cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_13430eac00d8_泣くほどストレスに強くなる?「涙活」の魅力 13430eac00d8 13430eac00d8 泣くほどストレスに強くなる?「涙活」の魅力 oa-shogyokaionline 0

泣くほどストレスに強くなる?「涙活」の魅力

2019年7月15日 05:00 商業界オンライン

<プロフィール> 感涙療法士 吉田英史(よしだひでふみ) 早稲田大学大学院修士課程修了。高齢者福祉施設、学校勤務を経て、現職に。高校教師時代に、相談に来る生徒たちを見ていて、相談中に泣き出す生徒ほど、早く立ち直っていくことから、「涙は人をスッキリさせて、立ち直らせる効果がある」ことに注目していた。2014年、認定資格「感涙療法士」を医師、脳生理学者で、東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂氏と創設。感涙療法士として、学校(生徒・先生・PTA向け)、病院(患者・医師や看護師等の医療関係者向け)、企業、自治体において、涙活イベントや講演会を実施している。通称、なみだ先生。元高校教師・スクールカウンセラー。

 ストレス社会ともいわれる現代、日々のストレスをためすぎると、吐き気、腹痛、めまい、不眠症などの症状や、命を脅かす大きな病気につながることもある。各自がストレスをうまく解消する方法を見つけることが大切だが、効果的な解消法が分からないという人も多いのではないか。
 そうした中、ストレス解消法として涙を流すことが注目されている。恵比寿のサッポロビール本社で行われた、涙をテーマにした「涙活」というイベントを通して、涙を流すストレス解消法を紹介したい。

明日笑うために今日泣く「涙活」

「涙活」とは、能動的に涙を流すことによって心のデトックスを図る活動である。
「号泣したらすっきりした」「思う存分泣いたら、気分が楽になった」という経験をしたことはないだろうか。実は涙を流すことで、緊張やストレスを促す交感神経から、脳をリラックスさせる副交感神経にスイッチが切り替わり、たまったストレスがリセットされる(その後、1週間もストレスがたまりにくくなるそうだ!)。また、ただ泣くだけではなく効果的に泣くことで、さらに気持ちをスッキリさせることができる。

効果的な泣き方「3つのポイント」

1、感動の涙を流す
 自分の悲しみや怒りなど不快なストレスで泣くより、映画や小説など他人の経験による話で泣く方が効果的。
2、自分だけの泣きのツボを見つける
 笑いのツボと同じで、泣けるツボも人それぞれ。恋愛、家族、ペット、スポーツなど、自分が泣ける分野を知っておく。
3、泣くことに集中する
 周りが泣いていると泣けなくなる人は1人で泣くなど、自分に合った泣く環境を探す。涙が出たら、我慢しないで泣くことに集中するのがポイント。

 このイベントでは「涙活」の説明後、吉田氏が厳選した泣ける動画(10本ほど)が公開された。動画が流されるとハンカチで涙を拭う人が多く見られ、5年ぶりに泣いたという参加者もいたくらい、涙が伝染していた。動画を見終わった後にどの動画が泣けたか感想を聞き、泣きのツボを確認し合ったところで、『なみだ作文』という泣ける話の創作と発表の時間に。

『なみだ作文』では、参加者が「亡き〇〇への感謝」の手紙を書き、3~4人がその発表をした。発表者の中には、思い出があふれて涙を流しながら読み上げる人も。1人の涙が伝染して集団の涙へ変わっていた。

 創作話で泣いた後は、泣き言を吐き出して自分の置かれているストレス状況を見つめる『泣き言セラピー』に。参加者がそれぞれ泣き言を書き出して発表。「朝起きるのがつらい」「ダイエットがうまくいかない」「頑張っても誰も見てくれない」などの泣き言が集まり、それぞれの泣き言に対して吉田氏がアドバイスを送った。

 そして、最後にグループを作り、輪になって「涙活」の気付きを共有する『涙友タイム』。何で泣けたか、泣いたことでどういった気持ちになったのか話し合っていた。皆、泣いた後で清々しい顔になっていた。

弱音を吐きにくい社会、自分を守る必要がある

 現在の日本社会は弱音を吐きにくい風潮がある。働き方改革やストレスチェックの義務化などで労働環境の改善に努める企業が増える一方、これまでと同様、もしくはそれ以上の長時間労働・休日出勤が発生し、肉体的・精神的にも消耗している労働者も多い現状がある。
 しかし、完全にストレスのない環境に身を置くことが難しい以上、何かしらの形でストレスを発散する必要がある。何かに悩んでいて思い詰めていたり、本音を言えずにため込んでいる人こそ、「涙活」をお勧めしたい。
 弱音を吐きにくい今の日本だからこそ、抱えているストレスは自分自身で発散し、体を守る必要がある。「涙活」を1つの選択肢として自分に合った発散法を見つけ、ストレスフルな社会を乗り越えていきましょう。
(小野田裕太)

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市場力・惣菜力を自社の強みに!福岡県の「ダイキョープラザ」

2019年7月15日 05:00 商業界オンライン

 スーパーマーケット実店舗の在り方が問われる現在。本連載ではこれまで、愛知県の「ダイワスーパー」と京都府の「フレンドフーズ」という、大手スーパーに負けず独自のポジションを築き上げた2つの地元密着小型店を取り上げた。今回も、福岡県に5店舗を展開する小規模スーパーマーケットを紹介する。市場のように活気があふれた店内や、毎年コンテストに入賞する惣菜力の秘密とは。

福岡と長崎に「ダイキョーバリュー」を展開

 福岡県と長崎県に「ダイキョーバリュー」の名で5店舗を展開する(株)ダイキョープラザ。本店は福岡県福岡市南区にある、「ダイキョーバリュー弥永店(やなが)店」だ。
 弥永店は倉庫のような外観で、見た目からしてインパクトがあるのだが、店内の様子はさらに印象的。青果・精肉・鮮魚・惣菜コーナーの店頭には各部門の従業員が立ち、通り掛かると今日のお薦めやおいしい調理法などを教えてくれる。そればかりか、「お買い得品がたくさんありますよ!寄っていきませんか?」というような、元気な声掛けまであるのだ。通常のスーパーマーケットでは各コーナーに専属の従業員が立つことはまずないので、初めて訪問した時はとても驚いた。

「生鮮市場」を目指し、店内競合や「朝市」などに取り組む

 実はダイキョーバリュー弥永店では、青果2店・精肉3店・鮮魚2店・惣菜2店、別々の企業がテナントで入っており、店内に競合がいるという一風変わった仕組みをとっている。こうすることで鮮度も価格も自然とお客さまにとって良いものになっていき、活気のある売場づくりにつながるのだという。お客さま側には常に「選ぶ楽しみ」があり、にぎわった店内でワクワクしながら買物ができるという、「市場感」が味わえる。
 また、市場のような楽しさを味わえる点として、ダイキョープラザ名物の「日曜朝市」「木曜夕暮れ市」も外せないイベントだ。

 このイベントはその名の通り、日曜日の朝と木曜日の夕方に店頭の広場などで開催される。ここでは店内の価格よりも安く食材や惣菜が売り出され、その場で調理される焼きそばや焼き鳥、ご当地名物の焼き豚足なども購入できる。従業員の元気な呼び掛け声と惣菜のいい香りが漂い、その様子はさながらお祭りのよう。楽しそうな顔をしたお客さまでとてもにぎわっているのが印象的だ。その日、何かを買う予定がなくても、通り掛かったらついつい寄ってしまいそうになるほど魅力的で、このイベントを楽しみに毎週通うお客さまも多いのだという。

