最後に出場したのは20年11月29日の鹿島アントラーズ戦だったから、実に5カ月と2週間ぶりの実戦――。
加入2年目の“トミー”ことトーマスデンが負傷を克服し、ピッチに帰ってきた。
5月5日の柏レイソル戦で今季初めてベンチ入りすると、5月10日のJエリートリーグ・横浜F・マリノス戦に先発し、公式戦復帰を果たしたのだ。
長い間、トミーを悩ませていたのは、足の付け根が痛くなるグロインペイン――サッカー選手にとって職業病と言われる症状だ。
昨年、シーズン終了を待たずしてオーストラリアに帰国して治療に専念したものの、新シーズンが幕を開けても別メニューが続いていた。
「恥骨にものすごい痛みが生じていた。怪我の状態が悪いにもかかわらず、痛み止めを飲みながら無理して3〜4試合にプレーしたら、それが悪いほうに行ってしまった」
今年1〜2月の沖縄トレーニングキャンプでは黙々とランニングをしていたトミー。シーズン開幕後の3月にはトレーニングに部分合流し、元気な姿を見せたこともあった。復帰は間近と言われていたが、思いのほか長引いた。
「いい日もあったり、悪い日もあったり、ものすごく忍耐が必要な時期だった。でも、慌てずにゆっくり、しっかりと治すように意識しながらやってきて、やっとみんなと一緒にトレーニングができるところまでになった」
5月10日のJエリートリーグ・横浜FM戦では浦和レッズユース所属の工藤孝太とセンターバックのコンビを組んだ。自慢のスピードを生かしてカバーリングしたり、スライディングでボールをカットしたり、縦パスを蹴り込むなど、試合勘の衰えは感じなかった。
後半に入ると疲労が生じたのか、膝に手をつく場面もちらほら。56分で途中交代となったが、久しぶりの実戦としては及第点だ。
コンディションとスタミナ面には改善の余地があるものの、近い将来、槙野智章、岩波拓也のコンビに割って入ってくるのは間違いない。
U-24オーストラリア代表のキャプテンであるトミーにとって、東京五輪出場は大きな目標のひとつ。ようやく復活を果たしたことで、オリンピックへの意欲も高まっている。
「残念ながら去年は延期になってしまったが、自分にとってものすごく特別で大きなイベントになると予想している。相手はスペイン、アルゼンチン、エジプトと、かなりタフなグループだけど、一生忘れられないような試合が待っていると思う」
完全復活まであと少し。再発させたら元も子もないから、焦りや無理は禁物ではあるが、埼玉スタジアムのピッチでトミーが再びいきいきとプレーする日が待ち遠しい。
(取材/文・飯尾篤史)