新規開通区間に4つの新駅が開業
2019年3月16日(土)に、JR西日本おおさか東線の新大阪~放出(はなてん)間11.1kmが開通。既存の放出~久宝寺間9.2kmと一体になり、新大阪~奈良間をおおさか東線経由で結ぶ「直通快速」などが走り始めます。
おおさか東線の新駅、南吹田駅(草町義和撮影)。
新規開通区間には4つの新駅も開業。それぞれ、路線バスとの接続などにより、地域の交通も大きく変化しそうです。新大阪側からひと駅ずつ、街の特徴や交通の変化を見てみましょう。
「路線バス空白地帯」が変わる! 南吹田駅
新大阪駅を出たおおさか東線の列車は高架にのぼり、JR京都線(東海道本線)から分岐し大きく右にカーブ。そのカーブの中間に南吹田駅(大阪府吹田市)があります。
駅周辺は、JR京都線や貨物線(城東貨物線)と神崎川に挟まれた地域で、近くに鉄道の駅がなかったばかりか、路線バスの空白地帯でもありました。JR京都線をくぐる道はあるものの、幅が狭く、バスが入ってきづらかったのです。かつては吹田市により高齢者などを対象とした無料の「福祉バス」が運行されていましたが、利用者が少ないなどの理由で、2011(平成23)年度をもって廃止されています。
今回の新駅開業と並行して、東海道本線をくぐる広い歩道つきのアンダーパスが整備され、南吹田地域は吹田市中心部とのアクセスも劇的に改善される見込みです。駅前にもバスロータリーが設けられ、JR吹田駅と大阪メトロ江坂駅方面を結ぶ阪急バスの一部が、アンダーパスをくぐって乗り入れてきます。
阪急が構想した「新大阪への連絡」半世紀を経て実現 JR淡路駅
阪急の京都本線と千里線が交わる淡路駅(以下、阪急淡路駅)の北東およそ400mの位置に、おおさか東線のJR淡路駅(大阪市東淀川区)が開業します。周辺では2024年の開業を目指して阪急線の高架化工事が進められており、再開発も進行中。両駅のあいだには、再開発で移転した店が軒を連ねるアーケードもあり、そこを通って乗り換えができます。
もともと阪急は1960年代に、淡路駅から新大阪駅へ通じる支線の建設を計画しており、土地も確保していたものの、着工に至りませんでした。地域の要望もあり、2000年代の一時期には東淀川区のコミュニティバス「あいバス」が担っていた「淡路~新大阪間の連絡」が今回、おおさか東線の開通によって実現する形です。
JR淡路駅。写真左奥に進めば阪急淡路駅の東口にたどり着く(oleolesaggy撮影)。
もっとも、阪急淡路駅の西口から300mほど北西にある大阪シティバスの淡路4丁目バス停から、新大阪駅方面へのバスに乗車することも可能。淡路地区の繁華街があるのは、この阪急淡路駅の西口です。駅から長いアーケード街が続き、お惣菜や立ち食いうどんの香りが漂います。
ちなみに、西口アーケードの入り口にある三菱UFJ銀行淡路支店では、かつて俳優の竹内 力さんが銀行員として勤務(当時は三和銀行)していました。「リーゼントでかっちり髪形をキメて窓口対応をしていた」「コワモテのイケメンだった」と、当時を知る地元の人々は口を揃えます。
交通の利便性は抜群に? 城北公園通駅
JR淡路駅から淀川を越えた南側に開設されるのが、城北公園通駅。大阪市旭区(駅東側)と都島区(駅西側)の境目に位置しています。
北側には駅名の由来ともなった「城北公園通(大阪市道中津太子線)」が通り、大阪駅と守口市内の守口車庫を結ぶ大阪シティバス34号系統が走っています。この系統、平日の8時台には27本、日中でも1時間あたり9本から10本というハイペースで運行され、年間3億円以上の純利益を生み出すという、大阪シティバスの“ドル箱”です。守口市の西部や大阪市旭区などは、このバス路線で大阪駅に直通できるうえ、おおさか東線が開通することで、新幹線に接続する新大阪駅にもアクセスしやすくなります。
城北公園通駅の南側では、阪神高速の高架下を運河が流れる。奥はおおさか東線を走る試運転列車(oleolesaggy撮影)。
駅の西側、都島区内の毛馬地区は、江戸時代の俳人であり画家の与謝蕪村(よさぶそん、1716~1784)が生まれた地。付近の商店街は「大東商店街」から「蕪村通り商店街」と改称するほどの“与謝蕪村推し”で、新駅の名が公募されたときも、「蕪村生誕駅」または「蕪村旭都島駅」が実現するよう署名活動を行ったほどの熱の入れようです。結局、駅名に「蕪村」は付かなかったものの、城北公園通駅の西口は公式に「蕪村口」と名付けられました。
ちなみに、地元による「蕪村生誕の地」のアピール方法もユニークです。都島区は1996(平成8)年に、蕪村の俳句を織り交ぜたラップ調のPRソング「BUSON’96」を制作。俳句の韻とラップの韻を合わせ、「BU-SON! BU-SON! YOSA-BUSON!」と繰り返すこの曲、城北公園通駅の開業時に聴くことはできるのでしょうか。
京阪沿線からの新幹線アクセス向上 JR野江駅
次のJR野江駅(大阪市城東区)は、京阪電鉄の野江駅から約200m西に開設され、乗り換えが可能に。京阪沿線、特に普通列車しか停まらない野江駅から土居駅(守口市)までの各駅より、新大阪へのアクセスが大きく向上します。
京阪の野江駅は日中1時間あたり6本の列車が停車しますが、そのほとんどは京阪本線の天満橋駅で分岐する中之島線の直通列車です。京阪沿線から新大阪駅へアクセスする場合、京阪本線の起終点である淀屋橋駅から大阪メトロ御堂筋線に乗り換えて向かうことができますが、中之島線は御堂筋線と直結した乗り換え駅が設けられていません。
たとえば野江~土居間の各駅から新大阪駅へ行く場合、京橋駅などで淀屋橋行きの列車に乗り換えたり、中之島線の大江橋駅から地上を歩いて淀屋橋駅へ向かったりして御堂筋線を利用、あるいは京橋駅からJR大阪環状線に乗り換え、大阪駅でさらに東海道本線へ乗り換える必要がありました。京阪の野江~淀屋橋間は210円、御堂筋線の淀屋橋~新大阪間は230円です。対して、おおさか東線のJR野江~新大阪間は180円なので、御堂筋線と比べて運賃面でも有利です。
JR野江駅。高架下を活用して駅舎が設けられる(oleolesaggy撮影)。
なお、今回の開通とともに、JR野江駅と放出駅のあいだにあるJR学研都市線(片町線)の鴫野駅にも、おおさか東線の列車が停車するようになります。また、おおさか東線は今後、新大阪からさらに梅田地区(旧・梅田貨物駅)への乗り入れも計画されています。
※記事制作協力:風来堂、oleolesaggy
【路線図】おおさか東線、4つの新駅はココにできる
南吹田駅の前後は新規建設、そこから南は既存の城東貨物線を活用した区間(国土地理院の地図を加工)。