 ちなみに、朝市や夕暮れ市には店内に入っているテナント店舗がそのまま出店しているのだが、上述の通り、販売される食材の価格は店内で購入するより安い。その理由は、冷蔵ケースなどを使用しないため電気代や包材費がかからず、それらの費用を商品の価格から値引くことができるためだそう。その場で全て売り切ってしまうことを目標とするので、従業員にも気合が入る。

「お弁当・お惣菜大賞」に毎年入賞

 また同社は、年に1度開催される「お弁当・お惣菜大賞」(一般社団法人全国スーパーマーケット協会主催)で、毎年のように惣菜や弁当が数多く表彰されている。「日本一の惣菜と日本一の惣菜スタッフがいるお店と言わるようになりたい」という思いから、2013年より惣菜開発に力を入れ始め、大会にもエントリーし始めたそうだ。
 月に一度の惣菜部会では喧々諤々と意見を交わしながら商品開発を行い、POPや試食、店内での調理によりお客さまにもその魅力を伝える。お客さまの反応をじかに見ながらブラッシュアップしてきた結果、例えば2018年の大会では同社の「フォークで食べる八女抹茶のクリームおはぎ」がスイーツ部門の最優秀賞を受賞、2019年の大会では麺部門にて「ニンニク薫る五島つばき油めん」が同じく最優秀賞を受賞した。

「フォークで食べる八女抹茶のクリームおはぎ」。とてもおいしそう……

「大手スーパーに対抗できる自社の魅力を考えた」

 なぜこれらのような取り組みを始めたのかと、販促企画を担当する國分和則氏に聞いたところ、「大手のスーパーマーケットに、私たちのような小規模のスーパーマーケットが太刀打ちするためには、どうすればいいか考えた」と話す。スーパーマーケットの基本である「新鮮さ」「おいしさ」を追求し、「市場感」「惣菜力」という強みで、大手スーパーマーケットにない独自の魅力をつくっていこうと考えたという。

<この"メディア化"をまねしたい! >従業員が一丸になって「自分たちの魅力をつくる」

 スーパーマーケット各社を訪問して自店の魅力や強みについて質問すると、意外と「いや、あんまり他店と違う部分はないですね……」なんていう回答が自信なさげに返ってくるケースも少なくない。そうしたケースでは、確かに店舗の印象も少しぼんやりしていることが多い。
 対して、ダイキョープラザのように「自分たちの魅力をつくる」ことに従業員が一丸となって取り組んでいる店舗は、店舗も活気にあふれ、買物客も楽しそうだ。
 今回はこの「自分たちの店舗がどうなっていきたいのかをしっかり考え、そこに向かってどんな取り組みをするか考える」という点に注目したい。メディアはその個性(魅力)がなくては生活者に選ばれない。スーパーマーケットも一緒である。
 少し難しいように思うが、「惣菜力No.1になる」「市場のような雰囲気を楽しんでもらう」など、具体的な目標に落とし込むとイメージは付きやすいだろう。お客さまに楽しんでもらうことを考えたとき、自分たちらしい強みをどう作っていくか、ぜひ考えてみてほしい。個性のある店舗は、お客さまに選ばれるし、従業員も自信を持って働けるだろう。
 主婦にとって「つらい」買物が「楽しい」買物になるよう、楽しみながらメディア化していきましょう!
(谷尻純子)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_380b28c4958e_高野豆腐でアレンジ自在!かしこく“ロカボ” 380b28c4958e 380b28c4958e 高野豆腐でアレンジ自在!かしこく“ロカボ” oa-shogyokaionline 0

高野豆腐でアレンジ自在!かしこく“ロカボ”

2019年7月14日 05:00 商業界オンライン

 高野豆腐は、ダイエットには欠かせない大豆製品である豆腐を凍らせて乾燥したもので、「凍り豆腐」「しみ豆腐」ともいいます。
 つまり、大豆タンパク質の塊。炎症を起こしにくい不飽和脂肪酸なので、以前からボディビルダーやアスリートには常食として愛用されていましたが、最近、大豆製品としての健康効果から再注目。高野豆腐は進化しています。

〈高野豆腐のここがえらい!〉

1.水分が抜けている分、少量で栄養価が凝縮
2.ロカボ向き(高タンパク・低糖質)
3.リーズナブル。保存が利く
4.面倒な「水戻し」不要タイプ、一口サイズ、粉タイプも登場!

高野豆腐の優れた「4つの働き」

1.高野豆腐は「大豆タンパク質」がぎゅっと凝縮。豆腐の7倍!
 特に優れているのが、タンパク質。高野豆腐に含まれる成分の約50%がタンパク質。100g中の含有量は49.4gと、同じ大豆食品の木綿豆腐と比べるとその量は約7倍です。高野豆腐1枚(16.5g)当たり8.2g、牛乳マグカップ約1杯分(240ml)もあるのです!
2.レジスタントプロテインが血中の「悪玉コレステロール」を抑制!

 豊富な大豆タンパク質の大半がレジスタントタンパクです。分解されにくいレジスタントタンパクは、体に吸収されにくく食物繊維に似た働きをします。
 血中の悪玉コレステロール値を減少させる効果が報告された他、食後の中性脂肪の上昇を抑制する効果も期待されています!
3.便秘解消、脂肪燃焼のスイッチオン!
 胆汁酸にはエネルギー代謝を高進する役割があります。レジスタントタンパクによって「便通を促進」することでこの効果が高まります。便秘スッキリ、美肌効果がある上「余分な脂肪の蓄積を防ぐ「アディポネクチン」、通称「やせホルモン」の体内分泌が増えて、さらにやせやすくなる相乗効果も期待できます。
4.女性の味方、ホルモンバランスを整えて、骨粗鬆症・ダイエットに 
 高野豆腐には女性ホルモン様の働きをする大豆イソフラボンに加えて、不足しがちなダイエットミネラルも豊富。特にカルシウムと鉄分は代謝を高めるだけでなく、女性ホルモンで乱れがちなメンタルや体のバランスを整えてくれます。

高野豆腐の効率的な「4つの食べ方」

1.「みそ汁」にプラス!若返りの1杯!
 いつもの豆腐を高野豆腐に変えるだけ。この1杯で、タンパク質量もカルシウム、鉄分も摂取できるパワフルな1杯に! 玉ネギのみそ汁に加えれば、動脈硬化など生活習慣予防に働くポリフェノールのケルセチン、抗酸化のビタミンCとの相乗効果で血管の若返りに!
2.「チーズ+しらす+トマト」で「パワーグラタン」に!
 豆腐より高タンパクの高野豆腐を使ったヘルシー&パワーグラタン。豆腐と同様、高野豆腐はチーズやトマトに合います。植物性のカルシウム豊富な高野豆腐に、チーズの動物性カルシウムとしらすのビタミンDをプラスして、栄養バランスと吸収効率をアップ。トマトのGABAが血圧を下げてくれるのでレジスタントプロテインとの相乗効果でメタボ予防に働きます。
3.高野豆腐“粉”を「ハンバーグ」に練り込んで、カサ増し

