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男たちが抱える「弱音を吐けない」という重い病

2020年11月19日 05:50 東洋経済オンライン

コロナ禍で大きく劇的に変わった環境の変化にとまどい、生きづらさを感じている人が多い昨今。とくに男性は、「規律正しい労働者」として男社会の枠組みのなかで長年培ってきたノウハウが役立たない、「リモートワークでのマネジメント」「家事や育児へのかかわり方」など、どうしたらいいのかわからない不安を抱えています。

そんな不安を軽くするヒントを、男性学研究の精鋭、田中俊之先生がお伝えします。

感染対策と生活をいかに両立させるか。新型コロナウイルスの流行以降、社会的な生き物である人間が、自由に人と交流できないという状況に陥っています。息の詰まるような日々を強いられる中で、自殺のニュースが目につくようになってきました。

直近、警察庁が公表した統計によると10月の自殺者数が全国で計2153人となり、昨年同月に比べて約4割増えています。自殺者数は7月以降、4カ月連続で増えていて、特に女性の自殺者数の大幅な増加が話題になっています。こういったデータは社会の雰囲気をより暗くさせるものです。

自殺者の増加について、誰もが新型コロナウイルスとの関連を連想すると思います。しかし、それがどのような意味においてなのかは必ずしも明確ではありません。経済状況の悪化、在宅時間の増加による家族関係のトラブル、社会に蔓延する閉塞感、ニューノーマルへの不適応、あるいは、感染に対する恐怖心などたくさんの原因が考えられます。

こうした分析は、自殺対策を立てていくうえで必要不可欠になります。ですから、安易に結論を出さずに慎重に考えていくことが重要です。

女性より顕著に多い男性の自殺者数

短期的に観測されたデータについて、すぐに原因をつきとめることは難しいのですが、自殺については長期的に確認できる1つの傾向があります。長年にわたって、男性のほうが女性よりも常におおよそ1.5~2倍も自殺者数が多いのです。

2020年4月から10月までの自殺者数を男女別で確認してみても、どの月でも男性の数が顕著に多いことがわかります。男性という性別が自殺に影響を与えているのは明白です。

(外部配信先ではグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)


確認するまでもないことですが、だからと言って、女性や子どもの自殺が増加している状況を軽視していいと言っているわけではありません。そもそも日本は他国と比べて自殺者数が多く、年齢、性別を問わず対策を立てることが重要です。そうした前提をふまえて、ここでは、なぜ性別によって自殺者数に大きな偏りがあるのかを考えてみたいと思います。

2016年に実施された厚生労働省による「自殺対策に関する意識調査」の結果からは、男性に特有の意識が見えてきます。

まず、「あなたは、悩みを抱えたときやストレスを感じたときに、誰かに相談したり、助けを求めたりすることにためらいを感じますか」という質問にたいして、「そう思う」(「そう思う」「どちらかというとそう思う」の合計、以下同様)は、女性が41.9%だったのに対して、男性では52.4%と10%以上のひらきがありました。

さらに付け加えておくと、人に助けを求めるのを避ける傾向は、50代以上の男性でより顕著という結果になっています。

転んだり、注射を打ったりした際に、メソメソする男の子が、「男なら泣くんじゃない」と叱られることは現代でも少なくありません。私たちが男性に期待する〈男らしさ〉の最たるものが「強さ」だからでしょう。逆に言えば、涙は「弱さ」を象徴するものとして、幼い頃から禁じられているわけです。

「弱さ」を連想させるような感情を表に出してはいけないと学んだ男の子たちは、当然のことですが、大人になっても周囲に「弱み」を見せられなくなってしまいます。ここで強調しておきたいのは、「男性でも悩みを抱えたり、ストレスを感じたりしたときには弱音を吐いてもいい」ということです。

男性が悩みを相談しない理由としては、他にも、ある種の「合理的」な思考があります。例えば、「嫌な上司がいる」と人に言ったところで、現実としてその上司がいなくなるわけではありません。問題が根本的に解決しない以上、相談は無意味だというわけです。

このような発想になってしまうのは、「人に悩みを聞いてもらうだけで気持ちがすっきりする」という経験が不足しているからでしょうか。

次に、「あなたの不満や悩みやつらい気持ちを受け止め、耳を傾けてくれる人はいると思いますか」という質問に「そう思う」と答えた割合は、女性の89.1%に対して、男性は76.4%とやはり女性よりも低くなっています。

これについては、60代、70代以上の男性で「そう思わない」(「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」の合計)人が多くなっています。他にも、金銭的な援助をしてくれる人の有無を尋ねた場合にも、さきほどの2つの質問と同様の傾向が見られます。

「男らしさ」に秘められた苦痛

このように男性は頼れる人が少ない傾向があるわけですが、男性の悩みを誰が受け止めてくれるのかという問題を考えるとき、〈男らしさ〉にとらわれているのは男性自身だけでないことを理解することが大切です。臨床心理士のテレンス・リアルは『男はプライドの生きものだから』(講談社)の中で、次のように述べています。

「男は脆弱であってはならない。苦痛は乗り越えなければならない。それができないことは恥である」。男自身がこう思っているだけでなく、家族も友人も精神保健の専門家ですらそう信じているのである。私はこの秘められた苦痛こそが男性が直面する問題の核になっていると確信する。

自分が悩みを聞く相手だとして、いつも会社や家庭で頼りにされている男性が弱音を吐く場面を想像してみてください。この人はなんで急にこんなに「情けなくなってしまったのだろう」とがっかりしたり、驚いたりしてしまわないでしょうか。

悩みを抱えている人がいざ相談しようとしても、相手からのリアクションがこのようなものであれば、気が引けてしまうのも当然です。

厚生労働省は、相談窓口などについての情報をまとめたサイト「まもろうよこころ」を2020年8月に開設しました。このホームページを確認してもわかるように、自殺対策の基本はやはり相談です。

さきほど、調査の結果から確認したように、男性は人に「弱さ」を見せることに対してためらう傾向が見られます。重要なので繰り返しますが、「男性でも悩みを抱えたり、ストレスを感じたりしたときには弱音を吐いてもいい」というメッセージは強く男性たちに訴えていかなければなりません。

その一方で、男性の相談を聞く側も、「いい年をした男性が悩みや葛藤を抱えているわけがない」などといった予見を持たないことが重要です。たとえ、弱音を吐く姿が自分の思う〈男らしさ〉とは違うものであったとしても、それを表情に出したり、ましてや言葉にしたりすることがないようにしたいところです。

もちろん、これですべて説明できるわけではありませんが、男性の自殺者が多い背景には、明らかにこのような〈男らしさ〉の問題があると言えるでしょう。

相談する、相談されるスキルを磨く

相談の場合は、する側にもされる側にも一定程度のスキルが求められます。しばしば、相談する人はただ話を聞いてほしいだけだと言われますが、相談内容に同意してほしいこともあれば、具体的な解決策を聞きたいこともあるはずです。

日常会話では、わざわざどのような前提で話をするかをお互いに確認することはありません。しかし相談の場合は、ただ話を聞いてほしいのか、同意を求めているのか、あるいは具体的な解決を示してもらいたいのかあらかじめ伝えておくと、円滑にコミュニケーションがとれると思います。

こうした改まった形での会話に、「気恥ずかしさ」を感じる男性がいるかもしれません。率直に言えば、45歳の中年男性である僕自身が、このような文章を書いていながら、人に「弱音」を吐くことは苦手ですし、真面目な相談を誰かにするのは気が進みません。

そもそも、悩みを聞いてくれる人がいるのだろうかという不安もあります。くだらない見栄だと思われるかもしれませんが、「強さ」を求められてきた男性にとっては、相談自体のハードルが高いことを知ってもらえればありがたいです。男性は、いきなり「弱さ」を見せられるようにならなくても、「男らしさにこだわっているかもしれない」と認識するだけで、自分自身に対する見方がずいぶんと変わるでしょう。

(田中 俊之 : 大正大学心理社会学部准教授)

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新幹線「東京ー札幌4時間半走行」は可能なのか

2020年11月19日 04:50 東洋経済オンライン

JR東日本は現状で最高時速260kmの東北新幹線盛岡―新青森間を、最高時速320kmに、上野―大宮間を時速110kmから130kmに向上させると10月6日に発表した。盛岡―新青森駅は2020年10月から7年程度をかけて工事し、最大5分程度の時間短縮を実現、上野―大宮間は2021年春までに1分程度の短縮を実現するという。現状、東京―新青森間は最速2時間59分なので、2時間53分となる計算だ。

今回の発表では北海道新幹線については触れられていないが、2030年度末開業を予定している、北海道新幹線新函館北斗―札幌間の開業を見据えた工事だろう。

北海道新幹線は「整備新幹線」であり、全国新幹線鉄道整備法により最高速度は時速260kmとされている。整備新幹線区間での最高速度引き上げは、実現すればこれが最初になる。

北海道新幹線も最高速度向上を予定

JR北海道も2019年5月15日のプレスリリース「北海道新幹線新函館北斗・札幌間の高速化の要請について」の中で、同区間の高速化に触れている。これは「北海道新幹線の建設主体となる鉄道・運輸機構に対し、JR北海道が現計画との差額を負担する」ことで、最高速度を時速260kmから時速320kmに引き上げるよう要請したというものだ。
 
工事費は120億円程度で、時間短縮効果は5分程度を見込んでいる。国土交通省鉄道局が2012年4月に公表した「収支採算性及び投資効果に関する詳細資料」では、新函館北斗―札幌間を1時間5分程度としているので、5分短縮で1時間ちょうどということになる。

さらに、国土交通省は9月24日に「年末年始の一部時間帯における北海道新幹線青函トンネル内の高速走行(「時間帯区分形式」による時速210km走行)」として、2020年12月31日~2021年1月4日の始発から、15時30分ごろまでの間、上下7本計14本の列車で青函トンネル内の速度向上を行うと発表した。これは青函トンネル内(約54km)において、新幹線の最高速度を時速160kmから時速210kmに向上させ、3分程度短縮するという内容である。

