国民的アイドルグループ・乃木坂46。2011年のグループ結成から今年で10年目を迎え、初期メンバーが次々と卒業する中でも若手メンバーの活躍が著しく、変わらない人気を保っている。乃木坂46がなぜ長期間に渡り人気を維持し、グループ内での“世代交代”に成功したのか探る。
簡単ではないアイドルグループの“世代交代”
今年で結成23年目のモーニング娘。や15年目のAKB48をはじめとして、メンバーの加入脱退を繰り返し、アイドルグループが長期間に渡り活動することは、今でこそ当たり前のものとなっている。
しかし、グループ内の世代交代は簡単なことではない。モーニング娘。は2012年頃から、9期10期といった若手メンバーを主体にグループのイメージを再構築。多くの女性ファンを獲得するなどV字回復を果たしているが、それまで、メディアへの露出が減っていた期間もあった。
AKB48は、結成から現在までの15年間で、約300人のメンバーが在籍。ブレイクを果たした後から入ってきたメンバーが、前田敦子、大島優子ら“神セブン”や指原莉乃のような、全盛期を支えたメンバーと同じような知名度を獲得するのは難しい現状がある。
意外と珍しい 同期で“エース”のバトンタッチ
そんな中、なぜ乃木坂46は結成から10年目を迎える今でも人気を保っているのだろうか。その理由の一つに、乃木坂46では初期メンバー・1期生の中で“エース”メンバーが引き継がれている点がある。
結成当初は、生駒里奈が5作連続でシングルのセンターを務め、AKB48と兼任するなどグループの“看板”的存在としてグループを牽引した。
その後、白石麻衣が6枚目シングルでセンターに。ビジュアルレベルが高いという乃木坂46のイメージを定着させ、その後もモデル業や女優業などアイドル以外でも活躍し、ファン以外の一般層からの認知度も高い。
8枚目・9枚目シングルでセンターを務めた西野七瀬は、ダブルセンターを含め、メンバー最多となる全7作でセンターポジションを務め、その清楚でおしゃれなイメージでグループのカラーを象徴する存在になった。
1期生の中で最年少の齋藤飛鳥は、15枚目シングル「裸足でSummer」で初センター。明るい夏曲で若々しく新しいグループ像を見せ、現在ではグループの“エース”メンバーとして活躍。7月24日(金)発売の、小室哲哉が初めて楽曲提供することでも話題の配信限定シングル「Route 246」でもセンターポジションを務める。
約10年間に渡り、結成メンバーの中でエースポジションを受け渡してきた事例は、他にあまり例がない。AKB48では、1期生の前田敦子、2期生の大島優子、3期生の渡辺麻友、5期生の指原莉乃と、異なる“期”のメンバーが「選抜総選挙」で1位を獲得している。
グループをブレイクに導く“初期メンバー”が優位になることが多いアイドル界では、乃木坂46のように、初期メンバーが長く活躍することにより人気が長続きする。さらに、エースメンバーを上手く引き継いだことにより、グループ像を固定化させず新鮮な魅力を今でも保っている。
4期生楽曲が異例の大ヒット
若手メンバーの活躍が目立つ乃木坂46。その中でも、2018年11月に加入した4期生が頭角を現し始めている。2019年9月リリースの24枚目シングル「夜明けまで強がらなくてもいい」で4期生の遠藤さくらがセンターに。同じく賀喜遥香と筒井あやめが、フロントメンバーになるという異例の大抜擢となった。
また、白石麻衣の卒業シングル「しあわせの保護色」のカップリング曲で、4期生が歌う楽曲「I see…」のミュージックビデオがSNSを中心に話題となり、YouTubeでの公開から約4カ月で1100万回再生を超える大ヒットを記録。表題曲「しあわせの保護色」の再生回数を超えるという異例の事態になっている。
3期生も、梅澤美波、久保史緒里、山下美月がファッション誌で専属モデルを務め、俳優としても多くのメンバーがドラマや映画、舞台に数多く出演するなど、順調に活躍の幅を広げている。
ポイントは“加入期”ごとのプロモーション
このように世代交代が順調に進んでいる印象がある乃木坂46。メンバーの育成方法で特徴的なのは、加入期ごとにイベントや舞台に出演させる点にある。
3期生と4期生は、加入してまもなく「3人のプリンシパル」という同期のみのオーディション形式の舞台を経験。その後も、3期生をメインに冠バラエティ番組「NOGIBINGO!8」(2017年、日本テレビ)が放送。4期生の完全単独で、ロケバラエティー番組「乃木坂どこへ」(2019年、日本テレビ)と、コントバラエティー番組「ノギザカスキッツ」(毎週月曜夜1:29-1:59、日本テレビ)が放送されている。
さらに、ドラマ「ザンビ」(2019年、日本テレビ)に3期生が総出演。ほぼ4期生のキャストのみのドラマ「サムのこと」(2020年、dTV)、「猿に会う」(2020年、dTV)も配信された。
また、3期生と4期生は、「TOKYO IDOL FESTIVAL」や「@JAM EXPO」などのイベントに単独出演。2017年には東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて「3期生単独ライブ」、2019年5月には加入半年の4期生が単独で神奈川・横浜アリーナでの公演を開催。2019年11月には東京・代々木第一体育館にて「乃木坂46 3・4期生ライブ」を開催するなど、若手の育成に積極的な姿勢を見せてきた。
このように、同期だけで活動させることにより、先輩がいない環境でのびのびと個性を育み、キャラクターが確立。メンバー個人個人にグループの一員としての責任感と連帯感を生むことができる。
この方針の背景には、2013年に加入した2期生が、キャラクターの強い1期生と共に活動する中で、取り上げられる機会が少なくなってしまったことがある。“不遇の2期”と「乃木坂工事中」(テレビ東京系)の中でも呼ばれ、昨年6月には「あらためて知って欲しい!2期生のいいところ」と題し、2期生のフィーチャー回が放送されたこともあった
白石麻衣が1月に卒業を発表、同じく1期生で長年グループを支えてきた功労者・中田花奈も10日に卒業を発表するなど、初期メンバーの卒業が続く乃木坂46。しかし、2月に新4期生5名も加入。若手メンバーの活躍によるさらなる飛躍に期待したい。