中野英雄。12月22日で56歳の誕生日を迎える
僕の背中は見なくていい
「僕が俳優として、ものすごく役にのめり込んでいたのが26〜28歳あたり。ちょうど今の太賀くらいの年齢で、ドラマ『愛という名のもとに』(フジテレビ系)などの撮影をしていたころですね。自分の生活を犠牲にしながら、とにかく与えられた役をみっちり演じることに没頭していた。だから太賀もきっと、今がいちばん仕事に夢中なんじゃないかと感じているんです」
「これまで芝居の相談をされたこともなければ、僕から偉そうに何かを言ったこともない。僕の背中は見なくていいと思っているし、彼の世界は彼のものだから。とにかく自由にやっていってほしいですね」
「僕と同じ仕事を選んだだけでも泣けましたけど、あのときはその感動を越えましたね。あと、自分と太賀が似ているとは、一度も思ったことがないんですよ。周りから“似てるね”と言われても、正直あまりピンとこない。スタイルだって、若いころの僕はずんぐりむっくりだったけれど、太賀は細くて母親似だから(笑)」
「ドラマを観ているときは、“仲野太賀”というひとりの役者だとしか感じていません。けれど、放送が終わればやっぱり息子なんです。『この恋あたためますか』を観終わったあとにも“あ〜、今回は(共演している)中村倫也くんのほうがよかったな。太賀、ちょっと負けちゃってるな”とか振り返ったりして(笑)。
もし太賀が事件を起こしたら?
「高校生のころは、菅田将暉くんや間宮祥太朗くんたちが家によく遊びに来ていました。ずっとゲームをしているもんだから、“うるせー! 静かにしろ! 何時だと思ってんだ!”って怒ることもしょっちゅうでしたね(笑)。
でも、確か1年くらい前かな、また菅田くんがうちに来てたんです。トイレに行こうと廊下の角を曲がった先に彼が座っていて、“わっ菅田将暉だ!”って驚いちゃいました。スターに会った気分になって、ドキドキしながら“どうも、こんにちは!”って頭下げてあいさつしたら、“もう、やめてくださいよ(笑)”なんて言われてね」
「若いころ、松方弘樹さんが僕をご飯に連れていってくれたときに“世界中の誰もが敵になっても、俺は息子の味方だ”って言われたんです。当時は“このオヤジ、カッコつけてるな”くらいにしか思わなかったけれど、親になった今、実際にそうでなきゃなって感じるようになったんです。
「親だからこう言うわけじゃないんですけど、いい子なんです。本当はここで悪ガキエピソードのひとつやふたつ、披露したいくらいなんだけど……。振り返ってもやっぱり、アイツはいい子なんですよ。ゲームで負けたときだけは、昔から荒れてましたけど(笑)。
「僕のほうが子どもなのかもね」と笑った中野は、とてもチャーミングな父親の顔をしていた。
(取材・文/高橋もも子)
【PROFILE】
中野英雄(なかの・ひでお) ◎1964年12月生まれ。京都府出身。'85年、哀川翔から『劇男一世風靡』に勧誘されたことをきっかけに芸能活動を開始。'92年、ドラマ『愛という名のもとに』で“チョロ”と呼ばれる真面目な青年を演じて人気を博す。その後も映画『アウトレイジ』シリーズや『首領への道』などのVシネ、各種テレビドラマ、バラエティ番組などに出演し、現在も幅広く活躍中。