青函トンネル内では新幹線開業時に時速140km運転、現在では時速160km運転と速度制限が行われていたが、今回初めて新幹線の定義である「時速200km以上」の運転が行われる。





国土交通省では「今後、時速260kmへの速度向上への早期実現を目指すとともに、さらに時間帯区分方式の段階的拡大の可能性についても検討を進める」としている。

この高速走行では、始発から15時半まで青函トンネルを新幹線専用にして最高時速210km運転を行うが、貨物列車の運行本数が制限されるため、札幌駅開業時に新幹線高速走行がどこまで実現できるのか不明だ。とはいえ、盛岡―札幌間の大半についての、速度向上の方策が出そろったことになる。

函館・札幌まで何時間かかるのか

現状、東京―新函館北斗間は最速3時間58分である。速度向上策によって上野―大宮間で1分、盛岡―新青森間で5分、青函トンネルで3分短縮予定なので、単純合計するなら東京―新函館北斗間は3時間49分となる。そして、新函館北斗―札幌間は5分短縮の1時間である。新函館北斗駅に1分停車するなら、東京―札幌間は4時間50分ということになる。2012年の北海道新幹線認可時には、最高時速260km、青函トンネルでは同140kmで、5時間1分を予定していたので、さほどの時間短縮効果はない。

なお、JR北海道は2019年4月9日のプレスリリース「JR北海道グループ長期経営ビジョン未来2031」の中で、札幌駅開業時点での到達時間を東京―札幌間で4時間30分、新函館北斗―札幌間で1時間、新青森―札幌間で1時間30分と試算・発表した。どこかで20分短縮しなければ4時間30分にはならないということだ。

ヒントとなるのは「新青森―札幌間で1時間30分」という部分だ。現状、新青森―新函館北斗間は最速59分。新函館北斗―札幌間は1時間の予定なので、新青森―新函館北斗間を30分以内で走る必要がある。はたして可能だろうか。

新青森―新函館北斗間は148.8kmの距離がある。これを30分で走るなら、距離を所要時間で割った表定速度は時速297.6kmとなる。現状、東北新幹線の最速の表定速度は仙台―盛岡駅間の時速261.6km。170.1kmの距離を39分で結んでいる。そう考えると青函トンネル区間を30分で走り抜けるためには、これよりも速く走行する必要がある。
 
前述した通り、新青森―新函館北斗間には速度制限区間がある。これは青函トンネル内だけだと思われがちだが、国土交通省のプレスリリースでは、在来線との共用区間約82kmのうち「青函トンネル内の約54kmが最高時速160km、残りの新中小国信号場ー湯の里知内信号場の地上部分約28kmが時速140km」となっている。前述した「高速走行の実施」によると、時速210kmに引き上げられるのは青函トンネル内の53.85kmだけなので、青函トンネル外の共用区間地上部はそのままだ。

JR東日本の高速試験車両

現在、JR東日本は試験車両「ALFA-X」を使って最高時速360kmでの営業運転を目指した高速走行試験を行っている。





一般に速達列車では表定速度は最高速度の7~8割とされる。東京―新青森間で最高時速360km運転を行った場合を想定してみたい。前述したとおり、時速320km運転での同区間は2時間53分(表定時速234km)であり、最高速度の73%である。人口の多い東京―宇都宮間では速度向上できないことを考慮して、表定速度を最高時速360kmの7割とするなら時速253kmとなり、所要時間は2時間40分程度となりそうだ。

 新函館北斗―札幌間をノンストップで走る場合、最高時速360kmの75%とした場合は、表定速度は時速270kmである。この表定速度なら所要時間は47分だ。新青森―新函館北斗間の現行最速が59分なので、青函トンネルでの速度向上がなかったとしても、東京―札幌駅間は合計4時間26分。新函館北斗駅での1分停車で4時間27分となるが、JR北海道が発表した4時間30分を切ることができる。

なお、時速140~160km運転がなされている青函共用区間も速度向上できたなら、さらに短縮できる。青函共用区間を一時的に新幹線専用として最高時速260kmとし、接続する区間を最高時速360kmにした場合、加減速による速度ロスを考慮した筆者の試算では19分程度短縮できる。新青森―新函館北斗間の現行最速が59分なので、19分短縮できれば40分となる。

そうすると、新青森―札幌間は1時間27分。JR北海道がプレスリリースで掲げている1時間30分を切ることができる。東京ー新青森間は最高時速360kmで2時間40分だと思われるので、合計すると東京ー札幌間で4時間8分(新函館北斗駅1分停車を含む)程度もありうる範囲だ。

貨物列車の運行をどうするかという問題は残るが、新幹線の歴史は速度向上の歴史である。仮に最高時速400kmを実現したなら、4時間の壁を超えるだろう。さらなる速度向上を期待したい。

(安藤 昌季 : 乗り物ライター)

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中国EC最大手「アリババ」、ユーザー数伸び悩み

2020年11月18日 18:20 東洋経済オンライン

中国の電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババ)は11月6日、2020年7~9月期の決算報告を発表した。それによれば、同四半期の売上高は1550億6000万元(約2兆4234億円)と前年同期比30%増加。しかし増加率は直前の4~6月期より4ポイント縮小した。

同四半期の純利益は287億7000万元(約4514億円)と、前年同期比60%減少した。ただし、この減益は2019年7~9月期に傘下のフィンテック企業、螞蟻科技集団(アントグループ)の株式取得に伴う評価益を一時計上したことによるものだ。それを含む臨時損益やストックオプションを除外した非国際会計基準ベースの純利益は470億8800万元(約7388億円)と、前年同期比44%増加した。

中国の3大ECプラットフォーム(訳注:アリババ、京東集団[JDドットコム]、拼多多[ピンドゥオドゥオ]の3社を指す)のなかで、アリババは最大規模のユーザー群を擁する。それだけに、ユーザー数をさらに伸ばす余地は減りつつある。モバイル端末を通じた9月の月間アクティブユーザー数は8億8100万人と、6月に比べてわずか700万人の増加にとどまった。

ネット通販「淘宝」のアプリ刷新に着手

事業別ではグループ総売り上げの8割以上を占めるEC事業の売上高が、7~9月期は1309億2200万元(約2兆542億円)と前年同期比29%増加した。最大の収入源は、主にプラットフォームの加盟店が支払う販売手数料や販促サービス料で構成される「顧客管理収入」であり、グループ総売り上げの45%を占めている。

ユーザー数が伸び悩むなかでも事業の成長を確保するため、アリババは9月末から消費者向けネット通販「淘宝(タオバオ)」のスマートフォン用アプリの大がかりな刷新に着手した。個々のユーザー向けにパーソナライズされたおすすめ商品の情報を画面のより目立つ位置に表示するなど、さまざまなアップデートを1年がかりで進める計画だ。

なお、7~9月期のEC事業の利益率は35%と、前年同期の38%から3ポイント低下した。アリババCFO(最高財務責任者)の武衛氏によれば、これは直営ビジネスの拡大(とそれに伴う先行投資の増加)が理由だという。電話による業績説明会で、武氏は次のように説明した。



「利益率は下がったものの、利益の絶対額は前年同期より28%増えた。アリババは新たな顧客を獲得するため営業やマーケティングに積極投資しており、利益額の増加はそれを反映している。これはわれわれが自ら望んで選んだ道だ」

(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は11月6日配信

(財新 Biz&Tech)

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cat_11_issue_oa-toyokeizaionline oa-toyokeizaionline_0_4qmi8hi2qvbm_「エクリプスクロスPHEV」から見る三菱の再起 4qmi8hi2qvbm 4qmi8hi2qvbm 「エクリプスクロスPHEV」から見る三菱の再起 oa-toyokeizaionline 0

「エクリプスクロスPHEV」から見る三菱の再起

2020年11月18日 14:00 東洋経済オンライン

三菱自動車工業のクロスオーバーSUV(スポーツ多目的車)であるエクリプスクロスがマイナーチェンジを発表。12月発売予定で10月15日より予約を開始した。さらにマイナーチェンジに伴い、プラグインハイブリッド車(PHEV)を追加したことで注目が集まっている。

改良の内容は、車体全長がやや長くなり、外観の造形も一部変更を受けた。それによって伸びやかで精悍な外観となった。走りのよさを強調し、洗練さが加わった魅力を見た目からも訴えかける。

ショートサーキットで走行性をチェック

新たに車種追加されたPHEVに、ショートサーキットで試乗する機会を得た。三菱自動車のPHEVは、前後輪にモーターを1つずつ装備し、4輪駆動を実現している。ガソリンエンジンは発電用動力として機能するほか、一部走行にも寄与する。前後輪のモーター駆動は、三菱自動車独自の車両統合運動制御(S-AWC=スーパー・オールホイールコントロール)により、4つのタイヤへ最適な駆動力を伝達することで安定した走行を実現し、また的確なコーナリングをサポートする制御が加えられる。



電子制御には、走行モードの選択肢があり、ノーマル/スノー/グラベル(未舗装路)/ターマック(舗装路)の4つ。今回試乗したショートサーキットでは、ノーマルとグラベルを切り替えて走行した。

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まずノーマルモードで走らせてみると、2017年にガソリンターボエンジン車で発売された際の俊敏な感覚に比べ、モーターやリチウムイオンバッテリーの搭載により車両重量が増したぶん、落ち着きのある上質なクルマの趣になっていた。それはそれで上級車感覚でよいのだが、ガソリンエンジン車で味わった軽快さも魅力であったのは事実だ。エクリプスクロスは、車格が上のアウトランダーに比べ車体寸法は小さいが全長が4.545m、全幅が1.805mあり、それなりに大きい3ナンバー車だ。それでもガソリンエンジン車を運転していると、小型ハッチバック車でも操っているかのような俊敏さを覚えたのである。

