"レッズ2007"の偉業は、日本サッカー界の歴史に刻み込まれている。日本勢初となるAFCチャンピオンズリーグ制覇。初出場で快挙を成し遂げた。
11年ぶりに復帰したドイツ人のホルガー・オジェック監督に率いられた手堅いチームは、アジアで無類の強さを誇った。
長距離移動を強いられたグループステージではオーストラリア、中国、インドネシアと転戦しながら敵地で確実に勝ち点を拾い、ホームではしっかり勝ち切った。決勝トーナメントに入っても戦い方は変わらない。アウェイで粘り強くしのぎ、本拠地では勝負強さを発揮。準々決勝、準決勝で難敵の韓国勢を撃破すると、一気に波に乗った。
決勝で待っていたのは、イランのセパハン。この中東遠征が過酷を極めた。約5時間半の時差に加え、空気の薄い高地にあるスタジアム。そして、選手を苦しめたのは乾燥した気候だった。劣悪なピッチを少し走れば、のどがカラカラに乾いたという。黄色く染まったスタジアムの雰囲気は、まさに絶対アウェイ。それでも、苦しみながら第1戦を1-1で乗り切る。
そして、迎えた第2戦。11月14日の埼玉スタジアムには5万9034人が詰めかけ、地鳴りがするような声援でスタンドが揺れるほどだった。充満する熱気は、すべてピッチに注がれていた。あるとき、阿部勇樹は何年経っても加入1年目に見たあの光景が忘れられないと話していた。
「ピッチに入った瞬間、すごいなと思いました。本当に最高の雰囲気でした」
熱狂的なファン・サポーターに後押しされたイレブンの顔は、いま写真で見ても自信に満ちている。
FW:⑨永井雄一郎、㉑ワシントン
MF:⑩ポンテ、⑬鈴木啓太、⑭平川忠亮、⑰長谷部誠、㉒阿部勇樹
DF:②坪井慶介、④田中マルクス闘莉王、⑳堀之内聖
GK:㉓都築龍太
開始のホイッスルが鳴っても、選手たちは落ち着いていた。無理してリスクを冒さず、一瞬のスキを狙う堅実な戦い方を徹底。慎重に進めていた22分、ポンテのパスから抜け出した永井雄一郎が豪快に右足を振り抜き、ゴールネットを揺らす。右手の人差し指を立て、雄叫びを上げながら走る9番の姿は印象深い。
後半にも永井のシュートをきっかけに阿部が追加点を挙げてダメ押し。2得点に絡んだ決勝のヒーローは大会MVPに輝き、トロフィーを抱えて白い歯を見せた。終わってみれば、2試合合計3-1の完勝。負けなしでアジアの頂点まで駆け上がった。
勢いそのままリーグ2連覇への期待も高まっていた。一時は2位以下を突き離し、優勝はほぼ確実と思われたものの、30節から歯車が狂い出した。3戦連続ドローの末に2連敗。最終節はJ2降格が決まっていた最下位の横浜FCに敗れ、連覇と2冠の夢は砕けた。
祝福ムードから一転、重たい空気が流れていたが、ゆっくり休む間もなくクラブワールドカップが開幕した。すぐに気持ちを切り替えるのは難しいと口にしていた選手たちも、うっぷんを晴らすように奮起。準決勝まで進出し、イタリアのACミランと互角に渡り合った。0-1で惜敗したものの、スタジアムを埋めたファン・サポーターは大興奮。3位決定戦ではチュニジアのエトワール・サヘルと2-2の引き分けに持ち込み、PK戦で勝利を収めた。
いま振り返れば、シーズン終盤はとくにスリル満点のジェットコースターに乗っている気分だった。上がって、下がって、また上がる。客観的に分析すると、評価は分かれるかもしれないが、記憶に深く残る1年だったのは間違いないだろう。
リーグ:2位
ナビスコカップ:ベスト8
天皇杯:4回戦敗退
ベストイレブン:都築龍太、田中マルクス闘莉王、阿部勇樹、鈴木啓太、ポンテ
MVP:ポンテ
(取材/文・杉園昌之)
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