反対方向、途中駅ながら「復活」したが…
「8時ちょうどのあずさ2号」が、再び消滅します。松本駅(長野県松本市)から東京駅へ向かう特急「あずさ2号」は、途中の大月駅(山梨県大月市)を午前8時ちょうどに発車していますが、2019年3月16日(土)のダイヤ改正で、それがなくなります。
特急「あずさ」用のE257系電車(2010年4月、恵 知仁撮影)。
「あずさ」は、おもに新宿~松本間を結ぶ中央本線の特急列車です。兄弟デュオ「狩人」の楽曲『あずさ2号』で、全国的にも有名になりました。
この曲には「8時ちょうどの あずさ2号で」というフレーズがあります。発表された1977(昭和52)年当時、列車の「あずさ2号」は、新宿駅を午前8時に発車する下りと、松本駅を同じく午前8時に発車する上りの2本が存在しました。歌詞は「春まだ浅い信濃路へ」旅立つという内容ですから、曲中の「2号」は新宿発の下り列車を指しているとみられます。
しかし、発表翌年の1978(昭和53)年10月に行われたダイヤ改正で、下り「2号」は消滅しました。それまで列車の号数を上りと下りでそれぞれ「1号、2号……」と付けていましたが、ダイヤ改正で下りは奇数(1号、3号……)、上りは偶数(2号、4号……)になったためです。残った上り「2号」も甲府始発(7時35分発)に変更。のちに再び松本発の列車になりましたが、発車時刻は6時台です。
そうしたなか、2016年3月に実施されたダイヤ改正で、松本発上り「2号」の大月駅の発車時刻が8時00分に(土休日は7時59分発)。信濃(長野)とは反対方向の新宿行きで、途中駅ではありますが、「8時ちょうどのあずさ2号」が復活しました。
2019年3月に行われるダイヤ改正では、中央本線を走る特急の定期列車が新型車両のE353系特急形電車に統一されます。これにより、スピードアップが図られるため、大月駅の発車時刻も変わって「8時ちょうど」がなくなるかのように思えますが、改正後の「2号」は大月駅を通過するようになります。
「通過」の背景にあるものとは?
JR東日本は2019年3月のダイヤ改正で、「あずさ」の停車駅を大幅に見直します。すべての「あずさ」が停車する駅は、ひと駅減って新宿、八王子、甲府、茅野、松本の5駅に。ほかの駅も停車本数が減り、大月駅は下りが2本減の5本、上りは4本減って2本になります。この減少分のなかに「2号」が含まれているのです。
また、東京都内の三鷹と山梨県内の塩山、山梨市、石和温泉の各駅は、「あずさ」の停車がなくなります。このうち三鷹駅を除く3駅は、東京と山梨を結ぶ特急「かいじ」が引き続き停車するものの、全体として特急の停車が減ることに変わりありません。
これに対し、山梨や長野の自治体は反発。停車本数が減ることで客の乗り降りも減り、地元の観光や経済に大きな影響があるのではないかと考えたためです。長野県の阿部守一知事も、2019年1月11日の会見で「(JR東日本の長野支社長に対し)地域の声をしっかりと聞いて対応していただきたいと申し上げました」と話しました。
これについて、JR東日本の深澤祐二社長は2019年2月5日の会見で「到達時間短縮と停車駅をどうするかは、相反する課題」「高速バスとの競合にさらされているのも事実。どう競争力を高めていくのかを考えていかなくてはならない」(2019年2月6日付け信濃毎日新聞)と述べ、競争力強化を目的とした所要時間短縮の一環として、停車駅を減らしたという認識を示しました。
その一方で深澤社長は「地元の皆さんとのコミュニケーションが足りなかった。唐突だったという指摘を深く受け止めたい」とも述べています。
※一部誤字を修正しました(3月7日11時50分)。
【写真】「8時ちょうど」に発車する大月駅
「あずさ2号」が午前8時に発車する大月駅。2019年3月のダイヤ改正で「あずさ2号」は停車しなくなる(2017年11月、草町義和撮影)。
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