cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_iv6xdpge4o5y_打ち上げ予定は2021年夏、ISTとTENGAの真面目な共同プロジェクト「TENGAロケット」 iv6xdpge4o5y iv6xdpge4o5y 打ち上げ予定は2021年夏、ISTとTENGAの真面目な共同プロジェクト「TENGAロケット」 oa-sorae-jp 0

打ち上げ予定は2021年夏、ISTとTENGAの真面目な共同プロジェクト「TENGAロケット」

インターステラテクノロジズ株式会社(以下IST)と株式会社TENGAは2021年1月26日、両社の共同プロジェクトとして2021年夏頃に「TENGAロケット」の打ち上げを目指すことを発表しました。


一般の人間にとってはまだまだ遠い「宇宙」を身近な存在にするべく宇宙開発を目指すベンチャーと、時にタブー視もされる「性」に関連したブランドを展開する企業とのコラボレーション。人によって受け取り方や意見がさまざまであることは想像に難くありませんし、思春期の子どもを育てる筆者としてもいろいろなことを考えるきっかけになった今回のミッションは、ISTとTENGAの双方にとって大きな意味を持つ取り組みのようです。

■国内初、民間ロケットからのペイロード放出&回収を目指すIST


TENGAロケットはISTの観測ロケット(サウンディングロケット)「MOMO」の6号機にあたります。観測ロケットであるMOMOは地球を周回する軌道には投入されず、宇宙空間への到達後に降下して洋上に着水する弾道飛行を行います。ちなみにMOMOの名は高度100km(※)の「100」を表す漢字「百」の読み方のひとつ「もも」に由来しています。

※…国際的な定義では高度100km以上(米空軍では高度80km以上)が宇宙空間とされる

MOMOの打ち上げはこれまでに6回試みられていて、このうち2019年5月に打ち上げられた「宇宙品質にシフト MOMO3号機」高度約113kmの宇宙空間へと到達しました。これは日本国内の民間企業が単独で開発したロケットとしては初めてのこととなります。


ただ、3号機の成功以降、MOMOは宇宙空間への到達に至っていません。2019年7月の「ペイターズドリーム MOMO4号機」と2020年6月の「えんとつ町のプペル MOMO5号機」は打ち上げ後のトラブルにより飛行を中断。2020年7月の「ねじのロケット」(MOMO7号機)は、エンジン内部にある点火器の不具合により打ち上げが中止・延期されています。

ISTは実際の打ち上げで得られたデータをもとにMOMOの信頼性向上に取り組んでいて、従来の「MOMO v0」からバージョンアップした「MOMO v1」の開発が進められています。ISTによると、v1ではエンジンシステム全体の改善ノズルの材質変更アビオニクス(航空電子機器)の構成変更地上側設備の高信頼化などが図られています。こうしたMOMO v1の開発内容はTENGAロケットにも織り込まれる予定とされています。

また、TENGAロケットには後述するようにペイロードとしてデータ計測用のTENGAが搭載されるほかに、宇宙空間で放出されたTENGA公式キャラクター「TENGAロボ」の洋上回収が試みられることも発表されています。成功すれば、TENGAロケットは国内の民間企業が開発したものとしては初めて、宇宙空間へのペイロード放出と洋上での回収を行ったロケットとなります。


なお、ISTでは高度500kmの地球低軌道に重量100kg以内の超小型人工衛星を投入可能なロケット「ZERO」の開発を進めていて、MOMO v1ではZEROの実用化を見据えた技術実証も行われます。人工衛星の軌道投入には欠かせないペイロードの放出も含め、新バージョンのMOMOを用いるTENGAロケットはISTの「宇宙空間到達」からのステップアップを象徴するミッションと言えそうです。

■夢はNASAでの採用、宇宙用デバイスの開発を目指すTENGA

いっぽう、TENGAは「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というビジョンのもと、グローバル市場で男性・女性向けのセクシャルウェルネスブランドやセルフケアアイテムブランドを展開しています。

現在は民間企業による宇宙旅行の開始が目前に迫っている段階ですが、今後人類の活動領域が地球低軌道から月やその周辺、さらにその向こうへと広がっていくにつれて、宇宙は限られたプロフェッショナルが活躍する場から、より多くの人々が携わる仕事や観光の場へと変化していくはずです。いずれは宇宙での「性」について考えなければならない時が訪れるのは確実であり、TENGAでは将来に向けて宇宙用のデバイス開発を目指しているといいます。

