子育てしやすい会社は間違いなく業績もいい。
ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの著作で知られる元法政大学大学院教授の坂本光司氏の言葉。現在、人を大切にする経営学会を主宰、精力的に各地の企業事例を調査している。そして全国8000社を調査、そのうちの51社を実際に訪問・ヒアリングした結果、「子育てしやすい会社は業績も継続してよい」という結論を導き出した。対象となった企業群の平均特殊出生率は1.90人(全国平均は1.44人*2016年厚労省調査より)、2人以上が全体の3分の1を占める結果となった。
「子育てしやすい会社」は「働きやすい会社」といえる。そして好業績を続けることは、目下、必須の経営課題となっている『働き方改革』に対してのあるべき解答の1つとなる。今回は子育てしやすい会社づくりを通じて『働き方改革』を実行するリフォーム専門店「グッディーホーム」を紹介する。
グッディーホームは武蔵野市、三鷹市、杉並区を中心にリフォーム業を展開する。現社長を務める卯月靖也氏が住宅建築・販売会社勤務を経て2004年に創業。『街の住医』をコンセプトに地域の生活者を“生涯顧客”と位置付けた営業活動が特徴だ。
「グッディーさんを呼んで!」
ある高齢の顧客が近隣の路上で転倒した際、周囲の人が助けに入ろうとしたところ、こう叫んだという。
戸建住宅などの構造・防水などの大規模なリフォームだけでなく、内装・設備などの小改修もきめ細かに行う同社の営業スタイルが生んだ顧客との距離感をうかがわせるエピソードだ。社員数35人。そのうち子供のいる社員は12人。子供の総数22人で、1人当たり1.83人。若い会社ということもあり、平均在籍年数は5年だが、過去3年間の平均離職率は3%未満だ。
“お互いさま”の精神を醸成する
同社の特徴は「顧客との接点づくり」と「営業と現場のコミュニケーション」の2つが挙げられる。
「売上げを追うな」「成約件数にこだわるな」。卯月社長は社員にこう言う。同社には営業数値上でのノルマがない。
その代わり、地域との関わり、お客さまとの接点づくりを重要視する点が第1の特徴で、地域清掃への参加、イベントへの参加を促す。社員の子供行事への参加も最優先にするようにしている。「日程は事前に分かるので、社内で共有して参加しやすい環境を整えている。“お互いさま”の空気になっている」(卯月氏)。
また顧客宛てDMの封入を地域の福祉センターに委託するなど地域に溶け込むことにより、住居のことだけでなく、生活全般での相談相手にもなろう。そんな姿勢なのだ。
それでいて、大手住宅設備機器メーカーTOTOが主催する受注コンテストでも東京都1位、エリア1位を獲得するなど結果的に営業数値も伴っている。その要因に第2の特徴である「営業と現場のコミュニケーション」がある。
同社の組織は営業、工事、事務と大きく3部門に分かれる(外部の職人スタッフは除く)。営業から現場を扱う工事部門、またはその逆といった部門間の異動も活発だ。「(縦割り意識の強い)業界にはこういう人事、異動をする会社はないと思います」と語る卯月社長。それだけに現場が分かる営業、お客に寄り添った現場という人員体制が好業績の源の1つといえる。
「実は“子育てしやすい会社”に取り上げられていますが、まだまだ足りない点も多いのです」と卯月社長。
坂本氏が挙げる「リラックスできる休憩室の設置」など未整備の部分を指してのことだが、それだけに優先して改善すべき点も明確にしている。産休・育休からの復帰も各社員の子供の状況、配偶者の労働状況なども考慮して出勤体制を設定するなど画一的な制度とはせず柔軟に対応している。
(山本恭広)
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