皆さんは、プロギング(PLOGGING)をご存じだろうか。2016年にスウェーデン出身のアスリート、エリック・アルストロム氏が始めたもので、一言で説明するなら、「ランニングをしながらゴミを拾う」というものだ。
誰もができるシンプルなフィットネスであることと、健康志向と環境問題への注目度の高まりとの相乗効果によってスウェーデンで人気に火がつき、ヨーロッパ、アメリカ、アジアへと拡大。日本でも、〈プロギングジャパン〉が発足し、定期的にイベントが行われている。実際に、普段行っているランニングにゴミ拾いが加わるだけで、心身が得られる恩恵は大きくなる。
「ゴミを拾うことで走るペースに変化が生まれて心肺機能のいいトレーニングになりますし、スクワットやランジの姿勢でゴミを拾えば下半身の筋トレになります。たとえ走るのを途中でやめてしまっても、社会貢献できたという充実感が残るはずです」
とプロギングジャパン代表の常田英一朗さんは言う。SDGs時代のフィットネス、楽しんでみませんか?
取材・文/神津文人
初出『Tarzan』No.812・2021年6月10日発売
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オトコも美容を楽しむ時代。けど一体、何をすれば? 美容の知識は負け知らず、ライター・モリヤマ姉が編集部アサクラにビシバシ指導! 今回のテーマは「肌荒れ」について。
美容ライター:モリヤマ姉
女性誌や美容誌を中心に、フリーランスで活動中。まだ見ぬ優れたコスメを探し求め、いいと聞いたものは世界各地からお取り寄せするほど。
『ターザン』編集部:アサクラ
山梨県出身、花粉症育ち。昨年末より『ターザン』編集部に在籍。コロナ禍によるマスク生活で、人生初めての肌荒れを経験。薬局が好き。
アサクラ マスク生活も2年目突入ですが、僕、人生初の肌荒れをしまして(涙)。
モリヤマ姉 あら、遅れてきた肌荒れデビュー? おめでとう…ではないわね。で、アサクラくん、まず洗顔はどうしてるの?
アサクラ えっと…水でサッとすすぐだけですけど。
モリヤマ姉 はい、ダメ〜! マスクの中は蒸れやすくて汗もかくから、毎日汚れを落とさないと。それに肌荒れは炎症を起こしているのと同じだから、なるべく摩擦をかけないことも大事なの。
アサクラ あ、この洗顔料(〈Curél〉)、泡で出てくるから楽ちん〜。ヒリヒリとかつっぱりもなくて、なんかいい感じ。これなら毎日続けられるかなあ。
モリヤマ姉 その後に使う化粧水も低刺激性のもの(〈Carté HD〉)で、肌を優しく包み込むように保湿をしてね。
アサクラ これ、めちゃくちゃ肌当たり柔らかくて、なんか荒れた肌が癒やされてくような…。
モリヤマ姉 もし赤みが気になるなら、鎮静効果のあるヨモギのマスク(〈I'm from〉)でケアもおすすめよ。
アサクラ え、薬草みたいな匂い!! あ、でも少し置いてから洗い流すと、赤みが落ち着いて…る?この、鹿?(〈CICA method〉)ってやつも鎮静アイテムですか?
モリヤマ姉 “シカ”ね(笑)。薬草のツボクサのことで、肌の再生を促してくれるの。
アサクラ 荒れた肌を落ち着かせてくれるってことか〜。ちなみに、「ピンポイントでニキビに効く!」みたいなのってあるんですか?(笑)
モリヤマ姉 ま〜たラクばっかりしようとして。そんなときはプロテインじゃなくて、こちら。薬用バーム(〈IHADA〉)を塗って保護しておきなさい。
アサクラ おお〜! 保湿力が高くて、肌が守られてる感じ! これ全部使えば、すぐに治るかな?
