3月のJRダイヤ改正で4駅廃止
JRグループや一部私鉄が、2019年3月や4月のダイヤ改正などにあわせて、駅の廃止や新設を行います。ここではそのうち、廃止される駅をまとめました。
2019年4月1日付けで廃止されるJR石勝線夕張支線の鹿ノ谷駅(2010年2月、杉山淳一撮影)。
3月16日(土)のダイヤ改正では、JR北海道の直別駅、尺別駅、初田牛駅が廃止されます。かつては北海道開拓の推進や石炭産業に貢献しました。JR東日本の臨時駅であるヤナバスキー場前駅も、スキーブームのときに開設されましたが、それぞれの役目が終わり、廃止を迎えます。
直別(JR北海道 根室本線、北海道釧路市)
1907(明治40)年開業。付近は農地で、民家が数軒あります。1日平均乗車人員は10人以下です(2011年から2015年までの特定調査日5年平均)。
尺別(JR北海道 根室本線、北海道釧路市)
1920(大正9)年開業。炭鉱鉄道と貨物を積み替えるための貨物駅として設置されました。旅客営業の開始は1930(昭和5)年です。1日平均乗車人員は1人以下(2011年から2015年までの特定調査日5年平均)。2010(平成22)年に新垣結衣さんと生田斗真さんの主演で公開された映画『ハナミズキ』のロケ地があります。
初田牛(JR北海道 根室本線、北海道根室市)
1920(大正9)年開業。当初から旅客と貨物を扱う駅でした。1日平均乗車人員は1人以下(2013年から2017年までの特定調査日5年平均)。地元紙の報道では「0.2人」と報じられ、根室市のコメント「市民の暮らしに欠かせない公共交通機関として役割を果たしており残念極まりない」が実態にそぐわないとネットで話題になりました。
ヤナバスキー場前(JR東日本 大糸線、長野県大町市)
1985(昭和60)年開業。駅名の由来となったヤナバ国際スキー場の運営するリフト製造会社が当時の国鉄に働きかけ、スキーシーズンに営業する臨時駅として開業しました。
開業当時はスキーブームが盛り上がりつつあり、著名なスキー場は大都市からのスキー客で満員状態でした。そのなかで比較的空いていたヤナバスキー場は、地元の人々から「アナバスキー場」ともいわれたようです。その後、ブームが沈静化し、ヤナバ国際スキー場は運営会社が何度か変わり2016年に休業。同時に列車も停車しなくなり、廃止を迎えます。
4月廃止の8駅は路線廃止関連、次の役目を得た駅も
4月に廃止される8駅は、鉄道路線の廃止に関連しています。石勝線夕張支線はJR北海道の赤字路線整理と夕張市からのバス転換の要望により、4月1日付けで廃止。敦賀港線も同日付けです。関電トンネルトロリーバスは4月中旬に電気バスへ転換されます。扇沢駅と黒部ダム駅は、鉄道駅としては廃止されますが、新しいバス乗り場として存続します。
2019年4月1日付けで廃止されるJR石勝線夕張支線の夕張駅(2010年2月、杉山淳一撮影)。
沼ノ沢(JR北海道 石勝線夕張支線、北海道夕張市)
開業は1905(明治38)年。北海道炭礦鉄道の貨物駅でした。真谷地炭鉱から採掘した石炭を積むための駅で、旅客営業は1910(明治43)年からです。駅付近には冷凍食品の工場や炭鉱時代からの住宅などがあります。
南清水沢(JR北海道 石勝線夕張支線、北海道夕張市)
開業は1962(昭和37)年。1951(昭和26)年に公立高校が移転してできた街の最寄り駅として国鉄が設置しました。開業時から旅客専用駅です。
清水沢(JR北海道 石勝線夕張支線、北海道夕張市)
開業は1897(明治30)年。北海道炭礦鉄道が、三菱石炭鉱業大夕張鉄道線と接続する駅として建設しました。夕張の炭田や森林資源の産出駅として、周辺地域とともに栄えました。駅の東側、市営住宅群の手前が大夕張鉄道線の駅の跡地です。この駅と次の鹿ノ谷駅のあいだに映画『幸福の黄色いハンカチ』のロケ地「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」があります。
鹿ノ谷(JR北海道 石勝線夕張支線、北海道夕張市)
開業は1901(明治34)年。北海道炭礦鉄道が中間駅として開設しました。1908(明治41)年に若鍋砿選炭場と結ぶ線路、1909(明治42)年に熊ノ沢選炭場と結ぶ線路、1926(大正15)年に夕張鉄道が開業し、石炭出荷基地となります。1913(大正2)年にこの駅から徒歩10分ほどの場所に北海道炭礦汽船の迎賓館が造られ、昭和天皇や今上天皇が訪問、宿泊されました。現在も「夕張鹿鳴館」として見学可能です。
夕張(JR北海道 石勝線夕張支線、北海道夕張市)
開業は1892(明治25)年。北海道炭礦鉄道が、室蘭線の支線として追分から当駅までを開業しました。石炭を運び出す拠点として設けられ、石炭輸送終了後は観光開発の拠点とするため移転。さらにリゾート施設の最寄り駅とするため再移転し、現在に至ります。
トロリーバスの駅はバス停として再出発
敦賀港(JR西日本 北陸本線敦賀港支線、福井県敦賀市)
1882(明治15)年開業。開業時の駅名は「金ヶ崎」でした。敦賀港は古代より大陸と交流があり、明治時代は日本海側の軍事拠点のひとつでもありました。敦賀港駅に至る鉄道は、東海道線の支線として米原から整備され、のちに北陸本線となります。
戦前は東京発敦賀港行きの欧亜連絡国際列車が走り、敦賀港から国際航路経由でロシア、ヨーロッパまでつながる日本の玄関駅でした。戦後も北陸本線の敦賀駅から分岐する貨物支線の終着駅でしたが、鉄道による貨物輸送は休止に。現在はJR貨物の敦賀港オフレールステーションとして、トラック便のターミナルとなっています。
敦賀市は敦賀港駅周辺に転車台を置き、構内で蒸気機関車を走らせる構想を掲げていました。駅の正式な廃止、JR貨物から施設の譲渡を得れば実現に近付きそうです。廃止は残念ですが、楽しみが残されています。
黒部ダム(関西電力 関電トンネル無軌条電車、富山県立山町)
1964(昭和39)年開業。トンネル内にあるトロリーバス(無軌条電車)の駅です。立山黒部アルペンルートで、黒部ダムを挟んで、立山黒部貫光の黒部ケーブルカーと連絡します。黒部ダム、展望台、黒部湖遊覧船など立山黒部アルペンルートの重要拠点にあります。立山黒部アルペンルートは冬季閉鎖されるため、2018年11月30日をもってトロリーバスとしての運行は終了しました。2019年の運行開始日である4月15日(月)からは電気バスが登場。黒部ダム駅はバス停留所として再出発します。
扇沢(関西電力 関電トンネル無軌条電車、長野県大町市)
1964(昭和39)年開業。立山黒部アルペンルートの東側、関電トンネルトロリーバスの長野県側の駅です。JR信濃大町駅(長野県大町市)を発着するバスと連絡します。関電トンネルトロリーバスは山岳トンネルのなかを走りますが、扇沢駅は地上にあり、トンネル出口からわずかな時間だけ外の景色を楽しめます。トロリーバスの車庫がありましたが、今後は電気バスの拠点になります。
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