発表によると、今回のコラボレーションはISTファウンダーの堀江貴文氏とTENGA代表の松本光一氏がテレビ番組で共演したことがきっかけとされています。松本氏はTENGAが宇宙で使われることやNASAに採用されることを創業以来夢見てきたとコメント。TENGAロケットではその第一歩として宇宙空間でのデータを得るために計測用のTENGAが搭載されるほかに、前述のように国内民間初のペイロード放出と回収を目指すTENGAロボ、そして後述するクラウドファンディングで募った「愛と自由の寄せ書き」を収めた容器の放出が予定されています。


TENGAによると、同社は宇宙におけるセクシャルアイテムの技術的な問題についても検討。男性向けデバイスの例として、尿を飲用水にリサイクルする水再生システムへの混入を防ぎ、また微小重力環境での浮遊を防ぐために、宇宙ステーションのトイレで便を吸引するのと同様のバキューム機構を採用することも想定されています。

世界保健機関(WHO)が2002年に策定した「性の健康と性の権利に関する仮定義」を受けて性の健康世界学会(WAS)が2005年に採択した「モントリオール宣言」によると、性の健康(sexual health)とは疾病がない状態に留まらず、性の喜びや満足も幸福(well-being)にとって不可欠な要素であるとされています。また、調査会社の米グランドビューリサーチ社によると、自由化やソーシャルメディアの普及、大衆文化の影響を受けた性の健康の重要性に対する意識の高まりを背景に、TENGAの主力製品であるセクシャルアイテムの世界市場規模は2020年の336億ドルから2028年には524億ドルに拡大すると予想されています。同社にとってTENGAロケットのミッションは、今よりも身近になった将来の宇宙における性の健康への貢献とともに、地上とは異なる環境で用いられるセクシャルアイテムの開発と市場シェア獲得に向けた取り組みにつながるものとなりそうです。

■ミッションに参加できるクラウドファンディングも実施

なお、TENGAは2021年4月21日まで「TENGAロケットを一緒に宇宙へ飛ばそう!『TENGA宇宙隊員募集』!」と題したクラウドファンディングを「BOOSTER」にて実施しています。支援額は3500円~50万円で、リターンはTENGAロケットで打ち上げ・放出されるメッセージ「愛と自由の寄せ書き」への記入権やオリジナルグッズなど。最高額50万円の支援者にはTENGAロケットのレプリカも贈られます。


「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というISTのビジョンを象徴するミッションのひとつと言えるTENGAロケット。夏の打ち上げに向けた今後の経過にも注目していきたいと思います。
 

文/松村武宏

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cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_skuleo1cyw0s_ついに姿を見せたH3ロケット、打上げまで道のりとロケット外観の変化 skuleo1cyw0s skuleo1cyw0s ついに姿を見せたH3ロケット、打上げまで道のりとロケット外観の変化 oa-sorae-jp 0

ついに姿を見せたH3ロケット、打上げまで道のりとロケット外観の変化

2021年3月18日、JAXAは種子島宇宙センターでH3ロケット極低温点検を行い、ロケットおよび地上設備の機能等の確認をしました。これはH3ロケットプロジェクトにとって大きな前進です。点検の結果と今後の計画、ロケットの見た目の変化を追っていきます。


初めての全機結合・総合システム点検

最初に記すべきは、この点検で始めて、H3ロケットの主要部品が全て結合されたということでしょう。主要部品とは、上部からフェアリング・コア機体(2段目・1段目の総称)・固体ロケットブースタ(SRB-3)です。


ただし、点検に問題ない範囲でダミー品を使用したり、取付を省略した部品もあります。

ダミー品を用いたのは、フェアリングと第1段エンジンです。取付を省略したのは火工品と呼ばれる導爆線(中に火薬が詰まった金属チューブ。段間分離やフェアリング分離に用いられる)や爆破ボルト、点火器といった火薬類です。これは万が一にも作動してしまうと非常に危険だから、という理由です。

JAXAのH3プロジェクト・プロジェクトマネージャの岡田氏は全体をふり返って「組立手順も確認しながらの作業だった」と述べていましたが、印象に残ったのはSRB-3の結合だったとのこと。SRB-3は、H-IIA・H-IIBに用いられるSRB-Aと結合方法が変わって6点結合から4点結合になりました。これによってコア機体への取付時に許される回転方向(ロール軸)の角度誤差が少なくなり、より慎重な作業が必要になったとのことです。

