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ZARAとH&Mの格差は縮まらない

2019年4月1日 05:00 商業界オンライン

 H&M(18年11月期)に続いてインディテックス(19年1月期/ZARAが主力)も18年度決算を発表したが、インディテックスが既存店も伸びて増収増益だったのに対し、H&Mは増収ながらも既存店割れで減益と明暗が割れた。今期のみならずファストファッションが絶頂期だった10年度からの推移で見ると、両者の明暗は一段と開く。

18年度決算に見る明暗 

 H&Mは総売上げが5.2%増の2104億クローネ(2兆6900億円/1SEK=12.8円)だったが、EC売上げ300億クローネを差し引いた店舗売上げと店舗数の伸び率から推計した既存店売上げは96と4期連続で前年を割った。商品回転は2.79回と前期から0.02回低下しているから過剰在庫が解消されたわけもなく、荒利益率も52.7%と同1.3ポイント低下し、経費率は同1.6ポイント上昇して営業利益率は7.4%と同2.9ポイント低下した。

  インディテックスの総売上げは3.1%増の261億5000万ユーロ(3兆4100億円/1EUR=130.4円)と伸び率はH&Mを下回ったが、EC比率の高い欧米で不採算店を閉店するなど店舗布陣の効率化を進めたためで(H&Mの229店増に対し15店増)、既存店売上げの伸び率は104とH&Mを8ポイントも上回る。商品回転は4.20回と前期から0.03回低速化したもののH&Mより1.5倍も速い。荒利益率は56.7%と同0.4ポイント上昇したが経費率が0.7ポイント上昇し、営業利益率は16.7%と同0.3ポイント低下してもH&Mより9.3ポイント、2.26倍も高い。

  ファストファッションといいながら、22%伸びて売上げの14.5%を占めるECに救われても、H&Mの商品回転は2.79回と在庫消化の限界を割っている。インディテックスを上回る店舗網の整理が必要なはずで、18年11月期の売上伸び率は増店による無理な水増しだったと推察される。インディテックスもECが27%伸びて売上げの12%を占めるが、EC注文の店在庫引き当てや店出荷が本格化するのは今期からで、前期は在庫回転の底上げ効果は限られたと思われる(店発注のSMIを基本とするインディテックスはEC向けDC在庫と店舗在庫を分離している)。
 在庫回転は売上原価を期首期末の在庫平均で除したものだから、在庫の計上手法によって大きく振れる。事実、国内ユニクロは17年8月期まで店舗在庫(国内倉庫から出荷した時点)だけの計上だったから上振れていたが、18年8月期から国内倉庫在庫まで含めた(海外から国内倉庫に到着した時点)計上に変更したため坪当たり在庫が2.4倍に膨らみ、計算上の在庫回転は17年8月期の4.91回から18年8月期は2.17回に急落している。
 インディテックスは「スルー物流」でEC向けを除けば本国も各国もDC在庫を持たないが、H&Mやユニクロは「ダム型物流」でDC在庫の比率が高く、H&Mもユニクロも店頭在庫の1.5倍程度を消費地DCに積んでいると推計される。SPAの場合、商社経由と直貿、製品買い上げと工賃払いで計上のタイミングや項目が異なり、インディテックスでは製品在庫/仕掛かり在庫/原材料在庫と分けて計上しているが、H&Mの場合は決算書にその明記がない。

格差は加速度的に開いていった

 ファストファッションがピークだった10年度からの推移を比較すれば、両者の格差が加速度的に開いていったことが分かる。
 8年間でH&Mの売上げは1.94倍、インディテックスの売上げは2.09倍と大差ないように見えるが、この間にH&Mの店舗数が2.25倍に増えたのに対し、インディテックスの店舗数は1.48倍にしか増えていない。この間にH&Mの1店当たり売上げが14%減少したのに対し、インディテックスの1店当たり売上げは41%も増えている。
 既存店売上げもこの間、インディテックスが1期も前年を割ったことがないのに対してH&Mは6期も前年を割っているから、H&Mが効率を落とす無理な増店で売上げを伸ばしてきたことが分かる。郊外SC店舗を増やして売上げを積み増してきた日本国内H&Mではさらに顕著で、この8年間に坪販売効率は半減してユニクロの4掛けまで落ちている。
 在庫消化を推計できる在庫回転と荒利益率は、この間にH&Mの在庫回転が3.70回から2.79回と25%減速し、荒利益率も62.9%から52.7%と10.2ポイント低下したのに対し、インディテックスは4.62回から4.20回と9%の減速に抑え、59.3%から56.7%と2.6ポイントの低下に留めている。H&Mの期末在庫はこの間に3倍近く肥大しており、売上対比でも1.5倍に積み上がっている。
 H&Mの営業経費率がこの間に40.2%から45.3%と5.1ポイントも肥大し、営業利益率が22.7%から7.4%と15.3ポイントも下落したのに対し、インディテックスの営業経費率は41.0%から40.0%と1.0ポイント改善され、営業利益率は18.3%から16.7%と1.6ポイントの低下に抑えている。
 前期の売上げが300億SEK(3840億円)に達したH&MのECはフルフィルが多地域に分散しているとはいえ営業経費率は店舗販売の半分程度に収まっているはずで、14.5%というEC比率から全体の営業経費率を3ポイント強引き下げていると推計される。ならば店舗販売の営業経費率は48.5%程度と経費倒れ寸前まで悪化しており、営業利益率は4%強まで落ちているはずだ。それはEC売上げが32億EUR(4170億円)に達したインディテックスとて同様で、12.0%というEC比率から全体の営業経費率を2.5ポイント程度引き下げていると推計される。ならば店舗販売の営業利益率は14%強ということになるが、H&Mより10ポイントも高い。

両者の格差は縮まらない

 今後、EC比率を高め、C&Cなオムニコマース体制を確立していけば在庫効率も営業経費率も改善されていくと期待されるが、両社の格差が縮まることはないだろう。それは店舗運営の経費率と在庫の消化回転というベースの格差が縮まらないからだ。その背景には、タイトな需給均衡を図って調達ロットを抑え、DCに在庫を積まないスルー物流に徹するインディテックス、調達原価抑制を優先する大ロット調達でDCに在庫を積み上げるダム型物流のH&M、というビジネスモデルの根源的違いがある。
 両社のEC比率が30%まで拡大した場合の営業経費率を推計してみたが、両社の格差は前期の5.3ポイントから6.0ポイントとむしろ開いてしまう。荒利益率の格差4.0ポイントも縮まる要素は見当たらないから、前期の営業利益率格差9.3ポイントは10ポイント以上に開いていくのではないか。
 EC比率を高め、C&Cを推し進めても、AI装備で店舗運営を効率化しても、サプライとロジスティクスの基本体制の格差は埋まらない。収益力とキャッシュフローの格差もデジタル投資のスピードに響くから、デジタル化でも逆転はあり得ないだろう。デジタル化以前のアナログな事業体制の優劣がどれほど決定的なものか、両者の格差は物語っているのではないか。
(小島健輔)

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新規導入だらけの店

2019年4月1日 05:00 商業界オンライン
cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_4af37175617a_話題の「蒸し豆」いろいろ!その特徴と効果的な食べ方 4af37175617a 0

話題の「蒸し豆」いろいろ!その特徴と効果的な食べ方

2019年3月31日 05:00 商業界オンライン

 消化で腸に負担をかけない良質なタンパク質。さらに、肝機能の回復や内臓脂肪に働き、美肌効果やアンチエイジングにも……!と、そのマルチパワーが注目される「蒸し豆」。
 食物繊維など優れた栄養素が凝縮された「皮ごと、丸ごと」食べられ、水煮に比べても栄養素を逃さずに摂取できるのがポイント。
 ほくほくとした豆本来の旨みを味わえるので、そのまま食べて十分なおいしさ。して小腹が空いたら、お口にポン!ライフスタイルも多様化し、3食きちんと食べるのが難しい私たち現代人の生活にもマッチした食材です。

裏面をチェック、砂糖が入っていないものを

 常食として、ダイエットや美容のために市販の豆を取り入れるなら、「砂糖や水あめなどが入っていない蒸し豆」がオススメ。購入するときは裏面をチェックして。
 豆本来の味を楽しみましょう。味覚の改善にもなります。最近はシンプルな「蒸し豆」が増えて、味もとてもおいしくなっていますよ。

豆は種類も栄養価もいろいろ。その特徴とオススメの食べ方

 豆の種類はいろいろ。栄養価もさまざまです。せっかく食べるのなら、その効果を知って選びたいですよね!オススメの食べ方もご紹介します。

〈黄大豆〉

 「畑の肉」といわれ、豆類の中でも、「高タンパク、低糖質」。植物性ながらアミノ酸スコア100の良質なタンパク質です。内臓脂肪や肝脂肪、コレステロール低下に働くことで話題の「大豆タンパク質」、女性ホルモン様で強い抗酸化作用をもつ「大豆イソフラボン」、善玉菌のエサとなる「大豆オリゴ糖」など、豆類の中でもそのパワーはピカイチです。
 蒸し大豆にすると、豊富な食物繊維が丸ごと摂取できます。蒸し大豆は比較的安価なので、毎日続けやすいのもうれしいポイント!