そうしたことを思い出しながら、走行モードをターマックに切り替えた。するとアクセルペダルやハンドル操作への応答がより早くなるとともに、S-AWCの制御も変わり、力強くグイグイと前進させ、カーブでは鋭く切れ込むように曲がった。その様子は、ガソリンエンジン車を運転したときのように活気あふれるものだった。

エクリプスクロスPHEVは、電動化によって上質かつ重厚な走行感覚と、走行モードの切り替えを利用することで俊敏で壮快な運転も味わえる、1台で2色の運転特性を持っているのである。クルマの電動化は、環境適合のためと思われているが、それが第一の目的であるにしてもモーターの出力特性と、それを活かした電子制御による操縦性の切り替えによって、幅広い魅力を備えたクルマにすることができる。

格上のアウトランダーPHEVとの走行比較

エクリプスクロスPHEVと同じショートサーキットで、格上のアウトランダーPHEVも比較試乗することができた。アウトランダーPHEVは車体寸法も大柄になり、動きはエクリプスクロスPHEVよりゆったりした応答になるが、逆に長距離移動などではその落ち着きが、いっそうの快適さをもたらすだろう。



一般にSUVというと1つの印象があるかもしれないが、三菱自動車のアウトランダーPHEVとエクリプスクロスPHEVは、車格の違いに加え、モーター駆動を活かした走行モードの切り替えなどにより、それぞれに特徴を備え、SUVというカテゴリーにとらわれない多彩な魅力を味わえた。

三菱自動車は、2000年以降のトラック・バスによるリコール隠しや、軽自動車の燃費不正問題など、威信を傷つける不祥事を続け、経営に影響が及んだ。一方で、2009年には世界初の量産市販電気自動車であるi-MiEVを発売し、2005年に発売したアウトランダーがSUV人気を押し上げた。アウトランダーはフランスのPSAへ供給され、現地でプジョー4007、シトロエン・Cクロッサーとして販売された。2013年には2代目アウトランダーにPHEVを追加している。

こうした経緯を踏まえ、三菱自動車は、電動化とSUVを事業の柱に据えた。今年7月に発表した最新の中期経営計画「スモール・バット・ビューティフル」のなかでも、企業体質の改善と、ASEAN地域を中心とした収益の向上、そして環境車(PHEVとEV)商品の強化やSUVなどASEANへの新型車投入などを示している。



選択と集中による企業体質の強化と発展の経営計画の基盤として、i-MiEVを発売したことが大きな柱となっている。実は、アウトランダーPHEVもエクリプスクロスPHEVも電気駆動部品はi-MiEVを活用しているのである。ここが、電動化の面白いところだ。

軽自動車のi-MiEVと3ナンバーSUVであるアウトランダーPHEVでは、車格がまったく異なる。それにもかかわらず、同じモーターを流用できるのである。また、搭載するリチウムイオンバッテリーも載せる数を調整すれば適応でき、バッテリーの最小単位である1セルの技術は同じで差し支えない。

車格にとらわれず、活用できるPHEVの技術

もしこれがエンジン車であれば、軽自動車のエンジンを3ナンバーのSUVに使うことなど考えられない。性能がまったく足りないからだ。ところが電動ならできる。三菱自動車が歩もうとする選択と集中は、電動化を柱としたことで成り立っているのである。

アウトランダーPHEVよりやや小柄のエクリプスクロスPHEVにも、iMiEVと同じ部品が使われている。そして電気的な制御をコンピュータープログラムで調整すれば、それぞれの車種にあった走行特性を与えることができるのである。

クルマの電動化について、三菱自動車や日産のあとから追いかけようとするメーカーは、原価が高くつくと言い訳する。だが、最初にきちんとした技術を構築すれば、車種を超え、車格を超えて流用できるのである。とくに原価が高いとされるリチウムイオンバッテリーでさえ、販売するあらゆる電動車種で利用すれば飛躍的に使用量は増え、大量生産による原価低減に資することになる。

ところがそういう経験をしていないため、後続自動車メーカーはいまだ躊躇し、電動化への差は開くばかりとなっている。しかもリチウムイオンバッテリーの入手にも遅れ、発売できても生産台数を絞らざるをえない事態に陥っている。

足元ばかりを見る経営が、大手といえども10年後の存続を見通せない事態にしている。さらに東日本大震災をきっかけに、日産と三菱自動車はEVやPHEVが災害時の電力供給に役立つことを、身をもって経験した。被災した人々も電動車両の現実を体験した。

今、日産と三菱自動車は各自治体と災害協定を積極的に結び、なかでも日産は、ビークル・トゥ・ホーム(V to H)として、EVから自宅への電力供給システムを構築している。三菱自動車も電動ドライブハウスの取り組みを昨年からはじめ、EVとPHEVからの電力供給や太陽光発電との連携を開始した。



クルマの電動化は、単なる移動手段としての環境適合だけでなく、気候変動による異常気象が常態化した今日、生活を維持し、安心した日々を過ごすための支援システムとして機能するようになっているのである。

クルマ選びの新基準、暮らしの安心を提供できるか?

三菱自動車の目指すべきは、新車の商品性を高め、企業体質の改善による信頼を取り戻しつつ、経営の柱の1つとする電動化のさらなる強化によって、暮らしの安心を提供する企業へ邁進することである。

そのうえで、新車開発のもう1つの柱である、4輪駆動とS-AWCによる走行安定制御は、異常気象や災害時における緊急の移動も確保する可能性を広げることになる。

世界的な冒険ラリーであるパリ~ダカールで、2度優勝を果たした三菱自動車の増岡浩は、「三菱のクルマであれば、万一のときでも自分のクルマで家に帰れる安心がある」と語る。

万一のときを考えながらの暮らしがこの先続く可能性は高い。衣食住に加え、移動の自由が生活を守ることは新型コロナウイルスの広がりでも明らかになった。これに異常気象が加わるとき、クルマ選びは新たな視点が必要になってくるだろう。

(御堀 直嗣 : モータージャーナリスト)

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cat_11_issue_oa-toyokeizaionline oa-toyokeizaionline_0_p138otp7wb35_ニコ動生みの親「企業の一番重要な役割は雇用」 p138otp7wb35 p138otp7wb35 ニコ動生みの親「企業の一番重要な役割は雇用」 oa-toyokeizaionline 0

ニコ動生みの親「企業の一番重要な役割は雇用」

2020年11月18日 11:30 東洋経済オンライン

「ワード・ポリティクス」という言葉がある。アメリカには「ワード・ポリティクス」に長けたリーダーが多い。たとえば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2001年9月11日に「同時多発テロ」が起きたとき、「民主主義国家に対するテロリストたちとの戦争」だといい切り、国民を1つにした。アメリカ国民の心をつかんだバラク・オバマ大統領の「Yes, we can.」は記憶に新しい。日本でも「自民党をぶっ壊す」と叫んで高支持率を得た小泉純一郎首相には、天才的な「ワード・ポリティクス」のセンスがあった。

企業の経営にも「ワード・ポリティクス」が必要である。とくに時代の転換期や危機的な時期には、従業員や株主、そして社会を納得させ、共鳴させる決め手となる「言葉」が必要である。躍進する企業の経営者たちの多くは、私たちを唸らせる言葉、すなわちシンプルな「成功哲学」を持っている。

『伝説の経営者100人の世界一短い成功哲学』ではそうした言葉が数多く紹介されている。本稿では、同書から一部抜粋してお届けする。

「ニコニコ動画」に明確な方針はない

企業の社会的役割で一番重要なのは雇用です。 だから、人数が多いのはいいこと ♯川上量生 (ドワンゴ会長)

川上量生(かわかみ・のぶお)
1968(昭和43)年、愛媛県に生まれる。1991(平成3)年、京都大学工学部卒業、ソフトウェアジャパン入社。同社の倒産後、1997(平成9)年、ドワンゴを設立する。2015(平成27)年、KADOKAWA・DWANGO社長に就任。現在、ドワンゴ顧問。

「あまり考えてませんね。明確な方針は出してないです」

ドワンゴ会長の川上量生から、いきなり意外な答えが返ってきた。ドワンゴといえば、「ニコニコ動画」という画期的なメディアをスタートさせた会社である。私は、当然ながら、ドワンゴが、そして「ニコニコ動画」が目指すものを聞いたのだった。

「僕の仕事のスタイルはサラリーマンです。サラリーマンは何かといったら、与えられた仕事をこなすことです。ドワンゴは着メロと『ニコ動』で大きくなった会社ですが、どちらも僕がやりたいからやったわけじゃない。このままだと会社が潰れるから、何か新しいことをやらなくちゃいけないと、必要に迫られてやっただけですよ、本当に」

川上は、つまり何か夢があるわけではなく、売れるサービスを作ろうとしただけだという。しかし、それでも川上は私たちが驚くようなものを世に出してくる。「ニコ動」については、「動画生放送で勝負しようと思って、その前にテストで動画サービスを作ったら、当たってしまった」そうだ。凡人としては、何やら悔しい気分になる。

私は、「ニコ動」は新しい時代のテレビ局を目指しているのかと思っていたのだが、川上はきっぱりと否定した。

「それは考えたことがないです。テレビ局や新聞社と同じことをするなら、別に要らないじゃないですか。ドワンゴはエンターテインメントの会社です。『ニコ動』で既存のメディアの人たちがやらないことを平然とやってみれば、面白いかな、と」

その一例が、政治家の小沢一郎を出演させたことだろう。当時、小沢はメディアから大批判され、叩かれまくっていた。そのため川上は、小沢を出演させたことによって批判されたという。

「政治家は人をだますのだから、メディアが発言をそのまま流すのはおかしい、と批判されました。でも、それは見ている人が判断すること。だいたい、政治家は嘘をつくといっているメディアの人たちが、見識が高いようには見えない。僕は、批判されている人、もうメディアが絶対にいいことは書いてくれない人にこそ、『ニコ動』に出てもらうべきだと思っています」

2014(平成26)年、ドワンゴはKADOKAWAと経営統合した。取材した2015(平成27)年現在、社員が3000人の大所帯になっている。多すぎる気もするのだが……。

「本当ですよね。でも、企業の社会的役割で一番重要なのは雇用です。だから、人数が多いのはいいこと。うちは多すぎますが、それだけ社会のために役に立つ人間を雇っているわけだから、多すぎることに胸を張ってもいい。もちろん、その分、儲けます」

具体的には、ゲーム事業、そして教育事業と展開していく、と自信にあふれる表情で語った。それは自らがいう「サラリーマン」というより、経営者であり、事業家の顔だった。

川上の語った教育事業とは、2016(平成28)年に開設した通信制の「N高等学校」のことだ。川上は「生徒が誇りを持てる通信制高校にしたい」と語っていた。その言葉どおり、ユニークな教育内容が評判を呼び、いまや全国で1万人以上が学ぶ人気校となっている。

ライブドアとはどこが違った?

