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「業態」と「業種」の違い、分かりますか?

2017年12月14日 00:00 商業界オンライン

 第3回は「業態」です。皆さんは普段、仕事帰りに近所のセブン-イレブンでおでんや弁当を買ったり、ライフやマルエツで揚げ物のとんかつや寿司などの惣菜を買ったりしますよね。実は、セブン-イレブンは、コンビニエンスストア(以下、CVS)という業態、ライフやマルエツは、スーパーマーケット(以下、SM)という業態なのです。

肉屋、魚屋、八百屋は「業種」といいます

 最近、見掛けることが少なくなりましたが、商店街にある肉屋、魚屋、八百屋は、CVSやSMと同様に業態と言えるでしょうか。

 答えは、「否」です。これらは、通常「業種」と呼ばれています。「業種」は、英語で「Kind of business」と言い、その定義は、「商い(ビジネス)自体において、その店や企業が主に取り扱っている商品の品種によって区分した分類」を指します。例えば、肉屋なら、「肉を取り扱う商売をしている店」ということですね。

 一方、業態は、英語で「Type of operation」と言います。日本における小売業態論の第一人者である神戸大学 経営学部 田村正紀名誉教授(2008)は、業態の定義を以下のように述べています。「業態は、流通企業のビジネスモデルの基本的枠組みであり、戦略コンセプトである。すなわち、どのような顧客に、どのような商品・サービスを、いかに提供するのか、つまり、市場標的、提供する顧客価値、そして、その提供様式はビジネスモデルの基本要素となる」(図表参照)

 

「小売の輪の仮説」を進化させた「業態盛衰の理論」

 業態には、不思議な特性があります。通常、メーカーが作る商品に製品寿命(製品ライフサイクル)があるように、業態にも同様にライフサイクル(生成期→成長期→成熟期→衰退期)が存在すると言われています。

 アメリカの流通研究者のMcNair(1931)は、「小売りの輪の仮説」において、アメリカの小売業態の栄枯盛衰を理論的に説明しています。この仮説は、ある小売業態の支配的企業に対し、新興企業が「低価格」を武器に市場に参入し、支配的企業は、新興企業に対し、「サービス品質の向上(Trading-Up)」に見合った値上げを実施し、最終的に両社は戦い、結果、支配的企業が新興企業の低価格化戦略に屈し、市場から退場し、新興企業が市場の新たな支配的企業になる。この様子が、あたかも小売りの輪がぐるぐる回っているかのように捉えられ、「小売の輪の仮説」と名付けられたそうです。

 ただし、この仮説は、アメリカの小売業の栄枯盛衰にはうまく適合していますが、日本においては、CVSなどはこの仮説に該当しません。田村(2008)は、上記McNairの小売りの輪の仮説をベースとしながらも、その仮説の不十分さを補うべく、新たに「業態盛衰の論理」を主張しました。

 この論理は、ある業態内において、辺境市場から生まれてくる新興企業が、覇権市場(中核市場)に存在する支配的企業に対し、「価格」あるいは「サービス」あるいは「価格とサービスの両方(バランス)」において差別化を図り、徐々に中核市場に侵食し、結果、支配的企業の地位に取って代わるさまを理論化したものです。

「業態は戦略」で、「フォーマットは戦術」

 業態という概念は、欧米には存在しないのでしょうか。その答えとしては、欧米には業態という概念は存在せず、「フォーマット」という概念は存在します。田村(2008)は、「フォーマットとは,小売業において,企業の戦略行動を反映した部分」と定義付けています。簡単に言うと、「業態は戦略、フォーマットは戦術である」と言えます。

 では、業態という概念は、いつごろ日本で生まれた概念なのでしょうか。一説によると、日本に業態という概念が誕生したのは、1980年初めだと言われています(三村 2014)。その頃、流通業界で一大勢力を築いていた業態は、ダイエーやイトーヨーカ堂などの総合スーパー(日本型GMS)でした。1960年代に、これらの企業は「チェーンストア理論」を導入し、日本固有の流通チャネル構造(卸の存在)をうまく活用し、林周二氏や田島義博氏の理論的基盤を背景に「流通革命」を主導してきました。しかし、1974年に施行された「大規模小売店舗法」により、彼らは従来のような急速な出店戦略ができなくなりました。

 そこで、彼らが考え出した新たな戦略が、新業態を開発することでした。そこで生まれた新たな業態がCVS、ドラッグストア、ディスカウントストア、ホームセンター等の業態だったのです。

 最後に、流通論・小売マーケティング論の第一人者である青山学院大学 経営学部 三村優美子教授は、今日の小売業態を捉える際、以下の3つの視点を持つことが重要であると述べています(三村2014)。

 ①小売業の競争と収益単位(マージン率とコスト)という小売経営の視点(仕組み、ビジネスモデル)、②消費者に統一的なイメージを与える売場のあり方という小売マーケティング的視点(IMC、サービスマーケティング)、③顧客との出会いと対話と相互作用の場という視点(場の理論、コミュニティ概念)。

 今後、小売企業は、業態をチェーンストア理論のような効率重視の経営的視点だけで捉えるのではなく、店舗における統合的なマーケティングの視点(IMC)および場(地域におけるコミュニティ機能)の視点を併せ持ちながら、さらに、店舗における顧客と従業員との「価値共創」という概念を持つことが、ますます必要になるでしょう。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_9bc79f0304b6_チーズ専門店に「ローカルに支持される必須条件」を学ぶ 9bc79f0304b6 9bc79f0304b6 チーズ専門店に「ローカルに支持される必須条件」を学ぶ oa-shogyokaionline 0

チーズ専門店に「ローカルに支持される必須条件」を学ぶ

2017年12月13日 11:20 商業界オンライン

 消費者は今、便利なインターネットのうわさや口コミを頼りに買物をしています。出所が不明なうわさや匿名の口コミも、価格や使い心地やおいしさという情報収集なら参考になりますが、それらが安全・安心の確証となるにはなかなかハードルが高そうです。
 なぜなら、安全・安心は、売り手の顔(売り手がどこの誰で、どのルートを経由し、どこで売っているか? なぜ売っているのか?)が最低でも見えることが不可欠だからです。
 昨今、繰り返される内部告発により暴露された偽装という数々の事実は、消費者が利益を追求するだけの会社(お店)は一切信用しないという流れを生み出しています。
 安全・安心が第一に求められている時代に、お店(企業)がすべきことは、そのこだわりを次の5つのキーワードで具体化する売場づくりです、
1.ローカル(地元)…地産地消
2.アルチザン(職人)…素材を吟味
3.クラフト(手づくり)…効率ではなく、やりがい
4.サステナブル(持続可能)…有機志向
5.エシカル(倫理的、道徳上)…循環型生産
 売り手が、この5つの内、最低でも1つのキーワードを軸に、商品やサービスを選び、生産から販売に至る誕生の物語を伝えれば、消費者は安全・安心へのこだわりを実感してくれるようになるのです。

顔の見える安全・安心にこだわる店「ザ・チーズストア」

 消費者は、日常品の安全・安心への関心は特に高く、それは生産地にこだわることからも読み取れます。
 例を挙げると、日本人であれば主食の米は国産、アメリカ人ならチーズはヨーロッパの本場産もよいけれど、やっぱり地元産(アメリカ)が欲しいという具合です。
 そんな消費者ニーズを満たしたお店が、アメリカ西海岸のロサンゼルス、映画の街ハリウッドに近いシルバーレイクにあります。
 シルバーレイクは、ハリウッドの映画産業初期の時代、ディズニーアニメ発祥の地としてアーティストが集まり、特に住民が地元(ローカル)志向であるという特徴を持っています。
 アーティストたちは常に新しい価値を提供し続けなければ、すぐに他に移ってしまうようなこだわりがあり、そんな中でもこの店には地元住民たちが毎日、買いに来るのです。
 その名はベストな品質を扱う店「ザ・チーズストア」です。
 この店が他の店では真似できない点は次の3つの要素です。
(1)メード・イン・カリフォルニア限定で扱う商品構成
(2)ロサンゼルス産ベーガンマスタードとシアトル生産のブル―チーズのおいしい組み合わせ陳列
(3)チーズ屋(日本言うと豆腐屋)手づくりの対面デリ
 ザ・チーズストアは、少量へのこだわりを軸に「大量生産、大量消費、大量廃棄」とは真逆のスタイルを歩むことで、安全・安心を嘘のない売場で伝えているのです。

地元×職人×持続可能の3乗は安全・安心の証となる

ロサンゼルス近郊農家直送のモッツァレラチーズ。
 ザ・チーズストアの売りは、「ファーム ツー テーブル」(FARM TO TABLE)、つまり生産地から食卓への流れを、地元産をベースに職人と持続可能というキーワードを「商品×サービス×リサイクル」に変換し、付加価値を3乗することで、他の追随を許さないオンリーワンの店である点です。

<商品>ローカル(地元)

 アメリカ産、カリフォルニア産、地元ロサンゼルス近郊産の商品をメインにオーガニック、ビーガン(完全菜食)、非遺伝子組み換え、グルテン、トランス脂肪酸、グルタミン酸不使用をセレクト。ヨーロッパ産(添加物不使用)を比較対照アイテムで隣に陳列する。
 本場本物のヨーロッパ産と地元産の違いを原材料のこだわりによる品質の違いを明確に訴え、地元産が打ち出す安全・安心の優位性を売場でアピールしています。

