役目を終える「KK線」 跡地利用が焦点に
首都高ネットワークの一部にもなっている、銀座の外縁を通る高架道路「KK線」こと東京高速道路。これを廃止し、高架の緑道にするという計画が、動き出しそうです。東京都の小池百合子知事は2020年6月2日(火)の都議会本会議で、KK線の今後について「歩行者系機能の施設」として活用する方向で検討すると表明したほか、地元の中央区は5月に、この計画に関する検討調査業務の委託先を決定しました。
左の高架道路がKK線こと東京高速道路。これを廃止して緑道にする計画がある(画像:kuremo/123RF)。
この計画は2019年10月、中央区の山本泰人区長が小池都知事と会談した際に発表したものです。日本橋の上空をまたぐ首都高の地下化、それにともなうC1都心環状線のルート変更案が国や関係者で話し合われるなか、「銀座に地下の別線を建設して首都高C1と八重洲線をつなぎ、KK線は役目を終える」という案が前提となっています。
なお、国の「首都高都心環状線の交通機能確保に関する検討会」も、この方向性で2020年3月に中間とりまとめを発表しています。
中央区の環境政策課によると、アメリカ・ニューヨークの貨物線跡地を活用した「ハイライン」と呼ばれる高架緑道のイメージを下敷きにしたものだといい、小池都知事も今回、「自動車専用の道路としての役割にかわって、成長と成熟が両立した未来の東京にふさわしい新たな公共空間」として、この緑道化計画を改めて評価しました。
ただ、この計画を「なぜ中央区が?」と思う人もいるかもしれません。KK線の場所は「何区でもない場所」、つまり住所未確定地だからです。
KK線高架下の店の住所に「地先」が付くワケ
KK線の下には「銀座インズ」「銀座ナイン」などの商業施設や、数多くの商店が立ち並んでいます。東京高速道路は、そのテナント料で道路の維持費をまかない、無料の自動車専用道路を提供しているわけですが、銀座インズの住所は「中央区銀座西3丁目1番地先」、銀座ナインは「銀座8丁目10番地先」、東京高速道路の本社所在地も「銀座1丁目3番地先」と、末尾に「地先」がついているのです。
これは、地番のついていない「無番地」であることを意味し、それぞれの施設やテナントが、便宜的に住所を設けています。
本来の住所としての「銀座」は1丁目から8丁目までで、「銀座西」というのは古い住所表記がそのまま使われています。また、「銀座ナイン」の施設名にも表れていますが、これらKK線下の無番地は「銀座9丁目」と通称されることもあり、なかには実際に「銀座9丁目店」を名乗る店舗も。その一方で、銀座インズのなかには所在地を「千代田区有楽町」としているテナントも存在します。
KK線高架下の銀座インズ(2017年3月、中島洋平撮影)。
住所が決まっていない理由は、東京高速道路が川や濠を埋め立てて造られたからです。中央区環境政策課によると、KK線の土地は東京都の所有で、公共性の高い道路事業を行う東京高速道路に貸し付けているのだとか。またこの土地は中央区と千代田区、港区を隔てており、過去には帰属が話し合われたこともあるものの答えは出ず、話し合いも数十年間、行われていないそうです。
KK線の緑道化については、どこが事業の主体になるのかといったことも、現時点では決まっていないといいます。中央区の案は、様々な開発計画が一挙に進むなかで、緑の空間をつくりたいという区の「思い」を形にしたもの、とのこと。東京都は東京都で、首都高を含め、KK線の今後についても検討しているそうです。
中央区環境政策課は、「あの場所が何区なのかという議論は、また別次元の話」としています。
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