自分の金だから好きにやっていいだろうとなってしまうと、不快に思う人もいる。社会に生きている以上、そういうところも考えないと #藤田晋 (サイバーエージェント創業者)

藤田晋(ふじた・すすむ)
1973(昭和48)年、福井県に生まれる。1997(平成9)年、青山学院大学経営学部卒業。人材派遣会社勤務後、1998(平成10)年、サイバーエージェントを起業。2000(平成12)年、当時史上最年少の26歳で東証マザーズ上場。ブログやネット広告事業を展開。

藤田晋。ライブドア元社長の堀江貴文と同時期にインターネットビジネスの世界に躍り出た。「堀江世代」であり、盟友であったという。その堀江はマスコミに叩かれた挙げ句、逮捕、有罪になった。しかし藤田は、危なげなく、着実に成功を積み重ねている。いったい、2人は、どこが違ったのか。私は、率直に聞いてみた。

「藤田さんのところと、ライブドアはどこが違ったんだろう?」

「ブログは、うちも含めて、ニフティ、ヤフー、ライブドア、楽天と、一斉にスタートしました。横一線でしたが、ライブドアが頭一つ抜けかけた状態でした。彼らは技術力が高かった」

ネットの世界に疎い私にはよくわからない。「ブログの技術力」とは何なのか。

「簡単にいうと、技術力がないとサーバーが重くなって、アクセスして読み込むのに時間がかかるんです。ライブドアは、それが速かった。いつも、われわれの一歩先を行っていました」

そのライブドアを作り上げた堀江は、藤田にとって、どういう存在だったのか。

「堀江さんはライバルであり、仲間でもありという感じでした。僕たち、もともと一緒にやっていたんです。うちは、営業力はあるけど、技術力がない。堀江さんのところは、技術力はあるけど、営業力は弱い。そこで、組んで事業をやっていたのです」

大事なのは、いいときに傲慢にならないこと

その後、それぞれに独立。藤田のサイバーエージェントが、技術力など弱点を克服し、順調に利益を上げている秘訣を聞いた。

「いいときに傲慢にならないことが大事ですよね。いいときって、プライドが高くなったり、けっこういろんな人を怒らせたりしてしまう。短期的な評価に満足して、長期的に手を打っておかなければいけないことをやらなかったりもする」

答えづらいだろうが、私はあえて質問してみた。堀江は絶頂期に傲慢だったと思うか。

「うーん……」と藤田は黙ってしまった。真面目なのだ、と思った。質問をやや変えた。

「なぜ堀江は叩かれて、あなたは叩かれなかったの?」

「田原さんは、堀江さんについて、よくネクタイの話をされるじゃないですか。だから今日はネクタイをしてきました」

藤田は、少しはぐらかすようにいって、笑った。

私は、ネクタイを締めないことが悪いこととは思わない。ただ、彼が球団を買えなかったのはネクタイを締めなかったからだということは、真実だと思っている。

「堀江さんは、人がどう思うかということをあまり考えないですからね」

そう藤田はいった。私は、それが堀江のいいところだと思う。そう伝えると、藤田はこう返した。

「いいところであり、考えなくちゃいけないところでもあると思います。自分の金だから好きにやっていいだろうとなってしまうと、不快に思う人もいる。社会に生きている以上、そういうところも考えないと」

「愚直」。IT企業の社長とは一見似つかわしくないが、藤田には、この言葉がよく似合う。

注)本稿に登場する経営者の肩書は、私の記憶に最も印象付けられている当時のものとさせていただいた。そのため、短い略歴も同時に掲載させていただいた。

(田原 総一朗 : ジャーナリスト)

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コロナ閉店「退去費用・違約金」のリアルな中身

2020年11月18日 11:00 東洋経済オンライン

新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの飲食店が閉業に追い込まれています。
青森県で飲食店を5店舗営んでいたものの、それらを全店舗閉店して会社を清算し再出発を選んだ経営者の福井寿和氏が、『全店舗閉店して会社を清算することにしました。』を出版しました。決断の背景や倒産の具体的な方法、これからの人生の展望についてつづられています。本稿では同書から一部を抜粋しお届けします。

商業施設への解約申し入れ

会社を清算すると決断してから真っ先に取り掛かったことは、賃貸契約をしている大家さんと商業施設への退店申し込みでした。大半が契約解除の申し入れから3〜6カ月後の解約となるため、出費を抑えるためにも、1日も早く申し入れをする必要がありました。また、飲食店は退店するときにも大きな費用がかかるため、実際にどれだけの費用が必要になるかの確認も早めにしたかったのです。

飲食店の退店費用は大きく2つあります。1つは、契約期間に対する違約金です。 路面店に出店する場合は、一般的に3〜6カ月前の告知で解約することができます。しかし、商業施設内に出店する場合、あらかじめ定めた契約期間を満了せずに解約すると、その経過年数により違約金が発生するような内容になっています。今回は、7年契約のうち2年しか経過していない店舗もあったために、違約金が数百万円になることがわかっていました。

2つ目は、原状回復費用です。内装をそのまま引き継ぐ形の居抜き物件を契約していない限りは、店舗の内装設備がまったくないスケルトンに戻してから明け渡さなければなりません。私が経営していた店舗の面積をすべて合わせれば、100坪以上あります。そのため、すべてスケルトンに戻すとしたら、数百万円かかってしまう可能性がありました。

5店舗のうち2店舗は路面店、3店舗は商業施設内にありました。路面店は、解約申し入れから3カ月後に解約になる契約になっていたため、費用は最大でも家賃3カ月×2店舗分、原状回復にかかる費用は100万円程度の見込みでした。路面店については、解約申し入れは、仲介してくれた不動産屋2社に連絡しました。2社とも私の状況を考慮してくださり、大家さんと最大限調整してくれました。結果、いずれも契約時に最初に払い込んだ敷金を相殺する形で追加費用は不要にしてくれたのです。

ただ、2店舗とも大家さんからは「できれば契約を続けてほしい。しばらく家賃はいらないから続けてもらえないか?」と打診がありました。正直、この話を聞いたときは心が苦しくなりました。このタイミングで退去したら、このご時世では、次に入居してくれる人はなかなか見つかりません。最大限の迷惑をかけないために会社を清算する選択だったのですが、大家さんには申し訳ない気持ちを伝えることしかできませんでした。

路面店の1店舗は、同じ建物に大家さんが住む「住宅+店舗」の物件でした。 お店をオープンしたとき、大家さんのおばあちゃんとはよく会話をしていました。従業員に店舗を任せてからも、従業員がおばあちゃんとコミュニケーションを取ってくれたおかげで、解約の申し入れをしたときには「今まで楽しく話をしてくれてありがとう」と感謝の言葉をもらいました。

「お店のにぎわいが好きだったから、なくなるのは寂しいね」。最後にそう言われたときは、本当に胸が詰まりました。おばあちゃんは店舗前の掃除や共用部分の手入れを毎日欠かさずやっていました。それだけ、お店を大事に思ってくれたのだと思います。高齢のおばあちゃんだっただけに、生きがいを奪ってしまったような複雑な気持ちを今でも思い出します。

取引先には誠実に向き合うことが大切

問題は商業施設の解約でした。3店舗のうち1店舗は、契約期間の関係で違約金が発生しませんでしたが、残りの2店舗は契約期間がまだまだ残っていました。このまま解約を申し入れた場合、違約金だけで2店舗合わせて600万円程度、さらに原状回復費用も含めれば、総額900万〜1000万円ほどの費用がかかる見込みでした。このまま全額負担すれば、最終的にほとんどお金が残らないまま会社を解散することになります。

私は、素直に全額負担することは厳しいこと、解約の方法について調整ができないか、営業の担当者に申し入れをしました。すると、その担当者は私の主張を理解してくださっただけでなく、「これからもっと大変になるだろうから、最大限できることをやりますよ」とさえ言ってくれたのです。どちらの営業担当者も会社に対して交渉してくださり、結果として、違約金は敷金での相殺、看板取り外しや撤去費用の実費負担のみ、原状回復は不要で解約の合意をしてくれました。心が震えるとはまさにこのことです。

今までビジネスパートナーだったとはいえ、これから退去する人に対して、最大限の対応をしてくださったのです。さくら野百貨店もBRANCH仙台を運営する大和リースも、新型コロナウイルスの影響をかなり受けていました。私が逆の立場だったら同じことができるかどうか。自分が厳しい状況であれば、退去する人に対して、回収できるものは回収しようとするのではないかと思います。

最後、店を明け渡すときには、どちらの営業の方も「また出店の機会があったらよろしくお願いします」とも言ってくれました。このご恩は一生忘れません。今、改めて思い出してみると、出店先と良好な関係を築いておいてよかったことは明らかです。仮に、出店者として横柄な態度で接していれば、解約の申し入れも厳しい結果になっていたでしょう。誰しも業績がいいときは退店することなど考えないものです。