今回のおすすめコスメ5選。
Curél
肌を健やかに保つ必須成分「セラミド」を守りながら、肌荒れの原因となる汚れや汗を優しく洗い流す。消炎剤入り。《キュレル 潤浸保湿 泡洗顔料》医薬部外品。150ml 1,320円(編集部調べ)。花王。
Carté HD
水分を保持するヘパリン類似物質が肌のバリア機能の回復を促し、マスク等でゆらいだ肌を立て直す。《カルテHD モイスチュア ローション》医薬部外品。150ml 1,980円。コーセー マルホ ファーマ。
I'm from
ジェルマスクの中には、粉砕したヨモギの葉パウダーが。顔全体に厚めに塗り、5~10分後に洗い流すと荒れた肌が穏やかに。《アイムフロム フェイスマスク(M)》110g 3,850円。アリエルトレーディング。
CICA method
日本製のツボクサエキスのほか、6種の植物由来エキスを採用した軽やかなクリーム。みずみずしい感触で荒れた肌にも心地よく馴染む。《シカメソッド クリーム》医薬部外品。50g 1,650円。コジット。
IHADA
高精製されたワセリンと肌荒れへの有効成分を配合した薬用バーム。少量でのびが良く、気になる部分に密着。《イハダ 薬用バーム》医薬部外品。20g 1,485円(編集部調べ)。資生堂薬品。
photos: Tomoo Ogawa text: Kazuko Moriyama
初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売
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クルマとスポーツシューズ。「自分の思うように走れる」二足のわらじを温めていたというわけか。
〈マツダ〉と〈ミズノ〉が共同開発した新コンセプトのドライビングシューズ《マツダ/ミズノ ドライビングシューズ》の予約受注が2021年7月6日(火)よりクラウドファンディングサービス〈Makuake〉にて開始。商品が届くのは2022年3月末予定。
床面に踵を着け足首を伸ばし足裏で「ペダルを踏み込む」、そしてつま先を引き上げて「ペダルを戻す」、床に着けた踵を中心に「ペダルを踏みかえる」といったクルマの運転における足の基本動作のサポート機能とクルマを降りてからの快適性を両立したシューズ。
足首周りにはミズノが培ってきた競泳水着の姿勢制御技術を活用し、伸縮性の高いストレッチ素材を採用。ストレッチ素材ならではの伸びを抑える反力により踏み込み時に力加減がしやすくなるため、緻密なペダルコントロールが可能だ。
また同様に生地の伸縮性がつま先を引き上げる際の前脛骨筋の働きをサポートすることで、アクセルペダルとブレーキペダルの踏みかえがしやすくなるという。
アウトソールでは踵部分に丸みを持たせ、アッパーの側面部や後方部まで巻き上げることで床面との接地面積が増えて足の接地が安定。また、踵を軸にして足を前後左右に動かしやすくなり、ペダルの踏み込み、踏みかえ操作がスムーズになる。
ミッドソールでは上面をアウトソールと連動する凹凸構造にすることで足裏のペダルフィーリングを高めつつ、薄く硬いソールばかりの従来のドライビングシューズでは除かれていたクッション性も確保。
ドライビングに求められる繊細な足裏感覚と普段履きに求められる快適さも兼ね備え、「人とクルマが一体になる走り心地」と相成った。
この肉体関係の深みには、足を踏み入れてみたくなる。
文/本田賢一朗
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ストレッチ本のベストセラーを生んだ漫画家・崎田ミナさんが普段行っているヨガ&ストレッチのセレクションを描き下ろしイラストでご紹介。今回は「腕ねじねじメンテ」です。
教えてくれた人
腕ねじねじメンテ
肩甲骨と鎖骨と上腕骨は繫がっているので、腕を動かすとこれらがセットでほぐれます。四十肩予防にも有効。私は歩きながら行うこともあります。
好きな種目を好きなときに、でOK。
分かりやすいと評判のヨガ&ストレッチ解説で知られる崎田ミナさん。ヨガとの出合いは8年前に遡る。
「当時はひどいうつ状態。自律神経も乱れて全身ガタガタでした。そんなとき、パートナーのすすめで前から興味のあったヨガの体験クラスに参加したんです」
始めてすぐにリフレッシュ感を実感した。やがて1か月に一度のジム通いが2週間に一度、週に1度、週に2度とどんどん頻度が高まった。
「1年もすると大きな変化が起こっているなと感じました。8年も通っていた心療内科の先生に抗うつ剤の代わりにヨガやウォーキングを続けなさいと言われたんです。今でも完璧に健康というわけではないですよ。
