12月4日に行われた名古屋グランパスとの試合中、浦和レッズからY.S.C.C.横浜に期限付き移籍中の大城蛍がSNSにこんな投稿をした。
《ショルツ勉強になります。》
プロ3年目の若きセンターバックが惚れ惚れするのも無理はない。守備における1対1に強く、カバーリングも的確。それでいてアレクサンダー ショルツは、攻撃面での貢献も絶大なのだ。
リーグ最終戦となる名古屋戦でも、チームの攻撃を助けるプレーが随所に見られた。
ビルドアップの際は左サイドに開いて、攻撃の起点となる。前方にスペースがあればボールをぐいぐい持ち運び、相手の中盤の選手を食いつかせて守備組織を乱し、フリーになった味方選手にボールを届ける。
立ち上がり早々、6分50秒、7分50秒、10分50秒、17分50秒と、浦和レッズが敵陣に侵入したシーンは、いずれもショルツが持ち運んだものだった。
おそらく大城が唸ったのは、こうしたプレーの数々だろう。
自陣でプレッシャーを掛けられたときでも、落ち着いてボールを味方に預けてポジションを取り直す。
「自分の特長は、ゲームの温度をしっかり感じ取りながら、ゲームをコントロールするところ。ボールを保持するタイミング、急ぐタイミング、ゆっくりと流れをつかむタイミング、それぞれのタイミングで相応しいプレーをして、ゲームにメリハリをつけていきたい」
今夏、チームに合流したばかりの頃、ショルツはこんなふうに語っていた。
DFの発した言葉とは思えない。
最終ラインのプレーメーカー――。
ショルツにはそんな印象がある。
リカルド ロドリゲス監督は「相手にダメージを与えるような攻撃を仕掛けたい」とよく話しているが、その第一歩となる役割をこなしているのが、ショルツなのだ。
スコアレスドローに終わった名古屋戦後、ショルツは久しぶりにオンライン会見に出席した。そこで披露したのは高い分析力と言語化能力だった。
「相手がマンツーマン気味にマークしてきて、中盤の選手がスライドしたときにスペースが生まれ、そこを使うことができました。ただ、飲水タイムで相手が修正してきて、スペースを消されてしまった。時間が経つにつれ、また運べるようになったが、今日はラストサードでのシュートやパスが足りなかった。
取り消されたゴールもあったし、それ以外にも明らかな決定機が2つあった。ですので、パフォーマンスは良かったと思います。もちろん結果には満足していません」
実際、序盤は相手2トップの脇から何度も相手陣内へボールを運んでいたが、最初の給水タイムを挟んで柿谷曜一朗がショルツのドリブルを警戒するようになった。
すると、シンプルに中央や逆サイドに展開して右サイドからの攻撃を増やし、自身はより高い位置まで上がってこぼれ球の回収を狙うようになったのだ。
サッカーIQの高さを感じさせるプレー選択だった。
さらにショルツはレッズに加入してからの半年間を振り返って、こう言った。
「今シーズンはまずまずと言えるパフォーマンスを見せられたと思いますが、より高いものを見せたいと思います」
これでまずまずとは……。さすがは昨シーズンのデンマークリーグ年間MVP。DFというポジションでMVPを受賞したことの凄さを、改めて感じずにはいられない。
デンマークで生まれ育ち、デンマークとベルギーの2リーグでしかプレーしたことのないショルツにとって、日本への移籍は勇気ある決断だったに違いない。
今はただ、ショレが新たな冒険の場として、アジアを、Jリーグを、レッズを選んでくれたことに感謝するばかりだ。
(取材・文/飯尾篤史)
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