しかし、どのようなビジネスも浮き沈みがあり、大変なときほどお互いに支え合っていかなければならないと思います。つねに退店することを考えておくべきとは思いませんが、取引先には誠実に向き合うことが大切だと感じています。何より、普段から従業員が商業施設側と良好な関係を築いてくれたおかげであり、改めて従業員には感謝の気持ちがこみ上げてきます。

(福井 寿和 : 株式会社グラバー代表取締役)

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築地本願寺「インスタ映え」カフェ大行列の理由

2020年11月18日 09:00 東洋経済オンライン

400年の伝統がある築地本願寺が今、リブランディング、ビジネスモデルの大変革に取り組んでいる。「衰退産業」の中にあって、生き残りをかけてどのように変わりつつあるのか。

一例を挙げれば、インスタ映えする「18品の朝ごはん」が評判のカフェは、女子大生からシニアまで行列ができる大人気となっている。元ビジネスマンから2015年に築地本願寺のトップに就任、数々の斬新な施策でテレビ番組「カンブリア宮殿」などでも注目され、このほど『築地本願寺の経営学 ビジネスマン僧侶にまなぶ常識を超えるマーケティング』を上梓した安永雄彦氏が仏教界の常識を超えるマーケティングについて解説する。

「顧客創造」の3つのステップ

2012年から築地本願寺の改革プロジェクトに関わるようになり、2015年に宗務長になった私は、築地本願寺を「開かれた寺にしよう」と考えました。

参拝者数が減り続け、経常収支の赤字も続いている状況で、まず取り組むべきことは「顧客創造」でした。

顧客創造、すなわち「首都圏の門信徒を拡充する」といっても、「新たに寺院をつくって檀家になってもらう」という従来のやり方は容易なことではありません。

そこで私は、人と寺院の「新しいつながり」を提案しようと思いました。私の考える「顧客創造の3つのステップ」は以下のとおりです。

(ステップ1)「開かれた寺」になり一般の人たちと「ご縁」をつくる
(ステップ2)「人生のコンシェルジュ」になって「ご縁」をつなげる
(ステップ3)「ご縁」がつながった人たちに門信徒になっていただく


ステップ1として、築地本願寺が開かれたお寺になり、広く一般の人たちに「足を運んでみよう」と思ってもらう。そうすれば今までお寺に関心がなかった人ともご縁をつくり、お寺を身近な存在だと感じてもらうことができます。

ご縁ができたらステップ2です。「お墓についてわからないことがある」「家族が重い病気になって、余命宣告を受けたので誰かに相談したい」というとき、「あのお寺なら相談しやすそうだ。話しに行こう」となれば、関係が深まっていきます。つくったご縁をつなげるということです。

その関係が継続したら、ステップ3です。「せっかくなら浄土真宗の教えを学びたい」「うちのお墓と葬儀や法要は、築地本願寺にお願いしようか」という気持ちが芽生えた人たちに、門信徒になっていただく。

こうして誕生した「顧客」――つまり「新しい門信徒」は、昔ながらの信仰心に厚い浄土真宗の門徒さんたちとはタイプが違うでしょう。

長年の門徒さんには、敬虔な信仰心を持ち、定期的なお寺へのご懇志(お布施)を欠かさず、報恩講(ほうおんこう)、永代経、盆・彼岸という節目ごとに必ずお寺にお参りをし、京都の本山にも年に1回は行くという方が大勢います。新しくご縁をつくる方々は、おそらくそういう従来の信仰行動をする人たちではありません。

でも、私はそれでいいと思っていました。なぜなら新しい顧客(新しいタイプの門信徒)こそ、これからの時代の普通の人々、お寺を支えてくださるボリューム層顧客だからです。

インスタ映えする「18品の朝ごはん」

3つのステップを実現するにあたって、まず具体化したのは、新たな複合施設、インフォメーションセンターをつくることでした。インフォメーションセンターが寛ぎと安らぎの空間になるには、心惹かれる楽しみもあってしかるべきです。総合案内や総合相談窓口があるだけでは、いくら開放感あふれる建物であっても、お寺と縁もゆかりもない人は足を運んでくれません。



そこでつくったのが「築地本願寺カフェTsumugi」。「『寺と』カフェ」というコンセプトで、法要やお参りにいらっしゃる方のみならず、「誰もが気軽に立ち寄れる場所」を目指しました。

入り口には築地本願寺のロゴがあしらわれたTsumugiの表示。店内からは大きなガラス越しに本堂を眺めることができ、ゆったりと安心のひとときを過ごせるように設計されています。

カフェは空間も大切ですが、メニューも重要です。和定食やパスタ、抹茶やほうじ茶を使ったお寺らしいスイーツなどを吟味してそろえましたが、何か、看板になるものがほしい……。

そこでカフェ運営会社プロントコーポレーションの商品開発担当者とお寺とで知恵を絞って誕生させたのが、「18品の朝ごはん」でした。最も大事な経典『仏説無量寿経(ぶっせつむりょうじゅきょう』の中で築地本願寺の御本尊・阿弥陀如来は修行時代、人々を救うために「四十八の誓願」を立てたと言われています。

そして、その中で浄土真宗がいちばん大切にしているのが第十八願。簡単な言葉で表すなら、「本当に安心できる世界(つまり浄土) に、命あるものすべてを平等に生まれさせたい」という意味合い。これこそ阿弥陀如来の根本の願いであるとして、第十八願を「本願」と呼んでいます。

本願に因んで18品と決まってから、18品を何にするか試食会をして検討したり、「ご飯とおかゆを選べるようにしよう」という意見が出たり、「定価はどうしよう」と相談したり……。

価格設定は慎重に行いました。「朝食に1800円は高すぎる」と私は反対しましたが、2017年の11月にTsumugiが1800円の朝食を出すようになると、後からオープンしたホテルのカフェの朝食もみんな1800円にそろえてきました。いつの間にか値段がこなれ、築地界隈のちょっと高い小じゃれた朝食の標準価格になったようです。市場は生き物だということを、改めて感じました。

18品の朝ごはんは、「インスタ映えする」という予想外の反応があり、女子大生からシニアまで女性が行列するほどの大人気となりました。ランチはビジネスマンもやってきますし、午後のお茶を飲みながらノートパソコンを開いて仕事をしている人の姿もあります。

まさにご縁がなかった方々とのご縁が食事を介してできていきました。

インフォメーションセンターには、カフェのほかに、しゃれた仏具や雑貨を900アイテムそろえたオフィシャルショップ、仏教の入門書、専門書、経典や精進料理のレシピ本などを販売するブックセンターが併設されています。開かれたお寺のイメージの中で仏教にも親しんでいただき楽しんでいただこうという工夫です。

総合相談窓口には係員だけでなく僧侶も常駐しています。「自分が死んだら誰がお墓の面倒を見てくれるのか」「お葬式はどうしよう」「いなかのお寺にあるお墓を東京に移したいが?」といった都会に住む誰もが抱える悩みを、気軽に相談していただける拠点となっています。

お寺にも「デザイナー」が必要 

築地本願寺は、築地のランドマークとしてもっと注目されていいはずです。歴史ある個性的な建築物はインパクトがあり、一度見たら忘れられるものではありません。

しかしそれは「見えれば」の話。プロジェクト始動前は、正門右手の築地4丁目の交差点からすら本堂の外観がよく見えませんでした。

こうして木々が建物を覆い隠し、せっかくの本堂が見えなくなり、そればかりか「入りにくい」「いや、用がないのに入ったらダメだろう」という閉鎖的なイメージも与えていました。

「木々を伐採して、広々とした開放感のある境内に変える。外からも見えるようにする。そして誰もが訪れたくなるようなインフォメーションセンターをつくろう!」

築地本願寺では、インフォメーションセンターだけでなく、境内には誰もが安心して入れてお参りしやすい「合同墓(ごうどうぼ)」の建設も予定していました。まずは見える外観から一気に変えるのです。

そうと決まれば行動あるのみですが、私は建築会社などに直接働きかける前に、デザイナーを探すことにしました。

心の拠り所という宗教の大切な役割は、目に見えないし、感じるしかない。そこで私はプロジェクト始動にあたって、トータルイメージをきちんとつくり上げてくれるデザイナー、クリエーティブ・ディレクターが不可欠だと考えたのです。

「木々は造園会社に伐ってもらおう」「インフォメーションセンターはいい設計士に頼めばいい」。こんな具合に個別にやっていたら、出来上がったときのイメージはばらばらになってしまいます。



総合的にすべてを見渡す人がいて、その指揮官のもとで「新たな築地本願寺のイメージ」をつくり上げなければ、築地本願寺の再構築――リブランディングは成功しないでしょう。

そこでお願いしたのが、現代美術作家でデザイナーの中山ダイスケさん。何人もの候補者にお会いしましたが、「私自身、お寺や宗教に興味があります」と言ってくださいました。

実績やデザインやアートディレクションの能力はもちろんのこと、私たち僧侶の考え方やセンスをくみ取り、理解する力が抜群なのです。

“カメラ女子”にも入ってみたいと思わせる場所

木々がなくなり、朗々と開けた境内は、明るい空間に生まれ変わりました。2017年11月に落成したインフォメーションセンター、合同墓のある礼拝堂はまるで現代美術館のようなのに、異形ともいっていいインド様式の本堂と不思議にマッチしています。また、境内からは有料駐車場をなくし、創建当時のデザインの石模様と芝生の文様を再現しました。

築地本願寺は私たちの思惑どおり「入ってみたいと思わせる、入りやすい場所」に変わりました。外国人観光客や一眼レフをぶら下げた“カメラ女子”など、今まで見かけなかった人の姿が見られるようになったのです。

銀座や築地でのショッピングのついでに、カフェに立ち寄る、写真を撮るために境内に入ってみるという方々が築地本願寺に親しみを持っていただくことで「ご縁をつくる」。

そのご縁をつなげる、ご縁がつながった方々との関係をさらに深めることに、私たちは日々取り組んでいます。

(安永 雄彦 : 築地本願寺代表役員・宗務長)