 ひき肉類はどうしてもコレステロールが気になりますが、高野豆腐粉をハンバーグに練り込めば、レジスタントプロテインの働きで、悪玉コレステロールを抑制。脂質の蓄積も防いでくれるヘルシーバーグが出来上がります!
 口当たりも、ふんわり軽く優しい仕上がりに!
4.免疫力アップ!「鶏ひき肉」の肉詰め
 優れた動物性タンパク質「鶏肉」と、植物性タンパク質「高野豆腐」のゴールデンコンビ。1:1に近づけは理想的なタンパク質比率、お互いを補います。ひき肉に玉ネギやニンジンなどの野菜を加えることで、タンパク質の吸収合成効率も高まります。汁を吸った高野豆腐は腹持ちもバッチリ。薄味の鶏ひき肉でも満足感が高まるお惣菜になりますよ!
 いかがでしたか?
「乾物だから」と敬遠しがちだった高野豆腐。水戻し不要になって、圧倒的に便利になりました! 高野豆腐は肉類とも相性がよいので、ハンバーグやグラタンなどいろいろな料理に使えます。その他、小麦粉の代用で唐揚げの衣に使ったり、スイーツに加えたりロカボメニューはネットでも話題ですね。
 お財布に優しく、保存もOKと便利で、何といっても栄養価がすごい! いろいろなアレンジ料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(松田真紀)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_cc521b957515_「マリアノ・フォルチュニ」が100年たっても新しい理由 cc521b957515 cc521b957515 「マリアノ・フォルチュニ」が100年たっても新しい理由 oa-shogyokaionline 0

「マリアノ・フォルチュニ」が100年たっても新しい理由

2019年7月13日 05:00 商業界オンライン

時を超えて愛され続ける力

 日本ではほとんど知られていないデザイナー、マリアノ・フォルチュニ(1871-1949)は、20世紀初頭に世界を席巻した芸術家です。彼の多面的な活動が分かる、日本初公開の作品ばかり約200点の展覧会が三菱一号館美術館(東京都千代田区)で始まりました。
 彼はファッションデザイナーで、テキスタイルデザイナーで、画家で版画家、舞台芸術家、写真家でもある天才で、まるでレオナルド・ダ・ヴィンチ。舞台の照明技術に至っては革新的な発明をしており、特許も34取得しています。
 彼は自分のことをまずは「画家」、そして「写真家」だと言っていますが、芸術と技術を融合させ布地を印刷してプリーツ加工を施すなどプロデユーサーとしても力を発揮し、彼の生み出した製品は今もなお販売され、時を超えて愛され続けています。「その秘密が知りたい」と、展覧会に行ってきました。

「デルフォス」で世界を席巻

 スペイン画壇で中心的な存在だった画家の父。母は、父と祖父がプラド美術館の館長を務め、画家、建築家、美術評論家を輩出した芸術一家の出身。その両親のもと、グラナダで生まれ、ローマとパリで育ち、ヴェネツィアで制作をしました。19歳でワーグナーのオペラの場面の制作を始め、25歳で初めて絵画と版画をイタリアで展示。1895年、24歳のときに始まったヴェネツィア・ビエンナーレに28歳から何度も絵画を出品。妻となるアンリエットと出会い、35歳の時にはアンリエットの提案で今、美術館となっているベーザロ・オルフェイ邸にテキスタイルの工房をつくります。1907年、36歳の時にフォルチュニの代表作である「デルフォス」が誕生。38歳でプリーツやプリントの特許を立て続けに申請し「フォルチュニ社」を設立。ニューヨークで「デルフォス」の販売が始まり、ヴェネツィアだけでなくロンドンやパリにも店舗を出店しました。第一次世界大戦の後、パリのアールデコ博でテキスタイル大賞受賞。第二次世界大戦後の1949年、77歳で亡くなりました。

日本の絹を使う

 京都服飾文化財団「デルフォス」は、細かいプリーツの絹のドレスで、体の線に沿って波打ち、とても優しく美しいフォルムです。絹地は日本から輸入されたといわれ、鮮やかな色に染められています。このプリーツ、いまだに制作方法が解明されていないそうですが、指で折って卵の黄身をつけて固めるという作業を繰り返したのでは(音声ガイドより)といわれ、膨大な時間がかかるのだとか。コルセットから女性を解放した革命的なドレスとして歴史に名を刻むばかりか、その美しさは今もなお輝きを放っています。
「デルフォス」の着想のもととなったのは、1896年にギリシャ・デルフォイの遺跡から発見された、紀元前5世紀初頭につくられた彫刻「デルフォイの御者」でした。
 その彼を支え続けた妻のアンリエット。この展覧会にも彼女を描いた作品が出展されていますので、その姿を見ることができます。工房を仕切り、さらに「デルフォス」も彼女の考案だったといわれ、英雄の陰に女ありですね(笑)。イサドラ・ダンカンをはじめ、世界のセレブリティが身にまとい、エレガンスの象徴となります。

「デルフォス」の前には、「クノッソス」と名付けられたショールを生み出し、その後には、豪華なベルベットにエキゾチックな模様をプリントしたマントやコートを制作しました。

発明家として

 リヒャルト・ワーグナーに心酔し、舞台芸術、舞台照明、劇場設計なども手掛けていたと前述しましたが、彼の発明した拡散光と間接照明を組み合わせた舞台照明技術は、機械で朝から夜までの光を変化させられるばかりか、役者を美しく見せることができました。
 展示されているデスクランプはフォルチュニのデザインで、舞台照明を利用した間接照明になっていて現在も製造販売されているものです。
 その技術と発明力、さらに古びないデザイン性が今もなお通用するということでしょう。
 また、彼が所蔵していた日本の染型紙も展示で見られ、型紙を用いた防染染めの技術にも通じ、プリント技術に生かしていたことが分かります。
 彼の邸宅でありアトリエ、そして工房でもあったヴェネツィアにあるフォルチュニ美術館の映像を見ていると、その素晴らしい空間に身を置くだけで何かを生み出せるような気さえします。たくさんの収集品が彼のインスピレーションをかき立て、コレクションを見ると日本の影響も大きかったことが分かります。

100年前と同じ工法で生産

「デルフォス」は、フォルチュニが亡くなった後、妻アンリエットの意向で生産を終了しましたが、ジュデッカ島の工場の経営など「デルフォス」以外は、アメリカの独占販売を担っていたエルシー・マクニールに全て委ねられ、フォルチュニの製品は今もなお当時と同じ工法で綿プリント生産が行われています。

 そして、かつての「デルフォス」はセレブリティが集まるパーティで現在も着用され、2009年のMETガラでスーパーモデルが身にまとっていました。
 2016年、ヴァレンティノの春夏コレクションはフォルチュニデザインのテキスタイルが使われ、展覧会場で流されている映像を見てもデルフォスへのオマージュが感じられます。さらにイギリスの大ヒットテレビドラマ『ダウントン・アビー』でも2015年に放送された最終シーズンに登場していると聞きました。

 フォルチュニの魅力は、時代を超えて生き続け、今もなお人々の心をつかみ続けているのです。私のハートもがっちりつかまりました(笑)。
 (岩崎由美)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_ad4138d30e96_「デジタル店舗」は顧客囲い込みの夢を見るか ad4138d30e96 ad4138d30e96 「デジタル店舗」は顧客囲い込みの夢を見るか oa-shogyokaionline 0

「デジタル店舗」は顧客囲い込みの夢を見るか

2019年7月12日 05:00 商業界オンライン

 さまざまな商品やサービスが世の中にあふれ、デジタル武装した消費者は自ら信頼できる情報を取捨選択する時代。新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客のリピート率を高めるためのコストの5倍から10倍もかかるといわれている今、企業にとっては経営基盤安定のためにも顧客を囲い込み、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を引き上げる打ち手を追求する必要があります。しかし、既存顧客のリピート利用を勝ち取ることも決して容易ではありません。これからの時代を生き抜く店舗は、どのようにして顧客を囲い込んでいくべきなのでしょうか?
 今回は「デジタル店舗と顧客の囲い込み」をテーマに、これからの時代を生き抜く店舗のあるべき姿を考察していきたいと思います。

そのDXはどこへ向かっているのか?