【オススメの食べ方】みそ汁にオンして腸内環境をさらにアップ!

 蒸し豆はしっかりお腹にたまります。これは大豆タンパク質はなかなか消化されず、腸にとどまるから。ダイエット効果は抜群ですが、ひどく内臓が疲れているときや便秘がちの人はみそ汁に入れると、発酵食品のみそに含まれる酵素が腸の働きを活性化させ、消化を助けてくれます。特に「水溶性食物繊維」が豊富なワカメやキノコのみそ汁にトッピングすると、豆の「不溶性食物繊維」と相まって効果的に働きます。
 蒸し豆はよくかむことで食べ応えがでます。タンパク質も摂取でき、忙しいときや食事を調整したいときなどもオススメの満足感のある1品に!

〈黒大豆〉

  黒豆と呼ばれることも多く、大豆の中でもさらに効果の優れた「プレミアム大豆」。その秘密は、漆黒色の色素成分「大豆クロロフィル」という強力な抗酸化作用をもつポリフェノール。むくみ予防、肝臓の回復、コレステロール低下、血糖値の低下とその強力なパワーは大変注目を浴びています。かむと歯応えと濃い独特の風味と甘みをもっていて、特別感あります。
 黒豆といえば、お正月の甘い煮豆が一般的でしたが、最近は素材そのまま、砂糖の入っていない蒸し豆が売られています。黒豆特有の風味と甘みが味わえます。
 小豆も、同じく「小豆ポリフェノール」を豊富に含み、血清中性脂肪、LDLコレステロールの低下に働く効果が期待されています。小豆はブラジル料理や中近東では豚肉や鶏の煮込み料理などによく使われます。1品で動物性と植物性のタンパクを一緒に摂取できる完全栄養食で、理にかなった料理です。
 日本では小豆の水煮は一般的ですが、まだ、砂糖入りの「あんこ」が大半。甘くない、そして、栄養価の高い「蒸し小豆」商品も増えるといいですね!

【オススメの食べ方】アイス、プリンにのせて、血糖値コントロール!

 そのままがおいしいですが、デザート感覚でスイーツに合います。アイスクリームやプリンの原料は乳製品や卵といった動物性タンパク質。これらは大豆の植物性たんぱく質の効果を高めます。
 スプーン1杯程度、黒豆を先に食べる「ソイファースト」で血糖値の急上昇を抑え太りにくく。
 同じく乳製品のクリームチーズと一緒に食べると、超低糖質スイーツになります。

〈レンズ豆〉

 レンズ豆は、豆類の中でも「鉄分」と「亜鉛」が大変豊富で、大豆を上回ります。疲労回復や体の若返りに非常に有効。スーパーマーケットやデリ専門店のお惣菜で見掛けることが多い豆です。

【オススメの食べ方】皮が薄く食べやすい「レンズ豆のスープ」

 平べったいレンズ豆は皮が薄く、豆類が苦手な方でも食べやすい豆。インド料理ではポピュラーな「レンズ豆のスープ」は特に食べやすい一品です。豊富な亜鉛は味覚改善にも最適。ぜひお試しください。

〈ひよこ豆〉

 エスニックブームで身近になりました。中近東ではよく食べられている豆です。ひよこ豆をすりつぶしたペースト状の「フスム」、最近話題ですよね。
 不溶性食物繊維も豊富なのが特徴。便秘解消など腸内環境を整えるには最適!一方で、糖質はやや高め。しっかり甘さがあるので、おかずで加えるよりも、米やパンなど主食の「置き換え」にするのがオススメです。

【オススメの食べ方】「冷製トマト&カレーサラダ」で便秘解消!

 蒸すことで、デンプンがレジスタントスターチに変わります。冷蔵庫で10℃以下に冷やして食べると血糖値の急上昇を抑えてくれます。糖質がやや高いひよこ豆はトマトと一緒に。リコピンが血糖値の急上昇を抑えてくれます。また、脂肪燃焼効果の高いクミンなどのスパイスとも相性が良いです。小麦を使うルーではなく、スパイスを利かせたサラダで。温めるとレジスタントスターチの効果がなくなってしまうので、冷たくして食べましょう!
 いかがでしたか?
 世界でも「植物性タンパク質」は注目されています。日本でも、ますます「蒸し豆」人気は高まるでしょう!手軽だし、健康にも、お財布にも優しい。
 ちょい足し、おやつに、おつまみに。。。ぜひ、お試しください。

(松田真紀)

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象印マホービンが伸ばす「鼻以外のもの」

2019年3月30日 05:00 商業界オンライン

写真:象印のキャラクターもショップに登場。だがタイ人により効果があるのは割引価格やおまけの提供だ。

 象印がタイで売上げを伸ばしている――。こう聞くと、「ゾウの国だから、社名が受けているのだろう」「コメを主食とする国だから日本の炊飯器が人気なのだろう」と考える人が多いのではないだろうか。
 だが、タイではゾウを冠した社名やゾウをモチーフにしたブランド名は珍しくなく、象印の名前にさしたるアドバンテージはない。また、今タイで人気を集めているのは炊飯器ではなく、ステンレスボトルだ。
 しかも、日本とは異なり、女性のオフィスワーカーがユーザーの大半を占めている。タイの市場に合わせてターゲットを変え、利用シーンを考え、訴求方法を工夫したマーケティングの勝利である。ローカライズに悩む企業が多い中、なぜ象印の試みは軌道に乗っているのか。巧みなマーケティング戦略を追った。

タイに工場を開設したのは1986年のことだった

 象印マホービンは100年余の歴史を持つ老舗メーカーであると同時に、積極的に海外で事業を展開している企業でもある。海外の製造拠点は2カ国、販売拠点は4カ国に及び、10年前には10%程度だった海外売上比率が今では30%を突破している。押しも押されもしないグローバル企業だ。
 同社が東南アジア向けの販売会社設立に踏み切ったのは1995年。同年に香港象印を設立し、中国や東南アジアの開拓をスタート。2014年にはタイに象印SEアジアを設立し、翌年からオペレーションを開始した。
 1986年に工場を開設したタイに、約30年遅れで販売会社を設けた理由を同社の社長、鐘川司氏はこう語る。
「香港ではどうしても中国商圏での販売が中心になり、他のアジアの国に手が回らない。距離もあるので、東南アジアのハブであるタイに販売拠点を設けることにしました。タイは可処分所得が伸びている国。弊社の製品である調理家電やステンレスボトルは、冷蔵庫やテレビといった基本的な家電製品をそろえ、その後、エアコンや洗濯機といった製品を購入後にようやく目が向く製品群。タイの消費がその段階に移行しているタイミングを見計らっての進出です」

 象印SEアジアに課せられたミッションは2つ。1つはタイ国内での販売。もう1つは他のアジア地域への輸出だ。販売の方針は「ワンブランド・ワンスタンダード」。日本で販売しているものと全く同じ製品を海外でも販売している。ブランド価値を守るため、日本語表記もそのままだ。
「ただ輸出をするだけではなく販売代理店とともに、輸出の先にあるお客さまとの接点を強化することも販売方針の1つ。アジアでは後発になるのでチャレンジの連続ですね」
 タイ国内で販売しているのは、ステンレスボトルやフードジャー、ランチジャーなど、タイ工場で生産している非家電製品のみ(ちなみに日本で売っているこれらの製品は全てタイ製だ)。炊飯器など電気製品はタイではいまだ販売してない。
 炊飯器は競合が多く、価格の安い製品が氾濫している。「ワンブランド・ワンスタンダード」の戦略上、コメの品種が日本とでは大きく異なるタイで、日本の製品をそのまま販売しても勝機はない。市場に定着しやすい製品は何か。検討した結果、非家電製品、中でもステンレスボトルに的を絞った。
 しかし、象印のステンレスボトルの平均実売価格は1000バーツ(約3400円)前後。タイの世帯収入はまだ2万6000バーツ(約8万9000円)程度。平均より上の層でなければ購入は望めない。
「リサーチすると、タイの人口約6700万人のうち、ターゲットに該当するのは約2000万人いることが分かりました。この層が利用するのは百貨店やGMS、コンビニなどのモダントレード。特に百貨店の利用が多いので、タイの2大百貨店チェーンであるセントラルとザ・モール、日系百貨店にほぼ販路を集約させました」
 ターゲットを見極め、彼ら彼女たちが利用する店に商品を卸す。マーケティングの基本に忠実にビジネスをスタートした同社は、やがて「タイならではの特異な傾向」に気付く。購入客を対象にしたサーベイの結果、お客の80%がオフィスでステンレスボトルを使っていることが判明したのだ。