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ZOZO、カリスマ引退と大反省を経て描く未来

2020年11月18日 06:00 東洋経済オンライン

創業者の前澤友作氏が2019年9月に社長を電撃退任してから1年。前澤社長時代のプライベートブランドの不振、会員向け割引制度導入による出店ブランドの反発など、迷走の続いたZOZOが成長軌道に戻りつつある。

新型コロナウイルスの影響でEC(ネット通販)の需要が高まり、4月頃から「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」に出店するブランドからの販売依頼が急増。今2021年3月期は売上高・営業利益ともに過去最高を見込む。

だが、株価は時価総額が1兆円を超えていた2年前のピーク時と比べて6割程度の水準でしかなく、市場はZOZOの中期的な成長性を見極めかねているようにも映る。さらに楽天などほかのモール事業者はファッション領域を強化し、アパレル各社も自社ECの構築に注力する流れが強まっている。

競争の激しい市場環境でゾゾタウンをどう拡大させるのか。カリスマ創業者の後を継ぎ、昨年から指揮を執る澤田宏太郎社長に聞いた。

――創業者の前澤氏から社長のバトンを引き継いで1年が経ちました。

今まではよくも悪くもとにかく前澤を拠り所とした会社で、それを受け継ぐに当たり、「組織力を培わなければならない」との思いが第一にあった。会社の拠り所として何を据えるべきかと考えて、「モア・ファッション」と「ファッションテック」という軸を掲げた。ZOZOはファッション好きの人間が世界一集まっている会社だと僕は思っている。それを生かさない手はない。

一方で最近は(ゾゾタウン上で)大量に安いものを販売する流れがあり、社内の雰囲気を以前のようにグッと引き戻したいと考えていた。みんななんとなく“モヤモヤしていたもの”があったから、「われわれはファッションを盛り上げていく存在なんだ」という思いを社内で再認識できたことは大きい。

新たな“神経回路”がつながってきた

世界的に今、「ファッション×技術」が盛り上がりを見せている。当社にも技術者が増えて、NASA(米航空宇宙局)で研究をしていたような人たちもいる。技術者とファッション好きの人間のそれぞれが強み。両方の軸が会社の大きな拠り所になったと感じている。

人が想像もつかなかったことをやってみて、うまくいかなかったらまた次に行こうという会社のDNAを大事にしたかった。ただ、その先頭にずっと立っていたのは前澤だった。現場の力でDNAを受け継いでいかないといけない。

そこに関しても「ソウゾウのナナメウエ」というスローガンを最近設定した。これはまだこれから。トップダウンでやってきた会社の神経回路と、組織力を活かす会社の神経回路はやっぱり違う。1年くらい経ってやっと、その回路がつながってきたところだ。

――ゾゾタウンで商品を安く大量に売ることを重視する傾向が強まっていた、と。それに対するモヤモヤした思いは数年前からありましたか?

そうですね。会社が大きくなればなるほど、そう(大量の商品を価格訴求で売る状況に)なっていく傾向はやむをえない。売り上げを作っていくために、とにかくいろんな商材を入れていかなければいけないという側面はあった。

――前澤氏退任の直前には有料会員向け割引制度導入に反発したブランドの離脱や、PB(プライベートブランド)の失敗などの問題が露呈しました。



うまくいかなかったことを引きずっても仕方がない。「もう1回、PBに取り組むべきか?」という議論が社内であったわけでもなく、割り切りながら(PB事業撤退などを)進めていった。

ブランドさんとのコミュニケーションをもっと増やさなきゃいけない、という反省はすごくあった。それも踏まえて、ファッション企業である僕らはブランドさんと一緒に事業をやっていく必要があるという考えを、会社の方針として明確に打ち立てた。

コミュニケーションがスムーズになった

――ブランドとの信頼関係を回復できた手応えはありますか。

以前より距離感を縮められた。それはコロナの影響も大きい。ブランドさんが「(コロナ禍で来店客が大きく減り)ECがないと話にならない」というスタンスに変わり、われわれに対する期待もすごく高まった。コミュニケーションがスムーズに行えるようになった印象はある。


――楽天などほかのECモール事業者もファッション領域を強化しています。競争環境は熾烈なのでは。

ここまで愚直にファッション領域でテクノロジーを追求している会社はないと思う。最近出店が続いているラグジュアリーブランドには、「ZOZOMAT(ゾゾマット)」や「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」、ゾゾタウンのレコメンド機能など、テクノロジーの部分に興味を持っていただいている。

「うちのユーザーはこんな特徴があるので、まずこういう商品を売るのが良いのでは」などと対話しながら、商品構成を組む際に支援していることも強みだ。こういう細かい取り組みが(他のモールと差別化するうえで)意外と大事になってくる。

――今年からLVMHグループなどのラグジュアリーブランドが出店しています。これもコロナがきっかけだったのですか。

それは大きい。ずいぶん前から交渉していたが、一進一退みたいな感じだったので。これまでは日本法人と調整してから本国へ実際に行って話をする流れが多かったが、今はリモートで本国とすぐ話ができるようになった。営業環境としてはすごく良い。

またラグジュアリーブランドでも、こういう状況だと(若者などの新規顧客との)接点の確保が難しい。ゾゾタウンに対する期待で一番大きいのは、若者をとらえているところ。20代前半の顧客が多いので、そこに価値を感じてもらっている。

――ECモールはクーポンなどによる安売りの印象を持たれています。そのためブランドイメージへの影響を気にする高級ブランドは少なくありません。

お互い譲れない部分はある。ただ、以前は歩み寄りが難しかったが、今は少し歩み寄れる環境になってきている。

あとはパーソナライズの技術を今後どれだけ駆使できるか。ラグジュアリーブランドの商品をほしい人がサイトを訪れた時、カジュアルで安価な商品が画面に並んでいてもつまらない。

裏で購買履歴などを分析しながら、(顧客の嗜好や属性に応じて)トップページをまったく違う形で見せられる技術も近く実現していきたい。

ダイナミックプライシングの世界を目指す

――2010年代後半から低価格ブランドが急増し、「ゾゾタウンの印象が変わった」という声もあります。この先、低価格ブランドの出店を絞る考えはありますか?



価格帯ごとの出店数のメドについての考えは特にない。低価格帯でも「尖っていて人気のある」ブランドさんがあれば誘致する。

どちらかというと、カテゴリーにこだわりを持って(ブランド誘致も)進めていきたい。今はシューズのカテゴリーを強化している。足のサイズを3D計測できるゾゾマットの技術を使いながら新規顧客も広げていく。アパレル以外のカテゴリーを複数増やしていきたい。

――自社ECサイトでは新商品を販売する一方、ECモールでは売れ残り在庫を集中販売するなど、モールをアウトレット的に利用する風潮も一部ブランドに見られます。

自社ECとECモールはけんかするものではない。

いろんなブランドを見ながらコーディネートを楽しんで買う人と、特定のブランドが大好きで必ずそこで揃えたいという人は、それぞれ一定割合でいる。リアル店舗においても、ショッピングモールで買いたい人もいれば、ブランド直営店で店員さんと会話しながら買いたい人もいる。それらは共存するものだから、特に心配していない。

 中期的にゾゾタウンは、(需給に応じて販売価格が変わる)ダイナミックプライシングの世界を目指すべきと思っている。過去の購入履歴やアクセス数、今何を見ているかなどを踏まえて、ユーザーが今日このサイトで商品を購入する確率がわかるようになってきている。一方の商品についても「この商品は今日売り切れる」といったことがだいたいわかるようになった。あとはこの2つをどうマッチングさせるかになる。

――ファッションテックの領域では、3D計測ができるボディスーツ「ゾゾスーツ2」を10月末にリリースしました。旧ゾゾスーツでは大赤字を出しただけに、少し不安がよぎります。



僕らはものづくりをやってきた会社ではなかったから、旧ゾゾスーツとPBの取り組みで「製造業ってこんなに難しいんだ」と痛感した。大いに反省している。だから「ゾゾスース2」はとにかく計測の精度にこだわった。テストを重ねて、世の中に出しても絶対恥ずかしくないというレベルにまで到達できた。

(2020年2月に無料配布を始めた足のサイズを計測できる)ゾゾマットも自信を取り戻すきっかけになった。ゾゾマットの計測精度に関しては「すごいね」と評価してくださる声が多くて、靴の返品率も実際に下がっている。一定のレベルまでテストを繰り返してやれば、満足いくものができるという感覚ができた。

――「ゾゾスーツ2」は一般配布をせず、計測技術を活用するパートナー企業を募集しています。

旧ゾゾスーツでは、ダイエット系やヘルスケア系とか(外部から)いろんな使い方の提案を受けていた。この技術は協業パートナーを募って、遠心力を働かせたほうがうまくいくのではという考えが直感的にある。だから(今回のゾゾスース2は)技術のオープン化という道を選んだ。パートナーと協業した結果、一般消費者に配る可能性も十分ある。

前澤氏は羽を伸ばして楽しんでいる

――前澤氏は今もZOZOの株式を17%を保有する第2位株主です。経営方針について定期的に意見交換しているのでしょうか。



それはないです。彼もやりたいことがとにかくいっぱいあるから。

――先般、前澤氏はユナイテッドアローズやアダストリアの株を大量取得していましたが、そういう報告は?

いや、まったくない(笑)。僕らも報道で知りました。

――本人が会社に来ることは?