<サービス>アルチザン(職人)

 店舗で開催する夕食会やチーズの試食会を通して、顧客に現場従業員(チーズ専門のバイヤー〈目利きの職人〉でもある)が自店で扱うチーズを仕入れるまでの想いを、ワインを飲みながら情報交換することで、「なぜこのチーズを扱っているのか?」を品質の違いとして自然に伝えています。

<リサイクル>サステナブル(持続可能)

パッケージデザインでお客を売場の前まで引き付け、商品を比較対照できる陳列を行っている。
 現場従業員のバイヤーが地元開催のファーマーズマーケットへ頻繁に通い、少量生産にこだわる生産者と出会い、過剰生産を廃止する土壌を守る生産手法を支持することで、扱い商品の安全・安心の信頼性の高さを訴えています。
 ザ・チーズストアは、日本で始まった行政主導の加工食品の原料原産地表示をアメリカ基準の厳格な原産地表示に沿って行ったもの。顧客目線で違いが分かるように、売場で安全・安心を具体化し、消費者の納得を得ているのです。
(清水ひろゆき)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_f012525a6256_生活を大きく変えるIoT(Internet of Things) f012525a6256 f012525a6256 生活を大きく変えるIoT(Internet of Things) oa-shogyokaionline 0

生活を大きく変えるIoT(Internet of Things)

2017年12月12日 05:00 商業界オンライン

 IoT(Internet of Things)という言葉もまた最近よく耳にします。IoTは「モノのインターネット」と訳されていますが、具体的なイメージが湧くでしょうか?
 要は、全ての物がインターネットにつながることにより、人々のビジネスや生活の仕方が変わり、向上するということなのでしょう。

音声認識と合わさり、身近になってきている

 IoTという概念は1990年ごろからありましたが、近年テクノロジーと利用環境の進化により、クラウド、ソーシャルメディア、ビッグデータなどに続く大きなトレンドになっています。
 従来のインターネットはコンピューター同士をつなぐネットワークでした。しかし、テクノロジーの進化によって、コンピューター以外のインターネットにつながっていなかったモノ同士が、ネット上でつながり始めたのです。ですから、モノたちがつながっているインターネットということなのですね。これが音声認識と相まって、もっと身近になってきています。
 2014年にAmazon.comがAmazon Echoというホームターミナルを出しました。 Amazon Echoは、音声認識・対話機能プラットフォームのAlexaという人工知能エンジンが動いており、さまざまな機能を音声で操作できます。例えば、スケジュールを管理したり、天気予報を聞いたり、Amazonに注文した品がいつ来るかを調べたりなどを音声でできます。
 その2年後にGoogle Homeがライバルとして登場しました。Google HomeにはGoogle Assistantが搭載されており、対話を繰り返すことにより学習するので、徐々にユーザーの指向に合って行きます。
 そして、iOS 8のリリースと共にAppleがHomekitをリリースしました。iPhoneやiPadで使われていた人工知能機能を持った音声アシスタントのSiriが搭載されており、当然、iPhoneで家電製品の管理・操作ができることを狙っているわけです。

ホームセキュリティー、室温調節などが可能に

 インターネットに接続される機器は、これからさらに多くの分野に広がっていくと思われますが、現在のところはどんなモノがあるのでしょうか?
 まず、ホームセキュリティーがあります。外部監視カメラ、インターフォンカメラ、スマートロックなど。スマートロックを使えば、どこからでも施錠・解錠ができたり、24時間玄関のアクセスをトラッキングできたりします。
 同様に内部監視カメラもあります。ペットがおとなしくしているか外出先から分かります。
 また、扉や窓の開閉状態や室内の水漏れなどを検知してくれる機器もあります。
 照明や室温コントロールをしてくれたり、日差しがきつければブラインドを閉めてくれたりもします。2014年にGoogleが32億ドルで買収したNest社の機器は、室温調整に人工知能を搭載し、住人にとって最も快適な室温を学習し、人がいる時間だけ室温を調節することができます。
 寝室の内外の騒音をコントロールし、睡眠に優しい環境作りができるモノもあれば、冷蔵庫の中の物をモニターし、鮮度を管理するモノもあります。あるいは、最近のロボット掃除機は、外出先から指定した部屋を掃除してくれます。

米国の家電展示会でセールストークに使われている

 IoTという概念がファジーということもありますが、インターネットにつながっていなければ、機器自体の勝負になります。機器自体も日進月歩してはいますが、そうかといって従来からのメディアを通じてだけで、他社製品を差し置いて自社製品を購入してもらうだけのインパクトを与えるのは難しくなっています。汎用性の高い機器であれば機器であるほど、なおさらです。そこで、どうしようかというわけです。
 例年1月にアメリカのラスベガスで最大規模のCES(Consumer Electronics Show)という家電展示会が開催されます。そこで、家電出展社は自社の商品が「Amazon Echo対応です」とか、「今度Google Homeにも対応できるようになります」としきりに強調するのです。実際に各社の機器自体が、他社と十分に差別化できる機能を有しているケースは案外少ないので、むしろそういうビッグネームのプラットフォームに対応していることが最大の売りになるわけです。逆に言えば、対応していないと、ちょっと古臭い感を持たれる可能性すらあります。
 中でも最強のトークは、「どのスマートホームにも対応しています」です。こう言われてしまうと、すぐ欲しいとか、すぐ販売したいという気になってしまうものです。最近のキラートークですね。
(大西基文)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_bf988843d26f_食品業界、2020年を境に何が起こる? bf988843d26f bf988843d26f 食品業界、2020年を境に何が起こる? oa-shogyokaionline 0

食品業界、2020年を境に何が起こる?

2017年12月8日 05:00 商業界オンライン

 2020年を境に、食品業界は大きな転換期を迎えます。その大きな流れに乗れるかどうか、生産者から製造、加工、流通、販売、飲食業者等、全ての食品関連業者が生き残りをかけた戦いとなります。この連載では、2020年に食品業界に一体、何が振りかかろうとしているのか、その内容を詳しく解説するとともに、乗り越えるために何をすべきかを掘り下げていきます。

3月末で食品表示法の猶予期間が終わる

 まずは、2020年前後に何が起きるのか、図のスケジュールを見てください。

 
 2015年に施行された食品表示法(消費者庁所管)は、2020年3月末で猶予期間が終わります。つまり、2020年4月以降に製造された食品は、新表示に対応していなければ違反となり販売できないわけです。
 どうして5年間もの猶予期間が与えられたかというと、新表示への移行が簡単ではないからでした。特に、栄養成分表示の全面義務化が中小企業にとっては大きな負担になります。中小企業に配慮した結果、5年間という長期の猶予期間が設定されたのです。
 さらに、厚生労働省は、2018年の通常国会に食品衛生法の改正案を提出する予定です。その改正案には、東京オリンピック・パラリンピック(以後、東京五輪)を控え、「全ての食品関連事業者にHACCP(ハサップ)の導入を義務付ける」ことも含まれています。HACCPは、食品衛生管理の国際基準ですが、製造・加工業者だけでなく、スーパーマーケットなどの小売業者、飲食店などの調理業者等も含め、全ての食品等事業者が対象となります。
 一方、生産者には、農林水産省が以前から推奨しているGAP(農業生産工程管理)の導入が、東京五輪に向けて加速されます。選手村に納入する食材は、GAPの認証取得が条件になっています。
 HACCPもGAPも、東京五輪に向けて、世界中に日本の食の安全・安心をアピールするのが狙いですが、事業者側は、そのための人材確保とそれなりの費用負担をしなければならなくなります。費用が発生するということは、原材料価格から製造、加工、流通、販売、飲食提供等、全ての段階でコストアップするということです。

2019年は「踏んだり蹴ったり」の年になる

 2020年までに、食品表示法への対応とHACCPの導入を実現するために、かなりの手間と費用がかかります。しかし、その前年(2019年)には、消費税増税が予定されています。しかも、スタートするのが10月1日。軽減税率が採用されるので、市販される飲食料品は8%に据え置かれますが、飲食や日用品などが10%になります。
 2%の増税といえども、消費者の節約志向は強まることでしょう。年末にかけて、食品業界は一番の稼ぎ時、これからという時に増税があるわけです。8~9月の駆け込み需要は、食品以外の商品ばかりで食品への恩恵は期待できません。その後に、節約志向が高まる中で年末商戦に突入することになります。
 そのため、食品業界にとっての2019年は、守備を固めるための食品表示法対応とHACCP導入に取り組む一方、攻撃面では増税不況に打ち勝つための対策強化を並行して実践しなければならない年になります。まさに踏んだり蹴ったりの状況になるのです。実際、2019年からでは遅いので、2018年から2020年問題に真剣に取り組まなければ生き残りは難しいでしょう。

(垣田 達哉)

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日本のスーパーマーケットはなぜ店数が増えない?