BTS(高架電車)を宣伝の場にした「深~い理由」

 日本はどうか。象印やタイガー、サーモスといったメーカーが中心となり、2006年から業界を挙げて取り組んでいる「マイボトル」キャンペーンの効果で、マイボトルを持参する社会人が増えてはいるものの、ステンレスボトルのユーザーのほとんどは学生だ。 
 好きな飲み物を入れて学校に持参し、学校で飲む。学生にとってステンレスボトルは標準装備といっていい。
 だが、タイにはそうした習慣はない。経済的にある程度の余裕はあっても子供に1000バーツものステンレスボトルを買い与える家庭はまだ少数派だからだ。
 ただし、オフィスワーカーなら話は別だ。オフィスで働くタイ人は中流より上に属し、1000バーツという価格にもそう大きな抵抗はない。加えて、タイのオフィスはエアコンの効き過ぎで常に涼しい、どころか「寒い」環境なので、ついつい温かい飲み物が欲しくなる。
「外は暑いのに室内は冷えている(笑)。だから、オフィスワーカーたちはステンレスボトルにコーヒーやお茶など、温かい飲み物を入れて会社に持っていき、仕事の合間に飲んでいるんです」
 フォーカスすべきターゲット層と利用シーンが明らかになったところで、2015年、同社はオフィスビルでのイベント開催に踏み切った。バンコク中心部に位置する巨大なオフィスビルを舞台にしたワンデイショップの出店だ。

オフィスビルに期間限定でショップを設置。オフィスワーカーの需要を見事に開拓した。

 給料日に合わせて、ビルの1Fに小さなキオスク(ブース)を設置。そこにスタッフを貼り付けて販売を行った。といっても単に売っただけではない。タイ人が大好きな「お得感」を打ち出すために、「今日、買ったら正価の50%オフ」といったPOPを展示し、ステンレスボトルの色と合わせた傘やコースターといったギフトも提供している。
 すると、出勤前の朝と退社後の夕方、面白いようにステンレスボトルが売れていく。ターゲット層、場所、タイミング、訴求内容。全てがうまくかみ合った結果である。
 主要なオフィスビルでの販売が一巡すると、2016〜2017年にかけてはBTS(高架電車)の駅に直結したショッピングモールでのイベント開催にも踏み切った。サイアムスクエア、ターミナル21、エムクオーティエ、ゲートウェイエカマイ。いずれもバンコクを代表する巨大な商業施設だ。

「1週間限定でポップアップショップを開きました。反応は良かったですね。タイ人にはどのように見せるのかという『見せ方』が非常に大事なので、ユーザーの8割を占める女性にファッショブルだと感じてもらえるようなカラフルなボトルをそろえました」
 タイ人は赤やピンク、黄緑といったカラフルな色に目がない。カラーリングもマーケティングの重要な要素なのだ。
 2017〜2018年には駅や駅ナカを宣伝の舞台に活用した。2018年には本社の創業100周年を記念して電車にはラッピング広告を施した。アソーク駅やサラデーン駅といったBTSの主要駅の構内ではステンレスボトルの等身大モックアップを用意し、キャンペーンも実施している。
 この取り組みはオフィスワーカーへのアピールだけが目的ではない。
「BTSを利用する方は将来のターゲット。BTSの料金はバスよりもずっと高いですからね。余裕がないと乗れません。BTSの乗降客は、これから象印製品のユーザーになってくれそうな潜在的な顧客層です」

バンコクのBTS(高架鉄道)はターゲットであるオフィスワーカーが利用する交通機関。ラッピング広告は効果的だ。

象印SEアジアに成功をもたらした「3つのこと」

 ステレスとボトルと同じように、日本とは異なる用途で利用されている製品は他にもある。高い保冷力や保温力、滑らかな飲み口が特徴のステンレスタンブラーだ。
 日本ではビールを飲むシーンで用いられ人気を集めているが、タイではグラスにビールを注ぎ、氷を入れて飲むことが多く、タンブラーの出番はほとんどない。
 そこで、同社はビールではなくカフェラテ用にこのタンブラーを提案することにした。
「人気のバリスタと契約して、ラテアートのワークショップで販売しています。カフェラテのおいしさをそのままキープできる器としての提案です。こうしたイベントは全てローカルのタイ人スタッフが考案しました。日本人が考えてもヒット率は低いですから(笑)」

 日本では見ることのない製品もタイでは販売されている。車中での利用を想定した車用ステンレスマグだ。
「ワンタッチでフタを開けても、中の飲料が飛び散らない構造が評価されています。タイでよく売れている製品の1つですね」
 直営店戦略にも注目したい。日本には象印が運営する常設のレストラン「象印食堂」はあっても、象印製品だけを扱う直営店はないが、タイでは直営店が着実に増加中だ。2015年に工場の近くの大型ショッピングモール・メガバンナー内に直営店を出店。以後、ファッションアイランド、ゲートウェイエカマイ、ウエストゲートにも店を構え、現在、計4店の直営店を展開している。ゲートウェイエカマイを除けば、他3店はローカルな場所にあるローカルな店。お客はほぼタイ人だ。

「タイに根付かないと意味がないですからね。今年中にもう1店オープンする予定ですが、やはりローカルなエリアにある店舗です」
 タイにおけるステンレスボトルの用途やポテンシャルを知るのは誰か。言うまでもなく、タイ人だ。日本人の役割はタイ人の意見やアイデアをうまく引き出し、実行に移すことにある。
 ローカルスタッフからぽんぽんと意見が飛び出す自由闊達な環境と、出た意見に素直に耳を傾けるマネジメント層の姿勢、そして勝機のありそうなアイデアをスピーディに実践していく行動力。鐘川氏率いる象印SEアジアにこの3つが備わっていることは間違いない。
 今後は炊飯器の販売も計画している。当然ながらタイではタイ米をおいしく炊く仕様が欠かせない。目指すは同社の技術力を駆使して大きく差別化を図れる製品だ。
 象印SEアジアの売上げの70%を占める近隣諸国への輸出も順調そのもの。ベトナムにはホーチミンとハノイの2店、マレーシアはクアラルンプールに1店、ミャンマーにも2つの直営店を開いている。
「ベトナムのホーチミンにはバスの交通網が充実しているので、バスの車体にラッピング広告を実施しところ、好評でした。以前は代理店任せでピントがずれた販促が目立ちましたが、今はタイでコンテンツを作り、それを現地に送って主体的な広告宣伝や販促活動を展開しています」
 海外では「象印=ZOJIRUSHI」は正しく発音されることが少ない。「Z」から始まる音が珍しいからだ。
「でも、発音が難しい分、一度覚えてもらえばもう二度と忘れない(笑)。ネットで検索しても同じ社名は全くないですしね。逆に海外展開には有利だと考えています」と鐘川氏。発音しづらい社名を冠した「象印」の東南アジアの市場開拓大作戦は今、タイを拠点に着実に実を結んでいる。
(三田村 蕗子)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_9585549f5617_跡部美樹雄の「発酵熟成」人生 9585549f5617 0

跡部美樹雄の「発酵熟成」人生

2019年3月30日 05:00 商業界オンライン

写真:GINZA SIX 13階にリニューアルオープンした「旬熟成HAKKO」

 2月21日、「GINZA SIX」(東京・銀座)13階にある熟成肉のレストラン「旬熟成GINZA GRILL」が「旬熟成HAKKO」という店にリニューアルオープンした。同店を経営するのは(株)フードイズム(本社/東京・渋谷区、代表取締役/跡部美樹雄)である。
 同店は主要食材に「発酵熟成肉」「発酵熟成魚」を使用して、「身体を温かくする」「身体を活発にする」「身体を癒す」という効果をもたらす素材と発酵調味料を巧みに融合させたコース料理を組み立てている。
 同社の跡部美樹雄氏は、2013年当時にブームとなり、価値の高い食品として定着した「熟成肉」を広く知らしめた人物で、今日、熟成肉の事業家として活躍している。その跡部氏が熟成と発酵を結び付けた事業を始めたのはなぜか。跡部氏の沿革をたどりつつ、これからの展望についてリポートする。

「熟成肉」食べ歩きの過程で衝撃を受ける

 まず、跡部氏がいかにして熟成肉を事業とするようになったか。2013年のブームに至るまでを紹介しよう。
 跡部氏は1975年8月生まれ、千葉県野田市で育つ。服部栄養専門学校卒業後、立川の寿司割烹に就職、次は砂町の割烹、竹橋のうなぎ割烹、そして新橋の和食店で料理長を務める。その後、27歳で洋食のチェーン化企業に就職、さらにコンサルティング会社に転じる。2009年に独立し、餃子専門店の「立吉」で起業した。