まったくないですね。上場企業(の社長)ではできなかったことを羽を伸ばしながら楽しんでやっている状況なので、僕らとしてはそれを応援したい。

「一株主として応援するよ」というお話はもちろんいただくが、「ああせい、こうせい」みたいな話は一切ない。

(真城 愛弓 : 東洋経済 記者)

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コロナ後も「お金を増やす超基本」は2つだけだ

2020年11月18日 05:30 東洋経済オンライン

コロナ禍もやや落ち着きを見せる日本。Go Toキャンペーンなどでコト消費にも戻りが出はじめ、来年にはワクチン普及も期待されている。コロナウイルスとの長期戦が予測される中、私たちはどのような考え方を軸に資産形成を考えればよいのか。そのカギは「見えない資産」と「自分と世界への投資」にあった──。投資会社の新入社員姫野が大先輩ケイさんに聞く、シリーズ第6回。

世界株式アナリスト、ファンドマネージャーを歴任し、世界30カ国を渡り歩いてきた加藤航介氏。このたび『世界を見てきた投資のプロが新入社員にこっそり教えている 驚くほどシンプルで一生使える投資の極意』を上梓した加藤氏が、「大先輩ケイさん」として、投資会社の新入社員(姫野)に、「ポスト・コロナにおける正しい投資スタンス」についてレクチャーする。

ポスト・コロナ時代でも「資産形成の基本」はたった2つ

姫野:ケイさん、こんにちは。

最近はコロナ禍での生活にも慣れてきました。私もたまには感染対策を心がけて外食したり買い物したり、メリハリをつけて生活しています。まだまだマスクは手放せませんけど!

ケイ:アメリカの大統領選も終わったし、そろそろコロナで激変した2020年以降の未来に向けた資産形成を考えるにはいいタイミングだね。

姫野:はっ! 投資や資産形成もポスト・コロナ時代を見据えなきゃならないですよね。大事なポイントはズバリ何ですか?

ケイ:本当に大事なことは、コロナの前でも後でも変わらない。

①「自分自身を磨く」こと ②「世界の自由経済の仕組みに『株主』として参加する」こと

これに尽きるよ。1つずつ説明していこう。

ケイ:まず「①自分自身を磨くこと」から考えよう。自分を磨くって当たり前に聞こえるかもしれないけど、実は、自分自身を「人的資産」として認識したうえで、その管理や自己投資を決めている人は多くない

姫野人的資産はざっくり言うと「これからいくら稼げるか」ってことですよね。たしか新人の私でも1.5億円になるっていう!

「目に見えない人的資産」現役世代なら億単位!?

ケイ:人的資産は最も身近で、かつその金額は相当に大きい。「お金の投資」を考える前に大切なのは、「人的資産の運用」、つまり「自分自身の価値を高める」ことなんだ。

姫野:若い現役世代なら億単位、リタイア世代でも年金があるから数千万円になりますよね。でも、これって意識していないとその存在にすら気づかない……。

ケイ:そうなんだ。目に見えにくいけれど、「自分自身が資産」ということを忘れないでほしい。実際の金融資産だけでなく、「働くことで自分の資産を高めていくこと」そして「年金など自分自身に紐づいている資産を理解すること」がとても大切だ。

姫野:普段は意識しない、目に見えない資産の価値を知っておくことがポイントですね。

ケイ:そのとおり。スキルアップのために勉強をしたり、人との交流を広げたり、健康に気を配ったり、自分をグローバル化することが、「自分への投資」といえる。それが、「自分の価値」や「生涯賃金」を高めていくことになるんだ。

若い人なら自分にしっかり投資をして「投資→成長→豊かさ」のサイクルを日常の習慣に取り入れることを意識しよう。

姫野:そうですね。

ケイ:今回のコロナに限らず、世の中は不安定で、絶えず変化をしていくものだ。でも、不安定さは社会が豊かになる過程でもあるから、僕らはその変化を楽しみながら機会に変えていかないといけない。

姫野「自分自身を成長させながら、社会の変化には臨機応変に」ってことですね。

ケイ:老後について不安に思っている人も多いだろうけど、将来を考えるときに大事なのは「年金」なんだ。現役世代もリタイア世代も、いくら年金をもらえるのか、そしてその年金はどう運用されているのかを理解することが、正しい人的資産の理解につながる。

姫野:私も年金のこと、ちゃんと知っておかなきゃ。でも年金の仕組みって難しいですよね。「私たちの世代はもらえなくなるかも」なんて話を聞いたこともあるし……。

ケイ:年金制度は、経過措置などによって複雑化しているし、専門的な用語が出てくるので、全体像をきちんと把握するのは簡単じゃない。でも、「自分に関することだけ」を知るのは、それほど難しくない。実際、公的年金については「ねんきん定期便」で知ることができるしね。

姫野:「ねんきん定期便」、ちゃんと見たことなかったかも……。

日本の年金が「簡単に破綻しない」理由

ケイ:いちばんダメなのは「年金が危ない!」とか「年金破綻!」とか、恐怖をあおる話を鵜呑みにして、年金保険料の納付を止めたり、あやしい金融商品に手を出したりすること。これは、本当に気をつけてほしい。

日本の年金基金の保有資産は約160兆円、これは世界の年金基金の中でもダントツに大きいことを知っている?

姫野:えっ! そうなんですか?

ケイ:世界2位のノルウェーの運用基金と比べても1.4倍、3位の中国の運用基金と比べても1.6倍という規模の、とてつもない原資があるんだ。

しかも世界に幅広く分散投資されて、とてもバランスのいいポートフォリオになっている。もちろんその巨額な資産が日本人の年金支払い以外に使われることはない。

たしかに少子高齢化はマイナス材料だけど、それはどの先進国も同じ。はっきり言って、「日本の年金制度を心配するなんてナンセンス」だと思うよ。

姫野公的年金の受給権は「人的資産」の大きな柱になるんですね。安心しました。

お給料から天引きされるのは嫌だーって思っていたけど、老後資産の一部と思えばいいわけですね。

ただ、掛け金と受給額は個人差があるから、自分のことは「ねんきん定期便」をチェックして理解するようにします。

ケイ:今度は「②世界の自由経済の仕組みに株主として参加すること」を説明しよう。

ケイ:大事なのは「みんなの社会参加が世の中を豊かにする」ってこと。
社会の豊かさは、われわれの3つの社会参加で決まる。1つ目は「働くこと」、2つ目は「選挙に行くこと」。そして3つ目が「お金での社会参加」なんだ。

世の中の人がこの3つに無関心だったら、そんな世の中が豊かになれるはずはないからね。

姫野:1つ目と2つ目はなんとなくわかりますが、どうして3つ目の「お金での社会参加」が大事なんですか?

世の中は「民間企業」に支えられている

ケイ:僕らが暮らす社会や経済は、その多くが「民間の会社によってつくられている」からだ。

モノやサービスを提供しているのも、多くの人を雇用しているのも民間企業だよね。もちろん公的機関も大事な役割を果たしているけど、民間だけでは賄えないライフラインの維持が中心だ(上下水道の運営やゴミ収集など)。

では、民間企業がよいサービスや商品を提供していくために、僕らができることは何かな?

姫野:えっ? その会社の商品を買ったりすること……でしょうか?

ケイ:それも悪くないけど、一般市民が企業を応援したり、モニタリング(監視)したりするための効率的な仕組みが「株式を持つ」ことなんだ。株を保有することが、企業を応援したり、モニタリングしたりする土台になる。

姫野:なるほど。より多くの人が株を持って応援やモニタリングをすることで、企業の経営がうまくいって、世の中が豊かになるわけですね。たしかに選挙だって、投票率が高くてみんなが政治に関心を持ったほうがいい結果になるはずだし。

ケイ:株式投資というのは、「企業の経営者を選ぶ活動」ともいえるからね。そして株式を買うときは、大切なポイントがあるんだ。

姫野:どんなことですか?

ケイ:『投資のプロが断言「日本の経営者、ここが問題」』でも話したけど、経営者と株主が「同じ船に乗る」(=同じ立場に立つ)ことがとても重要なんだ。

ケイ事業がうまくいけば両者とも利益を得て、失敗したら「その痛みを分かち合う」ってことだ。その前提があるからこそ、市民の応援やモニタリングが機能して、「会社」という船が正しく前に動き出すわけだ。

姫野:それに世界の株式会社では、経営者の給料の大部分が自社の株で支払われているから、株主と一心同体なんですよね。

でも、日本企業の場合は株でもらう比率が低すぎて、経営者と株主が同じ船に乗れていない。ここが大きな違いですよね。

世界の株式は「経営者と同じ船」に乗れる

ケイ:うん。例えば多くの人が「同じ船に乗りたい!」と思うような、今をときめく世界的な成長企業があったとしよう。

でも、それが日本企業だったら、その成長の恩恵は経営者と社員という限られた人しか受け取ることができないということになる。もちろん株主になることはできるけど、その立場は経営者と公平ではないという欠点がある。

姫野:なるほど。

ケイ:一方で、これが国外企業であれば、一般市民も経営者と同じ恩恵に与かれるよう公平に扱われる。株式投資の本当の姿とは、社会に広く開かれた、大変に公平な仕組みの上に存在しているんだよ。

姫野:残念だけど、日本での株式投資は公平なシステムとはいえないんですね。

ケイ:しかも、市民が株主になって同じ船に乗るためのハードルの高さも、国内外ではずいぶん違いがあるんだ。欧米では1株を買えば株主になれるけど、日本では100株単位と決められている。有名な日本企業の株主になるには、何百万円もの乗船料が必要なことさえある。

姫野:参加するハードルが100倍だなんて! 今の私じゃ乗船料は払えません!

ケイ:だから、今のところ「お金の社会参加」をするなら、経営者と同じ船に乗ることができる世界の株式なんだ。

姫野:そうなんですね。

①「自分自身を磨く」こと ②「世界の自由経済の仕組みに『株主』として参加する」こと

ケイさんが言っていたこの2つのポイントの意味、改めてよーくわかりました。

ケイ:結局、ポスト・コロナの世界でも、僕らがやるべき資産運用の方向性は大きく変わらない。「自分磨き」と「海外の株式投資」をしっかりやっていこう。それが本当の意味での「投資の極意」なんだ。

(加藤 航介 : インベスコ・アセット・マネジメント/グローバル資産形成研究所所長)

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日経平均が来年2万8000円になる条件とは何か

2020年11月18日 04:50 東洋経済オンライン

アメリカの大統領選挙は、現職のドナルド・トランプ大統領が依然敗北を認めていないものの、すでに民主党のジョー・バイデン候補の当選が確定的だ。

市場はバイデン氏の経済対策のどこを評価したのか?