 今回のテーマは、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)と切っても切れない関係にあります。
 DXの必要性は至る所で叫ばれていますし、何かしらの形で経営課題の1つとして議論の俎上に上がっているのではないでしょうか。
 それでは店舗のDXの目的とは何でしょうか。それは「ウェブで簡単に物が買えるようになった時代に、どうしてお客さまは店舗で買う必要があるのか」という店舗の価値を再定義し、その価値をテクノロジーによって最大化することに他なりません。
 しかし、現実には店舗のDXの多くが、人手不足やECの登場による集客力の低下で危機に瀕している店舗を生かすために、どうテクノロジーで補完できるかという発想になっているように感じます。例えば、無人店舗が話題ですが、Amazonの無人店舗が顧客の購買体験の最適化を目指すのに対し、日本企業の無人店舗では省人化・省力化のためであることが多く、同じ無人店舗でもその設計思想は大きく異なっているのです。
 特に顧客囲い込みを念頭に置いた場合、店舗におけるDX施策は顧客の体験価値向上に向かうべきです。もっというと、店舗におけるDXのゴールは、売上げを引き上げることではありません。「売れればいい、売って終わり」ではなく、「顧客が来店することや商品を買うことでそれに紐づいた行動データを蓄積し、そのデータを活用して体験価値を改善する。その結果、さらに顧客が集まり商品が売れていく」という『正のループ』を生み出すこと。ここまで設計できて、初めて本質的なDXを推進できている状態といえるのです。
 では、何をどうすればデジタル店舗で顧客の体験価値が上がって囲い込みにつながるのか。具体的にイメージするために今、世の中で起きていることを見ていきましょう。

キーワードは「OMO」と「ファン化」

 店舗のDXと聞くと、直感的に「リアルの店舗に何かしらデジタルの要素やツールを導入する」といったイメージを抱く人も多いと思います。
 しかし、これからの時代を生き抜く店舗を築くには、このイメージを何とかして捨て去らなくてはいけません。オンラインとオフラインという二項対立で捉えてしまっては、店舗のDXの本質にはたどり着けないからです。
 スマートフォンが人々の生活に浸透し、さらにはIoTやAIの発達により、今、世の中の全ては常時オンラインにつながっていて、オフラインという状態が存在しない世界になりつつあります。
 電車の中を見渡してみてください。体は電車の中にいても、ほとんどの人の意識はスマホを通してオンラインの世界にあります。こうした状態は、店舗においても同様になってくるのです。
 これがOMO(Online merges with Offline)という概念です。
 日本ではまだOMOという状態を正しく受け入れる視点が育っていないといえます。そのため、どうしても「オンラインとオフライン」という二項対立で思考してしまいがちで、さらにいうと、店舗の貢献によって成長してきた多くの企業において、オフラインである店舗こそが「主」として捉えられています。
 しかし、これからの時代はデジタルが「主」なのです(ここでのデジタルとはECのことではありません)。世の中のあらゆるところにデジタルの網が張り巡らされている中に、リアルな店舗も存在していると考え方を変えねばならないのです。特に経営者にとってはこのマインドチェンジはクリティカルな要素になってきます。
 スマートフォンがデジタルなタッチポイントの一部であるのと同様に、店舗もデジタルな世界におけるタッチポイントの一部と捉えると分かりやすいかもしれません。
 そう考えれば、そこで重要なものは何かということが見えてきます。
 そう、データです。
 もちろん、これまでの店舗でもPOSで購買データは取得できていましたが、これからの時代で重要になってくるのが、AIやIoTなどのテクノロジーを駆使して取得する、購買以外の行動データです。
 来店した顧客が、何を見て、何を手に取ったか、商品を眺めていた時間はどのぐらいか。そもそも、どういう文脈で商品を手に取るに至ったか。これまでの店舗では取得や解析が不可能だった類の行動データが、当たり前のように集められる時代がすぐそこまで来ています。
 そのデータを活用し、提供する体験価値を高めることで、顧客を「ファン化」していく。これが次世代に求められるデジタル店舗のあるべき姿です。
 中国では、このアフターデジタルの世界が既に「当たり前である」という前提が出来上がっており、アリババの手掛けるスーパーマーケット「フーマーフレッシュ」や「ラッキンコーヒー」など、さまざまな企業がデータをフル活用したデジタル店舗でパフォーマンスを発揮しています。
 そうした企業の共通点は、店舗を含めたあらゆるタッチポイントで集めた膨大なデータから得られたフィードバックを、ものすごいスピードで顧客体験の改善につなげ、ファン化を確実に推進していることです。
 中国企業の取り組みが日本に容易にマッチするとは思いませんが、アフターデジタルな世界を正しく捉え、顧客の体験価値を高める店舗の在り方を考える上では、大いに参考になるはずです。

ファン化は体験価値を高めることから始まる

 取得したデータをどう活用するかを考えるときも、マインドセットは「どうすれば売上げが上がるか」ではなく、「どうしたら店舗における体験価値を高められるか」に重点を置くべきです。
 もちろん、取得したデータに基づいて革新的な製品を開発する、ということも体験価値向上の一部かもしれませんが、アフターデジタルな世界では、もっと生活に寄り添うような、顧客が心の中で望んでいたことが瞬時に体現されて心地よいというような体験価値が必要となってきます。
 理想は、顧客がある製品と出合ってから購入するまでの(あるいは結果的に購入しなかったとしても)「全ての過程で心地よい状態」を生み出すことです。
 例えば、消費者が気になった商品の関連情報が能動的に検索しなくても次々と手元に届く。「欲しい」と思った商品には絶対欠品がない状態を作る。帰宅する時間を狙って購入した商品が届く――そんな一見些細な(しかし技術的には難しい)ことも、テクノロジーが実現し、消費者のエンゲージメントを飛躍的に向上させる時代となるでしょう。
 あるいは、顧客満足度のデータを取得し、店舗従業員の評価に反映するといった活用の仕方もあるかもしれません。従業員にとっては、それがより質の高い接客へのモチベーションになり、結果的に顧客の体験価値を高めることにつながるからです。