2017年12月7日 00:00 商業界オンライン

 スーパーマーケットで売上げナンバーワンのライフコーポレーションにしても、店舗数は260店代後半だ。 今回のテーマは、「日本のスーパーマーケット(SM)はなぜ店数が増えない?」 アメリカでは1000店舗のSMチェーンがあるのに、日本では売上げナンバーワンのライフコーポレーションでも店舗数は260店代後半。こうした差はなぜ生まれるのか? その要因を解明していきます。
 編集部:SMでも、大手の総合スーパーの発言に影響を受けたのか、個店経営に傾斜している経営者が多いように思えます。これについては、どう考えたらいいでしょうか。
 吉田:SMは、全国で1万8611店あり、総売上高は18兆円(1店平均10億円)で、わが国で最も売上げが大きなものです(2017年)。家庭の食品の総需要40兆円(世帯当たり80万円/年)のうち、45%くらいがSMで買われています。

米国は1000店超も多いが、日本は平均30店程度

 吉田:ところが、1つの会社での平均店舗数は30店程度であり、チェーン草創期の段階であるリージョナル(地域)のチェーンにとどまっています。
 1000店舗以上の米国SMとは差が大きいのです。米国ではクローガーは3825店、スーパーバリュは1588店、顧客満足度が全米ナンバーワンのパブリックスも、5000㎡以上の大型SMが1200店です。2万㎡のウォルマートも生鮮とグロサリーの食品売上げが大きいのですが、5284店です(2016年)。
 わが国のチェーン志向の企業群で最も古いSMの平均店舗数が、なぜ30店で止まっているのか。
 他の商品領域にない特徴が、わが国の生鮮流通にはあるからです。詳しく述べると、長くなりますが、意外に、知らない人が多いかもしれないので、一言で言うと、生鮮(青果、鮮魚、精肉)での「取引の地域結合」です。SMの売上げは、日配・惣菜を含むと70%が生鮮だからです。
 江口:「取引の地域結合」って、何ですか? 聞いたことがないのですが。
 吉田:「店舗の商品作業」と同じく、私がつくった言葉です。
 わが国の農業、漁業、畜産業は、自民党が価格を守る政策をとったことと、補助金の保護行政が続き、家業の農家単位であり、今も零細です。企業の農業への参入は許されていませんでした。
 このため生産が零細になり、生鮮流通は農協と市場(いちば)単位になっていました。市場では、免許を持つ個人の「仲卸」が入札をし、店舗への物流をしていたのです。この仲卸が、初期のSMの生鮮のバイヤー役でした。
 SMも、家業の八百屋、肉屋、魚屋と同じように、市場での入札で仕入れていました。
 市場での価格決定は、「その日の供給と需要」で決まります。天候や不作などの理由で出荷が少なく、入札が多い日は、価格は数倍に上がります。
 SMは、家業店より多く仕入れます。入札の量も多い。このため、市場の仕組みでは、仕入価格は上がってしまいます。市場はニンジン、キュウリは100本というように、多品種を少量仕入れる家業店に有利な仕組みだからです。

SMは店別に市場を変えて仲卸から仕入れている

 吉田:そこで、SMは県内各所にある市場の仲卸と契約し、一定量を仕入れることにしました。これが地域取引です。
 つまり、全国単位の仕入れではなく、地域のSMが、地域市場での仕入れをしているのが、生鮮三品(肉、魚、青果)です。魚は養殖が増えて、全国レベルの取引も増えてはいますが、全体で見ればまだ少ないのです。
 SMでは惣菜、日配を含むと、売上げの70%が生鮮。米国のSMでは、腐らないグロサリーに対し、生鮮は腐るため鮮度管理が必要なペリシャブルと呼んで、売場の在庫管理を区分しています。
 生鮮の地域単位での取引が、「取引の地域結合」です。各地の市場(いちば)では、大手SMとの大量取引は、出荷量の不足のため、行えません。
 SMがセントラル・バイイングをしても、地域単位の零細な生産と市場流通の仕組みでは有利にならないのです。
 生鮮の卸売市場は2014年に、全国に1154カ所ありました。同年の国産の青果では86%、水産では54%、食肉では9.6%が、地域市場経由です(農林水産省)。
 食肉は、輸入と卸売業経由が増えて、市場取引が減っています。海外からの輸入が増えている食肉では、1990年代以降は、セントラル・バイイングができるようになってきました。総売上げ26兆円の外食産業の肉は、ほとんどが輸入肉です。
 以上の取引事情のため、SMは、店舗別に市場を変えて仲卸と契約し、物流料とマージンを払い、仕入れるようにしました。
 SMが他県に出店したときは、その県に平均で20カ所ある農協と市場でのゼロからの仕入れが始まり、既存のSMよりも仕入れ量が多くても、入札価格が上がり、有利な仕入れはできません。
 生鮮のセントラル・バイイングができなかったため、SMは平均店舗数が30店という、ほぼ県内のリージョナルチェーン(地域チェーン)にとどまっているのです。SMの出店の増加は、1980年代までだったからです。
 自然に依存する、しかも、零細な生産方法の生鮮で、セントラル・バイイングの有利さを生かすことができなかったため、わが国のSMの経営店舗数は今も少ないわけです。

出店数と閉店数が同じで、店舗数が増えない

 吉田:2017年のSMの平均的な出店数は、総店舗数に対し2.5%です。既存店40店に対して1店舗が新設されています。40年経っても、2倍です。
 ところが実際は、店舗寿命が20年を過ぎると、同業のSMとドラッグストア(Dg.S)、コンビニの異業種の競合が増加し、売上げが減って閉店数が増えます。1980年代まで増えていた300坪以下の中小型SMの店舗年齢が20年、30年を超えたからです。
 このため、SMは、2010年以降は出店数と閉店数が同じになって、店舗数が増えなくなっているのです。新店ができると、その裏で、2年目、3年目には商圏内の古い店舗が閉店しています。
 生き残った日本型GMSの20%閉店ではありませんが、SMもDg.Sとコンビニとの異業種競合の増加と、SMの成長店の出店のため、古い店舗の閉店増加時代に向かっています。
 成長店とは、店舗数を増やして、売上げと利益を増やす店舗のことです。それぞれの業界で、利益の上位10%の企業に成長店があります。SMでは、売上対比経常利益率が、4~5%のクラスです。他方、1万8611店のSMの平均利益率は、売上比1.3%と低いのです(2016年)。
 編集部:海外からの輸入なら、セントラル・バイイングになりますよね。これはどうですか?
 吉田:海外からの輸入はセントラル・バイイングになりますが、生鮮(青果、鮮魚、肉)では、消費者の輸入品への拒否反応があり、国産に比べて、低い品質と見られています。
 例えば、食肉では最も需要が多い牛肉の店頭売価では、100g当たり国産牛が500円くらい、輸入牛が250円くらいと、少なくても2倍の価格差があります。2倍高くても国産牛を買う消費者が多い。私には品質と味には、差はないように思えるのですが……。
 なお、輸入肉の店頭売価に対して、仕入価格は50%くらいです。100g250円の輸入牛肉を店舗で見たとき、仕入れ価格は1/2の125円見て、ほぼ間違いはないでしょう。

高いものがおいしいとする共同幻想がある

 吉田:輸入した穀物の飼料を多く与えるため脂肪分が多くなる国産牛がおいしいというのは、フランス産のワインのような共同幻想です。ワインの銘柄を、ブラインドテストでも当てることのできる人は、ワイン通と言われる人でも、ほとんどいません。その味は、高いものがおいしいとする共同幻想だからです。
 一本で数万円のワインが、料理との組み合わせを抜きにして、全ての人に、いつもおいしいとは、決して言えません。 100万円以上のものがあるロマネコンティなど、異常な高さですね。
 BSEの問題を抜きにすれば、米国やオーストラリア産は、広大な牧場への放牧で、牧草を多く食べて育ち、運動量が多いため、筋肉の部分に含む脂肪分(これが霜降り肉)が、両国とも国産に比べて少ない。
 国産と焼き方が同じだと、固くなります。このため、牛肉食の歴史が浅い日本人には、「輸入肉は固く、まずい」とされていますが、焼き方を変えれば、そのおいしさは、ごくわずかに牧草の香りがしますが、全く変わりません。
 米国の有名レストランチェーンで食べるステーキは、価格も日本の1/2や1/3くらいで、素晴らしくおいしいと思います。200gの量を食べるなら、脂肪分の多い国産ではなく、輸入肉の方がおいしい。品質の違いではなく、おかずとしての食べ方(少量)からくる、しょうゆを使う味への趣向の違いです。

輸入の肉、魚は冷凍だからおいしくないは間違い

 吉田:鮮魚では、冷蔵コンテナの発達で、輸入が増えていますが、消費者が国産を品質が高いとする価値観を持っているのは、牛肉と同じです。
 輸入の肉や魚は、冷凍だからおいしくないという人もいますが、これも間違いです。例えば、大きなマグロは日本の近海では採れません。おいしいとされる高価なインドマグロは、インド洋で採れ、船でマイナス60℃に冷凍されて、焼津や築地に水揚げされています。
 SMの店頭では、解凍して、売っています。鮮魚も、冷凍のままでは買う人が少ないからです。
 オバマ大統領を、安倍首相が接待した「すきやばし次郎」でマグロの寿司を食べて、もともとは冷凍マグロを築地で仕入れたのだからおいしくないという人はいないでしょう。
 牛肉でも同じです。わが国では、消費者に「生願望」があり、解凍しないと売れないので、手間をかけて解凍して、高く売っているのです。
 鮮魚でも、温泉旅館、料理旅館などで出ることがある、いけすの活き造りの刺身は、魚が痩せて弱っているので、おいしくないと思います。近所の寿司屋で、いけすのアジを出してくれますが、身が痩せて、おいしくはない。
 消費者は、生(ナマ)願望を持っていますが、魚は一般的に、締めて血抜きをしたあと、半日から1日が経ったものが、旨み成分であるアミノ酸が増えて、味がまろやかに、おいしくなります(魚種と調理の仕方も影響します)。
 イカは、一般に、採れたてを冷凍したものが、甘みが増して、おいしくなります。冷凍後がおいしいのです。
 肉類でも同じです。解体したての血抜きが十分でない肉は、どう料理しても、おいしいとは言えません。
 野菜でも、中国産の野菜には有害な農薬の問題がありましたが、それを抜きにすれば、鮮度の差はあっても、味の差はありません。