「立吉」の業績は振るわず、2011年3月11日の東日本大震災に合い、「店は終わった」と思ったという。しかしながら、仕切り直しを決意して“明るく楽しい店”を心掛けたところ店の業績は上向いていった。
 このころ、「熟成肉」というワードと出合った。「これは何だろう」と東京、大阪など熟成肉を扱う店の食べ歩きをするようになった。その過程で食べたある店の熟成肉が衝撃的においしく、「身体の中に電気が走った」という。
 その瞬間、「この商売がしたい」と思い立ち、物件探しを始めた。物件探しは2011年から始めて、2012年9月六本木にこの事業の1号店となる「旬熟成」を東京・六本木にオープンした。
「旬熟成」とは跡部氏がつくった言葉である。「旬」と「熟成」の概念は相反するものだが、跡部氏は「熟成肉となる前は“鮮度のよい”旬であり、一方で“熟成した”旬が存在する」と考えた。それが「旬熟成」という言葉に落とし込まれた。「店名をどうしようかと考えているときに、この言葉が天から降りてきた」(跡部氏)という。
 この当時の様子を跡部氏はこう語る。
「料理人から外食産業に進み、コンサルタントとなり、外食のことを知っていると思っていたが、単に気合いと根性でやってきました。熟成肉についても、興味本位で動いているうちに衝撃を受けた経験から手掛けたことで、何かビジョンがあり戦略を立てていたわけではありません」
 しかしながら、周囲の環境が熟成肉のことを盛り立てるようになった。赤身ブームがあり、熟成肉にはそれに大きな付加価値をもたらす存在として注目されるようになった。
 また、和牛より安価な交雑牛や乳牛を熟成させることで価値を高められるという点からも熟成肉の新しい意義が見いだされた。

欧米で発展して日本にやってきた「熟成肉」

 熟成肉とは、一定の条件のもとで牛肉の赤身部分を寝かせて旨味を引き出した肉のこと。ただ単に寝かせるだけでは肉に有害な微生物もついてしまい、腐敗肉になってしまう。熟成肉は環境管理をした上で適切な微生物を付着させた肉のことをいう。
 熟成肉は欧米で発展した。30年ほど前にニューヨークのステーキレストラン、スーパーマーケットで扱われるようになり、広く一般市場に出回った。日本では、きめ細かいサシが入った霜降り肉とは別に健康志向の高まりとともに、熟成させた赤身肉が注目されるようになった。こうして、冒頭に述べたように2013年にブームとなった。
 熟成肉のつくり方には幾つか方法がある。
 まず「ドライエイジングビーフ」。保管庫の室温を冷蔵、湿度を70~80%にして、ファンで風を送って乾燥熟成される方法。熟成させる時間を管理することで、香り高く旨味の十分な熟成肉をつくることができる。
 次に「ウエットエイジングビーフ」。これは真空パックにした牛肉をそのまま熟成させる方法。鮮度を保ちながら熟成を進め、保存が利くという利点がある。フランスやイタリアの精肉店ではこの方法が主流となっている。
 そして「枝枯らし」。日本で古くから行われてきた方法で、枝肉に風を当てずに熟成させる。ドライエイジングでは付着しない微生物もついて、みそのような香りを出せる。
 フードイズムの熟成肉はドライエイジングビーフで、4℃の熟成庫内で数カ月を経て製造されている。

大型の熟成庫をつくり、熟成肉の卸売業にも進出

「旬熟成」の存在は、熟成肉に取り組んでいる他店とは異なる存在感があったようだ。
「われわれの店は大衆に向けた業態ではなく、レベルの高い食味を目指しました。それは“身体に電気が走った”店の食味にどうすれば近づけるのか、一生懸命考えていきました」(跡部氏)
 しかしながら、そのやり方が分からない。そこで消去法で取り組んだ。毎日冷蔵庫の中に入って肉と向き合いながら、「熟成肉として、これは駄目そうだ」と思う部分を見つけてはアルコールスプレーとペーパータオルで局部的に除菌をした。肉の置き方にしても適宜変更した。
「旬熟成」六本木店は麻布十番に隣接するところにあり、新しい試みに対する感度の高い人が多い。同店は大きな肉をぶら下げたディスプレーをしていたので、店の前を通る人は「この店は何屋なんだろう」という具合に興味を抱いたようだ。
 そして、店で食事をしたお客さまのことごとくが「こんなおいしい肉を食べたことがない」とコメントした。
 そして、SNSやWeb媒体で評判が広がった。雑誌やテレビの取材が途切れなくなり、「熟成肉ブーム」の象徴的な存在となった。
 外食産業記者会が選ぶ外食アワードの「外食アワード2013」でも食肉小売・卸売の老舗でドライエイジングビーフを流通させている(株)さの萬代表取締役社長、佐野佳治氏が受賞し、また「2013年外食キーワード」に「熟成肉」が選ばれた。
 これに類することが次々と起こり、「旬熟成」はますます繁盛するようになった。熟成肉の製造は業者に依頼していたが、六本木店では月1t使用するようになり、業者でも対応が難しくなったことから、自社で40フィートのコンテナを活用した熟成庫をつくり、熟成肉の卸業にも取り組むことになった。2013年11月のことである。

明治大学と共同で「エイジングシート」を開発 

 熟成肉人気が高まる中で、跡部氏は熟成肉の「おいしさ」「旨味」を数値に置き換えて「見える化」できないかと考えていた。そこで跡部氏は明治大学農学部で微生物の研究をする村上周一郎教授に相談に赴いた。
 村上氏も肉に菌がついている状態を見たり、肉の味を体験して、「自分たちの研究対象にしたい」と申し入れた。
 ここより跡部氏が率いるフードイズムと明治大学との産学連携事業として熟成肉の共同研究がスタートした。2014年のことである。ここでの狙いは、熟成肉を「よりスピーディーに」「より安定した品質で」「誰でもどこでもつくれる方法」の開発を目指すことであった。
 まず、分かったことは熟成肉をつくり出す菌とそうではない菌が存在すること。従来の熟成肉のつくり方は「肉に自然に付着する胞子からカビを増殖させる」ことであったが、これではカビの増殖が不安定で熟成期間が長期化する。そして品質の劣化や腐敗のリスクが大であった。
 研究の結果考えられたことは、胞子を付着させたシートを肉に巻けば、カビは安定的に増殖し、熟成期間が短縮されるということ。これによって腐敗は防止され、品質の変動が改善される。こうして「エイジングシート」が開発された。

 エイジングシートを使用して製造した熟成肉は、従来法と比べて「筋繊維が軟らかくなり、より切れやすくなった」「熟成期間を短縮できた」という効果が表れた。
 エイジングシートで製造した熟成肉を「発酵熟成肉」と命名し、2016年2月に明治大学と共同で特許を出願。以来、この認定マークを作成して「発酵成熟肉認定店」のブランディングを行っている。
 跡部氏は熟成肉に「発酵」という概念をつなげたことから、「微生物の力」に魅入られるようになった。
「われわれの身体にはたくさんの微生物が存在します。これらはデンプン、糖、タンパク質などさまざまな有機物を分解することで生きるためにエネルギーを得ています。このような微生物の働きを利用してさまざまな材料から人間にとって有用な物質や製品をつくることが発酵です。しかしながら、世の中の風潮は微生物を取り除こうとしている。ここに私は大きな乖離を感じました。たくさんの発酵したものを摂取することによって人間はより健康になるものと考えるようになりました」

「旬熟成」のお客さまから得た新事業のアドバイス

 ここに至るまで、「旬熟成」のお客さまからさまざまなアドバイスがあった。
 まず、中国の鍼灸師の話。「医食同源」という言葉があるが、この言葉は日本でつくられたもの。本来の言葉は「薬食同源」。これは「二流の医者は治療をする」もので、「一流の医者は予防をする」ものということ。「薬食同源」とは「予防食」を意味している。患者の癖や状態を見て、食材を選んで、身体を温かくも冷たくもできる――と。
 次に、美容鍼の先生。天地には陰と陽が必ず存在して、互いに対立し依存し合いながら万物を形成している。食材も同様に陰と陽がある――と。そこで、食材における陰と陽の知識を深めていった。
 こうして「身体を温かくする」「身体を活発にする」「身体を癒す」という食材を集めていった。
「身体を温かくする」といった温度変化をもたらす食材とはどのようなものか。そのヒントは先の鍼灸師から得た。
「北海道で多く食べられる肉料理はジンギスカン、つまり羊は身体を温めてくれる」
「豚で有名な産地は九州だ。だから、豚は身体を冷やす作用がある」
 野菜も同様である。「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉があるが、本来、夏野菜のナスは身体を冷やすもので、それを秋に食べると体を冷やすダメージが大きいということ。一方、土の中で育つ野菜は身体を温めるもので冬に対応するものである、と。
「だから食材を組み合わせることによって、身体にもたらすことは全く変わってくるのだ」という。跡部氏、その話をなるほどと思い、身体の状態に訴求する食材の組み合わせと、「発酵」が入ることによる新しい料理ジャンルを切り拓こうと考えた。