更に、総合システム点検として射点設備や追跡管制設備と組み合わせたチェックも行われました。

射点設備であれば運搬と据え付けが計画通りにできるか、配管や電気ケーブルが設計通りにつながり正常に流れるか、作業手順は無理がないか、設定は妥当か、などが代表的な点検項目となります。

追跡管制設備の場合は、燃料を入れた状態でロケットと追尾局との通信が正常に行えるか、位置・速度の計測システムは正常に動作するかをチェックしました。

手順の確認と調整に予定より時間がかかったことと、悪天候によって作業中断があったため、予定より5時間半ほど遅れましたが、点検は無事に終わりました。

ロケットの外観はどう変わったのか

H-IIA・H-IIBからH3になっても、VABで移動発射台の上に組み立て、射点まで運んで打ち上げる、という基本的な仕組みは変わりません。ですが、外観は変化が見られます。H-IIBとH3の写真を並べて比べつつ、違いを見ていきます。


最初はVABを出るところの姿。撮影場所が違うので足下の隠れ方や屋根の角度が異なりますが、ロケット上端と扉上端の位置に注目すると、H-IIBからH3になってもほとんど変化がないことが分かります。

しかし、機体長はH3の方が6.4m長くなっていますから、単純計算ではフェアリングがつかえて出せなくなってしまいます。


射点の横から見てみるとその工夫が分かります。H-IIBではエンジンスカートが発射台の上に見えていますが、H3では見えません。つまり、長くなったぶん発射台の中にめり込ませることによって、全高を抑えているのです。隣の鉄塔は高さが変わりませんから、見比べるとほとんど変化がないことが分かります。

1段目の直径は両者とも変わりませんが、2段目はH3で太くなっており、段差がなくなりました。

横に取り付けられている固体ロケットブースタはH-IIB・H3とも同サイズなのですが、発射台で隠されることで見た目は短く見えています。


機体移動中の映像を見てみましょう。足下の穴の大きさと機体の関係がいっそうよくわかります。正面から見ると国籍表示の「NIPPON」・「JAPAN」の違いが読み取れます。

移動発射台の形の違いもわかります。H-IIB用は柱の部分がH型をしていますが、H3用は横棒がなくなりました。形状もより単純になっています。

岡田プロジェクトマネージャーは、極低温点検で最も緊張した瞬間は「VAB(注:機体組立棟)から出る瞬間でした。設計上扉をくぐれることはわかっているのですが、本当に大丈夫かなと思って見ていました」と言います。この言葉の裏側には、全高を抑える工夫があったのです。

なお、実機を載せての機体移動は今回が初めてですが、これまでに空荷の発射台の運搬や、ダミーウェイトで重量を本番に合わせての運搬の試験を行ってきており、その点の心配はほとんどなかったとのことでした。

今後の予定

極低温点検によって、コア機体は正常に燃料の注入と排出ができること、地上設備とロケットが正常に結合し、動作することがわかりました。打ち上げに向けての大きな前進ですが、まだ課題は残っています。

最大の懸念は、1段目エンジンのLE-9が未だ完成していないことです。燃焼室の損傷に液体水素ターボポンプのタービン破損と、ともにエンジン心臓部のトラブルによってH3ロケット初飛行自体が1年延期となりました。点検後の会見ではこの点にも触れられ、原因はほぼ特定し再設計を行って試験を続けていくとのことです。

実際に3月12日よりJAXA角田宇宙センターでターボポンプ単体試験(その7)が始まり、3月22日より種子島宇宙センターのテストスタンドで燃焼試験が始まりました。

LE-9の完成を待つ間に、種子島では電磁適合性(EMC)試験、全機振動試験、全機姿勢制御システム試験、アンビリカル離脱試験といった、打ち上げに必須の条件を満たしているかの試験が次々に行われます。これらは概ね2021年度の前半に予定されています。

そして、エンジンが完成するといよいよ実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)を迎えます。これは実際に機体に装着した状態で1段目エンジンに着火しデータを取得するものです。これを正常にクリアすれば、晴れてH3は完成となります。


道のりはまだ長く、時間は限られています。2021年度中に果たして打上げ本番を迎えることができるのか、まずはLE-9エンジンの動向に注目していきたいと思います。


Image Credit: JAXA、金木利憲
文/金木利憲

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地表から失われた火星の水、その多くが地殻に取り込まれている可能性

火星の地表はとても乾燥していますが、かつては海が形成されるほどの水が液体として存在していたと考えられています。火星では液体の水が形成に関与したとみられる地形も見つかっており、一部の水質は生命の生存に適していた可能性も指摘されています。