性格的に“緊張しい”ですし神経がピリピリしやすいので波はあります。ただ、ヨガやストレッチという対処法を持っていることはすごく強みになると思います。
やる時間や頻度は気にせず、好きなときにやって気持ちよかったらそれでOK。心の健康にはそれくらいのつもりで十分です」
そんな崎田さんが選び抜いたポーズ10選を順次公開予定。好みの種目を、お好きなときにどうぞ。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/崎田ミナ
初出『Tarzan』No.810・2021年5月13日発売
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肉体表現の究極形の一つであるポールダンスを支えるのは、浮世離れしたモビリティ(可動性)。第一線を突き進む小源寺亮太さんがパフォーマンスを追求すべく、日々実践するルーティンとは。(雑誌『ターザン』No.810〈2021年5月13日発売号〉より全文掲載)
オタク的に追求した可動域。
一本のポールを中心に展開される、小源寺亮太さんの芸術的なパフォーマンス。重力を感じさせない浮遊感と観る者を引き込む世界観で、ポールダンスの国際大会で優勝を飾ったトップダンサーが、モビリティ(カラダの可動性)の重要性を強く感じる瞬間とは。
「一瞬一瞬の動きの繋がりで一つのパフォーマンスが完成されるので、常に重要性を感じます。カラダを伸びやかに使って魅せるには、モビリティは間違いなく不可欠。とはいえあくまでスポーツでなく表現の領域なので、そのダンサーがどんな美学を追求したいかにより重要度は変わるもの。僕に関しては可動域をオタク的に追求しています(笑)」
表現力や技術に加え、資本となるカラダやモビリティにも磨きをかけ続けたからこそ、世界の頂点に上りつめられた。
「関節の可動域や筋肉の柔軟性を高めるためのケアを徹底した結果カラダが進化すると、今までのパフォーマンスとは全く違うものに生まれ変わる。それが何より楽しいんです。
モビリティを強化すれば、また新たな表現に到達できます。“この技ではこんなカラダのラインを出したい”と思うから、ストレッチをする。取り組む目的が僕の中では明確なので、コンディショニングは全く苦ではありません」
空中で意のままに舞う小源寺さん、そんな彼の理想のカラダとは?
「体幹が強く、しなりとバネの利いた竹のようなカラダ。筋肉の柔軟性は高いほどいい、というものでなく弾力性も必要なので、日々入念にケアすることがやっぱり大切です」
男性は女性より筋肉量が多いために柔軟性も低いといわれるが、小源寺さんは例外に違いない。
「いえ、僕はもともとカラダが硬いし、体育の授業もサボるほど運動嫌いな子供で…。唯一小学校高学年からダンスを始めましたが、運動というよりは遊びの延長で」
と、意外な言葉。ダンス中の姿を思うとにわかには信じがたい。
「モビリティのことを意識し始めたのは、ポールダンスに出合ってから。当時男性のポールダンサーは筋肉質で力強い舞が主流でしたが、僕がやりたいと思ったのは柔軟技でした。そこでカラダの硬さを改善すべく独学でストレッチを開始。
特に後屈する技に憧れて腰を必死に反らせた結果、腰痛に悩んだ時期も。モビリティは十人十色だから、自分に最も合うストレッチを探るべきでした」
生活全般でも可動域を意識。
その後専門家の話を聞いたり自ら勉強に励んで、今のコンディショニングのルーティンが確立された。
「ポールダンスは全身をフルに使うので、満遍なく、常に伸ばしてます。例えばエスカレーターに乗る間はステップの縁に立ってふくらはぎをストレッチ。外出時、カバンにはギアを7〜8個入れてます。
ランブルローラーやボール、百均の麺棒など内容は都度変えますが、最近のお気に入りはスプーンクマット。剣山のような突起がついたマットの上に寝転ぶだけで毛細血管の血流を促せるのですが、先日バラエティ番組で罰ゲームに使われていて、何とも言えない気持ちに…(笑)」
小源寺さんの“オタク”ぶりは筋金入りだ。生活全般でもコンディショニングを意識している。
「毎日1時間は湯船に浸かります。血行促進が大切だから、と言いつつ本当はお風呂が好きなだけ(笑)。食事では腸活を意識した内容に。お通じが改善されると腸骨が広がり股関節の可動域の制限が広がるように感じますし、栄養吸収がスムーズになると筋肉の質も上がります」
カラダを思った地道な積み重ねで、今の超人的なモビリティがある。
「現状維持は性に合わず、常に進化し続けたいです。モビリティについてもそう。可動域が1度広がればその分できる表現が増えるはずです」
可動域が広がれば可能性が広がるのは皆同じ。そんな想いから、読者諸兄のために、自身がよく行う椅子ストレッチを伝授してくれた!