権益を守りたいため、国産を保護する

 吉田:国産の松茸が、中国産よりもはるかにおいしいというのも、ワインと同じ味の共同幻想でしょう。キノコの味を知っているという人たちを集めて、ブラインドテストをすれば、一発で分かります。
 しかし、農林水産省と農協(官僚)は、国産の保護で自分たちの権益を守りたいため、「真実」を言わない。松茸でも、高価な価格を正当化するため、国産はおいしいとされ、消費者もその神話を信じているだけでしょう。
 スイスでも、国産の農産物の保護をしています。畜産国であるにもかかわらず、スイスの牛乳や肉は、とても高い。これは、スイス国民の多くが、「2倍や3倍高くても、国の農業を守るために、国産を買う」という、愛国心の考えを持っているからです。
 このため、世帯所得も高いスイスのSMで、日本では3000円くらいかと思える量をバスケットに入れると、ほぼ1万円になります。生鮮のみならず、チョコレートの価格、グロサリーも日本の3倍くらい高いからです。
  日本の農水省と農協の、権益のためにズルいところのある国産保護とは、違うのです。
 江口:米国では、1000店以上のナショナルチェーンが成立していますが、これはなぜなのですか。

米国では流通面で古くから大手ベンダーが成立した

 吉田:これについては、日米で生鮮の流通に大きな違いがあるので、それを述べないと、理由が分からないでしょう。
 米国では、例えば穀物では、カーギルのように、ベンダーの超大手があります。大農法である上に、流通を行う業者も超大手です。バナナでも、デルモンテのような大手の輸入商社があります。これは果物全般に言えます。食肉も同じ。食品メーカーも、ナビスコやコカコーラのように超大手になっています。
 農業国でもある米国では、農家が生産する生鮮の流通の面で古くから大手のベンダーが成立していたのです。
 チェーンストアがセントラル・バイイングで仕入れ契約量を増やすと、こうした大手ベンダーからの仕入価格を安くすることができます。
 ただし、鮮魚では、家庭では刺身で食べる人はおらず、料理業者の仕入れなので、日本のような市場流通です。ニューヨークにも、ウォール街のそばに寿司屋やレストランが仕入れに行くフルトン市場があり、冷凍を解凍して売っていますね。輸入が多い冷凍魚には、商社のように大手の流通ベンダーがあります。
 ベンダー経由なので、生鮮の仕入れ量を計画的にして、セントラル・バイイングで多くすればするほど、価格が安くなる仕組みが、米国の農産物や肉の流通です。これが、食品で大チェーンができた理由です。

魚屋、料理屋が減り、卸売市場が減少

 吉田:この点が、わが国の「1回の仕入れ量が、少ない出品量より増えると、価格が上がる」規模の小さな市場流通の仕組みと違う点です。料亭や料理屋が少しずつ仕入れる築地などが、その典型でしょうね。
 築地の、規模の小さな魚屋(仲卸の業者)からは、一匹単位でも、質の高い鮮魚を、高い価格で買うことができます。
 人口が1300万人の、平均所得が30%高い東京では、住まいのコストも高く、料理屋とレストランが多く、商店街の魚屋も残っているので、おいしい魚を全国、全世界から集める築地市場が残っています。
 しかし、政令指定都市(大都市圏)以外での魚市場は、商店街の魚屋が減って、料理屋も減ったので、次第に消滅に向かっているのです。それでも、まだ、水産物の中の魚での市場経由の流通は、60%です。輸入を除く国産の青果では86%です(2014年:農水省)。
 地方と大都市の卸売市場は、1988年には1634カ所でしたが、前述したように1154カ所へと74%に減っています(2014年)。
 魚も漁師の一本釣りの漁業が減り、輸入が増えて、同時に養殖での計画生産ができ、輸入が増えたためでもあります。ハマチ、フグ、タイ、ウナギでは、一本釣りを標榜する高級料理店以外では、ほとんどが養殖ものです。
 それに知らない人が多いのですが、輸入ではサバはノルウェーからが多い冷凍です。サケはロシア、エビはインドネシア、イカはモロッコ、ウナギは中国、タイは東南アジア、フグは韓国からの輸入が多い。缶詰や飼料などの加工用に回るものも多い水産の輸入量は249万トンで、1.1兆円と大きいのです(2013年:農林水産省)。
 国内の魚の産地についていえば、魚は海流で移動し、海には県や国名がないので、わが国では、水揚げされた漁港の産になります。
 下関産とされる高級な価格の国産フグは、日本の近海(例えば、北海道)で採れたものを、下関港に水揚げして、毒を抜く加工したものです。玄界灘で採れるフグはゼロではなくても、ほとんどないでしょう。
 SMチェーンの、大量仕入れに向いていないのが、生鮮の市場流通です。グロサリーを作る食品メーカーは、日本でも大きくなりましたが、米国や欧州のような、生鮮流通の大手ベンダーはまだありません。

チーズの店頭価格が驚くほど高いワケ

 吉田:わが国では、魚に代わって、需要が増えている肉、ハムといった畜産や牛乳、ヨーグルトなどの酪農でも、政府の関税をかけた輸入制限と、価格保護が行われています。このため、チーズなどは外国人がびっくりする店頭価格になっています。高いため、SMで売れる量も少ないのです。
 日本の偉大な発明は、グロサリーのカップヌードルでしょうね。アジアのみでなく、世界中で売られています。味は、国によって、おいしさの志向が違うので変えています。これが真の地域対応です。
 大雑把なところがある国民性の米国メーカーは、こんなことはしませんが、日本のメーカーは品質でのキメが細かい。日本製が世界に信用される理由が、職人文化の歴史的な伝統をひく、キメの細かさでしょう。
 中国は、売れればいいとする商人文化の国に思えますが、日本は見えないところまで品質にこだわる職人文化の国でしょうね。伝統は、意識されずとも、われわれの考えを支配しています。
 編集部:日本では、これからもSMでは、1000店舗(1兆円)のナショナルチェーンは、できないのでしょうか。この点ついては、いかがですか。
 吉田:①生鮮のセントラル・バイイングと、②肉、魚、惣菜での生産性の低い店内調理(店内加工)の問題があります。ここをクリアしないと、SMの1000店以上のナショナルチェーンは、作れないでしょう。
 少し専門的になりますが、世帯の需要額が40兆円と最大の食品ですから、次回、述べましょう。
 チェーンが増えた26兆円の外食産業を含むと、食品需要は66兆円もあるからです。鮮魚を多く使う回転寿司の仕入れは、ほとんどが海外の魚の商社からのセントラル・バイイングです。
 1980年代までは、全国に多かった寿司屋は、都市部の評判の高い高級な店を除いて、回転寿司チェーンの進出で消えていきましたが、これは、市場仕入れが、輸入のセントラル・バイイングに、寿司の価格で負けたからです。国内の寿司の総需要が減ったのではなく、むしろ増えています。
 回転寿司は、魚のセントラル・バイイングのため、地域対応の必要がありません。ペルー産のイカは、関西では売れないからです。
 実は、イカの最も大きな輸入先は驚く人が多いのですが中国です。冷凍で3万3000トン、調理品で3万6000トンが中国からの輸入です(2012年)。
(吉田 繁治)

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「プライベートブランド」を正しく理解する

2017年12月7日 00:00 商業界オンライン

 第2回は、「プライベートブランド(PB)」です。皆さんは最近、セブン-イレブンで「セブンプレミアム」「セブンゴールド」の食パンや牛乳、イオンで「トップバリュ」のドレッシングやカップ麺等を買った経験はありませんか?

 PBの定義は、各流通論者がさまざまな見解を述べていますが、本稿では、「PBは、小売業者(もしくは卸売業者)が商品を企画・開発し、その仕様書に基づき、メーカーに製造委託し、自社及びグループ各社の店舗のみで、自社ブランドを付し、独占的に販売、品質保証、在庫・物流費リスク等を負う商品である(中見 2017)。」と定義付けます。

 日本におけるPBの歴史は意外と古く、ダイエーは1961年にPB名「ダイエー」としてインスタントコーヒーを販売し始めました。1970年には、13型カラーテレビの「BUBU」を当時としては破格の5万円で発売しています。その後も、1980年代には、為替影響を背景に、食料品、衣料品、日用雑貨を軸に、低価格PB「セービング」を発売し、好評を博しました。ダイエーは、日本のPB史に大きな影響を与えた存在と言えます。

 現在、なぜPBが再び小売業者にとっても、消費者にとっても注目され始めたのか、皆さん考えたことはありますか?