火星表面の水は、主に大気の上層から宇宙へと散逸することで失われたと考えられてきました。しかしカリフォルニア工科大学のEva Scheller氏らの研究グループによると、地表に存在していた水のうち30~99パーセントが今も火星の地殻に閉じ込められている可能性があるようです。

■水は宇宙に散逸しただけでなく地殻にも取り込まれているかもしれない

研究グループはアメリカ航空宇宙局(NASA)によるこれまでの火星探査ミッションや隕石のデータをもとに、時代とともに変化した火星の水の量や現在の火星における大気や地殻の組成を分析しました。特に注目されたのは、水分子を構成する水素とその同位体である重水素の比率です。

水素の大半は陽子1つの原子核を持ちますが、自然界にごくわずかに存在する重水素陽子1つと中性子1つでできた原子核を持っています。研究グループによると、中性子を持つ重水素よりも持たない水素のほうが軽くて大気から散逸しやすいため、大気を通じて水が失われたとすれば重水素が占める割合は増えることになるはずだといいます。

分析の結果、水が大気から散逸しただけでなく粘土や含水鉱物の形で地殻の内部にも取り込まれたとすれば、重水素の割合や過去に存在していた水の量を説明できることがわかったといいます。研究グループによると、火星には地表全体を100~1500mの深さで覆うほどの量の水(地球の大西洋を満たす海水の半分ほどの体積)があったものの、循環していた水の量はノアキス紀(約41億~37億年前)に40~95パーセント減少し、約30億年前には現在のレベルに達したとされています。

プレートテクトニクスがある地球の場合は地殻が沈み込んだり新たに生成されたりしており、地殻に取り込まれた水は火山活動などによって大気中に放出されることで循環しています。いっぽう、火星ではプレートの運動が存在しないため、一度地殻に取り込まれた水が再び放出されることはなく、地表が永続的に乾燥する環境に至ったと研究グループは考えています。


Image Credit: NASA/JPL-Caltech/USGS
文/松村武宏

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cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_gr0wy5zwritn_宇宙の始まりの出来事「ビッグバン」とは? gr0wy5zwritn gr0wy5zwritn 宇宙の始まりの出来事「ビッグバン」とは? oa-sorae-jp 0

宇宙の始まりの出来事「ビッグバン」とは?

現在の宇宙論では、宇宙は138億年前に超高温・超高圧の火の玉が爆発することで始まったと考えられています。

この大爆発のことを「ビッグバン(big bang)」と呼んでいます。

宇宙は超高温・超高圧の状態から始まり、現在も膨張を続けているのです。

■静的な宇宙


20世紀初めまでは宇宙には始まりも終わりもなく永遠不変のものだと考えられていました。

万有引力を発見したニュートンは、『宇宙が有限の大きさで有限個の星があるなら、星同士の重力でいつか収縮してしまうだろう』と指摘しています。しかし、宇宙空間が無限で無限個の星が一様に分布しているなら、静的な宇宙が存在できると考えていました。

一般相対性理論を作り上げて宇宙論の礎を築いたアインシュタインも、宇宙は静的であり、膨張や収縮などしないと考えていました。アインシュタインの理論でも重力は引力であるため、宇宙は時間と共に収縮するという結果になります。

そこで、アインシュタイン重力に釣り合う反発力があると仮定して静的な宇宙のモデルを作りました。

この反発力は一般相対性理論の方程式に宇宙項として導入されました。

■動的な宇宙

これに対して、ロシアの物理学者フリードマンは宇宙項のない一般相対性理論の方程式を解いて膨張宇宙モデルを導き出しました。

このモデルでは宇宙の中にある物質やエネルギーによる重力は働いていますが、宇宙自体の膨張でその効果が打ち消されます。

一方、ベルギーの神父ルメートルは宇宙項を導入した一般相対性理論の方程式を解いて、こちらも膨張宇宙モデルを得ました。

ルメートルのモデルでは宇宙項は膨張を加速する働きがあります。

これらの宇宙モデルが現在の標準的な宇宙モデルの元となっています。
 

■膨張宇宙の証拠


1929年にアメリカの天文学者ハッブルが、遠くにある銀河ほど高速で遠ざかっていることを発見しました。

銀河の後退速度は銀河までの距離に比例しているのです。この関係をハッブル-ルメートルの法則と呼びます。

法則の名前にルメートルの名前が入っているのはなぜでしょうか?