小源寺亮太が教える、可動域を広げる椅子ストレッチ。
首〜肩のストレッチ
片手を頭頂部に添えて最初は首だけを回す。首まわりがほぐれてきたら、首は回し続けながら、肩まわりも連動させて回す。頭が前方にある時は上半身全体で覆いかぶさるように肩を内に巻き、頭が後方にある時は胸をしっかり開くのがポイントだ。
背中のストレッチ
上背部のこわばりが解けたら、次は面積の大きい広背筋を伸ばす。両膝に手をつき脚を大きく開いたら、上体を前面に倒して右肩を左膝、左肩を右膝に極限まで近づける。左右交互に反復。小源寺さんのように肩と膝を近づけるのはまさしく至難の業!
上半身のストレッチ①
背中のストレッチと足幅を同程度開いたまま上半身全体を回旋。両腕で大きな円の軌道を描くイメージで腰から上を大きく回す。椅子の座面になるべく浅く腰掛けると回旋しやすい。目線を手の指先に向けることで首まわりの筋肉も連動して伸ばせる。
上半身のストレッチ②
猫背姿勢の影響で固まりがちな脇腹を中心に伸ばす。座面に深く腰を掛け直し、右膝を曲げて座面に乗せたら、膝の方向に上半身前面を向けて、左手を膝に添える。その状態から右手を上に伸ばして目先は右手の指先へ。元の姿勢に戻り、逆側も行う。
上半身前面と股関節〜太腿のストレッチ
ゆがみやすい骨盤まわりや縮まりやすいカラダの前面の筋肉をストレッチ。椅子の脇に膝立ちになり、片足を座面に乗せる。両手で椅子をつかんで姿勢を支え、お腹から顎まで天井に向けるイメージでのけぞる。元の姿勢にゆっくり戻って、逆側も。
「椅子があると骨盤の角度を保てるので効率的です。ぜひお試しを」
取材・文/門上奈央 撮影/山城健朗 ヘア&メイク/KOUTA
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〈ライフセンスグループジャパン〉は、男性の失禁をケアする世界初の男性用骨盤底筋トレーナー《ウイル》を7月3日から〈Makuake〉にて先行発売した。
現在、日本人の50才以上の男性の5人に一人が前立腺肥大になっており、その多くは前立腺の切除手術を受けているが、その後UI(Urinary Incontinence:尿失禁、尿漏れ)に悩む人が多い。
尿漏れは薬の服用やトレーニングなどにより半年から1年後には改善するものの、9%程度の人が完治していないとのデータもある。
また男女問わず、肥満が原因となり尿漏れになるケースも。これは内臓脂肪で骨盤底筋が押し下げられ続けられることで伸び切ってしまい、尿の排出をコントロールできなくなるのだという。
この点に着目し、伸び切ってしまった骨盤底筋をトレーニングにより強化することで尿漏れを防ごうとオランダの〈Lifesense Group〉が開発したのが男性用失禁対応製品《WIL(ウイル)》だ。
尿検知センサーを尿吸収パッドに取り付け、週一回に24時間装着して過ごし、Bluetooth通信でスマホと接続。センサーが量や回数など尿もれ状況を検知。専用アプリに記録され、分析結果が表示されるというものだ。
この結果をもとに各人の症状に合わせて提供されるエクササイズビデオに従い毎日10分の骨盤底筋トレーニングをする。アプリからは毎日のトレーニングが継続できるようリマインドも送られる。
こうした尿漏れ状況の把握、そして骨盤底筋トレーニングを16週間にわたって行い習慣化することで尿漏れ症状を改善するのが目的だ。このウイルは既に海外では販売されていて、日本では正規ルートとしてはこれが初お目見え。
〈P&Gジャパン〉が20代〜60代の日本女性4万人を対象に行った尿漏れに関する実態調査(2019年)によれば、20代でも2人に1人以上、全世代でも6割前後の人が尿もれの経験があるとの結果も出ている。老若男女誰にでも起こりうることなのだ。