 その背景には、ナショナルブランド(NB)のコモディティ化に伴う低価格傾向の増長や、アマゾンや楽天に代表されるネット小売業の伸張に伴うリアル店舗小売業のストア・ロイヤリティ強化の狙いがあります。

 従来、PBは消費者にとって、「低価格商品」の代名詞、小売業者にとっては、「ロスリーダー商品」の代名詞でした。しかし、上記のセブンゴールドの「金の食パン」等のプレミアムPBがヒットした結果、消費者にとって、「PB≠安物」のイメージは徐々に崩れつつあります。現在、消費者の頭の中には、大きく2つのPBに対する価値潮流、「低価格」と「高品質」があるように思えます。

小売業者は「3層構造+α型」でPB導入を考える

 また、PBを理解する上で、プログラム構造もよく理解しなければなりません。日本のPB研究の第一人者である、矢作(2013)によれば、小売業者がPB導入を検討する際、欧米に倣い、「3層構造(プレミアム、スタンダード、エコノミー)+α型」をベースに考えるそうです(図表参照)。中でも、ボリュームゾーンである「スタンダード」の成否がPB戦略上、とても重要となります。その際、どのカテゴリーが、PBに向いているのかをよく見極めて、商品化しなければなりません。

 アメリカのPBに関する研究者(Hoch and Banerji, 1993、Ailawadi and Harlam, 2004)によれば、以下の4点がPB商品化検討の際、重要になるそうです。①有力なNBが少なく、市場規模の大きなカテゴリーを狙う、②NB・PB間の価格差が一定程度存在する、③品質の高さや商品コンセプトに一貫性がある、④小売側の荒利益率が高い。もう一つ、PB検討の際、忘れてはならない視点があります。それは、「業態・フォーマットごとのNBとPBの品揃えに関するバランス」です。例えば、コンビニエンスストア(コンビニ)の場合、消費者は、コンビニに対し、利便性を求めているため、他業態に比べ、価格に対し、あまり過敏に反応しない傾向があります。よって、コンビニでPBを導入する際、他の業態(例:スーパーマーケットや総合スーパー)に比べ、プレミアムPBの比率が高まる傾向は理に適っています。その象徴たるが、セブンゴールドの金の食パンなのです。

 最後に、矢作(2014)が、今後、小売業者のみならず、メーカーも含め、PB戦略を検討する際、重要になると主張している概念をご紹介しましょう。

 それは、「デュアル・ブランド戦略」という新しい概念です。PBは、小売業者だけの商品、マーケティング戦略ではありません。今日、メーカー自体も、NBだけの商品ラインアップでは、他社との厳しい競争の中、有力小売店舗のいい位置の棚を死守、拡張するのは難しくなりつつあります。

 よって、各メーカーは、小売業者のバイヤーと品揃えに関する論議をする際、自社が属するカテゴリーにおいて、顧客ターゲットごとにPB化するか、NB化するか、バランスよく総合的に検討しなければいけません。

 一方、小売業者においても、自社のお客の商圏特性を踏まえ、カテゴリーごとのNBとPBのバランスを保もつ必要があります。そうしないと、自社にとって利益率が高いPBを優先したがために、PBとNBのバランスが崩れ、売場が単調化し、結果、お客にとっての買物の楽しさを失い、最終的には、ストア・ロイヤリティの減退を招く危険性があることを肝に銘じるべきです。

 故に、PB戦略は、今後の小売業、卸売業、メーカーにとって、持続的成長や、イノベーションを起こしていく上で、非常に重要な要因となり得るのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)

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(10)良い店長はゆっくり歩いて「現場管理」する

2017年12月6日 00:00 商業界オンライン

 チェーンストアの店長の善しあしは歩いている姿で分かります。良い店長は現場をゆっくり歩き、悪い店長は現場を早歩きします。

良い店長は見ることで良い緊張感をつくる

 現場を早歩きするのは、店長の仕事を作業の延長線で考えている証拠です。作業をすることを目的にしている店長は早く作業場に行きたいため、早歩きになります。しかし、作業を手伝いながら、作業現場を観察することを目的にしている店長はゆっくり歩きます。現場をゆっくり歩き、現場をその気で見るのです。その行動は現場に良い緊張感をつくります。
 現場で働く人は現場をゆっくり歩く人を感じると『何をしているのかな?』という気持ちが生まれます。この気持ちが『正確に仕事をする』『スピーディな仕事をする』という行動を後押ししてくれるのです。
 コンサルタントが店舗の朝の品出し作業をゆっくり歩いて見ていると、現場のパートさんたちの「何か、今日は品出し作業が早く終わったわね」の声が聞こえてきます。見ているだけで、作業スピードが必ず早くなるのです。
 現場をゆっくり歩いてその気で見ることは、現場の『見られているという緊張感』をつくるのです。その緊張感が現場作業精度を上げてくれます

良い店長は見てもらっているという安心感もつくる

 一方、見ているという行動は『安心感』も生みます。人は見てもらっていると実感できると安心します。この気持ちを分かっている店長は現場をゆっくり歩きます。
 明石家さんまさんの『恋のから騒ぎ』という番組に出演した若い女性が「女性の小さな変化に気が付く男は信用できない」と言っていました。女性は自分の小さな変化、例えば『髪を短くした』『マニュキュアの色を変えた』『傘を変えた』等の小さな変化に気に付いてもらえるとうれしいものです。そうしたことに気が付く男はもてるので、「信用できない」と言っていたのです。
 現場でもこの『小さな変化に気が付く』ことが大事です。小さな変化に気が付くためには、以前のその人のことをよく見ていないと分かりません。
 以前の状態、小さな変化に気が付くために、良い店長は現場をゆっくり歩き、その気で現場を見ます。そして、気が付いた小さな変化をその場で褒めます。例えば、「以前よりレジでの立ち姿勢が良くなったね」「以前より刺身の見栄えが良くなったね」と。すると現場で『以前から見てくれているんだな』という気持ちが生まれ、それが『見てもらっているという安心感』を醸成するのです。

〈まとめ〉現場をゆっくり歩くことはいいことだらけ

 現場をゆっくり歩いて、その気で見ると『見られているという緊張感』『見てもらっているという安心感』を意図的につくることができるのです。
 また、現場をゆっくり歩けば、商品、売場、お客さまの様子もよく分かるわけですから、いいことずくめですね。
(木村 博)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_cb13f29e18d6_「地域需要には違いがある」が間違いのもと! cb13f29e18d6 cb13f29e18d6 「地域需要には違いがある」が間違いのもと! oa-shogyokaionline 0

「地域需要には違いがある」が間違いのもと!

2017年12月5日 00:00 商業界オンライン

 今回から「需要額が40兆円ある食品を販売するスーパーマーケットの問題」を取り上げていきます。まずは「売れる、売れないは地域の消費者需要の違い」だとする勘違いを正します。なぜなら、これは競合の影響が大きいからです。
 編集部:これまでチェーンストアが実行する、商品仕入れでのセントラル・バイイングについて解説してきました。簡単に振り返っておきましょう。
 個店経営では、個店がベンダーから仕入れ、ベンダーの配送車が店舗に「バラ配送」していることが多い。
 一方、チェーンストアでは本部一括の仕入れであり、DC(ディストリビューションセンター、集配センター)へ納品される。実際には、両方の折衷型もあると思えますが、 問題はマーチャンダイジング(MD)の基本的なところにあることが分かりました。
 だから、セントラル・バイイングが、円高だった1980年代の後期から、生産コストの低い中国やアジアでのSPA(開発輸入)がされるように変化し、衣料と住関連で新しいロワー・ポピュラー帯の商品を作って、ポピュラープライス帯だった日本型GMS(総合スーパー)の領域を侵食してきたわけです。中国商品は、ポピュラープライスより一段も二段も低かったからです。
 ユニクロの店頭価格で1980円のポロシャツの、中国の工場出荷価格は、1990年代後期では、200円程度だったと聞いたことがあります。今は、人件費上がったので、300円くらいでしょうか。
 吉田:チェーンストアで大切なことは、消費者にとって、商品価値の高い商品を開発するという、経営者の意思です。
 商品価値とは難しいところがある概念ですが、商品を使う人・着る人・食べる人にとっての「機能・品質÷価格」で表すことができます。
 高い商品や安い商品という意味ではありません。メーカー品を特売仕入れ風に仕入れて、スポット的に安く売ればいいということではありません。機能・品質が高いのに、価格は安いということでなければならないのです。
 個店経営への傾斜が言われる総合スーパーは店舗数が少なく、工場への買い取り発注数が少なかった。このため中国でも、高い価値の商品開発ができませんでした。中国で生産している国内ベンダーからの、ワンクッション置いた少量の間接輸入だったのです。
 このため、直接にSPAをするユニクロやニトリを待つことになり、専門店のSPAチェーンのため、総合スーパーの衣料と住関連は、1991年の3分の1以下まで売上げを減らしています。

