夜間飛行中の墜落事故
2019年4月9日(火)、防衛省は青森県の航空自衛隊三沢基地に配備されたF-35A「ライトニングII」戦闘機が同日19時27分頃、行方不明となったことを明らかにしました。また翌10日(水)には墜落と断定しました。11日(木)午前11時現在、パイロットは依然として行方不明であり、捜索が続いています。
墜落した航空自衛隊のF-35A戦闘機(画像:航空自衛隊)。
F-35Aは航空自衛隊において配備が始まったばかりの最新鋭機であり、運用部隊である第302飛行隊も三沢基地において、2019年3月26日にF-4EJ改「ファントムII」から機種更新を完了したばかりでした。事故の要因についてはまだ何かを判断するだけの情報はなく、現在は全機飛行停止にしたうえで原因究明に当たっている段階です。
F-35は2019年4月の時点において、F-35A/B/C全タイプ総生産数380機以上、世界13か国が発注し10か国が導入開始済み、17の航空基地に配備され、これまでの墜落事故は2018年9月28日の短距離離陸垂直着陸型F-35Bわずか1機のみと、これまでのアメリカ製戦闘機史上において、飛びぬけて事故率の低い実績がありました。
既知の問題が原因である可能性は低い
F-35は現時点における全世界の戦闘機生産数の大部分を占めており、2019年は年産141機を計画しています。2019年中には総生産数500機近くになる見込みであり、機数が増えるぶん、それだけ事故も発生する可能性が高くなることは避けられないものの、今回はまだ数の少ない自衛隊機であり、通常離着陸型F-35Aとしては最初の損失でした。
一部報道において「欠陥機」「未完成品」とも誇張されることのあるF-35Aですが、実のところ安全面における問題はそれほど多くは報告されてはおらず、既知の問題が事故のおもな原因である可能性は低いと考えられます。昨年、墜落したF-35Bについては燃料系統の異常であることが判明しており、問題の箇所を修正することで対応しています。またこれはF-35B型特有の問題であり、航空自衛隊のF-35Aとは関係がありません。
今後への影響は…?
あらゆる工業製品においても言えることではありますが、極めて複雑なシステムである現代戦闘機はF-35に限らず、その開発において必ず数多くの問題が見つかります。F-35や航空自衛隊のF-2、そしてF-15「イーグル」においても、解決すべき不具合について優先順位をつけ定期的に修正していき、致命的な問題が発覚した場合、優先順位を繰り上げて対応する方式が採られています。身近なものにたとえるならば、戦闘機の不具合解消は、パソコンのOSやスマートフォンのアプリが順次アップデートしていくことで安全性を高め、重大なバグがあった場合にのみ緊急アップデートが行われるやり方と同じであるといえます。
もちろん例外はあり、陸上自衛隊の国産観測ヘリコプターOH-1は、搭載する国産エンジンの問題に起因する事故の多発から2015年12月に全機飛行停止処分が下され、2019年にこれは一部解除されたものの、実に3年以上にわたり実戦部隊においての運用が行われておらず、また再開の目途は立っていないという危機的な状況にあります。
F-35がOH-1のように年単位で運用できないといった事態に陥らない限り、F-35Aの調達計画全体を見直さなければならないようなことにはならないでしょう。また前述のとおりF-35の墜落事故の少なさは記録的であり、計画見直しになる可能性もいまのところは無いといえます。
いずれにせよ、現時点において事故原因について何かを判断できる状況にはなく、これからの原因究明が待たれるところです。
【写真】飛行停止から3年、一部再開 陸自OH-1ヘリコプター
陸上自衛隊のOH-1観測ヘリコプター。エンジンに起因する問題から3年以上にわたって実戦部隊での運用が行われていない。2019年3月1日、その飛行停止が一部解除された(関 賢太郎撮影)。
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