誰にでも起こりうることは、骨盤底筋を鍛えることや体幹トレーニングなど誰にでもできることが効果的だともわかっている。英単語のWillには「これからの未来の話」というニュアンスがあるが、WILは未来の話をしようとのお誘いでもある。
文/本田賢一朗
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年とともに男性ホルモンは減少するが、それは性機能の低下だけでなく、全身の不調の一因にもなる。不調の出発点に肥満があって、男性ホルモンの減少を招くこともある。中年太りの放置は禁物だ。
その不調、更年期障害かも。
年のせいか近頃無理が利かなくなった。しっかり眠ったはずなのに、朝から疲労があったり、日中も気分がすぐれず、集中力は途切れがち。意欲どころか性欲さえもどこへやら。もしや病気になったのか?
女性ホルモンの減少、枯渇から更年期の女性をさまざまな不定愁訴が襲うように、男性ホルモン、テストステロンの減少していく中高年の男性にも、心身の不調があちこちに顔を出し始める。身に覚えのある男性は、下のセルフチェックを試してみるべし。
男性更年期障害セルフチェック(AMSスコア)
- 総合的に調子が思わしくない(健康状態、本人自身の感じ方)
- 関節や筋肉の痛み(腰痛、関節痛、手足の痛み、背中の痛み)
- ひどい発汗(思いがけず突然汗が出る、緊張や運動とは関係なくほてる)
- 睡眠の悩み(寝つきが悪い、ぐっすり眠れないなど)
- よく眠くなる、しばしば疲れを感じる
- いらいらする(当たり散らす、ささいなことに
- 神経質になった(緊張しやすい、精神的に落ち着かないなど)
- 不安感(パニック状態になる)
- カラダの疲労や行動力の減退(全般的な行動力の低下、余暇活動に興味がないなど)
- 筋力の低下
- 憂鬱な気分(落ち込み、悲しい、涙もろい、意欲が湧かないなど)
- 「人生の山は通り過ぎた」と感じる
- 「力尽きた」「どん底にいる」と感じる
- ひげの伸びが遅くなった
- 性的能力の衰え
- 早朝勃起回数の減少
- 性欲の低下(セックスが楽しくない、性交の欲求が起きない)
各項目を「ない」1点、「軽い」2点、「中程度」3点、「重い」4点、「きわめて重い」5点で集計する。合計点で男性更年期障害の重症度を判定。17~26点「ない」、27~36点「軽度」、37~49点「中等度」、50点以上「重症」。
さて男性ホルモンの出発点は脳の視床下部。ここで作られるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は下垂体を刺激して、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を作らせる。
黄体形成ホルモンは精巣のライディッヒ細胞に働きかけてテストステロンを作らせ、卵胞刺激ホルモンは精巣のセルトリ細胞に働きかけて精子の産生を促す。
だが、加齢に伴いライディッヒ細胞は減るし、視床下部ではゴナドトロピン放出ホルモンの分泌量が減るため、テストステロンはおのずと低下する。そのペースは意外に速く、25歳から年間2~3%ずつ減っていく。
テストステロンは男性を男性らしくさせる源だ。これが十分にあればこそ、健全な性欲が湧き、性機能を維持できるし、記憶力、認知力、体力を強靱に保ち、前向きな気分にもなりやすいというもの。
それが不足するとどうなるか? 動物実験ではテストステロンの受容体を働かなくすると脂肪が増え、筋量と運動量は減少した。
肥満が生み出す“負の無限ループ”。