実はルメートルも1927年に発表した論文で銀河の距離と後退速度の関係の予測をしていました。国際天文学連合は2018年に開かれた総会で「宇宙の膨張を表す法則は今後『ハッブル-ルメートルの法則』と呼ぶことを推奨する」という決議を成立させています。

■火の玉宇宙論

ハッブル-ルメートルの法則を素直に解釈すると、過去にさかのぼると宇宙は今よりも小さかったということになります。

現在は互いに遠ざかっている銀河も、時間を巻き戻すとあらゆる銀河が1点に集まっていたようなのです。

これは一体どういう状態でしょうか。

物質を押し縮めると密度が高くなり、温度が上がります。

ハッブル-ルメートルの法則からは宇宙の初めは原子や原子核も融けてしまうほどの高温だったことが導かれます。

宇宙初期の原子核合成の理論を考えたのが、科学啓蒙作家としても有名なガモフです。

ガモフは「宇宙は非常に小さな高温高密度の火の玉状態から始まって、膨張とともに希薄になり温度が下がって現在の状態になった」という火の玉宇宙モデルを主張しました。

■ビッグバン命名

宇宙物理学者フレッド・ホイルはユーモアを込めて「宇宙がドッカーンと大爆発した説」と言うニュアンスで、

宇宙の膨張説を「ビッグバン理論」と呼びました。

ホイルのネーミングセンスが良かったためか、世界中の研究者が「ビッグバン」と言う言葉を使うようになりました。

しかし、ホイルはビッグバン宇宙論を推し進める立場の人間ではなく、それに反対する定常宇宙論を唱えていました。

定常宇宙論では、宇宙は膨張していても時間的には変化しないと考えるのです。

膨張宇宙では物質の密度がだんだん小さく成るはずですが、定常宇宙論では無から物質が生成するため密度は一定になります。

■ビッグバンの証拠

1965年、ビッグバン宇宙論の決定的証拠が見つかります。それが宇宙背景輻射です。

宇宙背景輻射とは一体どういったものでしょうか?

宇宙背景輻射は宇宙のあらゆる方向から地球に降り注ぐ電波で、波長4ギガヘルツのマイクロ波です。

約138億年前(宇宙誕生後約38万年後)、3000K以上の高温だった宇宙から放射された光が約138億年かけて地球に届いたものです。

その間に宇宙は1000倍程に大きくなり、温度も3K(-270℃)まで冷えています。

この宇宙背景輻射の存在は、かつて宇宙には熱い時代があったということを示しています。

ビッグバン宇宙論により、宇宙は膨張しているだけではなく、始まりがあることが明らかになりました。

宇宙は永遠不変のものではなく、発展・進化していくものだったのです。

 

Image Credit: NASA, 創造情報研究所, Shutterstock
文/sorae編集部

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cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_p6jrgkay62rf_NASA新型ロケット「SLS」エンジン燃焼試験に成功、初飛行に向け一歩前進 p6jrgkay62rf p6jrgkay62rf NASA新型ロケット「SLS」エンジン燃焼試験に成功、初飛行に向け一歩前進 oa-sorae-jp 0

NASA新型ロケット「SLS」エンジン燃焼試験に成功、初飛行に向け一歩前進

2021年3月18日(現地時間、以下同様)、アメリカ航空宇宙局(NASA)は開発中の新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」を構成するコアステージのエンジン燃焼試験「ホットファイア(hot fire)」をミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターにおいて実施しました。今回、コアステージの4基のエンジンは8分強の連続燃焼に成功。SLSの初打ち上げに向けて大きな前進となりました。

SLSは有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発が進められている大型ロケットで、並行して開発中の新型宇宙船「オリオン」などの打ち上げに使用されます。その中核となるコアステージには2011年に退役したスペースシャトルに搭載されていた「SSME」の改良版である「RS-25」エンジンが4基搭載されています。

NASAがホットファイアと呼ぶエンジン燃焼試験は全部で8段階に及ぶコアステージの地上試験「グリーンラン(Green Run)」の最終段階にあたり、4基のエンジンを実際の飛行時間と同じ8分強、最低でも約4分間に渡り稼働させることで、飛行中のコアステージ全体のパフォーマンスをシミュレートする試験です。

ホットファイアは2021年1月16日に一度実施されましたが、この時はエンジンの噴射方向を変える推力偏向制御システムの測定値が一部制限を超えたため、点火から1分7秒が経った早い段階でエンジンが自動停止しています。NASAでは2月下旬にホットファイアを再度実施する予定で準備を進めていましたが、液体酸素の配管系統を構成するバルブの1つを修理する必要が生じたことから3月にずれ込んでいました。