独創性の高い「発酵」尽くしの料理ジャンル

「身体を温かくする」身体を活発にする」「身体を癒す」3種類のコースは以下の通り。

「旬熟成HAKKO」のコースメニューのイメージ

発酵食を整える発酵ソース

サクラチップのスモーク牛

スポイトには、カモミールティー、レモンバームなど7種類のソースを入れてある

「温」

・生姜 醤油:ミニバーガー、出汁醤油のジュレ/・混ぜ造り:まぐろ(20日間熟成)、牛ウチモモ/・西京漬牛 発酵熟成炭火焼:ごぼうのポタージュ、牛ウチモモの西京味噌漬けにトリフオイル/・発酵熟成炭火焼:発酵熟成させた肉or魚の炭火ステーキ/・黒〆:発酵熟成牛の竹炭一口カレー サフランライス/・冬甘:きな粉入りのチーズケーキ、胡椒のアイス、抹茶のソース、黒蜜

西京漬牛発酵牛炭火焼(イメージ)

「活」

・ヴィンサント:ミニバーガー ヴィンサントソース/・酒粕:まぐろの炙り オレンジオイル、酒粕とフロマージュブラン/・発酵熟成ローストビーフ:柚子茶の香りのローストビーフ マッシュルームのソース/・発酵熟成炭火焼:発酵熟成させた肉or魚の炭火ステーキ/・黒〆:発酵熟成牛の竹炭一口カレー サフランライス/・冬甘:きな粉入りのチーズケーキ、胡椒のアイス、抹茶のソース、黒蜜

発酵熟成肉炭火焼

「癒」

・柚子:ミニハンバーガー 柚子ソース/・発酵熟成サーモン:サーモン(10日間熟成)、塩麹、春菊オイル、春菊パウダー/・発酵熟成ローストポーク:香草のオイルでコンフィした三元豚、ローズマリーの入ったチーズソース/・発酵熟成炭火焼:発酵熟成させた肉or魚の炭火ステーキ/・黒〆:発酵熟成牛の竹炭一口カレー サフランライス/・冬甘:きな粉入りのチーズケーキ、胡椒のアイス、抹茶のソース、黒蜜 *季節によって変更あり
 これらの各コースで8500円、1万2000円、1万5000円(税込)の3タイプがある。
 また、8種類の薬味を用意して、発酵食品の食味の変化を楽しめるようにしている。

 さらに、発酵食品を使用してこれらのメニューに合わせたドリンクもオリジナルで開発している。

 大きなブームを巻き起こした熟成肉は跡部氏が興味の赴くままに行動した産物であったかもしれないが、それは食の市場の中に大きな価値をもたらしている。そこには感覚的な先見性の賜物であろう。
 そして、熟成肉の再現性と品質の安定化を追求して共同開発した「エイジングシート」は熟成肉事業の可能性を大きく広げた。
 この過程で巡り合った「発酵」は跡部氏の原点である料理人としての創造性を引き出すことになった。
 このように次から次と生み出される食の革新は、跡部氏が事業に対してアグレッシブに挑んでいることの発露であろう。

2月18日「旬熟成HAKKO」についての記者発表が行われた
(千葉哲幸)

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ウォルマート社「サムズクラブ」が進化した

2019年3月29日 05:00 商業界オンライン

写真:アプリで買いたい商品の場所が分かる[出所]ウォルマート社

 1月に開催された全米小売業協会の年次総会レポートでは劇的に変化したウォルマートのデジタル戦略を報告した。ショップトークでは、より最先端のテクノロジーに挑むサムズクラブに焦点が当たった。

セルフスキャンの最先端

 サムズクラブは昨年11月に「サムズクラブ・ナウ」という100%レジレスのパイロット店舗をダラスにオープンした。この店舗はテクノロジーラボという位置付けで、①顧客のモバイルアプリまたは店舗従業員のスキャナーによるスキャン決済、②アプリで店内の商品位置をリアルタイムにナビゲート、③1時間以内のオンラインピックアップサービス、④AR技術を活用した商品情報、を提供している。
 この春からはコンピュータヴィジョンを活用した新機能を投入する。1つはショッピング支援機能で、例えばアボカドをスキャンすると課金されるだけでなく、過去の購入歴に基づいて関連商品を推奨し、買物を効率化できる。またスキャン時間も短縮でき、バーコードの場合、情報が出てくるまで8.14秒かかったが、コンピュータヴィジョンでは3.04秒で済む(コンピュータヴィジョンへの変更に伴い、システムの誤認識を改善するために2年かけてアルゴリズムを調整したという)。
 さらに、現在、カートに入れた商品をカートごとスキャンする技術を開発中で、詳細は語られなかったものの、これが完成すると店舗出入り口に立つグリーターがスキャンすれば顧客が自分でスキャンする必要もなくなるようだ。

サムズクラブで開花し始めるウォルマート社のテクノロジー投資

 同店舗を利用している顧客はおおむね新システムを歓迎しており、90%以上の顧客が3カ月以内にまたこの店舗で買物をしたいと回答している。
 顧客の中には、1点ずつセルフスキャンして問題なく買物を終了する人もいるが、全部まとめて最後にスキャンしようとして2度スキャンするなどのトラブルを起こす人、そもそもスキャンが下手でイライラし始める人などはいるとのこと。現在は社員が店舗出入り口でスキャナーを持って救済しているそうだ。
 しかし、結果的にはレジ列待ち時間を75%削減できたという。このシステムが消費者の間に定着すれば、レジ待ち時間が短い点がサムズクラブの強みとなるだろうと同社は見ている。
 講演を行った同社エンド・トゥ・エンド・エクスペリエンス部門長エディ・ガルシア氏は企業紹介の際、「私たちは素晴らしい小売業者でもありますが、素晴らしいテクノロジー企業でもあります」と述べていた。NRF年次総会レポートでも紹介したように、ウォルマートの小売り先端技術力は過去1年で格段に飛躍し、目に見える効果を生み出し始めている。
 アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏は創業時から自分たちはテクノロジー企業だと標ぼうしていたが、ようやくウォルマートもその域に到達したということだろう。

サムズクラブでの成果が果たしてウォルマートに生かせるのか?

 もっとも講演中の質問にもあったように、ウォルマート部門は昨年、スキャン&ゴーから撤退している。その理由についてガルシア氏は、ウォルマートはサムズクラブに比べて店舗サイズ、SKU数が膨大であるため難しい、と答えた。
 サムズクラブの売上高構成比はウォルマート全社の11%、全米の店舗数も599店(今年1月末現在)にすぎない。しかも2019年1月期末決算で全社は2.8%成長したが、サムズクラブは2.3%の売上減だった。サムズクラブで培った技術がやがてウォルマート本体に応用されて成果を上げるのか。かつては低価格とワンストップショッピングの利便性で成功した巨大店舗チェーンの革新の道のりはまだまだ長そうだ。
(平山幸江)

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個性豊かな5匹の看板猫がおもてなしする洋風の宿

2019年3月29日 05:00 商業界オンライン

「オーベルジュはせべ」は伊豆熱川の別荘地に立つ洋風の宿。オーベルジュとは宿泊設備を備えたレストランのこと。その名の通り、料理を楽しむために遠方からリピーターも含め、多くの人々が訪れる人気の隠れ家風なレストラン+宿。
 スタッフの優しい気遣いがあり、とても温かい雰囲気に包まれている宿です。また、宿にいる5匹の猫たちも、温かいおもてなしをしてくれます。ロビーでは床でゴロゴロしたり、棚の上から視線を送ったり、おのおのがお気に入りの場所でお出迎えしてくれるみたいです。
 実際に伺ってみるとさすが猫のいる宿、まずは入り口で猫がお迎えをしてくれました。ロビーに入ると、今度は猫がフロントカウンターにドーンと鎮座していてお出迎え。泊まり客がなでても全く動じる様子がありません。
 お客さまを部屋まで案内することもあるそうなので、期待しましたが今日は動きたくないようです。他の猫たちもロビーでうろうろしていたので、もしかしたら部屋に入ってくるかなと、猫が通れるぐらいドアを開けておいたら、さっそく白猫の「しっぽな」の訪問を受けました。なんとその後、動きそうもなかった「ホップ」も部屋を訪ねてくれました。猫たちはここは客室と理解しているようで、長居はしません。どちらかというとお客さまの様子を見に来たといった感じでしょうか。
 露天風呂に入って、久しぶりに夜空に浮かぶ月や星を見た後は、ダイニングルームで頂くフレンチベースのコース料理。旬の素材を使った、目にも美しいおいしい料理が運ばれてきます。料理の説明を聞きながら、ワインをサーブされて優雅な時間が流れていきます。賢い猫たちはテーブルの間を闊歩したり、お気に入りのいすの上で毛づくろいをしたりする姿を見せ、猫たちを眺めながら食事ができる場を演出しています。
 猫たちは「しっぽな」を除いて、全員が母猫「スー」の子供。残念ながら「スー」は2年前に天国に旅立ちましたが、「スー」を近くの竹やぶから保護した当初は、オーナーの長谷部さんも、猫たちの看板猫としての働きぶりを予想していなかったそうです。もともと東京・中野で「レストランはせべ」を経営していた長谷部さんファミリー。1988年に、ここ伊豆熱川にオーベルジュを構え、「スー」という猫との運命の出会いがあり家族に迎え入れたことが始まりで、「オーベルジュはせべ」は”猫とおいしい料理で至福の時を過ごせる空間”として今も歩んでいます。