問題の一つはベンダーへの返品押し付け

 吉田:チェーンストアの商品開発では、返品をしない全品買い取り発注が仕入れ面の特徴です。総合スーパーでは、国内ベンダー経由で仕入れている開発商品でも、返品の習慣がありました。
 はっきり言えば、最近まで、商品が残った個々の店舗からの、ベンダーへの返品押し付けがあったのです。マスコミに問われた鈴木敏文氏は否定していましたが、仕入れの現場では事実でした。大手GMSの仕入れで問題とされ、新聞記事にもなったのでご存知でしょう。
 総合スーパーに対して、ベンダー側は、返品・交換を見込んで卸価格を付けざるを得ないので、仕入価格は高くなっていました。
 編集部:個店仕入れからくる個店品揃えの問題はどうでしょうか。ベンダーからの個店仕入れを行えば、店舗単位の品揃えになっていきます。小売業界には、地域の需要はそれぞれに異なる。従って、全店共通の品揃えは、すべきではないという考えがあります。
 吉田:厳密に論じないといけない点ですね。食品では、確かに食習慣の地域での違いはあります。例えば、京都では白みそが多く使われ、名古屋では赤みそです。ご存知のように、茨城県では納豆を多く食べますが、九州では少ない。だから、納豆は地域によって品目も品揃え量も大きく違います。テレビ番組の『秘密のケンミンSHOW』のような違いがあるのが、伝統的な食品への需要です。伝統食では、東北と九州の品揃えは異なるべきだというのは、チェーンストアでも当然のことです。
 地域の市場に集荷される鮮魚にも、近海で採れる魚種での地域性があります。
 一方、精肉と青果では、地域の需要差は、大きくありません。グロサリーやドラッグストア(Dg.S)の商品でも地域性はない。
 衣料では、気温は北から寒くなり、南から暑くなるので、最適品揃えには、桜前線のように4週間くらいのズレが生じます。これも当然のことです。衣料では4シーズン、品種によっては6シーズン品揃えをするからです。

食文化、季節対応もDC単位で共通化

 吉田:チェーンストアでも、県単位が多い地域の食文化と、衣料での季節対応は、DCの配送エリアの店舗で、共通に行うべきことです。
 住関連では、全国の地域性と季節性は少ない。だから、ニトリでは、全店で品揃えを同じにしています。家電や電子機器でも地域性はない。
 ただし、例えばニトリで、異なる店頭を同時に見たとき、異なる商品がある理由は、補充発注で、DCに保管している前の商品が販売終了期になって、次の開発商品に変わるからです。
 これが、ある時期にA店のa商品が、B店ではb商品になっている理由です。これは需要の地域対応ではないのです。
 江口:店舗の商品構成は、需要に対して地域対応すべきだということになると、全店共通品揃えは、間違いということなりませんか?
 吉田:小売業の経営者に誤解が多いのは、まさに今、江口君が言った点です。
 チェーンの本部で、各店の部門別、品目別の売上げを見たとします。ある県のA店のよく売れている商品・売れない商品と、隣の県のB店の売れる商品・売れない商品が、相当に異なっている。
 例えば、A店ではチョコレートとアイスがあまり売れていないが、B店ではよく売れる。これを地域の消費者需要の違いだと、勘違いしているのです。

売れる、売れないは競合の影響が大きい

 吉田:実際は、A店とB店の、商圏内の競合状況が違っていることを原因に、売れる部門と商品、売れない部門と商品に、違いが出ています。
 例えば、A店ではチョコレートを含むグロサリーを10%から15%安く売るディスカウントのDg.Sの競合が多いとします。それがB店では少ない。
 とすると毎月、A店とB店の、グロサリー部門の、品目別に見た、売れる品目、売れない品目に、大きな差が出ます。各店の特売サイクルによっても、異なります。
 それぞれの地域で、どれくらいグロサリーが売れているか、全需要を調べれば、A店とB店の売上げの違いは、地域の需要の違いからきたものではなく、競合の結果だと分かります。
 しかし、普通、小売業は、その年度の地域の全体需要を調べるということはしていません。多くの店舗と取引があって、商品種類の多い大手ベンダー2社の地域売上げを聞けば、これが分かるのですが……。
 店舗の売れる商品、売れない商品の違いを、MD(開発→仕入れ→品揃え)での競合との勝ち、負けとは見ずに、安易に「地域需要には違いがある」としてしまうのです。総合スーパーの衣料や住関連では、地域での競合負けで、売れる品目に違いが出ています。
 伝統食品の違い、そして衣料の季節性の違いに、商圏での競合状況による部門と商品の売れ行きの違いが重なって、「個店品揃えをすべきだ」という誤った根拠になっているのですから、恐ろしいことでもあります。
 総合スーパーでは、食品では売上高を維持している店舗が多いのですが、衣料と住関品では、どの店舗も売上高が、1990年代から、ずっと減り続けています。このデータを見て、日本では衣料と住関連需要が1/3以下に減っている判断したら、大きな間違いです。
 衣料と住関連は、1990年代から、ユニクロとニトリを代表として、海外で商品開発したSPAがロワー・ポピュラー価格で、ポピュラー価格だった総合スーパーの売上げを侵食してきました。
 つまり、衣料と住関連では平均単価が1/2以下に下がりましたが、販売商品の数量が減ったのではないのです(現在も衣料の縫製では97%が海外生産です)。

「地域品揃え論」は大手ベンダーからは出ない

 吉田:地域需要を知っている大手ベンダーの側からは、地域品揃え論は出ません。品揃え品目に、競合勝ちと負けがある店舗側から、10年から12年のサイクル的に個店品揃え論が出ます。
 編集部:商品の競合負けがない場合、全店共通品揃えでいいということでしょうか。
 吉田:その通りです。地域性がある伝統食品と鮮魚では、地域品揃えが必要です。例えば、周囲に海がない長野県では、スーパーマーケットで鯉の切り身をたくさん売っています。県民が、鯉をうま煮にして食べる習慣があるからです。魚は、日本海の新潟県から来ます。
 桜前線のような南から北への季節性がある衣料では、商品構成の時期を、1週から4週ズラすことが必要です。
 しかし、他の商品領域ではMDで勝っていれば、店舗面積が20%も違うときは別ですが、地域品揃えの必要はないでしょう。衣料の季節性は、家庭と職場へのエアコンの普及で、次第に弱まっています。
 例えば、住関連のニトリは全店共通の品揃えです。わが国にも、以前は家具や寝具にも、気候による地域性がありましたが、これもエアコンの普及で、なくなっています。
 ニトリが全店共通品揃えをする理由は、SPA開発のほぼ全商品で、商品価値の面での競合勝ちがあるからです。全米に5000店を持つウォルマートも、同じです。Dg.S商品でも、ウォルマートが安いものが多い。

東急ハンズは100円ショップ、ホームセンターに負けた

 吉田:総合スーパーと、共通の仕入れの弱点を抱えていたのが、1995年ころまでは業績を伸ばし、店舗数を増やしていた東急ハンズでした。他にはない、珍しい商品も集荷していました。しかし、それらは品目別には、国内ベンダーからのごく少量の仕入れであり、価格が高かったのです。
 私も1990年代までは、よく利用していたのですが、2000年代からは売れ行きが鈍って、部門、品揃え幅、品目数が1/2くらいに縮小されました。
 原因は、価格の安い100円ショップ(中国の雑貨のコンテナ単位仕入れ)と、ホームセンターによる2000年代からの開発仕入によって、価格面で競合負けが起こったからです。
 東急ハンズの部門構成と部門内の品目構成の変化も、地域の需要の変化(家事と住関連需要の縮小)によるものではなく、MDでの他店との競合の結果からきたものです。
 具体名では言いにくいのですが、もし東急ハンズでも総合スーパーのように、「地域の需要が違うから、個店品揃えだ」として経営したら、売上げ・利益・生産性での業績は、低下に向かうでしょう。
 問題の本質は、東急ハンズのMDでの、国内ベンダーからの多品目・少量の高い仕入れ価格にあるからです。
 誤解されることが多いMD(需要の商品化)とは、商品の調達、中間流通、そして店頭品揃えと価格を総称する言葉です。品揃えと価格も、需要促進のために行うものです。
 チェーンストアは、商品価値の高い商品を開発するMDを行うべきです。
 わが国では、NB(ナショナルブランド)よりも荒利益率を高めるために、大手小売りのPB(プライベートブランド)開発が行われていますが、これはチェーンストアが成熟していないことが原因の、MDの目的の間違いです。
(吉田 繁治)

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串カツ田中、鳥貴族、磯丸水産は、だから急成長できた!

