YBCルヴァンカップの仙台戦を終えたあと、柴戸海は今季に懸ける覚悟を口にした。
「今年活躍できなければ、もうないなというくらいの気持ちで挑んでいます」
もうない、というのは、浦和レッズにおける自身の未来のこと。大卒3年目という立ち位置を意識したうえでの発言だった。
明治大学から浦和に加入したばかりの18年シーズンは、リーグ戦9試合に出場して1ゴール。主に試合終盤に投入されるクローザーとしての役割だったが、新人としてはまずまずの成績と言っていい。
プロ2年目の昨季はリーグ戦20試合に出場した。出場機会を一気に伸ばしたが、しかし、柴戸にとっては納得のいくものではなかった。
出番を2倍以上に増やしたものの、先発出場は11試合に留まった。残りの9試合はやはり試合終盤に投入されるクローザー的な役割で、ベンチ外の試合も多かった。
「去年はレギュラーを掴むという目標を立てていたので、悔しい想いを味わいました。その悔しさを糧に今年はやっていきたい。相当な覚悟を持って、やっていきたいと思っています」
その覚悟がひとつの成果として表れたのが、仙台戦だったのだ。今季最初の公式戦でスタメンに指名され、柏木陽介とボランチのコンビを組んだ。柏木のサポートに徹しつつ、中盤でボールを奪ってショートカウンターを狙うチーム前述において大きな役割を果たしたのだ。
「手応えはすごくありました。チームとしてキャンプでやってきたことが出せた。チーム全体で生き物のように連動できたからこそ、コンパクトな陣形から、奪った瞬間の攻撃、奪われた瞬間の守備に繋がったのかなと思います」
ルヴァンカップとはいえ、「本当に勝負の年」と位置づける今季の最初の公式戦で先発したことの意味は、柴戸にとって計り知れないほど大きいはずだ。柴戸自身も「いい流れに乗れたと思う」と振り返っている。
だが、勝負がここからということも分かっている。柏木、青木拓矢、エヴェルトン、阿部勇樹が控えるボランチが激戦区だということは、他でもない柴戸自身がよく理解しているからだ。
「上が抜けたからポジョションを与えられたではなく、自分の手でポジションを掴み取り、先輩たちに危機感を与えられるようになりたい。それくらいじゃないと、チームの中心選手になれない。期待されているもの以上を出したいと思います」
覚悟のシーズンはまだ始まったばかり。
20年を右肩上がりのシーズンにできたなら、かつての鈴木啓太のように浦和レッズの中盤に欠かせない男になるに違いない。
(取材/文・飯尾篤史)
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