一方、日経平均株価は大統領選挙の約1カ月前10月9日の2万3700円台をピークに「リスク警戒モード」に入り、選挙直前の10月30日に2万2900円台で半ば「フライングぎみ」に底値をつけた。

だが、その後は、マーケットにとっての今年最大のリスクイベントを通過したこと、懸念していた大統領選挙の長期化による不透明感は払拭されたこと、現地時間11月7日夜にバイデン氏が勝利宣言したことなどから、急騰を続けている。足元の日経平均株価は、2万6014円(11月17日の終値)まで急騰している。

バイデン氏の経済政策はどんなものになるのだろうか。わかりやすいところでいえば税制だ。法人税率を現行の21%から28%にするという増税政策である。それに加え、富裕層についても、資産取引課税を強化すると打ち出している。その増税分で、財政政策にお金を当てようとしている。

また、環境政策も従来とは大きく異なる。バイデン氏は2050年までの温室効果ガス排出量を実質ゼロにするとしている。また、クリーンエネルギーの推進など、環境インフラ関連で就任第1期の4年間に2兆ドル(約210兆円)の巨額投資をしてアメリカを復活させるという。

市場は、この投資金額が大きいことから「増税分のマイナスを打ち消し、景気が上向く効果のほうが大きくなるのでは」とポジティブに捉えているように見える。

もし大統領も上院も下院も民主党が3つとも勝てていたら、「4年で2兆ドル」は可能だったのかもしれないだろう。ただ、お金がない中でインフラ投資をすることになると、長期金利が1%(足元は一時0.97%)を大幅に上まわってしまうかもしれない。そうなると、景気の下押し圧力になり、株式市場からも債券市場からも資金が流出してしまう。つまり、株式市場にとってはネガティブである。

現段階で、上院では共和党が少なくとも50議席をとることが確定的だ。年明けに行われるジョージア州での決選投票(2議席)の結果いかんだが、共和党はこのうちの1議席でもとれば上院の過半数を死守することになる(民主党が2票取れば50:50で並ぶが、その場合は上院議長を務める民主党のカマラ・ハリス副大統領の1票で賛否が決まる)。

そうすれば「トリプルブルー(バイデン候補勝利、上院民主党過半数獲得、下院民主党過半数維持)」ではなくなり、「ねじれ(バイデン候補勝利、上院共和党過半数維持、下院民主党過半数維持)」が発生する。結果的に、財政投資の金額は小さくなってしまうかもしれないが、金利上昇を抑えることになるので、株式市場にはポジティブだ。

よって、今後の株式市場での物色対象は上院がどうなるかによる。すでに短期的な株価見通しは、11月9日や16日のアメリカ株式市場での株価急騰で、当面の好材料を織り込んでしまっている可能性が高い。実際、日経平均株価2万6000円前後では利食いが出ている(中期的な株価見通しは後述)。

バイデン氏は市場とどうコミュニケーションを取るのか

現職のドナルド・トランプ大統領は、SNSを駆使して、マーケットをこれまで散々驚かしてきた。大統領令も連発していた。

バイデン氏になれば、それがなくなる。つまり、マーケットは予測しやすくなるということだ。例えば、選挙公約通り、来年1月20日の大統領就任時には「パリ協定」復帰(再生可能エネルギーへシフト)、「WHO」再加入準備をすることは容易に予測できる。

また、バイデン氏は上院の長老として「積み上げタイプの長老」なので、事務方や専門家に任せ、そこから出てきたことを粛々とやるように見える。だからこそ、閣僚や専門委員会の露出度が上がるが、そこの誰がトップになるかで、方向性は自ずと変わってくるだろう。

そのほか、今後注目すべきポイントとしては、新型コロナウイルスへの対応だ。ファイザーとビオンテック社、さらにはモデルナ社が開発中のワクチンの治験で「9割超効果あり」との報道が株価を押し上げたが、バイデン氏は経済を犠牲にしてでもコロナを抑えていくのではと思われている。このように、引き続きワクチン開発等の動きがどうなるかも確認していく必要がある。

また、民主党内の左派バーニー・サンダース氏などとの関係には注意が必要かもしれない。

一方、 日本への影響で気になるところはあるか?もし長期金利が現下の約0.9%を超えて「トリプルブルー」によって金利が上がったら、企業への影響は大きくなる。投資が抑制される懸念があるからだ。

これによって、成長株が下がりやすくなる。実際、金利上昇過程では、日本の小型成長株が多く上場する「東証マザーズ市場」も変調をきたしてきた。また、未上場のベンチャー企業にも資金が回りにくくなる。

では、悪化した米中関係はどうなるか。これは恐らく、何も変わらないだろう。今回、トランプ大統領は、中国がアメリカに輸出する際の関税を大幅に引き上げた。これで、バイデン氏が引き下げたら弱腰だと言われるように、だ。

そうはいっても、上院も下院も議会は民主党・共和党ともに、中国に対しては強硬派が多数を占める。よって、本格的な「米中冷戦」が続く可能性が高い(逆に「冷戦」になるため、戦争はないと見ているが、地域紛争はあるかもしれない)。

もっともバイデン氏を含め、実は民主党のほうがトランプ政権よりも、中国に融和的な動きを過去にはしていた。そういう意味においては、日本はこれから警戒する必要もありそうだ。これまで、主にアメリカの民主党政権から、日本は「ジャパン・パッシング」「ジャパン・バッシング」を受けた苦い過去がある。

アメリカの為替政策にも注意

また、足元の為替を見ていても、一時1ドル=103円台に入ったように、やはりアメリカのドルを安くして、そして輸出競争力の向上とともに、輸入で安いものが入ってこないようにさせる政策に見える。

足元の企業決算は、エレクトロニクスに加え、自動車など製造業のモメンタムの回復が見えてきた。それはつまり、日本の輸出産業に関しては、景気が良ければいいが、厳しい側面があることも指摘したい。

足元の日経平均は急騰しており、「1991年以来29年ぶりに2万6000円台を回復」との報道で国内メディアもお祭り騒ぎだ。前述の通り短期的な調整はあるにせよ、中期的に日本株式(日経平均)に強気だ。

ただ、今の日本株式は、決して割安ではないと見るべきだ。それは主に以下の2つの理由による。①新型コロナ以降、急降下した「EPS(1株当たり利益)」の戻りも鈍く、新型コロナ前の水準には到底及ばない。②株価収益率(PER=株価を1株当たり利益で割った)では、2000年のITバブル期やリーマンショック前時の割高感はないが、過去10年間では最も割高な水準だ。

ではなぜ、中期では強気なのか?これは以下の2つの理由による。①今年最大のリスクイベントであるアメリカの大統領選を無事通過(ねじれはポジティブ)した、②新型コロナウイルスのワクチン開発期待の高まりなどにより、ずっと様子見だった海外投資家が、やっと日本株式を買い始めたことが大きい。11月2~6日の1週間で海外投資家は、現物と先物合わせて1兆0990億円の買い越しに転じた。まだ、この買いは続く可能性が高いとみる。

TOPIXがどこまでキャッチアップできるかがカギ

私自身、これまで以下のとおりに判断してきた。日経平均が2018年10月2日終値で2万4270円(ザラバ高値は2万4448円)前後になったときから「2万4000円台は売りだ」と弱気スタンスに切り替えて警笛を鳴らした。

逆にコロナショック直後の2020年3月には「1万7000円以下は買い」と強気に転じた。不透明感があった大統領選挙までは「2万4000円は重い。2万2000円~2万4000円のレンジ相場」と予想してきた。

今回、11月4日にレンジ上抜けすると見て「まずは上値2万4500円をめざす。アメリカの議会はねじれで買い」と中立から強気(短期・中期)にスタンスを変えた。

さらにレンジを抜けたことで今の相場は「青天井」であり、もう「売りの相場」ではない。2万6000円台定着から2万8000円をめざす「買いの相場」なのだ。(もちろん、投資判断は自己責任だが、)高値をつけた相場に飛び乗るか、下がったときに狙う「押し目買い」かの判断が試される局面とみている。

今後、日経平均がさらに上値を追うには、日経平均(225銘柄の単純平均、グロース株比率が高い)と比較して、大きく出遅れているTOPIX(東証1部全銘柄の加重平均、自動車や銀行などバリュー株比率が高い)が、どこまでキャッチアップできるかがカギになりそうだ。

その意味では、内需の底上げになるGoToキャンペーンや景気対策にも期待が集まる。2018年10月2日高値1838はもちろん、同年1月23日高値1911ポイントをいつ上抜けしてくるのか、期待を込めて見守りたい。

現在、マーケット参加者は、低い1株利益水準や高いPER(株価収益率)で見ると割高に見えてはいても、それ以上に「コロナを克服する(遅くても)数年後の業績をイメージする」というように、スタンスが強気に変わった。日経平均が2万6000円を突破したことで、来年の2021年には2万7000~2万8000円も夢ではなくなりつつある。

ただ、日本株式にとって短期的なリスク要因は、世界的なコロナ感染拡大(ロックダウンによる経済封鎖、死亡者の拡大)による世界景気の低迷などだ。また債券市場ではアメリカの長期金利上昇、為替はバイデン政権のドル安(円高)政策などが気になる。株式ではもちろん上昇したアメリカ株式の下落だ。マーケットに絶対はない。リスク要因をしっかり見極めながら、しっかりと相場に挑みたい。

(糸島 孝俊 : 株式ストラテジスト)

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