予定から1か月ほど遅れて実施された今回のホットファイアではエンジンが8分19秒に渡り稼働し、試験は成功裏に終了しています。4基のエンジンは73万3000ガロン(約277万リットル)に達する極低温の推進剤(液体水素と液体酸素)を消費しつつ、推力偏向やスロットルの調整を試しながら最大で4基合計160万ポンド(約7100キロニュートン)の推力を発揮しました。

一連の試験を終えたコアステージは、整備後にフロリダ州のケネディ宇宙センターへと移送されます。移送後は先日組み立てを終えた2基の固体燃料ロケットブースターをはじめとしたSLSを構成する他のハードウェアやオリオン宇宙船の初号機と統合され、SLSおよびオリオンの初飛行となるアルテミス計画最初のミッション「アルテミス1」の実施を待つことになります。



Image Credit: NASA
文/松村武宏

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木星の成層圏で吹くジェット気流、アルマ望遠鏡の観測により発見される

ボルドー天体物理学研究所のThibault Cavalié(ティボー・キャバリエ)氏らの研究グループは、木星の成層圏を吹くジェット気流の速度を初めて測定することに成功したとする研究成果を発表しました。研究グループによると、木星極域の成層圏では高速の風が地球の4倍もの直径を持つ渦を形作っているとみられています。


■木星のオーロラの下では時速1450kmのジェット気流が渦巻いている可能性

木星で吹く風を調べるために、研究者はこれまで雲やオーロラを利用してきました。発表によると、白や茶色に彩られた印象的な縞模様に存在する雲の動きからは低層の風を調べることが可能で、極域に現れるオーロラは上層の風と関連があるとみられているといいます。そのいっぽうで、低層と上層の間にあたる中層の成層圏では雲が発生しないため、成層圏での風を調べることはこれまで難しかったといいます。

今回Cavalié氏らはチリの「アルマ望遠鏡」を使い、木星の大気圏に存在するシアン化水素(HCN)が放つ電波を観測しました。研究グループによると、このシアン化水素は1994年に木星へ衝突した「シューメーカー・レビー第9彗星」によって木星にもたらされた分子のひとつで、衝突以来木星の成層圏を風に乗って移動し続けているといいます。

観測の結果、研究グループは地球のジェット気流のように幅が狭く帯状に伸びる風の速度を測定することに成功。Cavalié氏によると、木星の極域、オーロラの下で吹いているジェット気流の速度は時速1450km(秒速400m)で、これは大赤斑の最大風速の2倍以上地球で最も強い竜巻の風速の3倍以上に相当するものだといいます。また、赤道域の成層圏でも時速600kmの強い風が吹いていることも判明したとされています。

研究に参加した同研究所のBilal Benmahi(ビラル・ベンマヒ)氏によると、木星の極域で吹くジェット気流が地球の4倍の直径を持ち、900kmほどの高さに達する巨大な渦を形作っていることを今回の結果は示しているといいます。観測されたジェット気流についてCavalié氏は「太陽系でもユニークな気象怪物(meteorological beast)」と表現しています。

発表によると、木星の極域では今回の研究で対象となった領域よりも数百km上空の上層に強い風が吹いていることはすでに知られていたものの、高度が下がるにつれて速度は低下し、成層圏では消えていると考えられてきたといいます。アルマ望遠鏡による今回の観測は従来の予想を覆すもので、研究者を驚かせる結果となりました。今回の成果についてCavalié氏は「木星の極域の研究に新たな扉を開いたと言えます」とコメントしています。
 

Image Credit: ESO/L. Calçada & NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
文/松村武宏

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cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_ga7z07atcwbh_ソユーズロケット打ち上げ成功 「アクセルスペース」「アストロスケール」の人工衛星を搭載 ga7z07atcwbh ga7z07atcwbh ソユーズロケット打ち上げ成功 「アクセルスペース」「アストロスケール」の人工衛星を搭載 oa-sorae-jp 0

ソユーズロケット打ち上げ成功 「アクセルスペース」「アストロスケール」の人工衛星を搭載

ロシアのロスコスモス社は、韓国の観測衛星と37の小型衛星をソユーズ2.1aロケットで打ち上げました。打ち上げは、日本時間3月22日15時7分にカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地で行われました。なお当初の予定は3月21日でしたが、ロケットの上段に問題が見つかったため2日延期していました。