肥満するとレプチンの分泌量が増え、これはテストステロンの合成を妨げる。さらに脂肪組織が分泌する酵素(アロマターゼ)は、テストステロンをエストロゲンに変換することが知られている。メタボとテストステロン減少は互いに相手の原因であり結果となり、いわば無限の悪循環だ。
その辿り着くところは心血管死の増加だとする報告もある。
性機能や性欲の低下を気にする中高年男性は多いが、生活習慣病予防のためにもテストステロンの減少には注意すべきだろう。
テストステロン低下の真の原因を探り、対処を。
加齢以外にもテストステロンの天敵は多く、強いストレスが続けば当然、減ってしまう。過度な糖質制限も糖質摂取過多も一因になるし、睡眠不足は言うまでもなくNG。
ここでセックスミネラルだなどと聞きつけ、亜鉛のサプリをドカ飲みするなど本末転倒。確かに亜鉛は大事な栄養素で不足は困るが、バランスのとれた食事を心がけたうえでのサプリだ。
まずは良質なタンパク質とビタミン、ミネラルを食事でしっかり摂ろう。亜鉛だけでなく鉄分も重要だし、微量栄養素では魚介、精肉などに豊富なセレン、タマネギ、ニンニクなどに多い含硫アミノ酸、キャベツ、カリフラワーなどアブラナ科の野菜もテストステロンの強化に役立つという。
運動習慣の確立、維持はもちろん重要だが、この年代には強度の高いトレーニングはストレスになりうる。むしろ中程度の有酸素運動が推奨される。運動が面倒なら、通勤などの移動時に歩く量を、1週間で合計90分多くするなどというのもよい。
改善しなければ、専門医へ。
あれこれ試しても改善が感じられなければ専門医(泌尿器科やメンズヘルス外来)に相談しよう。血液検査で血清遊離テストステロンを測定し、8.5pg/ml未満の場合、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と診断される。
※LOHとはlate onset(発症、発病)hypogonadism(性腺機能低下症)の3語の頭文字を取ったもの。
この診断が下ると男性ホルモン補充療法が一つの選択肢となる。一般的には2~4週間に1回、筋肉注射を行い、1クール(10回)投与後の1か月後に採血し、テストステロン値を測定する。
数値が十分に改善すれば、漢方薬やサプリなどによる維持療法に切り替える場合もあるが、改善が不十分な場合は診察のうえ、漢方薬やサプリも併用しながら第2クールを続行することもある。
だが、ここで重要なのは、そもそもテストステロンが減った原因として、加齢以外に何があったかだ。医師とともにそれを探り出し、改善すべき点と十分に取り組むことなしに、薬頼りでだらだらと注射を受け続けるのはよくない。
テストステロンも最終的には肝臓で代謝されるから、使い続ければ肝機能に影響の出ることがある。また、多血症や睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがあるという。
期間を限って集中的に取り組むことが望ましい。よく効く薬でも、距離感は見失わないように。
取材・文/廣松正浩 イラストレーション/横田ユキオ 取材協力・監修/岡宮 裕(代官山パークサイドクリニック院長)
初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売
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最近、疲れ気味? それ、もしかしたら心がすり減っているのかも。何かと多忙な現代社会で健康を維持し続けるためには、心の健康に気を遣うことも大切なのです。自分のためにも、周囲のためにも知っておきたいメンタルヘルスのアレコレを、ゆうメンタルクリニックのゆうきゆう先生に伺いました。今回は、不安障害について。
不安障害の特徴は?