テクノロジー活用で可能となる「WTP」を引き上げるコミュニケーション

 もう1つ、データ活用と並んで重要になってくるのが、「WTP(Willing To Pay=支払い意志額)」を引き上げるコミュニケーションです。そして、それを可能にするのがテクノロジーである、という考え方がしっくりきます。
 デジタル店舗というと、ともすると見た目にも派手なテクノロジーの活かし方をイメージしがちですが、顧客の体験価値を高めるにあたり、対面のウェットなコミュニケーションは、デジタル化がさらに進んでいく時代だからこそ、むしろ非常に大きな武器となるのです。
 小売業はB2Cのビジネスですが、顧客の体験価値を高めるコミュニケーションとしては、さらに踏み込んだ「B4C」や「BwC」を意識したいところです。
・B4C(BforC)
 百貨店には昔から「お帳場」と呼ばれる商慣習があります。大多数の顧客を相手にするのではなく、たった1人の顧客のために「外商」と呼ばれる専属の担当者がつき、顧客のあらゆるニーズに全力で応えていく、まさに「あなたのためのビジネス」というスタイルの接客です。
 この「お帳場」に近い体験価値がAIやIoTなどの活用によって、さまざまな小売店舗でも提供可能になるのが、アフターデジタルの世界です。
 もちろん、これは精度の高いデータ活用とセットになりますが、顧客が何を欲しているのかを先回りして把握することで、これまでは属人的な経験と勘に頼っていた「おもてなし」的な接客を、比較的容易に再現できるはずです。
 場合によっては自社の商品やサービスの枠を超えた「気の利かせ方」を積み重ねることで、その顧客のエンゲージメントは高まっていき、WTPも引き上がっていくでしょう。
・BwC(BwithC)
 今や、製品にしても、サービスにしても、機能的価値での差別化は難しい時代です。ならば、情緒的価値を高めることで熱狂的なファンを生み出し、彼らを巻き込んでその熱量を波及させる店舗体験を設計した方が、よりWTPは引き上がるといえます。
 なぜなら、消費者はブランド自体からのプロモーショナルなメッセージよりも、それらの製品やサービスを実際にライフスタイルに取り込んでいるファンからの情報発信を信じるし、自分のライフスタイルの参考にしたいと考えているからです。
 BwCを最も体現しやすいのが、マイクロインフルエンサーとの協業によって店舗を中心としたコミュニティを形成するコミュニケーションです。店舗というリアルな接点だからこそ可能なイベントやワークショップを開催するといった施策が最もシンプルな方法でしょう。
 ここで、小売業のデジタル店舗ではないのですが、BwCの例を1つ挙げます。
 (株)アールシーコアが展開する「BESS」というログハウスブランドには、アウトドア好きな層を中心に、熱狂的なファンオーナーがたくさん存在します。彼らは、誰から頼まれなくとも、DIYインテリアなど細部にまでこだわった「BESSでの暮らし」を日々Instagramなどに発信しています。そのポストを見て「いい」と感じる消費者は、かなりの確率でBESSの展示場を訪れる(=来店に相当)というループが出来上がっています。さらに、全国の展示場では、そのようなスキルの高いオーナーを「コーチャー」として招いたワークショップイベントなどを開催することで、家を購入する前から消費者をBESSコミュニティのファンへと変えるコミュニケーションに余念がありません。結果、そのコミュニティに触れた消費者は「家を建てるならBESS以外ありえない」という状態を生み出すことに成功しているのです。
 このように、顧客のエンゲージメントを深め、来店する理由、買う理由を生み出すためには、どれだけ高度なテクノロジーを駆使したデジタル店舗であっても、重要な部分で「人間の力」が必要不可欠なのです。
 この原稿冒頭でネガティブな例として挙げたセルフレジやセミセルフレジの導入にしても、コスト削減という企業視点ではなく、決済におけるリソースが削減できた分を顧客の体験価値向上に還元する仕組みとコミュニケーションを考えた結果の具体策なのであれば、デジタル店舗としての質を高めることができるでしょう。

〔最先端事例①〕キーワードは「コミュニティ」(NIKEの場合)

 ここからは、今、国内外の最先端を行くデジタル店舗が実際どのような店作りを行っているか、具体例で見ていきたいと思います。
 まず、昨年、LAでオープンし話題となったNIKEの体験型店舗「Nike by Melrose」についてです。この店舗はデータから得たフィードバックを顧客体験に反映させる施策と「地域コミュニティ」を重視した、まさにアフターデジタル的な店舗だといえます。
 消費者は、基本的にアプリを通じて買物をするよう体験が設計されているのですが、ここで展開されているさまざまな機能はかなり魅力的です。
 例えば、ジオフェンスによってユーザーの来店を瞬時に察知し、アプリが自動的に起動して最新のコンテンツが表示されたり、ユーザーは来店前に特定の商品を指定すれば(商品を購入しようがしまいが)事前に更衣室に準備しておいてもらえるとか、店内のマネキンをスキャンするだけでその商品が表示され、色とサイズを指定すれば、同じく更衣室に準備してくれるなど、アプリを軸に質の高い顧客体験が網羅されています。
 しかし、最もこの店舗で特徴的なのは、同地域におけるNIKEのシューズの売れ行き(ナイキプラスの地元メンバーの購買データ)に応じて在庫をコントロールしているという部分ではないでしょうか。
 同社のCDO(チーフデジタルオフィサー)アダム・サスマン氏によると「消費者は、購入商品を決めるために、その街で何が流行っていて、どんな商品が売れているかを知りたがる」のだそうです。
 一見、非常に地味な施策ですが、得られたデータを確実に消費者のインサイトをついた施策に落とし込んでいるわけです。しかも、顧客は自分でそれを調べる煩わしさから解放されるので、これは非常に体験価値が高く、いかにもアフターデジタル時代の店舗という感じがします。
 もう1つの特徴としては、アプリを通じて何でもできる体験型店舗であるにもかかわらず、Nike by Melroseでは「ストアアスリート」と呼ばれる従業員を大勢雇用しているという部分です。
 来店する顧客は、ストアアスリートとのコミュニケーションを通じてコミュニティへの所属意識を持ちたいというインサイトがあるため、友達感覚で従業員と接します。商売に関する大部分はアプリが担ってくれるため、従業員と顧客のコミュニケーションには通常の店舗よりも強いエンゲージメントが生まれます。アプリにはストアアスリートと直接メッセージのやり取りができる機能も搭載されており、そちらも好評だということです。
 こうして見ると、これらの施策を通じて顧客のファン化が進み、LTVが高まっていくことがイメージしやすいのではないでしょうか。
 この店舗はNIKEが考える体験型店舗の実験的な位置付けだったため、ここで得られたフィードバックに基き改善したデジタル店舗を次々と世界中の都市部に横展開していくことになるでしょう。

〔最先端事例②〕店舗を「デジタルメディア化」(b8ta、蔦屋家電+の場合)