韓国の観測衛星「CAS500-1」は韓国航空宇宙研究院(KARI)が開発を行いました。2017年に打ち上げを行うGK Launch Services社と契約を結んでいました。農場や森林、水源などの観測に役立つということです。今後は約半年、軌道上で試験を行い、今年10月の運用開始を目指します。

今回打ち上げられた小型衛星の中には日本の会社が開発、製作を行った小型衛星もあります。

<アクセルスペース「GRUS(グルース)」>

アクセルスペースは東京・日本橋に本社を置く企業です。ソユーズロケットには日本初の量産衛星「GRUS(グルース)」4機が搭載されました。打ち上げ、分離に成功し、その後信号の受信にも成功しました。重量約100kgの衛星は地球観測を目的としています。地上分解能は2.5mで、農業や森林など幅広い産業での応用が期待されています。


これら4機の衛星は同社が構築を進める全地球観測プラットフォーム「Axel Globe(アクセルグローブ)」を構成します。このシステムは、地球上のあらゆる場所を1日1回という頻度で観測することができます。2023年までに10機体制を目指し、現在よりもさらに幅広い分野での活用を目指すということです。

また今回軌道へ投入された4機のGRUSのうち、1機は福井県の県民衛星「すいせん」です。福井県は宇宙産業を新しい政策の柱として、宇宙産業の拠点化を目指しています。県民衛星プロジェクトとして、県内企業や大学などが協力。2016年には「福井県民衛星技術研究組合」が結成され、今回の衛星打ち上げに至りました。

<アストロスケール「ELSA-d」>

東京・墨田区に本社を置くアストロスケールは、世界初のスペースデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」を開発。スペースデブリの捕獲(ドッキング)とその除去に必要な技術を実証する民間会社では世界初のミッションを行います。ELSA-dは「捕獲衛星」と「デブリ模擬衛星」を結合して打ち上げます。


捕獲衛星は、デブリ模擬衛星とランデブするシステムに加えて、磁力による捕獲機能を持っています。また模擬衛星にはドッキングを可能にするドッキングプレートが取り付けられています。

現在、世界各国で宇宙ゴミに対する問題が取り上げられています。ELSA-dはその問題を解決する技術を実証することへ注目が集まっています。


Image Credit: Roscosmos/GLAVKOSMOS
文/出口隼詩

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うっすらと環が輝く春の土星、土星探査機カッシーニが撮影

3月20日は2021年の春分の日でした。太陽が春分点を通過する瞬間である春分は、地球だけでなく他の惑星にもあります。2021年2月には火星が春分を迎えており、地球よりも約1.88倍長い火星の新たな1年が始まっています。

こちらは土星探査機「カッシーニ(Cassini)」2009年8月12日に撮影した土星で、この前日に土星は春分を迎えています。撮影時のカッシーニは環の平面に対して約20度上方、土星からは約84万7000km離れたところを飛行しており、画像はカッシーニの広角カメラによって撮影された75枚の画像をもとに作成されました。


春分や秋分の頃は太陽が赤道の上にあるため、土星最大の特徴である環は真横から太陽に照らされることになります。そのため、画像では土星に落ちる環の影が黒い一本の線のように細くなっていることがわかります。およそ30年かけて太陽を1周する土星ではこのような時期が約15年ごと(春分と秋分を迎えるタイミング)に訪れ、地球からは土星の環が消えたように見えます。

また、真横から照らされる春分や秋分の頃の環はとても暗くなります。上の画像の環は他の季節に撮影されたものと比べてかなり暗く感じられますが、実は明るく見えるように補正されています。アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、画像を作成する際に環全体の明るさを20倍に補正した上で、夜側(右)はさらに3倍明るくなるように調整(つまり夜側の環の明るさは本来の60倍)されているとのことです。

なお、2009年の春分から11年半ほどが経った現在の土星は北半球が夏から秋に移り変わりつつあり、北極域や赤道域の変化が「ハッブル」宇宙望遠鏡によって観測されています。

NASAゴダード宇宙飛行センターのAmy Simon氏によると、土星の赤道域は2018年から2020年にかけて5~10パーセント明るくなり、風速は2018年が時速約1600kmと速く、2019年と2020年はカッシーニの観測時と同程度の時速約1300kmに戻ったといいます。風速は高度によって異なることから、2018年の風速が速かったのは雲の高度が60kmほど低かったことを示唆する可能性が指摘されています。





