践に勝る経験はなし」とはよく言ったものだが、試合を重ねるたびに頼もしさが増している。
ダブルボランチの一角を担う柴戸海のことだ。
1−2で敗れたJ1第11節の神戸戦。33分にトーマス・デンが決めた目の覚めるようなロングシュートもさることながら、記憶に焼き付いたのは柴戸の攻守にわたるプレーの数々だった。
47分には下りてきた武藤雄樹の縦パスを受けると、難しい体勢から前を向き、レオナルドへとスルーパスを通した。そうかと思えば、49分には自陣ペナルティーエリア前で、古橋亨梧が仕掛けたところにうまく身体を入れて侵入を防いだ。目を見張ったのは、その際、1度目はボールを奪えず古橋に交わされたが、素早く立ち上がるとすぐに2度追いしたところだった。
「守備だけでこの先も通用するとは思っていない。そこは大前提だと思っているので、そのなかでどれだけチームに影響を与えられるか。ゴールに関わっていくところでは、流れを考えてゴールから逆算したプレーを常に意識しています」
思えば、出場機会を増やしたプロ2年目の昨シーズンは、自分の居場所を探るかのようにプレーしていた。ピッチで存在感を発揮することもあったが、その多くは特徴である守備の部分が圧倒的に多かった。当時、「まだ迷いがあるか」と尋ねれば、素直に「悩んでいますね」と、口にするほどだった。
ところが、今シーズンはその迷いが微塵も感じられない。身振り手振りを加えてチームメイトにパスの出しどころを指示する姿からも、自信は伝わってくる。そして、自陣でボールを奪ったかと思えば、駆け上がっていってゴール前で決定機に絡む。攻守において顔を出せるのは、迷いなくプレーできている証拠だろう。
「ボールを持っているときには良さが出せているのかなとは思いますけど、さらに改善しながらアシストだったり、ゴールだったりで、チームを勝たせられる選手になりたい」
うまい選手ではなく、勝たせられる選手に——。
「ホームでは、まず内容どうこうよりも勝ち点3を取らなければいけない。良さは出せましたけど、決めきるところ、最後のところでの迫力というのは満足していないですし、改善しなければならないところでもある。次の試合(大分戦)に勝って、内容の話ができるように、必ず勝ちたいと思います」
柴戸が自信をつけていけばいくほどに、浦和レッズの攻撃が形作られていくのは確かだ。守備への貢献度は申し分ない。あとは、いかに攻撃に顔を出し、得点に絡めるか。自身が語る“勝たせられる選手”への挑戦は続く。
(取材/文・原田大輔)
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