 続いて紹介する2社には、構造的に似た部分があります。
 1社は、2015年のオープン以来、シリコンバレーで人気の高いハードウェアショップ「b8ta」。もう1社は今年、二子玉川にオープンしたばかりで、こちらも最新のテクノロジーを駆使した家電製品を中心に取り扱う「蔦屋家電+」です。
 この2社の店舗に似た特徴を一言でまとめるならば、「店舗のデジタルメディア化」とでもいったところでしょうか。
 ビジネス的にもそれを下支えする機能的も、この2つはよく似ています。
 まず、両者とも店舗でプロダクトを販売するものの、たくさん売ることが目的ではない、ということです。
 b8taも蔦屋家電+も、プロダクトの出品者からの展示期間に応じた出品契約料を収入源にしています。
 どちらも取り扱うのはマス化されていない斬新なプロダクトが中心であり、それらのプロダクトを実際に触って体験できる、という部分にこそ、両店舗の存在意義があります。
 人々の目をひくプロダクトをキュレーションし、そしてそれを店舗内でどう見せるべきかという「編集」を経て、プロダクトに付随する情報に価値を持たせる。これは店舗の存在が非常にメディア的であるといえます。
「店舗全体を編集する」という視点は、実はかつてからあったもので、実行難易度は高いですが、顧客をファン化させる大切な要素です。例えば、雑貨店のヴィレッジヴァンガードなどは、まさに店舗の編集の独自性によって人気を博してきた歴史があるといえます。
 この編集視点に加えて、「デジタルメディア」たるゆえんとなる部分こそがb8taと蔦屋家電+の最大の特徴です。両者とも店内に設置したカメラとAIを駆使して来店者の行動データを取得・分析し、出品者にフィードバックしているのです。
 どのような属性の来店者が、どのプロダクトの前でどれぐらい立ち止まったのか、実際に手に取ってみたのか。これらのデータはプロダクトのブラッシュアップやマーケティングに生かされ、さらに良い顧客体験を生み出す種となります。
 まさに、どのような属性のユーザーが、どのコンテンツにどれだけ滞在していたかを絶えず分析しPDCAを回すデジタルメディアと同じことを、店舗が行っているわけです。

「DETモデル」を意識することで未来の店舗が見えてくる

 具体的な事例で見ると、デジタル店舗のあるべき姿がより明確になってきたのではないでしょうか。「次世代を生き抜く店舗」といっても、どの事例も、テクノロジーはあくまでも「裏方」であり、リアルな場だからこそ成し得る体験価値に重きを置いているところが共通点として挙げられます。
 このような体験価値の高いデジタル店舗を設計するために、「DETモデル」を使うことが助けになります。DETとは、Data(データ:顧客情報)、Engagement(エンゲージメント:顧客とのつながり)、Touch point(タッチポイント:顧客との接点)のことで、顧客データを基にエンゲージメントを高める施策を行い、ECやアプリ、店頭などあらゆるタッチポイントで購買につなげるという一連の流れを表しています。
 これがOMO時代のサービス構築をする際に適したモデルであり、D、E、Tをそれぞれきちんと連携させることで、顧客を囲い込める店舗設計ができるのです。そしてその状態を目指すことこそが、店舗におけるDXそのものなのです。

(薮崎敬祐)

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本部と店舗の関係について

2019年7月12日 05:00 商業界オンライン

 巷間セブン-イレブンのフランチャイジーから出た文句?について、議論がやかましい。例えば、『週刊ダイヤモンド』誌6月1日号は「コンビニ地獄」という2流週刊誌並みの特集を組んで、一部不満オーナーの意見を全面的に支持?している。
 だが、セブン-イレブンに限らず、どんなフランチャイズチェーンにも不成績店は存在し、不成績店の多くがその不成績の理由を自らに帰さず、フランチャイザーのせいにするのは、極めて常套的な事象である。それは何も今更なことではない。今までもフランチャイズチェーンには、常に不成績故の不平不満分子が、一定の比率で存在した。
 というのもそれらフランチャイジーのほとんどは、既に投資を済ませており、それは返済しなければならない債務である。とすれば何とでも理由を付け、あらゆる事情を利用して、その文句を正当化し、フランチャイザーの条件緩和に努めることは、十分に予測できることである。
 成績を上げているフランチャイジーは、黙って成績を上げている。それを自ら言い出すことは、まずない。いや仮に言い出したとしても、メディアは取り上げない。マスメディアにとって重要なのは、不成績なフランチャイジーと好成績なフランチャイジーを公平に、いやその割合に応じて、取り上げることではなく、「ニュース」を創ることだからである。そして成功を伝えられる企業の「暗部」?には、十分なニュース・バリューがある。もちろんメディアは、あくまで事実を報道しただけ、という逃げ口上を用意している。さらにマスメディアによく思われたい政治家や官僚が、「審議会」まで創ってそれに対応するのもまた、これまで他の事件でも見られた、よくあることである。
 だが、ここでセブン-イレブンを初めとする一連の「事件」について言及するのは、それを月旦するためではない。この一連の問題には、2つの示唆があることを指摘したいからである。1つはそのきっかけが他ならぬ『働き方改革』から始まっていることであり、2つはこれが「本部と店舗」の暗黙の関係を示唆していることである。
 第1に、『働き方改革』が指摘していることは、突飛なことでも意外なことでもない。簡単にいえば、休日をちゃんと取り、勤務時間を守り、残業手当をちゃんと払え、ということである。実行している企業は、何十年も前から実行している。私がかつてやっていた事務所などとても企業とはいえないが、社員に残業させたことは一度もない。残業手当など、余計な費用は払いたくなかったからである。不遜なことをいえば、社員に残業させるくらいなら、お客に迷惑をかけた方がいいし、それが出来ない場合は、私1人が残業すればいい、と考えていた。
 いや私自身、既にあちこちで言いふらした?ことだが、60年前、1人暮らしの私が最初に就業したとき、たとえ変人といわれても完全に「9時5時」を守り、5時を10分過ぎて会社にとどまったことは、一度も無かった。残業手当が出るなら話は別だったが、その気配は皆無だった。そのことを今に到るも、一度も後悔したことははない。にもかかわらず、流通業界で今になってやっとそれが話題になるのは、そのような「働き方」が普通ではなかった証拠である。それを今、普通にしようというのは、当然でしかない。
 私が不審に思うのは、それが今、問題になるのは、バイトおよびパート労働の利用が増えた、若い人がついてこなくなった、採用に影響する……という間違った事情に理由を求めるものがいる、という事実である。それは「今、問題になった」のではなく、「これまでも問題」だったのに、見逃してきたということでしかない。では逆に労働力需給が今のように緊迫しなければ、過去の「働き方」を続けさせる、とでも考えているのだろうか。
 企業は、以上のような正当な「働き方」を前提に成績を上げるのでなければ、企業とはいえない。
 さて、もう1つの示唆は、本部と店長の関係である。過去のチェーン理論では「ストア・マネジャー」の任務は、店舗でのコスト削減であり、当然ストア・マネジャーは、専ら本部の指示に従う存在、ということになっていた。時代は変わり、今、それをストレートに実行しているチェーンは、ごく一部の限られた企業になった。
 多くのチェーンが「ストア・マネジャー」ならぬ「店長」の重要性を認識するようになり、店長は単に本部の指示に従っていればいい存在ではなく、もっと自主的に動ける存在に変わってきた。だが、そのような企業においても、他ならぬ『働き方改革』で、部下がどんどんそれぞれの定時で退勤する、店長はそれを止めることはできない、だが止めることができなければ店長の任務が果たせない、そのとき、店長はどうするか、という問題が発生しているように思われる。
 示唆とは、フランチャイズチェーンではフランチャイジーがフランチャイザーに「文句が言える」が、普通のチェーンの店長は、問題があってもそれについて「本部に文句が言えない、相談ができない、言い出しかねる」ということである。本部は、今や店長は単に本部の指示に忠実に従うだけの存在、すなわちかつての「ストア・マネジャー」とは異なる、と見なしている。
 ところが多くのチェーンにおいて、店長は、意識するかしないかは別にして、その心理において「本部には文句を言えない、逆らうことができない、逆らえば自分の評価が落ちる、結局は本部の指示に従うしかない」ということが暗黙の了解、になっていないか。
 とすれば一方で「働き方」改革を進めるのは当然として、店長に「本部には逆らえない」と思わせるのではなく、文句を言えば評価が落ちると恐れさせるのではなく、むしろ問題があれば、それを率直に具申して、ともに対策を考えてくれるという本部の存在意義を、明らかにすべきではないか。
 もちろんどのチェーンにも、実力不足の店長、マイナス点を恐れて問題を本部に知らせず自分1人で背負い込んで解決しようとする自己犠牲店長、問題をうまく本部の補助手段を活用してちゃんと解決できる店長など、さまざまな店長がいる。同じセブン-イレブンに、成績抜群のフランチャイジーと文句タラタラの不成績フランチャイジーがいるのと、同じである。だが本部の任務は、いい店長と悪い店長を仕分けることではなく、いかに「困っている店長」を早く発見して、彼あるいは彼女を「助ける」か、もっといえばその「自助」を応援するか、ということにこそある。セブン-イレブン問題もその配慮に関わる。
 そう考えたとき、冒頭に述べたような事情にもかかわらず、しかも明らかに出店の余力があるセブン-イレブンが、急遽出店をストップさせシステムの点検整備に乗り出した、その理由も了解しうるように思われる。
(島田陽介)

