都内随一の繁華街、銀座。多くの人が行き交うこのエリアには、舌の肥えた食通を唸(うな)らす名店が点在している。前回配信に続き、タイムアウト東京が厳選した、絶品料理を味わえる店を紹介する。
煉瓦亭
銀座ガス灯通りにひっそりと佇む老舗洋食レストラン、煉瓦亭は1895年に創業。現在の洋食文化の元祖と言われる店だ。もともとは西洋料理の店としてスタートしたが、日本人の好みに合わせてメニューを試行錯誤していくうちに、とんかつやオムライスなどの人気メニューを生み出していった。『元祖ポークカツレツ』は、牛肉を使用したフレンチのカツレツを、日本人に馴染みのあった豚に代え、天ぷらに着想を得て、たっぷりの油で揚げるようにアレンジ。とんかつには欠かせない千切りキャベツも、もともとは日露戦争時に人手不足から手間を省くために生まれたという。レトロな店内で歴史に思いを馳せながら味わえば、馴染みのメニューも新鮮に感じられるだろう。
資生堂パーラー 銀座本店
調剤薬局として銀座の地で創業した資生堂は、店内の一角に日本初のソーダ水やアイスクリームを提供するソーダファウンテンを設置したことから飲食業を発展させていった歴史を持つ。ギャラリーやカフェが入る東京銀座資生堂ビルのクラシカルなレストランに足を踏み入れれば、ファストファッションの店が建ち並ぶ街に姿を変えてもなお、銀座は特別な街なのだと感じられるだろう。伝統的な洋食メニューに目移りするが、やはり『オムライス』の赤と黄色のコントラストには目を奪われる。均一に焼き上げられたオムレツ、こだわりのチキンライス、特製トマトソースをバランス良くスプーンに乗せ頬張れば、思わず顔がほころんでしまうだろう。
銀座鳥繁
焼鳥店が多くひしめく銀座の地では、どこで食べようか迷ってしまう人は少なくないはず。そんな人におすすめしたいのが、銀座6丁目、バーニーズ・ニューヨークのはす向かいに位置する鳥繁だ。現店主で3代目となるこの焼鳥店は、銀座の地で80年以上続く、歴史ある店。定番の串をあまねく楽しめるコースメニューもおすすめだが、好きな串をあれこれ頼むのもいいだろう。なかでも、塩とたれで味わいが異なる『つくね』は是非とも味わいたい。寒い時期に登場する『鶉』や野生の『青首鴨』、『寒雀』といった野趣溢れる焼き物も絶品で、酒が進むこと間違いなし。もしも日本酒の燗(かん)が好きなら、まるでシェリーを注ぐベネンシアを思わせる熟練の技で純銀の薬缶から酒をグラスへと注ぐ『燗酒』をお忘れなく。ここを訪れたら最後は『名物ドライカレー』で締めよう。人気の品につき、最初の注文時にオーダーするのが肝だ。
イバイア
3年前に東銀座にちょこんと開店したイバイア(Ibaia)は、グリル肉専門のビストロとして人気だ。人気店の仲間入りを果たせたのは、大きな肉の塊に奇跡を起こすシェフがいるからこそ。オープン後、ひとたび彼のその才能が披露されると、客が絶賛。高級過ぎないエリアに隠れ家のようにたたずんでおり、20席ある店内は常に満席だ。常連はハーブとガーリック入りのパン粉をまぶして黄金色になるまで焼いたオーストラリア牛の厚切りヒレ肉に、完熟トマト、赤ワイン、ポルト酒などを使ったソースを添えた『牛のヒレカツ』などを求めて通う。もう1つの傑作は、アペタイザーの『牛ハツのスパイシー串焼き』。大きめの牛ハツ3つを刺した串2本を、両面に焦げ目が付く程度まで炭火焼きし、パプリカ、玉ねぎ、ハラペーニョをトッピングした一品は、軽くいぶされた柔らかい牛ハツにスパイシーなトッピングが絶妙に合う。
レンゲ
高級店が立ち並ぶ銀座エリアに建つビルの9階にあるレンゲ(Renge)は、小さな店内にオープンキッチンとカウンター席、小さなテーブル席が並ぶ。なんといっても斬新なのは、同店で提供される料理だ。西岡英俊によるオリジナリティー溢れる上海料理が注目を集めている。和菓子屋、イタリア料理、スペイン料理、日本料理、中華料理の店で多岐にわたる経験を積んだ末に、彼が極めたのが中国料理だった。正統派の上海料理をベースに、シェフの多様性のあるバックグラウンドが凝縮された料理を提供している。営業はディナーのみ。