大勢の前で話すとき、緊張して汗をかいたり、心臓の鼓動が激しくなったりした経験はないだろうか。不安障害の特徴の一つとして、人の注目が集まることに対して苦手意識が強いということが挙げられる。これは人として正常な反応だが、過度になるとパニック障害や強迫性障害などに進展する恐れがある。事実、アメリカでは成人の約15%が精神障害があるそうだ(※1)。
心理学者のロバート・ヤーキーズとジョン・ドッドソンが考案した「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」によれば、最高のパフォーマンスを発揮するためには、適度な不安が欠かせない。だが、不安が過度になるとパフォーマンスの低下を招く原因になる。
※1… MSDマニュアル家庭版 不安症の概要 より。
私のこの不安、どのくらいのレベルなの?
「私たち医師は、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)という基準に基づいて診断を行っています」(ゆうメンタルクリニック院長・ゆうきゆうさん)
DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、国際的に利用されている精神疾患の診断基準・診断分類のこと。こちらを参考にしつつ、カウンセリングを通じて患者の経過を観察しているという。
ただし、注意しておきたいのはDSMは自己判断には使えないということだ。熟練した医師により、診断基準の一つとして使用されることを目的として作られている。
セルフチェックには、自覚症状の現れが一つの指標となる。不安が原因で息切れ、めまい、発汗、心拍数の上昇などの身体症状が発生する場合は、精神障害にまで発展している可能性があるので、メンタルクリニックで専門家の診断を受けてみてはいかがだろうか。
経験を積むことで不安は小さくなっていく。
では、個人で心掛けられる不安を軽減する方法はあるのだろうか。
「ひとつは気負いすぎないこと。注目を浴びることが苦手な人は、自分に対する評価が厳しい傾向があります。何事も、10点中3〜4点くらいで及第点だとハードルを下げてみましょう。プレゼンなどの発表の場では『この項目だけ話せればOK』というライトな目標を達成することに主眼を置くといいですね」
全か無かの思考は、結果的に自分の首を絞めることとなる。実力が伴わないまま無理に目標を高く設定してしまうとプレッシャーに押しつぶされてしまうので、実力相応を見極めることが大切だ。
加えて、経験を積むことも不安を拭い去る要素になるという。
「テレビに出演している大物司会者の人もトップアスリートも、私たちと同じ人間ですから、ときには大きなプレッシャーを受けることがあるでしょう。それでも高いパフォーマンスを発揮できるのは、それ相応の経験を積んでいるから。どんなことでも回数を重ねるうちに慣れてくるので、とにかくやり続けることも大切です」
バスケットボール界のレジェンド、マイケル・ジョーダンすらも「成功することを学ぶには、まず失敗することを学ばねばならない」という名言を残している。どんなに偉大な記録を残している人であっても、失敗はつきものということだ。
そして、失敗のなかから成功への道は見えてくる。それは不安の解消にも通じるはず。一度失敗してしまっても、焦ったり落ち込んだりせず、マイペースに回数を重ねてみよう。
教えてくれた人
取材・文/石川優太、村上広大 イラストレーション/fancomi
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ストレッチ本のベストセラーを生んだ漫画家・崎田ミナさんが普段行っているヨガ&ストレッチのセレクションを描き下ろしイラストでご紹介。今回は「ストレスメンテ」です。
教えてくれた人
ストレスメンテ
喉は動物の急所。たまに伸ばして解放するとリフレッシュします。苦手な飛行機に乗るとき緊張するんですけど、このポーズを行うと落ち着きます。
好きな種目を好きなときに、でOK。
分かりやすいと評判のヨガ&ストレッチ解説で知られる崎田ミナさん。ヨガとの出合いは8年前に遡る。
「当時はひどいうつ状態。自律神経も乱れて全身ガタガタでした。そんなとき、パートナーのすすめで前から興味のあったヨガの体験クラスに参加したんです」