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「子育てしやすい会社」がなぜ成長するのか?②ピーターパン(船橋市)

2019年7月12日 05:00 商業界オンライン

写真:基幹店である船橋店外観。その他、駅高架下ショッピングセンター内にも出店している。

『子育てしやすい会社は間違いなく業績もいい』
 ベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著作で知られる元法政大学大学院教授の坂本光司氏が最新刊「ニッポン子育てしやすい会社」で明らかにした事実。坂本氏は現在、人を大切にする経営学会を主宰、精力的に各地の企業事例を調査している。
 今までに全国8000社を調査、そのうちの51社を実際に訪問・ヒアリングした結果、「子育てしやすい会社は業績も継続してよい」という結論を導き出した。対象となった企業群の平均特殊出生率は1.90人(全国平均は1.44人*2016年厚労省調査より)、2人以上が全体の3分の1を占める結果となった。
「子育てしやすい会社」=「働きやすい会社」といえる。そして好業績を継続するのは目下、必須の経営課題となっている「働き方改革」を具現化する1つの解答だからだろう。
 子育てしやすい会社づくりを通じて働き方改革と好業績を両立させるベーカリー専門店「ピーターパン」を紹介しよう。
 千葉県北西部にベーカリー9店舗を展開する「ピーターパン」。
 店内焼き窯で常時多種の焼きたてパンを展開しており、2015年にはメロンパンを1日当たり9000個以上販売したという世界記録も持つ。現社長の大橋珠生さんが会社を引き継いだ17年3月期の年商は19億6000万円だったが、それが18年3月期には年商22億6000万円と堅調に伸ばしている(経常利益率も平均して10%前後を弾く)。1店当たり3億円近い年商は一般のベーカリー店の2倍以上の水準だ。
 基幹店である船橋店を見ると日中は常時、来店客でにぎわっている。売場内で焼きたてパンを物色する人、店外に設けられたテラス席では買い求めたパンを食べながら、無料で提供されるコーヒーでくつろぐ人など、同店が日常的に支持されている様子がうかがえる。店舗前面に加え、隣接、道路を挟んだ敷地にも駐車場を確保しているが、平日日中も出入りが多く、県外ナンバーも目立っている。

“職人気質”から理念を基点とした“個々の能力開発重視”へ

 同社の特徴は売場と商品に加え、社員の働き方にある。
 社員数は133人。男女比率は半々。既婚者は40人弱だが、半数が社内結婚、子供の数は平均1.7人。平均年齢が28歳なので、子供の数はさらに増えるだろう。
 同社は大橋社長の父であり、現会長でもある横手和彦氏が創業。チェーンストア理論、経営の原則などを学び、それらを忠実に実行し、事業の改廃も進めつつ、現在の企業の形をつくっていった。また新卒の定期採用を継続、職人気質の高いと思われるベーカリー店を、経営理念の共有により顧客志向にシフトした体質につくり替えてきた。
 大橋社長自身はもともと一般企業に就職し、ビジネスウーマンと活躍していた。当時、同世代の友人が夫の異動、転勤が続くことで継続して働くのを断念する姿を目の当たりにした。こうした経験から、現職に就いた時点から、ピーターパンでいきいきと長く働ける職場をつくりたいという思いを強くした。
「子育てしやすい会社づくり、制度運用も基本的に女性の立場に立っている」(大橋社長)。例えば、育児休暇から復職した女性社員については、その他の社員の理解を得つつ、ある程度収入が維持できるような労働日数の設定をするなど“子育て”を応援する環境を整える。その前提には「“お互い様”という気持ちと風土を大事にしたい。居心地のよさというよりも、働きやすさが必要、そして働きやすさには気遣いが必要。その気遣いが社員の間でいつもされていることに力を注いでいる」(大橋氏)としている。

 船橋店の2階に設けられた会議室では研修を兼ねたミーティングが行われており、例えば、「ファンづくりのためには」という目的に向けて、「食文化提供の拠点になる」⇒「美味しいパンづくりに磨きをかける」⇒「フィリング(具材)の品質アップ」といったロジックツリーに表して、取り組み課題を明確にする手順が模造紙に記入され、掲げられている。“お互い様”に表れるコミュニケーションは業務のレベルアップにも生かされているのである。
 同社の経営理念の中にある「一人ひとりの可能性を尊重し、共に学び、共に成長し(後略)」が実践されていることが、子育てしやすい会社=(イコール)業績がよい、を実証している。
(山本恭広)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_183bb39eb7d6_〔第14回〕タントにごまをつける? 183bb39eb7d6 183bb39eb7d6 〔第14回〕タントにごまをつける? oa-shogyokaionline 0

〔第14回〕タントにごまをつける?