 宿の入り口ではオッドアイの白猫、「かあちゃん」(♀長女)がお出迎えをする。ここは猫がいる宿だと言わんばかりだ。

 チェックインカウンターの座布団の上でフロントマンのような「ホップ」(♂次男)。お客さまから「かわいい」となでなでされても全く動じない。あまりにも毛がふわふわでびっくり。

「かあちゃん」と同じ白猫「しっぽな」(♀)。外猫の子で、唯一きょうだいではないが、堂々とロビーの真ん中の床で伸び姿を披露する。

「ホップ」(♂次男)。館内をパトロールする活動的なキジ白。まるで客屋係のようなポーズ。白靴下がかわいい。

 2階にはゆったりとした客室が3室。3階は猫たちのプライベートスペースになっている。

 人見知りしない白猫の「しっぽな」。客室に入ってきてはしばし外を眺めて帰って行きました。

 館内の設備チェックをしているかのようにじっと一点を見詰める「ホップ」(♂次男)。

「かあちゃん」(♀長女)。家出していたが、なぜか2年後に戻って来た白猫オッドアイ。定位置は、ほぼ100%宿の入り口。

 お客さまがなかなか会うことができないシャイな長毛黒猫「モコ」(♀三女)。この日はディナーの間、じっと動かず側にいてくれたが、あまり近づけなかった。

「不思議」(♀次女)。約2年間の尻尾炎症の療養していたが、現場復帰したキジ猫。

 バルコニーは通ってくる外猫たちのスペース。人見知りが激しくて、すぐ逃げてしまうので、室内から観察しよう。

 2年前に天国に行ってしまった、グレートマザー「スー(♀母)」の在りし日の姿。なんと50匹も出産した母猫である。子供たちはみんな里親の元に迎えられた。

「オーベルジュはせべ」は旬の素材にこだわったお料理が自慢。泊まり客には夜はフレンチベースのお料理。朝は和食を提供している。また、夜のディナーのみに訪れるお客さまもいる。写真は「金目鯛と蟹クリームの衣包み焼き トマトソース」、東京のレストラン時代から、50年続く、はせべのスペシャリティメニューだ。

 白い外観が洗練されたイメージ。猫がいる宿「オーベルジュはせべ」の入り口。
(南幅俊輔)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_83f18fa0769d_高校野球とビジネスは変革が必要だ 83f18fa0769d 0

高校野球とビジネスは変革が必要だ

2019年3月29日 05:00 商業界オンライン

 高校野球界で、公式戦での木製バットの許可、坊主頭の強制はしない等のユニークな取り組みをしている千葉県立成田国際高校 野球部監督の古谷健氏に、高校野球とビジネスというテーマで2回に渡り人材の指導法について取材をしてきた。
 今回は、今の若い世代の考え方は昔と比べて変化があるのか。また、どのように指導をすればいいのか。4校の野球部で指導経験がある古谷氏に質問をすると過去の事例を出しながら興味深い話が聞けた。

社会が変わっているのだから子供も変わる

――今と昔で生徒の考え方や変わっているか?
古谷氏:もちろん変わっています。それは社会がものすごく変化しているので当たり前のことです。子供の変化に付いていけず、多くの大人が昔は良かったと嘆くシーンをよく見ますが子供が勝手に変わったのではなく、変えたのは大人と社会です。
 産まれたばかりの子供は今も昔も変わらないと思います。今の子供が30年前の環境で育てられたら、その環境に合うように成長しますよね。時代の流れと大人によって変わっているわけなので、何でも子供のせいにしてはいけません。
――どのように変わっているか?
古谷氏:今の子供たちの方が昔と比べて多くの情報を知っています。ここ10年でスマホが急激に普及して、欲しい情報がすぐに手に入るようになったことが大きいのでしょう。しかし、良い面もあれば悪い面もあります。
 答えがすぐに見つかる環境なので、知りたいことについて考える時間が少なくなり、想像することもなくなっている気がします。
――では、今の子供に必要な指導方法は?
 私が子供の頃は、今よりも情報が少なかったので知りたいことを知るまでに、まず自分の中で考えて仮説を立ててから、その情報を知っている人や本などから答えを得ていました。今との大きな違いは1つの情報を得るまでに間があることです。
 野球は間(ま)のスポーツとも言われており、攻撃と守備の際に間があるだけではなく、攻撃では打席に立つ前、守備では守備位置について打球を待つときなど、さまざまな場面で間があります。
 この間に、自分が今やらなくてはいけないプレーを瞬時に考える必要があります。しかし、今の子供たちは欲しい情報がすぐに手に入る環境もあってか、間に考えることが習慣化されていない子が多い気がします。

 なので、指導者は子供たちに自分で考える力を付けさせることが大事です。そのためには、指導の際に最初から答えを与えずに自分で考えさせ、1人で最後までやらせてみることです。
 子供たちがやり切ってから一緒に振り返り、できた部分を褒めて、修正すればもっと良くなる部分は新しいヒントとして与える。こうやって考えることを習慣化させることが指導者にできることではないでしょうか。
 私もこの指導法に変えるまでいろいろ考え、結構な時間を要しました。
――以前までの指導法は?
古谷氏:私は4校での指導経験があります。最初は母校の千葉県立検見川高校でコーチとして指導者の勉強をさせていただきました。この頃は野球の細かさと選手をうまくする指導法を学びました。しかし、選手目線で分かりやすく教えるというよりは、指導者目線で一方的に教えていたことが多かったと思います。
 そこで得た経験を持って、次の千葉県立野田中央高校で本格的に指導者としてのキャリアをスタートさせました。自分が持っている全てを教え、うまくさせてあげたいという気持ちから毎日夜遅くまで厳しい練習を行いました。
 本気の私に対して、何人かの選手は本気でぶつかってきました。特に投手の高野という選手はかなりの伸びを見せて、甲子園に出場した強豪校の打者にも通用するレベルになりました。
 しかし、途中で諦めてしまう選手もいたのも確かです。強豪校の選手よりも大きなスケールを感じた宇佐見という選手を育てられなかったことは、野球の指導者として大きな後悔です。
 野田中央での日々は指導者としては楽しかったのですが、チームを1つにまとめられず勝ち抜くことができませんでした。この頃から子供たちの目線に立ち、指導の柔軟性について考え始めるきっかけになりました。
 そして、佐倉南高校での経験が指導法を変えるターニングポイントだったと思います。最初から選手に対して高い目標を提示して、こちらの要望を一方的に伝えながらガツガツやったところ、強豪校に勝利してベスト16まで行くなどある程度の結果は出ました。
 その後も同程度の成績は残しましたが、ベスト16以上の結果は出せませんでした。自分の中で指導法についてモヤモヤする部分があったので、指導法を学ぶために甲子園出場を果たした監督さんなどさまざまな人と話をする機会を作りました。
 海外にも目を向けてみようと思い、野球の指導法を学びにドミニカ共和国へ行ったことが指導法を変える大きなきっかけとなりました。
――ドミニカではどのような指導法なのか?
古谷氏:メジャーリーガーを多く輩出しているドミニカでは、指導者が選手に敬意を持ち、指導しています。そして、エラーをしても怒らない。目先の成功ではなく、将来的にどういった選手にしていくか長期的なビジョンを描いて指導していました。
 一番驚いたのは基本の意識が日本とは全く違うこと。日本で守備の基本はエラーをしないように、どんな打球でもできる限りボールの正面に入るように守備の形を作ることで、それを教えます。しかし、ドミニカでの守備の基本はアウトにすることでした。守備の形よりもどうすれば高い確率でアウトにできるかを最優先に指導します。
 野球はアウトにしないと試合が進みません。基本は形を作ることではなくアウトにすることなんだと学べました。形にはめ過ぎると予想外のプレーは出ません。ドミニカでは、技術ではなく目的と意識を学べました。
――今後の目標と高校野球界へのメッセージは?
古谷氏:今後の目標は自分の教え子が自慢できる監督になることです。後は、メジャーリーガーを輩出したいです。
 設備が私立ほどそろっていない県立高校ですが、社会で通用する人間育成だけではなく、野球でもアメリカで通用する選手を育てたいです。そして、ショートを守り、ホームラン王を取って欲しいですね。
 高校野球界については、変革をしなくてはいけない時期に入ったのではないでしょうか。
 変わらなくてよいものもありますが、変えなくてはいけないことはどんどん変えていき、高校野球を、より良いものにさせなくてはいけないと思います。行動しなければ何も変わりません。野球を一番良いスポーツにしたいです。