2017年12月4日 05:00 商業界オンライン

写真:新宿歌舞伎町の「磯丸水産」は外国人観光客でごった返す。

 居酒屋を取り巻く環境は厳しさを増している。少子高齢化(客数減)、人手不足(人件費の高騰)、若者のアルコール離れ(客単価減)など、業界の風はアゲインストだ。
 かつて一世を風靡したチェーン居酒屋は影を潜め、市場はコンビニなど他業態に侵食されて縮小傾向にある。今回は、そうしたマイナス要因を跳ね返し、成長を続けるチェーンに焦点を定め、居酒屋業界の「今」を、解説したい。

チェーンストアの原理原則は健在

 “ターゲットを明確にせよ” とか “こだわりの一品をつくれ” とか、尖がったコンセプトを指南する開業コンサルタントも中にはいる。けれど、“都心に集まる高感度な女性客”とか、 “高級食材を用いたサプライズ料理” とか言っているうちは、居酒屋を事業展開する道は遠い。日本の人口が減っているのだから、老若男女問わず楽しめる店にする。客層を選ばず、年金生活者も懐の寂しいおじさんも、ターゲットにして取り込んでいく。今、成長している居酒屋チェーンは、客層が広く、価格帯は(低価格寄りに)狭いのだ。
 次に人手不足。技術を持つ職人さんは不足し、元気で気の利く学生は減った。そもそも人が集まらない。「人手に頼らない」店づくりを意識したところが生き残っている。
 最後に、若者のアルコール離れ。新入社員とコミュニケーションを取りたい上司は、“今日、ご飯でも食べて帰らない?” と誘うが、“今日、ちょっと飲んで帰らない?”  とは、もう言わない。居酒屋とはいえ、酒をメインとし、つまみは酒を邪魔しない程度では、集客はできないのだ。

無店エリアで成長競う「串カツ」

「串カツ田中」は、首都圏中心に160店舗(直営69、FC 91、2017年10月末)。1号店は2008年12月。成長著しいチェーンである。
 客単価2600円(推定)。1串100円、120円をボリュームに上は150円、200円、他に一品メニュー、締めはうどんだ。
 同社の決算説明資料によると、住宅立地の中心客層は「近隣のお子様連れのご家族(食堂利用)」、オフィス街は「仕事帰りの方や学生(居酒屋利用)」、地方のロードサイドは「お子様連れのご家族(ファミレス)」と説明する。お子様から仕事帰りのおじさんまで、間口の広さをアピールする。
 1串の価格が低く絞られているので、回転寿司の皿数と同様、ファミリーにとって安心して利用できる。食堂やファミレスのような利用動機に拡大していく戦略である。
 オペレーションも簡素化されている、あらかじめ串打ちされた食材に、衣を付けて揚げるだけ。メニューの大半は串カツなので熟練した職人は不要である。FC展開が主体なので短期間の教育により「誰でもできる」が前提である。
 同時期にスタートした「串カツでんがな」(FC主体に86店舗、経営は宅配ピザのピザーラを運営するフォーシーズ)。1串115円を中心に客単価は2400円(推定)。一時は「串カツ田中」より店舗数で優位に立っていたが、今はダブルスコアで引き離されている(ただし、出店の速度はチェーン本部の方針によるもので勝敗を競うものではない)。
 ちなみに、筆者が「串カツでんがな」でお客として店の従業員に聞いたところ、「野菜は店内で切って串打ちしている。だから、みずみずしくて、おいしい」と胸を張っていた。その手間暇が出店速度に影響を与えているのかもしれない。
 串カツが本場の関西地方を除けば、同業種の出店余地は広大である。大阪で修業した職人による生業店は全国にあるが、近代的なチェーン展開は始まったばかりである。「串カツ田中」にとって、「串カツでんがな」は今後、激しく競合する局面が見られるかもしれない。

「鳥貴族」の時代性と先見性

 鳥貴族の創業は1985年。1998年に10店舗、2000年代に入り出店が加速、2008年100店舗、2011年200店舗、2013年300店舗、2017年7月末で567店舗。2000年以降、最も成功した居酒屋チェーンと言ってよいだろう。
 出店は、ビルの上層階か地下1階として家賃を抑制、メニューは焼き鳥に絞り込み、店内で串打ちし、飲み物含め、均一価格で提供している。串打ちは専任の従業員が開店前(11時~16時)に行い、育児や家事に多忙な女性の「隙間時間」を活用するなど、運営上の工夫も見逃せない。
 鳥貴族を一躍有名にしたのが「もも貴族焼」。1串70g前後の大ぶりの串を2串280円(当初、本年10月1日より298円に値上げ)した。鳥貴族以前の焼き鳥店の多くは、アルコールを主体にフードメニューが組み立てられていた。酒が主、焼き鳥が従。すなわち、酒を邪魔しないフードが求められたため、焼き鳥は30~40g程度とつまみ的な要素が強かった。鳥貴族は、これを2倍の重量にし、食事主体の客層の取り込みに成功した。都心部では、アルコールを苦手とする女性客や、価格の安さから若者の支持を集め、近年は住宅立地の店にファミリー客や、中高年を集客している。
 オペレーションも串カツチェーンと同様、営業時は、「焼く」と「接客」に、ほぼ絞られるために、短期間での人材育成を可能としている。
 店舗は関東、東海、関西の3つの商勢圏に集中させて、ドミナント展開の効果を高めている。物流効率やブランド認知、店舗開発や採用活動など、同一商勢圏への大量出店は、セブン-イレブン同様、商品の品質向上にも好循環を生んでいく。2021年7月期に上記3商圏1000店舗、その先、国内2000店舗を同社は掲げている。
 また、喫煙環境についても、全席喫煙、分煙、全席禁煙の3パターンを既に実店舗で実施して、受動喫煙防止法や東京都の条例が、どちらに転んでも対応できるように準備している。こうしたスピード感も同社の強さとして特筆してよいだろう。

外国人に大人気の海鮮焼き

 魚介類を注文し、卓上コンロを使ってセルフで焼く、近年増殖している海鮮居酒屋。そのトップランナーが「磯丸水産」(経営/SFPホールディングス)である。約10年前に立ち上げ、2018年2月末で225店舗を計画、首都圏の繁華街を中心にドミナント出店を図っている。テーブル上で焼く魚介類を中心に、刺身、揚げ物、寿司を提供する魚介類に特化した居酒屋である。
 オリジナルは別にあるのだが、同社と親会社(クリエイト・レストランツ)の展開力により、急速出店を果たした。年中無休の24時間営業。海の家のような浜焼きスタイルは客層を選ばず、都心では外国人観光客で大賑わいである。アルコールを飲まなくても、寿司メニューをオーダーする外国人もいる。店内の演出も外国人受けしそうである。
 焼き肉チェーンの牛角が1990年代に出店を開始した際、キッチンの「包丁レス」が(業界では)話題になった。正確にはネギを切る包丁はあったが、肉は全てカットした状態で仕入れできるので、職人を入れずに店舗運営が可能とし、FC加盟店を一挙に拡大させた。すなわち、仕入れた食材を盛り付けてお客に提供する。あとはお客がセルフで焼くので、オペレーションの負荷が軽減されるのだ。
 磯丸水産の卓上コンロも同様の役割を果たす。盛り付けに至っては、焼き肉よりもさらに簡単である。刺身や寿司を提供するため、牛角と違って包丁は必要であるものの、卓上コンロを使ったメニューを主力にすることで、人時生産性の向上を一気に実現できた。少ない人の運営を可能とし、ランチメニューを含めた24時間営業を実現した。ランチを除く客単価は3000円前後。魚介類をメインにした業態において、お値打ち感が支持された結果の店舗数である。
 今回は近年、急成長した3チェーンを取り上げた。一般的な言説として、「何でもあるけど、おいしいものがない総合居酒屋よりも、メニューは少ないが、専門性のある居酒屋が人気」とあるようだが、そんな単純な話ではない。居酒屋業界の厳しい環境の中で、成長を可能とした3チェーンの創意と工夫を学びたい。
(梅澤 聡)
※この記事は「商業界オンライン」で2017年12月4日に公開されたものです。

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バンコクマラソン『ミッドナイトに微笑みを』

2017年12月3日 00:00 商業界オンライン

 フロントからタクシーを呼んでホテルを出たのが午前0時。バンコク市街は寝静まり、土曜日の深夜とはいえ、歩く人影はほとんど見当たらない。暗黄色に沈んだ街並みに時折、煌々と光を放つのがセブン-イレブンだ。同国最大の複合企業CPグループが経営し、タイ全土に1万152店舗(10月末、以下同)を展開、2位のファミリーマート1131店舗、ローソン93店舗を引き離している。

 筆者は編集記者としてコンビニに関わって15年経つが、今回の渡航の目的はコンビニではなく「マラソン大会」である。タクシーで向かっているのは旧市街地のピッサヌローク通り。フルマラソンのスタート地点である。地下鉄やモノレールの駅が近くになくタクシーかトゥクトゥク(三輪タクシー)を利用するしかツーリストは行きようがない。

スタートは午前2時、なぜ、こんな夜中なのか?

