WEリーグの開幕に先駆け、三菱重工浦和レッズレディースは4月24日、駒場にてマイナビ仙台レディースとプレシーズンマッチを戦う。日本初の女子プロサッカーリーグの発足により、チームを取り巻く状況も変化すれば、選手たちの環境も大きく変化した。“プロサッカー選手”として初めて新シーズンを迎える遠藤優と塩越柚歩の“ゆうゆずコンビ”に、プロサッカー選手としての変化について聞いた。ジュニアユース時代から知るふたりならではの軽快なトークをどうぞ!
劇的に変わった生活リズム
——WEリーグが発足し、日本女子サッカー界にとっては新しい船出となります。ふたりにとっては、プロサッカー選手になって初めて迎えるシーズンになるわけですが、生活や環境は変わりましたか?
遠藤 結構……いや、かなり変わりました。
塩越 うん。かなり変わったよね。
——チームのことでいえば、変化としては練習時間が夕方から午前中に変わりました。
遠藤 練習時間というよりも、大きな変化としては、まずは今までオフィスでしていた仕事がなくなったことが一番の変化ですね。それによって自分のことに使える時間が大幅に増えました。
塩越 やっぱり、一番はそこだよね。練習の開始時間は朝に変わりましたけど、練習時間が長くなるわけではないですからね。練習以外のすべてが、自分の時間になる。それくらい、オフィス仕事をしなくなったことはサッカーに向き合う意味では大きいですね。
——ちなみに今までを振り返ると、どのような生活を送っていたんですか?
塩越 自分は週4日、朝8時半から15時まで働いていたんです。仕事が終わって、夕方から練習して、夜遅くに家に帰って、また翌朝から仕事に行く。
遠藤 だいたい、みんな、そんなサイクルで働いていたよね。
塩越 うん。試合があるので、基本的に土日は休みにしてもらうなど、職場に配慮してもらっていた選手がほとんどでした。
遠藤 私も柚歩と一緒のサイクルでした。
——そう考えると、劇的なくらいサッカーに費やせる時間が増えますね。
遠藤 だから、最初のころは、こう言ったら語弊があるかもしれませんが、「いいのかな?」って思っちゃいました。
塩越 わかる! 時間がたくさんあるけど、何をしたらいいのかなって(笑)
遠藤 それこそ午後は全部、自分が使える時間になりましたから。
ちょっとまだ不思議な感覚
——どのように過ごしているんですか?
塩越 練習が午前中になったのは4月からで。私はそのタイミングで代表合宿に参加したので、まだ午前練習を経験していないんです。それまでは今までどおり、夕方に練習していたんですけど、午前中は少しゆっくりして、時間ができたぶん、身体をケアしていました。そこに時間を費やせる余裕ができたことも大きいですね。あとは、いつもより早く練習場に行って、軽くトレーニングをすることもありました。これから午前練習が当たり前になれば、きっと時間の使い方も、さらに変わっていくように思います。
遠藤 私はすでに午前練習を経験していますけど、特に大きいのは、自主練をする時間ができたことです。以前は、練習が夕方からだったので、終わるのが7時半。そのあと自主練をすると、家に着くのが22時くらいになってしまうんです。そこから夕飯を食べるとなると、寝る時間も遅くなってしまう。翌日の仕事を考えると、どうしても自主練を削らなければいけなかった。朝から練習できるとなれば、練習後も時間があるので、自分のトレーニングに時間を費やすことができる。柚歩も言っていたように、身体のケアに時間を使えるというのも大きいですよね。
塩越 全部が、自分が自由に使える時間だもんね。
遠藤 どうしても次の日が勤務だと、寝なきゃ、寝なきゃって思っちゃうよね。
塩越 うん、うん。でも、今まではそれが当たり前だったんです。だから、まだ今の環境のほうが、不思議だったりします。
遠藤 それもわかる! ちょっとまだ、不思議な感覚だよね。
塩越 だから、これから新たな自分のサイクルを作っていければいいなと思っています。
ふたりの爪にも注目⁉︎
——自分に費やせる時間が増えたことで、今後、取り組んでいきたいことはありますか?
塩越 優が言っていたように、今後は自主練も増やせたらと思っています。プロサッカー選手になっただけに、さらに意識を高く持って、ケアを含めて自分の身体のことをより理解し、自分に合ったトレーニングができたらなと。
遠藤 あとはもっと、自分の趣味や知見を広げるためにも時間を使えたらいいですよね。今まではどうしても勤務があったので、なかなか時間が作れなかったんです。よりサッカーに集中するためにも、心のリフレッシュをする時間も作れたらいいなと。
塩越 確かに、サッカーに使える時間が増えたぶん、リフレッシュするメリハリも大事になってくるよね。
——ちなみに今までは、どうやってリフレッシュしていたのですか?
