右サイドから大きく蹴り出されたロングボールに合わせて宇賀神友弥が走る。落下地点に素早く入ると、ピタッと足下にトラップして、左サイドを駆け上がる。浦和レッズの攻撃を象徴するひとつの形だ。ロングボールを確実に止める技術があるからこそ、宇賀神はスムーズに次の動作へと移行することができる。
その正確なトラップについて本人に秘密を聞いた。
「昔は(興梠)慎三くんから『お前、サイドチェンジのトラップが下手だな』って言われていたんですよね(笑)。当時は、自分でもロングボールがピタっと止まっている感覚はなかったんですけど、ここ数年で感触をつかめてきたところはあるかもしれないですね。
トラップするときの感覚としては、自分の懐ぎりぎりまで、ボールを足下まで潜りこませるというか。そうしたイメージでトラップすると、うまくいく。練習のときから、『ここまでボールを引き込めるんだ』というポイントを見つけて、微調整していったら、ピタッとトラップできるようになりました。
トラップするときは、ボールが無重力状態というか、本当にふわっと足を置いて、ボールが触れるだけといった感覚に近いかもしれない。だから、ボールが地面に設置するギリギリまで我慢して、本当にすれすれのところに足を置いておくような感じです。
ロングボールを受けるときに、準備しているのは、落下地点を予測することですかね。最後までボールを見るのではなく、軌道を読んで、最後は目線を切っているかもしれない。自分の目の前をボールが通過したときの感覚で、ここに落ちるというのが分かる。目線をボールから外せることで、相手が寄せてきていることも分かりますし、素早く次の動作にも移ることができますからね。
イニエスタをはじめ、中盤の選手はボールコントロールがうまいけど、僕が参考にしたのはブラジル代表のマルセロ。槙野(智章)が日本代表でマルセロと対戦したときに『サイドバックなのにボールを取ることができないボランチのような選手だった』と話してくれたんですよね。それもあって、マルセロのプレーを見るようになったら、抜群にサイドチェンジのトラップがうまかった。
イニエスタもマルセロも、ファーストタッチでのボールの置き所が本当にすぐれている。それもあって、マルセロのプレーはめちゃめちゃ参考にしましたね。
ピタッとトラップできたときは、本当に気持ちがいいし、ボールを触った感覚すらないときもある。そうすると、次のプレーに対しても余裕がうまれるんですよね」
話を聞き終えた宇賀神は「これから試合中に意識しちゃうな」と笑ったが、ぜひ、その絶妙なトラップからの突破、一連の流れに注目してほしい。
(取材/文・原田大輔)
外部リンク