送検される岡庭容疑者。ネット上では整形疑惑が流れるが、埼玉県警に逮捕された昨年11月から外に出ていないため、整形はありえない
母親と祖父が語っていた肩身の狭い生活
「(息子のことで)家から出たくないんです。周りの目にさらされ、まだ生きていたのかって顔をされるから。(通り魔事件から)もう9年、ほとんど外出していませんので、変わり者と思われています」
「身体の調子もあんまりよくなく、すごく精神的に不安定になっちゃうんです」
「由征には全然会っていないから何もわからない。仕事もやってんだかやってないんだかもわからない」
通り魔事件後に名前を改名した
この連続通り魔事件に加え、猫の首を切断、さらに連続放火にも関与し、自宅からはサバイバルナイフや鉈など計71本の刃物が押収されていた。当時中学生の岡庭容疑者が持つには異常な量である。
「このうちの16本は18歳未満の所持が禁じられているものであったため、埼玉県警は父親を県青少年育成条例違反容疑(有害玩具を子どもに買い与えてはいけないという条例)で書類送検しています」(社会部記者)
「猫の死骸を家の周りに埋めたとのことで、鑑識の捜査員が警察犬を連れて調べていました。容疑者の姿は見たことがないですが、弟が1人いて、2人兄弟です。弟は家を出て1人暮らしをしているみたいです。両親とも話をしたことがありませんが、母親は教育ママだったと聞いています。お父さんは測量の仕事をしていましたがここ5年は働いていないと(容疑者の祖父から)聞いたことがあります。この辺に『岡庭』という名字は多いのですが、容疑者一家は地元の名士なんです」
「被害者への賠償支払いが莫大だったと言っていました。おじいちゃんも孫があんなことになってしまったから可哀想ですよ。前は会うとニコニコしていたんだけど、今は下を向いてちょぼちょぼ歩いています。おばあちゃんも元気な良い人だったんですけど、寝込んでいるみたいですね」
母親は「運転免許はない」と断言
しかも犯行時間帯は真っ暗な未明で、激しい雨が降っていた。今年2月の同じ時間帯に現場を訪れた時は、雨は降っていなかったものの、辺りは真っ暗闇に包まれていた。初めてこの場所を訪れたのであれば、雑木林の中に家があるなどとは想定できない。岡庭容疑者が犯人であるならば、事前に家の場所を把握していないと不可能だろう。いったいいつから小林さん宅を狙っていたのだろうか。
三郷市にある岡庭容疑者宅から現場までは直線距離で約40キロあるが、未明の時間帯にこの現場まで足を運ぶ交通手段も不明だ。しかも母親は、「(岡庭容疑者は)免許証を持っていない」と断言している。電車の最寄り駅は約12キロ離れているため、そこからタクシーに乗った可能性もあるが、事件当時タクシー会社から目撃情報は出なかったという。
取材・文/水谷竹秀
ノンフィクションライター。1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。カメラマンや新聞記者を経てフリーに。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で第9回開高健ノンフィクション賞受賞。近著に『だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人』(集英社文庫)など。