「シーズン当初に思い描いた結果とはかけ離れ、残留争いも経験して、難しい、悔しいシーズンだったと思います。ピッチの上で結果を残せなくてもどかしかったし、僕らを信じて一緒に戦ってくれたファン・サポーターのみなさんにも、悔しい想いをさせてしまって」
「ACLはホーム&アウェーの戦いだし、相手もJリーグのチームとはタイプが違う。僕たちもACLの戦い方に慣れている部分があって、うまく勝ち進んでこられた。でも、浦和レッズが日本の中でどの立ち位置にいるのか、どれだけ強いのかが問われるのはリーグ戦。そこでは思い描いた結果から大きく逸れてしまったと思います」
「身近なところで言うと、中国が大金を投じて、世界的に有名なスター選手を獲得して強化してきた。決勝で対戦したサウジアラビアのアルヒラルも海外の有名選手を獲っていましたけど、自国の選手の育成にも力を入れているんですよね。アルヒラルの主力だったサウジアラビア代表選手たちは、27、28、29歳くらい。あれだけ能力のある選手が同世代に集まっているのは、育成の成果だと思います」
「育成に力を入れているうえに、海外のスター選手を獲得できるだけの資金もある。それに加え、スタジアムが満員になるだけのサッカー人気もある。(アルヒラルのホームで行われた)決勝のチケットはわずか3分で完売したらしいです。市場規模も、強化に懸ける想いも違う。そこに対しての危機感を、浦和レッズも、日本サッカー界も感じないといけないと思います。ACL決勝の結果に表れていますけど、力関係が変わってきたことをひしひしと感じましたね」
「浦和レッズの一員として、プレーするためにここにいるわけですけど、仕組みを勉強するのも大事だと思います。どういう仕組みのおかげで、選手がサッカーをできるのか。本当の意味で理解することで責任感も増す。これだけの方が応援してくれているというのは、感情の部分で感じるものですけど、その一方で、目に見えない部分で支えてくれているものもたくさんありますからね」
「勉強することってすごく大事だと思っていて。それこそ海外で文化に触れたり、言葉を勉強したり、人に会うことも勉強になる。それを少しずつでもアウトプットしていかないといけないなと感じています。(チーム内で)上の年齢になって、若い選手たちにどんなことが伝えられるかを考えるようにもなってきた。海外での経験、浦和での経験……。若い彼らがインスパイアされたり、『その言葉があったから頑張れた』というような何かを伝えられたら。それが論文のテーマでもあるんですけどね」
「僕だけじゃなくて、このチームには背中で示せる選手がたくさんいる。例えば、鈴木大輔選手。彼も最初、試合に出られず、紅白戦にも絡めない時期があった。でも、やり続けてポジションを掴んだ。その姿に影響を受けたという若手はいますし、杉本健勇選手も紅白戦から外された時期があったけど、自分が良くなるために周りとしっかりコミュニケーションを取っていた。近年ケガを重ねていた森脇良太選手もそう。復帰してすぐケガをしてしまうのは、選手として一番苦しい。それでも常に周りに声を掛け、チームのために行動していた。チームメイトからも勉強させてもらっています」
「(ボランチからシャドーへと)ひとつ前のポジションになって、求められるものも変わった。やっぱり点に絡む仕事をしなきゃいけないポジションなので結果を残せなかったことには、責任を感じています」
「個人として、もっともっと成長していかないといけないですけど、チームとしても、いろんな意味で変わっていかなければならないと感じます。変革の時期、考え直す時期に来ているんじゃないかと」
「2019年シーズンを制した(横浜F・)マリノスも体制が変わり、サッカーが変わった。そうしたら結果が付いてきた。浦和レッズも今、変わらなきゃいけない時期を迎えていると思います」
「その意味では最初の5試合で、浦和レッズはこう変わったんだ、というのを示さないといけない。『変わる』と口で言うのは簡単ですけど、実際にどう変わったのか、体現しないといけない。大槻さんがやりたいサッカーをいち早く理解し、目に見える結果を残す。悔しい経験を糧にするというのは、そういうことだと思います」
「ファン・サポーターのみなさんに対して、最初にしっかりと示す責任が、僕らにはやっぱりあると思うんです」
(取材/文・飯尾篤史)