自ら考え、目的意識を明確に持てる人材に

 次世代の人材を育成するには、上司も部下に対して敬意を持って接することが大切なのではないか。「昔じゃ考えられない」「これだから最近の若い世代は……」といった嫌味を言う前に、今の若い世代はどのような考え方を持っているのかを理解した上で、仕事の取り組みについて指導をしていく。指導も一方的ではなくコミュニケーションを上手に取ることで良好な関係を築け、自分自身の生産性向上につながると思う。
 そして、業務が回せていない部下には古谷氏のように、全てを教えるのではなくきっかけを与え、1人で最後までやらせてみる。終わってから一緒に振り返り、良かったところは褒め、修正が必要な部分についてはもう一度ヒントを与える。このやり方で部下の成長速度がより速くなるのではないか。
 若い世代も上司の指示をそのまま聞くだけではなく、自分なりに考え、仕事に取り組むことが上司や会社から認められる要因になると思う。上司の経験を参考にして、自分自身の考えと組み合わせることで新たな発見が生まれるかもしれない。世代間で良い科学反応が起こり、日本の労働生産性が上がることを願うばかりだ。
 今回の古谷氏への取材は、高校野球とビジネスでの共通項が多く発見できた。そして、古谷氏が願う変革は、成田国際高校が結果を残すことで世間から注目され、高校野球そのものを変えるきっかけとなるはずだ。新たな時代を築いてほしい。
(小野田裕太)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_aa8d6963d41e_ZOZOSUITS大コケで分かった「ECフィッティングの本命はTBPPだ」 aa8d6963d41e 0

ZOZOSUITS大コケで分かった「ECフィッティングの本命はTBPPだ」

2019年3月29日 05:00 商業界オンライン

 初代、次代のZOZOSUITSが大コケしてボディスーツ型の採寸システムは実用性が疑わしいという答えが出たが、他にも3Dスキャン型や画像AI型などさまざまなハイテク採寸システムが乱立している。その一方、ハイテク採寸には見切りをつけてリアルにお試ししてもらおうという返品無料サービスも広がっているが、経費倒れに終わっているケースも多い。ECのアキレス腱たるフィッティングを解決する決定打はないのだろうか。

ハイテク仕掛けは報われない

 ハイテク仕掛けで採寸の精度を追求するアプローチは、3Dスキャン型にせよ画像AI型にせよ、どれも報われることはない。なぜなら人間の体にも服にも物性や質量があって互いに作用反作用で変動するし、人によりトレンドによりフィットの好みも多様だからだ。靴も同様だが、足形や運動による荷重のかかり方で履き心地どころか健康まで左右するから、ハイテク採寸は熟練のフィッターの接客に遠く及ばない。店頭でもアシックスは3D採寸機を置いてフィッティングの精度を追求しているが、かなり前に開発された古い技術で荷重センサーAIなどを欠くから、フィッターの経験値で補足していると思われる。
 服にせよ靴にせよ、3D荷重・加速センサーによる物性マッチングAIが実用化されない限り、新し物好きのギミックを出ることはないだろう。実用化されたにしても、医療機関での心肺機能検査並みの装備と手間を要するから、フィッティング目的で普及するとは思えない。
 人の体は外見の寸法だけでなく、筋肉質だったりもち肌だったりと物性で服と触れ合ったときの反発が異なるし、服とて張り腰がある素材と柔らかく落ちる素材、伸縮性のある素材とない素材、あってもワンウェイかツーウェイか、張り腰素材のストレッチとヌメ落ち素材のストレッチでフィットは全く違う。ましてや、タイトなフィット、ゆる抜けなフィット、オーバーサイズなフィットと個々人の好みやトレンドで極めて流動的だから、いくら正確に測ってもフィットが決まるというわけにはいかない。故にハイテク仕掛けの採寸はフィッティング目的では報われることがないのだ。
 ハイテク採寸は報われないが、顧客の手持ちアイテムの物性と実寸から選択した商品の最適サイズをレコメンドするデータベースAIは実用性が期待できる。ZOZOなどハイテク採寸に頼らず、購入履歴からデータベースAIでレコメンドするシステムに注力すべきだったのではないか。加えて、購入したいアイテムごとに顧客に好みのフィットを選択させれば、サイズ推奨の精度は格段に高まる。その時々のトレンドやTPO、アイテムやデザインで顧客の求めるフィットは当然に異なるからだ。
 ビッグデータAIは往々にして全体に流され、個へのフォーカスが定まらないことがある。パーソナルデータをベースにその時々の好みを本人に聞くのが一番正確で、レコメンドAIの定石だと思う。コールセンターの音声AIはプロセスが手間取るしヒアリングの精度には限界があるが、ECのオンライン画面なら相当に複雑な嗜好も項目選択のタッチパネルでサクサク進む。『パーソナルデータは本人に聞け』がデータベースマーケティングの鉄則であり、ハイテク仕掛けで勝手に推測するのは不正確で非効率だ。

リアルお試しのネックは宅配料金と減耗

 実用性の疑わしいハイテクに頼らず、リアルなお試しで販売機会を広げようとするサービスはアマゾンやZOZO、ロコンドなどEC各社が標準サービスやオプションサービスで提供しているが、それには2つのネックがある。
 1つは往復の宅配料金負担で、買上げ金額が一定以上でないと経費倒れになってしまう。プライム会員向けに往復とも送料無料のアマゾン「プライム・ワードローブ」は対象商品を限定しているし、ZOZOは行きの送料200円に加えて返品の送料も顧客に負担させている。一部商品を除いて「返品自由」をうたうロコンドは行きは送料を負担させても返品は無料(着払い)にしているが、プラットフォーム事業を除く金額ベースの返品率が18年2月期で24.8%、18年3〜11月でも23.4%と高く、送料負担が収益を圧迫していると思われる。個別顧客に宅配する限り、行き帰りの送料負担は重く、EC事業者と顧客の押し付け合いになって普及を妨げている。
 もう1つは、返品商品の汚れや破損による減耗と回収手間だ。SPACメンバーアンケートでは年度によるが17〜20%程度が再販不能状態で帰ってくると報告されている。服の返品率は最大13%、平均4%前後だが、再販可能な状態でも検品は不可欠だし、再プレス、再パッケージが必要な商品もあるからコスト負担はばかにならない。加えて、返品回収のマテハンはイレギュラーになるから通常出荷の何倍も人手がかかる。

突破口はC&CとTBPPだ

 これらの課題を解消するのが受け取り・お試しのC&C拠点で、店舗事業者は店舗を活用したりショールーミングストアを設けてEC事業者に対するアドバンテージを広げる一方、EC事業者は専門拠点(TBPP)を布陣して対抗しようとしている。

 専門拠点としては、国内ではヤマトシステム開発が洋服リフォーム店と組んだケース、三井不動産が自社のECモールと商業施設をリンクした「&モールデスク」、米国ではお取り寄せお試しサロンの「ノードストロム・ローカル」が挙げられる。いずれも加工・修理サービスと組み合わせてプロによるフィッティングで精度を高め、非購入商品を手順通りに回収して再販不能率を抑制しようというものだが、採算に乗せるには外せない肝がある。

写真はNordstrom-Local (次も同様)

 第1は商品の行き来を顧客ごとの宅配物流ではなく定時一括物流に乗せること。顧客ごとに宅配物流しては自宅での試着サービスと同じ宅配料金負担が生じるが、その日のお試し商品を何人分もまとめて一括配送すれば行きも帰りも個別宅配の何分の一かで済む。本格的に多拠点展開したり店在庫活用のテザリングと組み合わせるならルート便を使うのが効率的だ。
 第2は返品商品の回収手順を規格化し、再販可能状態を確保するとともに、物流センターでのマテハン負担を軽減することだ。それには使い捨てのパッキンではなく専用の通用コンテナで行き来する必要がある。
 この2点を実現するにはDCからの出荷と回収に個別宅配と分けた専用プロセスが必要で、個別宅配のお試し・受け取り拠点という発想ではいずれ行き詰まる。宅配サービスの延長ではなく、大手小売業者とECプラットフォーマーがC&Cで顧客利便と覇権を競う戦略拠点と位置付け、出荷〜フィッティング・修理加工〜回収と顧客コミュニケーション&デジタル販売を一貫するプロセスを確立すべきだ。
※C&C(クリック&コレクト):ECのプラットフォームをベースにウェブルーミングで店舗に誘導しショールーミングでECに誘導し、ECから店舗在庫を取り置いて試したり、EC注文品を店舗で受け取ったり返品したり、EC注文に店在庫を引き当てたり店から顧客に出荷して顧客利便と在庫効率を最大化するオムニコマース体制。
※TBPP(Try Buy Pickup Point):中身を確認したり試着してから購入や返品ができる受け取り拠点で、筆者が名付けて提案している。顧客は専門スタッフによるフィッティングと修理加工の利便、EC事業者は返品商品のコンディション保全と宅配料金負担の軽減というメリットがある。
(小島健輔)

