埼玉県警のスーパーパトカーにもついている透明板
一部のパトカーには、ボンネットにアクリルなどの透明な板が立てられていますが、この透明板付きのパトカーが数を減らしています。
この板は通称「バグガード」、つまり「虫除け」です。高速道路を走行中、フロントガラスに小虫や飛び石などが衝突するのを防ぐ目的で、昭和の時代から高速隊(高速道路交通警察隊)の所属車両に採用されていました。また、高速隊から一般の警察署へ転属した車両が、バグガードを取り付けたまま、街なかを走っていることもありました。
東京の警察博物館で屋外展示されている、もと警視庁高速隊所属のマツダ「RX-8」パトカー。ボンネットにバグガードが取り付けられている(2017年9月、佐々木基博撮影)。
埼玉県警では、2000(平成12)年前後に高速隊へ導入された日産「スカイラインGT-R(R34型)」パトカーにバグガードが取り付けられていますが、それ以降の配備車には採用されていないそうです。ある警察車両に詳しい人物によると、一般的なトヨタ「クラウン」のパトカーでも、「2000年代前半に生産された170系では、すでに一部の車両で見られる程度になっていました。それ以降のモデルにバグガードは採用されていません」といいます。
埼玉県警によると、バグガードを取り付けなくなったのは、警察庁の方針によるものだといいます。そこで警察庁に問い合わせましたが、資料が残っておらず、経緯は不明とのことでした。
なぜバグガードはなくなったのか
前出の警察車両に詳しい人物は、バグガードが不採用になったことについて、確定的なことはいえないとしつつ、3つの説があると話します。
ひとつめの説は、車両の空力性能がよくなったこと。かつてのクルマは全体的に角ばっていましたが、空力性能アップのために丸みを帯びたデザインとなるにつれ、フロントガラスに虫があまりぶつからなくなったのではないかといいます。
ふたつめの説は、コストの削減。パトカーには都道府県の予算で購入するものと、警察庁が一括購入して全国の警察へ配備するものがありますが、後者の場合は数百台単位でバグガードが取り付けられていたそうです。
3つめの説は、いわゆる「外部突起規制」に対応したというもの。これは歩行者保護の観点から、衝突時あるいは接触時に歩行者へ傷害を与える恐れのある突起を車両外装からなくそうというもので、国際基準に合わせる形で2001(平成13)年に日本の法令へ盛り込まれました(猶予期間を経て2009年以降の新車から適用)。バグガードのようなパーツだけでなく、乗用車のフロントグリル上に見られる立体のエンブレムやマスコットが数を減らしたのも、この規制が関係しています。
バグガードを取り付けた日産「スカイライン」パトカー、1980年モデル(画像:日産)。
ちなみにバグガードは、「ボンネットガード」などの名で、海外では純正オプションになっているものも多く、「ランドクルーザー」や「ジムニー」といった車種のものが日本にも輸入されています。それらの多くは、ボンネットの先端に寝かせる形で取り付けるものです。
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