「実は、あの場面の前に一度、似たような状況があったんです。そのときは僕、普通にクリアを選択したんですけど、相手に拾われて、また攻められてしまったんですよね」
「そのとき、もったいなかったなって思ったんです。前のゾーンに持ち運ぶことで、状況をひっくり返すべきだったなと。だから、(67分のときは)目の前にスペースもあったのでドリブルで運ぼうとしたんです。少しでも状況を変えたかったので。もちろん、あれは自分の判断ミスです。奪われないように、スペースがあるほうにボールを置くべきでした。そうしたミスが失点につながってしまうというJ1のレベルの高さも、改めて知りました」
「感じたのは予測のところですね」
「相手はボールを奪えそうだなと思った時点で、周りも攻撃の準備をしていたし、ボールを奪われそうだなとなった時点で、みんなが守備の準備をしていた。身体は、今現在のプレーをしているんですけど、頭のなかは、常に1つ先、2つ先のことを考えている。それをピッチにいる11人が主体性を持って判断できている。だから、スピード感もあるし2つ3つ先のプレーまで想像しながらプレーできているんだなと。
「理解しているところは増えてきたと思うのですが、それをプレーで反映するときに、まだ考えてしまっている部分はあります。立ち位置にしても、今までは自分がどうやったらうまくボールを受けられるか、どうやったら自分が生きるかばかりを考えていたんですけど、今は自分がランニングすることによって、そこにスペースが生まれること、逆に止まることによって相手が食いつくこと。ボールを持っていないときのプレーが、チームの助けになるということを学べていると思います」
「自分のドリブルはチャレンジに近いというか。自分でも、そうありたいと思っているんです。大学時代も一時期、縦に行くのを怖がって中へのパスばかりを選択していたことがあったんです。でも、それではダメだなと思って、縦に仕掛けるようになったら、初アシストを記録することができた。
「ドリブラーだからといって、ただうまいというのではなく、相手にとって怖いドリブルができる選手になりたいんです」
「これも学生時代のことですが、ドリブルがうまいと思われることは多かったんですけど、試合が終わったときに客観視したら、点にもアシストにも絡んでいなかったんですよね。それでは価値がないとまでは言わないですけど、うまいだけの選手になっている自分に違和感を覚えたんです。そこから怖い選手に、結果を残せる選手になりたいと思うようになりました」
「(ルヴァンカップの)柏レイソル戦に自分が出られるかどうかは分からないですけど、練習からアピールして出場機会をつかめればと思っています。今季初の流れの中からのゴールを、自分が決めて、埼玉スタジアムで喜んでいる姿をイメージしているんです。それを実現できるようにやっていければと思います」
「ソフトバンクの孫正義さんが、目標設定を高くすることで、人はそこに近づこうとして努力するということを仰っていたんです。その言葉を聞いて、大学のときに10ゴール10アシストを目標に設定したら、9ゴール8アシストという成績を残すことができたんです」
(取材/文・原田大輔)