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串カツ田中「ロードサイドモデル」の狙い

2019年3月28日 15:00 商業界オンライン

写真:元とんかつ店の物件に居抜きで店舗を造作した

 (株)串カツ田中ホールディングス(本社/東京都品川区、代表取締役社長/貫啓二)では、同社が開発した新しい「串カツ田中」の「ロードサイドモデル」の1号店を3月28日、群馬県前橋市にオープンした。店名は「串カツ田中 前橋三俣店」で、JR前橋駅から約3㎞離れており、幹線道路の東部環状線に面し間近で県道3号線と交差するなど、交通量の多い場所となっている。元とんかつ店であった物件を居抜きで活用し、83坪120席という既存店にない大型店舗を構えた。

「三世代で楽しめるFR型串カツ酒場」の3つの特徴

「串カツ田中」は2008年12月にオープンした東京都世田谷区の世田谷店より展開を開始。14坪24席で450万円レベルの売上げを想定していたが、半年後には800万円を売る大繁盛店になった。以来、住宅街での展開を継続してブランディングを行い、その後、繁華街やオフィス街、大型ターミナル駅付近、商業ビルなどへの出店が可能になり、出店余地を豊富に持つ業態となった。2019年2月末現在221店舗となっている。

「串カツ田中」のロードサイド店舗としては、千葉・流山、大阪・岸和田、泉北など既に存在しているが、今回のロードサイドモデルは「三世代で楽しめるFR型串カツ酒場」をコンセプトとして、大きく3つの特徴がある。
 それはまず「居心地の追求」。さまざまな客層のニーズとその利用シーンに応えられる構造や内装を整えた。客席はカウンター席、ボックス席、お座敷の他に、ファミリーが貸し切りで使用できるクッションフロアのファミリールームを設けた。
 次に「食事メニューの充実」。「串カツ田中」では昨年6月からほぼ全店で禁煙化を行っている。それによりファミリー層が増加し、これまでの居酒屋としての利用に加えて食事の利用シーンが増えてきた。そこでメインとなる串カツの他に釜飯などのご飯ものを充実させた。また、ワンドリンク制とお通し代を廃止した(新たにメニュー化した「キャベツ」は1人50円で食べ放題となっている)。

「串カツ」は30種類以上ラインアップ

「屋台風いか焼き」250円

「田中名物!串カツとじ」680円

「田中のかすうどん」740円

「鶏釜飯」890円

 そして「利便性の追求」。「串カツ田中」としては初めて順番受付システムの「EPARK」を導入、ウエーティングをしなくても席の準備ができたらアラートで教えてくれる。また「O:der」も導入し、テイクアウトの事前予約、受取時間指定で待たずに熱々の串カツを受け取れるようにしている。
 3月26日に行われた店舗内覧会では、同社社長の貫啓二氏が同店の狙いについて説明した。以下にその内容を紹介しよう。

「トライアンドエラーでロードサイドモデルを固める」

『当社の企業理念は「串カツ田中の串カツで、1人でも多くの笑顔を生むことにより、社会貢献する」というもの。そして目標は「全国1000店舗体制を構築し、串カツ田中の串カツを日本を代表する食文化とすること」です。これを達成するためにはロードサイド展開をスピード感を持って行うことが重要だと考えるようになりました。
 今回初めてロードサイドモデルを出店するに際して、群馬県は自動車保有台数が人口100人当たり69.58台と全国1位(自動車検査情報登録情報協会2017年)であることと代行車を利用する文化があることが、ここで始めることの判断材料となりました。
 これまで展開してきた住宅街で、思いがけなくお子様連れのお客さまが多かった。このような傾向を捉えて「お子様はいずれ大人になっていく。また、幼いときに体験したB級グルメは記憶に残る」ということを考えるようになりました。そこで、串カツ田中のメインターゲットは仕事帰りの人ですが、一番大切にするお客さまをお子様にしようと決めて今日に至っています。
「串カツ田中」では昨年6月よりほぼ全店で禁煙化しました。その理由は、喫煙者が減少しているというトレンドを捉えたのではなく、串カツ田中にとって大切なお客さまであるお子様を大切にしようという発想で取り組んだことです。これによってファミリーの客層が増えるようになりました。
 過去、住宅街で店内にたばこの煙が充満していることからファミリーのお客さまからのクレームを頂き、禁煙化についてどこかで決断しなければならないと考えていました。
 そして、禁煙化によってファミリーにとても喜ばれるようになりました。ロードサイドの岸和田、泉北の店では禁煙化に伴って客数が20%増えました。そこでロードサイドモデルでさらに一歩進んで「三世代で楽しめるFR型串カツ居酒屋」をコンセプトとするようになりました。

順番受付システムの「EPARK」を導入、ウエーティングをしなくても席の準備ができたらアラートで教えてくれる

「O:der」も導入し、テイクアウトの事前予約、受取時間指定で待たずに熱々の串カツを受け取れる。「EPARK」ともにチラシにQRコードを掲載

厨房に沿ってカウンターを設けた

テーブル席は半個室的に構成

貸し切り利用ができるファミリールーム

タッチパネルを用意

 全店禁煙化に伴って、客層の構成比が以前(2017年6月~11月平均)は会社員・男性グループが31.1%、ファミリーが13.4%だったものが、会社員・男性グループ24.1%、ファミリー20.8%となりました。それぞれ7%減り、7%増えたことになります。

小学生以下は「自分でつくれるソフトクリーム」が1個無料 

 そこでロードサイドモデルでは、これまでのお子様サービスを継続していきます。「ソフトクリーム無料」(小学生以下)、「手作りたこ焼き」(6人以上の来店でたこ焼き20個を無料サービス)、「子どもジャンケンドリンク」(未成年限定、1人ソフトドリンク1杯が、ジャンケンで従業員に勝った場合が無料、あいこで半額、負けで定額)。こうしたお子様サービス(小学生以下)の他に、「お子様プレート」390円、「お子様うどん」290円など、「お子様メニュー」を充実させました。
 通常業態の客単価は2300円前後、アルコール比率は4割、ロードサイドモデルではアルコール比率が1割ほど下がり、それに対してフードメニューを増やしていますが、ロードサイドで営業している岸和田、泉北の実績から客単価は2000円になるものと想定しています。
 今後のロードサイド出店では前橋三俣店を標準として捉えるのではなく、ここでメニューやオペレーションなどのトライアンドエラーをしながら、近隣に出店してロードサイドの業態を固めていきます。』

「串カツ田中」ロードサイドモデルの展望を語る貫氏

「お子様」を大事にすることで可能性が広がる

 さて、同社の業績の動向を以下にまとめておく。
 同社は2018年11月期の重点施策として「地方出店の加速」「離職率の低下」「ターゲット別の販促」に取り組んだ。
「地方出店の加速」では、店舗数が増加し、テレビ放送の影響によって全国規模で認知度が向上した。客単価が低いために地方でも受け入れられやすく、実際に地方での売上げが好調で、串カツのニーズがあると判断し、全国1000店舗体制実現に向けて関東だけではなく地方展開を進めていく。
「離職率の低下」では、「新卒ルーキー店舗運営部」を立ち上げた。この部署では新卒社員が1年間研修を兼ねて入社同期のメンバーで店舗運営をし、新店舗のオープンなどをチームでやり遂げる。そうしたことを通して、理念を体感し活躍する人材を多く輩出させることが目的になっている。
「ターゲット別の販促」では、サラリーマン層に向けては「ノンスモーキングチャレンジ」(たばこを従業員に見せると通常のジョッキがメガジョッキになり料金は同一)などによって新たな顧客を開拓し、平日の売上げアップを図る。ファミリー層に向けては、「ごっこランド」(職業体験ゲームの知育アプリ)、「お子様の串カツ調理体験」「提供遅れの撲滅」を行った。
 これらで2018年11月期は、売上高76億6760万円(前年同期比39%増)、経常利益7億373万円(同35%増)。出店数は56(関東圏26うちFC13、関東圏以外30うちFC16)で総店舗数は218となった。2019年11月期の出店は64(うちFC31)を計画している。
 このように同社では店舗展開の方向性を定め、可能性を大きく広げている。そのポイントは、住宅街立地で業態をつくり上げてきたことで、スモールビジネスの骨格をしっかりと形成してきたこと。そこで偶然にも客層にお子様が多かったことから、これらを大事にした仕組みを作ってきたことである。これによって、顧客のターゲットが広がり、さまざまなプロモーションを行えるようになった。
 串カツ田中は業種として常識にとらわれることなく顧客満足の追求によって、事業の在り方を好転させてきている。
(千葉哲幸)

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