あなたは噂の21歳を目撃したかーー。
8月9日に特別指定選手として登録されたばかりの中央大のMF大久保智明は、同18日の浦和ユースとの練習試合でいきなりハットトリックを達成。同25日までトップチームの練習に参加し、持ち味を随所に発揮した。
右サイドからカットインしていくドリブルは切れ味抜群。170センチと小柄ながら得意の左足ですっと持ち出すと、一気に加速していく。
レフティー独特のリズム感を持っており、槙野智章ら日本代表クラスのディフェンダーたちと対峙しても、堂々たるプレーを見せた。個人技に長けた選手を数多く輩出してきた東京Vユース出身らしく、技術の高さは光る。
「ドリブル、ワンツー、クイックネスの動きなど、持ち味は出せたかなと。そこが僕のストロング(長所)です。手応えも感じています」
ブラジル代表FWネイマールのプレー集をよく見ており、ボールの持ち出し方、スピードに乗ったドリブルの姿勢などを参考にしている。
同じ東京Vユース出身の中島翔哉(ポルト=ポルトガル)からも学ぶべきことは多いようだ。日本代表の試合になると、気がつけば背番号10を目で追っている。
「ドリブルで仕掛けていく姿勢は見習いたいです」
関東大学リーグをつぶさに追うJクラブのスカウトたちの間では、「左利きの中島みたい」と噂になっていたという。
ある日の西が丘(味の素フィールド西が丘)では、キレキレのドリブルを披露。対戦相手は分かっていても止められない。浦和の長山郁夫スカウトは、大学2年生のころからチェックしており、すぐに潜在能力を見抜いた。
「自分から仕掛けていけますし、スピードに乗ったドリブルは簡単にストップされません。独りよがりのドリブラーではなく、人をうまく使えるのも魅力。スルーパスもいいし、クロスも正確。カットインからのシュートだけではなく、アシストもできます」
仮契約を結ぶまでに、それほど時間はかからなかった。最終学年になれば、他クラブからオファーが殺到するのは目に見えていた。浦和がいち早く動いたのは必然。2019年7月に内定が発表された。
まだ大学3年生。浦和に正式加入するのは21年シーズンからだ。それでも、周囲は期待してしまう。本人も目をギラギラさせている。
「同じ年代の選手はプロになり、海外にも行っている。チャンスがあるなら、僕も早く試合に出たいです」
今年7月、大学3年生で法政大サッカー部を退部し、鹿島アントラーズに加入した上田綺世への対抗心を口にする。
「負けたくないです」
特別指定選手として登録されれば、大学に籍を置きながらJリーグの公式戦にも出場できる。
大久保は虎視眈々と狙っている。
9月からルヴァン杯も始まる。チャンスはいつ来るか分からない。立場も年齢も関係ない。『浦和デビュー』のためにアピールを続けていくつもりだ。
(取材/文・杉園昌之)
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