Image Credit: NASA/JPL/Space Science Institute
文/松村武宏

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130億年以上前の“強い電波を放つクエーサー”を新たに発見

マックス・プランク天文学研究所のEduardo Bañados氏らの研究グループは、「クエーサー」と呼ばれる天体のうち1割ほどしか見つかっていない電波の強いクエーサー(radio-loud quasars)を新たに発見したとする研究成果を発表しました。このクエーサーは今から130億年以上前の宇宙に存在しており、発表では既知の電波の強いクエーサーとしては最も古い時代のものだとされています。


■ブラックホール急成長の謎解きにつながると研究者は期待

クエーサーとは銀河全体よりも明るく輝くような活動銀河核(狭い領域から強い電磁波を放射する銀河の中心部分)のことで、その原動力は太陽の数十万倍から数十億倍以上という重さの超大質量ブラックホールだと考えられています。クエーサーは可視光線で特に明るく輝きますが、そのうち約10パーセントは強い電波を放つ電波ジェットを放出しているといいます。

今回研究グループが発見した「しし座」の方向にあるクエーサー「P172+18」は発見例が少ない電波の強いクエーサーのひとつで、今から約130億年前、ビッグバンから約7億8000万年後(赤方偏移6.82)の宇宙に存在していたとされています。ビッグバンからおよそ10億年以内の初期の宇宙(赤方偏移6以上)における電波の強いクエーサーはこれまでに3つだけが知られていたといい、P172+18はそのなかでも最も古い「J1429+5447」(赤方偏移6.18)よりもさらに約1億年古いとされています。

P172+18の超大質量ブラックホールの質量は太陽の約3億倍と推定されていて、周囲のガスを急速に取り込んで成長している段階とみられています。研究に参加したヨーロッパ南天天文台(ESO)のChiara Mazzucchelli氏は「観測史上最もハイペースで成長しているブラックホールのひとつです」と語ります。急成長するブラックホールを取り囲む高温の降着円盤(落下しつつ周回する物質によって形成される)は、天の川銀河全体の580倍ものエネルギーを放出しているといいます。

近年ではビッグバンから10億年と経たない頃の宇宙に超大質量ブラックホールが存在していたことが明らかになりつつあり、宇宙のスケールからすれば短期間でブラックホールが急成長を遂げた理由を解明するべく研究が進められています。

発表によると、ジェットはブラックホール周辺のガスを乱して落下を促す可能性があり、P172+18のようなクエーサーにみられる強い電波ジェットは超大質量ブラックホールの急成長と関連があるのではないかと考えられているといいます。電波の強いクエーサーの観測を通してブラックホールの急成長についての洞察が得られることに、研究グループは期待を寄せています。


Image Credit: ESO/M. Kornmesser
文/松村武宏

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cat_11_issue_oa-sorae-jp oa-sorae-jp_0_jxlnbr8ar7yl_青と白の特別な塗装を施したソユーズロケット、打ち上げへ jxlnbr8ar7yl jxlnbr8ar7yl 青と白の特別な塗装を施したソユーズロケット、打ち上げへ oa-sorae-jp 0

青と白の特別な塗装を施したソユーズロケット、打ち上げへ

ロシアでソユーズ宇宙船や多くの人工衛星を打ち上げてきた「ソユーズ」ロケット。通常はグレーとオレンジの塗装ですが、今回は青と白を基調とした機体の色になります。日本時間3月20日(土)15時7分打ち上げ予定のソユーズ2ロケットでその打ち上げの様子を見ることができます。

2021年は旧ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行を行ってから60年の節目に当たります。ガガーリンを乗せた宇宙船を打ち上げた「ボストーク」ロケットを参考にしてこの塗装が施されています。通常の機体でオレンジ色の部分を青色に、グレーの部分を白色に変更したということです。


機体の青色は、ソユーズロケットの打ち上げを担うGK Launch Services社のコーポレートカラーでもあります。ちなみにコーポレートカラーとは企業や団体の組織を象徴する色のことです。


また今年度GK Launch Services社が打ち上げを担当するソユーズロケットにはこの塗装が施されます。

3月20日に打ち上げられるソユーズロケットには、18の国から集められた38基の超小型衛星が搭載されています。その中には日本に本社を置くアストロスケールが開発を行ったスペースデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」やアクセルスペースが開発を行う4基の超小型衛星「GRUS」も含まれています。GRUS4基の内、1基は福井県民衛星「すいせん」です。
 

Image Credit: GK Launch Services Twitter
文/出口隼詩