塩越 週1回あるかないかのオフの日に、予定をたくさん詰め込んでいました(笑)
遠藤 私も! めっちゃ、詰め込んじゃうよね(笑)。誰かと遊んだり……。
塩越 ……美容室に行ったり(笑)
遠藤 そこにしか、予定を入れられなかったもんね(苦笑)
塩越 でも、そういう時間があることで気分も上がるし、サッカーにも集中できるよね?
遠藤 上がる、上がる。お互い、ここは似ているんですけど、ネイルが趣味なんです。でも、ネイルって結構、時間が掛かっちゃうんですよね。集中しないとできないところもあるし、時間がないと、なかなかできないんです。
塩越 私は自分にしかやらないんですけど、優はチームメートにもやってあげているくらいなんですよ。
遠藤 「やってー!」って言ってくれるからね(笑)。だいたい2時間くらい掛かるんです。でも、楽しいし、それが気分転換にもなるので。
——では、これからは、ふたりのプレーはもちろん、ネイルにも注目しないとですね(笑)
遠藤・塩越 (笑)
塩越 今までも、試合の前にネイルを変えたりしていたんですよ。それだけで、気持ちも上がりますからね。
遠藤 注目してもらえたらうれしいですね。ふたりの爪に!(笑)
「するする」と「キュッキュ」
——せっかくジュニアユース時代から知るふたりがそろっているので、それぞれお互いのプレーについても紹介してください。
塩越 優はとにかく足が速いですね。チームでも上位3人に入るくらい。俊敏性があって、「そこ抜けるの!」っていうくらい、間を抜けていく。独特のリズムがあって、(相手に)引っかかりそうな場面でも抜けちゃうんです。そのリズムは自分にはないものですし、足の速さはもちろん、うらやましいですね。
遠藤 私と柚歩は、ドリブラーでまとめられがちですけど、タイプは全く真逆なんです。柚歩はすごく冷静で落ち着いているんですけど、私はどちらかというと慌てています(笑)。
塩越 (笑)
遠藤 それくらい真逆なんです。私はどちらかというと緩急で相手を抜いていくタイプなんですけど、柚歩はどっちかというとサーっと抜けていくタイプだよね?
塩越 うん(笑)。自分はどちらかというと、するっと相手を抜くタイプなんですけど、優はキュッキュッって感じです。
遠藤 そう、そう(笑)
——塩越選手のドリブルは「するするドリブル」なんて言われていますが、遠藤選手のドリブルにもネーミングを付けるとすると……。
塩越 緩急でキュキュッと抜いていくので、私が「するするドリブル」なら、優は「キュッキュドリブル」でお願いします(笑)
遠藤 (笑)。でも、ホントに、そんな感じなんです。
ハマっているのは……モンハン!
——ふたりはジュニアユース時代からの同期ですよね。私だけが知っている相手の一面を教えてください。
塩越 ……私だけが知っているということではないんですけど、優はすごくマイペースです(笑)
遠藤 それはみんなに言われます(笑)
塩越 いい意味で自分を持っているんです。私はどちらかというとみんなに合わせがちなんですけど、優はいい意味で、ひとりでも行動できる。そして、あまり急がない!
遠藤 そうなんだよね(笑)。柚歩は誰にでも波長が合わせられるんです。私は柚歩も言うように、マイペースなところがあるので(笑)。柚歩はなんだろう……あっ、柚歩は熱しやすくて冷めやすいところがあります。
塩越 あるかも(笑)
遠藤 ゲームとかも一瞬はまって、すぐに飽きちゃうんです(笑)
塩越 そこも逆だ。優は熱したら、ずっと熱しているよね(笑)
——ちなみに、遠藤選手がハマっているのは何ですか?
塩越 モンハン(モンスターハンター)でしょ(笑)
遠藤 それはずっと、やってる(笑)。『2ndG』からやっていますから(笑)
塩越 私はちょっと前まで、スマホのゲームアプリにはまっていたんですけど、続かないんです。『Switch』を買おうかなと思ったこともあったんですけど、絶対にやらなくなるのが分かっているので買わないんです(笑)
——急に話題を変えますが(笑)、いよいよ24日からプレシーズンマッチがはじまります。
塩越 話題変わりましたね(笑)。開幕はまだ先ですけど、チームのコンディションを合わせることと、自分自身も試合に出られる貴重な機会になると思うので、自分自身のコンディションも上げられたらと思います。あとは、プレシーズンマッチとはいえ、勝負なので、結果にもこだわりたいと思っています。
遠藤 シーズンが開幕するときに、万全で迎えられるように、プレシーズンマッチを通じてチーム力を上げていければと思っています。個人としてはプレシーズンマッチでコンディションを上げ、リーグ開幕のときにはスタートから出られるくらいの状態に持っていければと思います。
——“ゆうゆずコンビ”の「キュッキュドリブル」、「するするドリブル」に期待しつつ、ネイルにも注目させてもらいます。
(取材/文・原田大輔)