 タイ最大規模のマラソン大会「バンコクマラソン2017」は11月19日に開催された。フルマラソンの出走数は2427人。東京マラソン(3万5500人)の15分の1程度のローカルな規模だが、ハーフマラソン4229人、10キロマラソン8234人と、距離が短くなるほど参加者は増え、身の丈に合ったコースを思い思いに楽しんで走る大会のようである。ちなみにフルマラソン出場者のうち50~59歳(筆者もここに入る)が358人。40代、50代が主体の高齢化した日本の大会とは違って、会場を見ても若者中心の華やいだ雰囲気である。

 会場には午前0時30分に到着した。スタートは午前2時。なぜこんな夜中にスタートなのかといえば熱帯気候のせいだ。1日の最高気温は365日30~35℃、最低気温は24~27℃。年間を通して最も過ごしやすい11月~1月の乾季でも、11月の平均気温は27.4℃、湿度は70%、これは8月の東京(27.5℃、69%)と同様の気候である。昼間はムリでも直射日光を浴びない夜であればマラソンは可能ということだ。事実、バンコクの中心部に位置するルンピニー公園には、日が落ちるとランナーが集まり、けたたましい音楽が鳴り響き、屋台も元気を取り戻し、辺り一帯は賑やかになる。熱帯地方は夜走る。早朝にも大勢の人たちがランニングをしている。エアロビクスの集団もいる。やがて太陽が昇り、直射日光を肌で感じると、人々は一斉に帰途に就く。

日本でいうと日本橋から船橋に行き、帰ってくる感じ

 フルマラソンのコースは一般道を4キロ進んだ後、高架道路に入って10数キロ、幹線道路に下りて数キロ走り21キロを折り返し、同じ道を戻ってゴールする。例えるなら、東京・日本橋をスタートし、首都高から京葉道に入り、船橋市(千葉県)で折り返して戻ってくる距離感である。

 午前2時。スタートはタイ語の秒読み。スタート(実際はタイ語だが……) ! の声が発せられると拍手やら口笛やら高揚感が伝わってくる。スタートライン脇のひな壇には大会関係者の重鎮が居並ぶ。誰かは分からないが、とりあえず手を振って通り抜ける。ちなみに東京マラソンは都知事が号砲を鳴らすと決まっている。スタート地点を都庁前としたのだから避けられない。警護も大変だろう。

 スタートから一般道を1.5キロ進み、ラーマ8世橋を渡る。バンコク市内を流れる大河チャオプラヤー川に掛かるラーマ8世橋は、中央の支柱から前後2方向にケーブルを張った美しいフォルム。この橋に笑顔で“帰還”できることを祈る。

夕食はセブン-イレブンの弁当とホットサンド

 大会は土曜の深夜。なので土曜は朝から「休足日」と決めて、ランチで外に出る以外は部屋の中でゴロゴロと過ごした。早朝のスタートであれば、数日前から「朝型」に調整するが、午前2時スタートは、夜型にするのか、朝型にもっていくのか、睡眠を前後どちらにまとめるか判断が難しいところ。結局、私のとった行動は “何もしない” ということだ。普段通りの就寝・起床で本番に突入する。ただしスタート前は「休足」に集中し、なるべく出歩かない。当日の夕食はセブン-イレブンで購入した弁当とホットサンド。直前にバナナ1本とエナジーゼリーである。

 弁当は、鶏モモ肉を、バジルの葉、ナンプラー、赤唐辛子で炒めて、ご飯の上に目玉焼きをのせた、屋台などで見る庶民の定番料理。1万店強のセブン-イレブンはタイの屋台料理を、きちんと再現している。価格は40バーツ(128円)。屋台より若干高めだが、近隣のフードコートで食べるご飯や麺類が80~100バーツなので、大衆価格といってよい。バジルの香りも赤唐辛子の辛みも、しっかりと効いている。

 ホットサンドはタイのセブンオリジナル商品。10アイテムほどをそろえるこのホットサンドは会計後に、店の従業員が袋からサンドイッチを取り出して、ホットプレートにセットして、焼き上げてお客に手渡す。これが差別化商品として、地元には人気で、同様の商品をファミリーマートも品揃えしている。焼きたてならではの、サクッとした食感と、トロリとした具材が非常にマッチしている。

 日本とは全く違ったコンビニ飯を腹に詰めて自然と頬が緩む。

40代半ばで始め、一度中断、54歳から再開した

 40代半ばからランニングを始めて、ハーフマランを何度か走り、49歳の冬に東京マラソンを5時間台で完走した。その後、家族や仕事の激変で走るどころではなく、一時退行するも、2年前(54歳)にランニングを再スタート。この間、フルマラソン3本を “完走” して今回のバンコク入りとなった。 “市民ランナー”と呼ばれる人たちは、おおよそ4時間台で走り、サブフォー(4時間以下)を目指し練習に励んでいる。その水準でいえば、私の場合は5時間台なので、まだスタートラインにも立っていない。

 その程度の実力で、なぜ海外のマラソンなのか。

 筆者は「趣味は何ですか」と問われると 「アジアぶらり旅」と即答する。香港、台北、バンコク……、「格安航空+安宿」を基本にアジアの街をただ歩く。昔から放浪癖があったのだが、年齢を重ねても治らない。徘徊にならなきゃいいけどね。

 で、ある時、都内のマラソン大会と週末のアジアの旅、どちらを優先させるか非常に迷ってしまった。会社を辞めて、フリーランスになると、それまで以上に「使える時間」を意識するようになる。仕事時間を十分に確保しながら、やりたいことに少しでも目を向ける。アジアぶらり旅とマラソン大会。そこで考えたのが、2つの趣味を同時間にやってしまうこと。アジアぶらり旅とランニングを同時に実現させる。アジア開催のマラソン大会に出場すればいいのだ。

 1つ誤算だったのは、前日の歩行が制限されること。「休足日」を設けると丸1日をホテルで過ごす羽目に。しかも安宿……。マラソンを軸にすると、せっかくアジアに出ても、気持ちのベクトルは、どうしてもスタートラインに向いてしまう。ぶらぶらはできないものだ。

時間がかかったのはコース変更の影響か?

 4キロを過ぎて高架道路に入った。ミッドナイトということで、もともと少ない沿道の応援もなくなって、ひたすら前を向いて走る、ただそれだけの世界。2キロごとに設営されたエイドで水を飲み、氷で首筋を冷やし、アイススプレーを太ももに噴射してもらい、また走る。同日の最低気温予測は27℃、熱帯夜を走り続けることになる。

 前々回の大会までは王宮や寺院が並ぶ一般道をコースに設定していた。 “エメラルドグリーンの王宮の横を走って……”が宣伝文句であった。しかし、2015年8月に大規模な爆弾テロがバンコクで発生し、150人の死傷者(うち20人が死亡)を出した。その後、タイ深南部で爆弾テロ事件が頻発。また2016年10月にプミポン国王が病気で逝去して(88歳)、この年のマラソン大会は延期(翌年2月開催)となった。ここで大会はリセットされて、マラソンコースは安全上、管理のしやすい高架道路が選択されたと考えられる。スタート地点もタイ警察本部と同じ区画にする厳重さである。

 折り返し地点の数キロ手前で高架道路から一般道に下り、片側3車線のうち2車線をつぶしたコースを走る。ポールを挟んだ左横にはトラックが結構なスピードで抜いていく。排気ガスの中をひたすら走る。普段の大会であれば、まだ元気なはずの折り返し地点も、足が相当に重たい。2時間50分。2時間30~40分のイメージだったが、2キロごとの給水に相当な時間を費やされていた。熱中症の恐怖もありスピードも抑えた。給水時間は惜しむべきではない。ただ、それにしても時間を食い過ぎた。

 25キロ過ぎ、東の空が赤く染まり、気を取り直して走り出すも、ペースを徐々に落とす。子供がいれば息子くらいの年のランナーが、追い抜ざまに振り向いて、両手で拳をつくって頑張れのポーズで励ましてくれた。給水所の若者たちもニコニコしながら笑顔の応援を届けてくれる。微笑みの国。ピンチになって、ようやく理解する。

 30キロの辺りで足が止まってしまう。残り12キロを早足で歩けば6時間ギリギリの“完走”もなくはない。しかし、その早足も難しい。タイムリミットが来る前に、行けるところまで行くしかない 。

午前8時過ぎにラーマ8世橋に“帰還”した!

 バンコクの人口は約800万人。大阪府の人口より若干少ない程度。世界132都市を対象にした渡航先ランキング(米マスターカードの調査)によると第1位(1941万人)の都市である(※香港を「都市」にカウントするとバンコクは2位になる、ちなみに東京は1115万人で9位)。バックパッカーの聖地と呼ばれ、ゲストハウスと屋台が並ぶ「カオサン通り」は観光地化しつつも健在。半年間、季節工として働き、残りの半年をカオサン通りのゲストハウスに沈没して過ごす日本人も、かつてはリポートされていた。物価が安く、人々は温厚で、Tシャツ1枚でOKのバンコク。

 そんな、のんびりとしたイメージも、近年はピリピリムード。相次ぐテロ事件により、手荷物検査は、公共交通や高級ホテル、ショッピングセンターなど、至る所で実施されている。

 スタート地点においても、警察官が眼光鋭く周囲をチェックし、監視体制を強化している様子が見て取れる。微笑みの国、といった牧歌的なイメージだけではないのだ。

 午前8時過ぎ、フルマラソン6時間の制限時間をとうに過ぎて、ラーマ8世橋に “帰還”した。日差しはじりじりと強さを増す。ゴールに向かって歩く人たちが前と後ろに数人。この間、途中棄権したランナーを拾って、ゴールまで運ぶ回収車を数台見送った。軽トラックの荷台にランナーが押し込まれ、入り切れないランナーは荷台の最後部に座って足をプラプラさせている。悲壮感は微塵も感じられない。制限時間に戻れないと判断した時点で車に乗ってもよかった。あいにく声を掛けてくれる車もなく、歩き続ける羽目になった。結果、それで良かったのかも。
 

 コースの9割以上が高架と幹線道路に充てられたため、レース途中にコンビニに立ち寄る機会にも恵まれなかった。ただゴールに向かって歩き続ける。

 ラーマ8世橋は、朝の光を浴びてきらきらと輝いている。ほんの数時間前に初めて通ったのに、随分と懐かしい気持ちになった。

(梅澤 聡)

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