始めてすぐにリフレッシュ感を実感した。やがて1か月に一度のジム通いが2週間に一度、週に1度、週に2度とどんどん頻度が高まった。
「1年もすると大きな変化が起こっているなと感じました。8年も通っていた心療内科の先生に抗うつ剤の代わりにヨガやウォーキングを続けなさいと言われたんです。今でも完璧に健康というわけではないですよ。
性格的に“緊張しい”ですし神経がピリピリしやすいので波はあります。ただ、ヨガやストレッチという対処法を持っていることはすごく強みになると思います。
やる時間や頻度は気にせず、好きなときにやって気持ちよかったらそれでOK。心の健康にはそれくらいのつもりで十分です」
そんな崎田さんが選び抜いたポーズ10選を順次公開予定。好みの種目を、お好きなときにどうぞ。
取材・文/石飛カノ イラストレーション/崎田ミナ
初出『Tarzan』No.810・2021年5月13日発売
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カラダ作りに関する知識を深める「ストレングス学園」。第4回は、全身に張り巡らされている「筋膜」の構造と、重要な役割について。
問1. A、B、C、D、Eに当てはまるものをそれぞれ答えよ。
全身の臓器、筋、神経、そして筋線維までをもボディスーツのように包み込んでいる「筋膜」。線維質がまとまったシート状の組織であり、カラダの支持や安定といった役割もあることから第二の骨格とも呼ばれている。
不良姿勢や偏ったカラダの使い方を続けると筋膜に“ねじれ”が生じ、凝りや痛みといった不調を招くことがある。そこで筋膜を正常な状態に戻し、筋肉の動きを保持する「筋膜リリース」という技法がコンディショニングの一つとして近年注目を集めている。
では、カラダの状態を左右する筋膜は、一体どんな構造になっているのか。下の断面図を見ていこう。
表皮と真皮から構成されている皮膚のすぐ下に広がるのが「浅筋膜」。浅筋膜は皮膚とその下にある「深筋膜」を結びつけ、深筋膜は主に骨格筋組織を覆っている。深筋膜は「筋内膜」「筋周膜」「筋外膜」からなり、それぞれ筋内膜は筋原線維を、筋周膜は筋束を、筋外膜は骨格筋を包み込んでいる。
よって表層のAからEまでを順に並べると、浅筋膜→深筋膜→筋外膜→筋周膜→筋内膜が正解。構造を理解することで、筋膜炎などの障害がどこで起きているかを探るうえで大変役に立つ。
問2. 筋膜の役割のうち、誤っているものはどれか?
- 筋肉や骨格、内臓、血管を支持・安定させる。
- 老廃物を排泄する。
- 細胞を保護し、細胞内部の状態を維持する。
筋膜には筋肉と骨をつなぎ止める、臓器を包み込んで正しい位置に収めるといった大きな役割があるが、そのほかにも重要な働きがある。
まず1つ目が、カラダの支持・安定だ。そもそも人体は骨と筋肉だけではバランスが取れず、筋肉の内外部に張り巡らされている筋膜の弾性性質が張力となり、カラダが支持できている。筋膜の張力を感じ合うラインをアナトミートレイン(筋筋膜経線)といい、このラインが連動して動くことで、筋肉が単体で動くよりも小さなエネルギーで効率的にカラダを動かすことができる。
筋膜の役割その2は、老廃物の排泄と免疫機能。筋膜の中には多くのリンパ管や免疫細胞が存在し、老廃物の排泄やバクテリアやウイルスを退治する役割を担っている。
3つ目は感覚の受信・伝達。これまでは筋組織内に存在する受容器終末が感覚を受信する役目を担っていると考えられていたが、筋膜には筋肉のおよそ8〜10倍もの感覚受容器が存在することが明らかになっている。これらは痛み、伸長、圧力、冷感、温感といった情報を感知して脳に伝えており、その伝達スピードは神経細胞の4〜8倍と非常に速い。
そして4つ目が、組織間における潤滑剤の役割。筋肉を正常に動かすには滑りが不可欠であり、筋膜の主要な性質である粘性が潤滑剤となって筋肉のスムーズな動きを生み出している。筋膜の潤いが減少すると隣接する筋肉や皮膚に癒着し、腰痛や肩こりといった不調を招く恐れがある。
問いの誤りは、3の細胞の保護。
取材・文/黒澤祐美 イラストレーション/モリタクマ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.811・2021年5月27日発売