2019年7月12日 05:00 商業界オンライン

 ワクワク系マーケティング実践会(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を実践する企業とビジネスパーソンの会)会員のあるカーディーラーの店長さんからのご報告。なかなか気付かない「売れない理由」と、それに気付く力をどう身につけるかに関わる、学びの多いご報告だ。
 同店は、当会が会員に毎月お届けしている会報誌に掲載されている会員さんの実践事例を、店内で共有し意見を言い合う勉強会を月に1回開いている。その中に、あるパン屋さんの「あんぱんにごまをつけただけで337%の購入率UP」という事例があった。他のパンと見分けがつきにくい外見のあんぱんに、試しにごまをつけてみたら、売上げが3倍以上に伸びたというものだ。
 この事例のインパクトが大きかったので、店長は冗談交じりにスタッフたちに「うちのタントにも、ごまでも付けてみようか」と言ってみた。ちなみに「うちのタント」とは、中古車として展示しているダイハツの軽自動車。同店はダイハツのディーラーではないが、中古車はメーカー問わず販売している。ところがこのタント、中古車が一番売れる3月~4月を過ぎても売れ残り、ずっと展示し続けている商品だった。
 すると、この言葉を聞いた若手スタッフからこんな言葉が返ってきた。「そういえば、何人かのお客さまに『どうしてここにタントが置いてあるの?』って聞かれました。試乗車と同じ並びに置いているので、あのタントが中古車の商品だと分からないのではないでしょうか。だから、どうしてダイハツの車が並べられているのって意味で質問されているのではないでしょうか?」
 店長は一瞬、「そんなばかな」と思った。中古車ののぼりも立ててプライスボードも付けているのに、分からないはずがない。しかしよく考えてみると、ごまの無いあんぱんがあんぱんだと認知してもらえなかったように、お客さんには分からないのかもしれない。そして翌朝、試乗車と一緒の列に並べて展示していた中古車タントを、1 台だけ反対向きにして目立つように並べ直してみると、その日の午前中に成約となったのだった。
 あんぱんも中古車も、ここでは「売れない理由」はよく似ている。しかし、人はこういう「売れない理由」にはなかなか気付けない。また、同店がここに気付いたきっかけは、パン屋の事例を通じた「ごまでも付けてみようか」の言葉だったが、普通、この言葉から今回の解決策は浮かばない。これは、同店が毎月取り組んでいる事例からの学びの賜物だ。こういう学びを繰り返していると、人は気付く力や、解決策を思い付く力がつく。それこそが「売れる」という結果をもたらすのである。
(小阪裕司)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_2bbba017ab81_仕事と家庭の両立に悩むのは、男も一緒だ 2bbba017ab81 2bbba017ab81 仕事と家庭の両立に悩むのは、男も一緒だ oa-shogyokaionline 0

仕事と家庭の両立に悩むのは、男も一緒だ

2019年7月11日 05:00 商業界オンライン

 内閣府男女共同参画局の「共働き等世帯数の推移」によれば、2017(平成29)年時点で専業主婦世帯は641万世帯、共働き世帯はその約2倍の1188万世帯と発表されています。数値は1980(昭和55)年時点とほぼ逆転、女性の社会進出や雇用形態の変化、少子高齢化など複合的な要因で、共働き世帯の割合は年々増加しています。

 この連載では実際に共働きしている家族を料理・買物・生活という切り口で取り上げ、どんな日常を送っているのかショートエピソード形式で毎週お届けします。

第43話 地域で働くために起業した夫・瞬治の目線

 朝5時に起きたら、担当しているラジオ地域情報番組のためにざっと今日のニュースをチェックする。
 家族の朝食準備と娘の保育園への送りは僕の担当なので、パンとヨーグルト、野菜ジュースなど簡単なものを準備する。
 以前は「パンを出すのはママ、バターを塗るのはパパ」なんて独自のこだわりを見せていた娘も、今ではパンにバターを塗ることはもちろん、ある程度の身支度なら自分一人でできるようになった。
 保育園に通っていると洗濯物がたくさん出るのでわが家は毎日洗濯しているのだが、早く帰って来られた日は僕が保育園のお迎えや洗濯をすることもある。
ーーー
 僕は今、会社員をしながら複業として経営も行うという二足のわらじを履いている。
 子供が生まれたことをきっかけに自分の住んでいる地域に愛着を持つようになり、「地域で働きたい」と思い切って独立した。
 比率でいうと「会社員8、経営2」くらいだろうか。複数の収入源が確保できるようにしたかったので、今は自分の活動と同じ方向性の企業に参画している。
 複業では地域企業を盛り上げるための活動全般に関わり、主にWebサイト制作やイベント運営などを手掛けている。仕事柄、休日でも出掛けることが多く、会社勤めだけだったときと比べると家族と一緒の時間はかなり少なくなった。
 家族の予定を守るためには、事前のスケジューリングが必須だ。記念日には前もって外出する予定を入れて、夏休みの旅行は近場でも事前に予約をしておくことで、他の予定を入れないようにしている。
 とはいえ実際には、妻が計画を立ててくれた予定にそのまま乗っかっているのが現実だ。
ーーー
 まだ独立したばかりで仕事漬けになっている現状だが、家族から理解はされている方だと思う。
 ただ、あまり良くは思われていないだろうな、という実感はある。玄関を出る際に娘から「パパ、出掛けすぎー!」と言われるたびに、少し後ろめたい気持ちもある。
 地域のイベントの開催日は、土日が多い。運営に携わると、どうしても夜や休日の外出が多くなってしまうことは否めない。
 妻に負担を掛け過ぎているので、職場や打ち合わせには可能な範囲で娘を連れていくこともある。「子連れでもいいですか」と尋ねると、快く受け入れてくれる人は多い。小さな子がいることで、場の雰囲気が和やかになることもよくある。
 仕事と家庭の両立は、男女の性別を問わず難しい。それでも、毎日を回していくしかない現実もある。家族との時間を大切にしていくのが、今後の課題だ。
(秋元沙織)

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cat_11_issue_oa-shogyokaionline oa-shogyokaionline_0_89bdd08eb6b2_中華系が日本に駆け込む「意外な理由」 89bdd08eb6b2 89bdd08eb6b2 中華系が日本に駆け込む「意外な理由」 oa-shogyokaionline 0

中華系が日本に駆け込む「意外な理由」

2019年7月10日 05:00 商業界オンライン

 整形といえば、アジアでは韓国、欧米ではアメリカを思い浮かべる人が多いだろう。中国本土に行くと、眉毛だけ異様に濃い女性(=眉だけアートメイクを施している人)がいるが、これは中国では眉の薄い女性は幸せになりにくいといわれているから。そういう意味では、中国人は整形に関しての精神的ハードルは日本人より低いといえるだろう。
 そうした中、生活水準が上がるにつれ、美の追求も強くなり、最近、中華系の人々を中心に韓国に整形に行くのではなく日本に来る人が増えている。日本の美容整形業界をリードしてきたサフォクリニックの白壁雷太最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

日本の美容整形の市場規模は推計で3740億円

 日本の美容整形の市場規模について実は正式な統計のようなものはあまりなかった。日本美容外科学会(JSAPS)は社会からの理解と信頼を深めるため2017年1月1日から12月31日まで「第1回全国美容医療実態調査」を行い、その結果を2019年2月1日に発表した。
 調査対象3656院のうち521院から回答を得た結果、「全美容施術数」は160万3318件だった。うち「外科的手術」は27万8507件で、内訳は「顔面・頭部」が21万7163件、「乳房」が1万4523件、「躯幹、四肢」が4万6821件だった。一方、「非外科的施術」は162万5391件で、内訳は「注入剤」が71万368件、「顔面若返り関連」が41万8790件などとなっている。
 もう少し細かく見てみよう。「顔面・頭部」での具体的な施術では「まぶた形成手術」の14万9861件が最も多く、「鼻形成」が2万9377件、「フェイスリフト手術」が2万7608件と続いた。「乳房」では「豊胸術」が1万1486件、「躯幹、四肢」では「腋臭症手術」が3万3211件をなった。
 JSAPSでは、得られたデータから未回答部分を含めた「推計手術数」を計算し、「手術」は42万5653件、「非手術」は278万1426件と合計で320万7079件になると算出した。市場規模は手術治療が1378億円、非手術治療が2363億円の合計3740億円になるだろうとしている。
 ここで世界における日本の美容医療について見てみると、国際美容外科学会(International Society of Aesthetic Plastic Surgery/ISAPS)が2018年11月に発表した2017年の統計によると(JSAPSが集計した数字とは異なる)、日本の施術数は167万8610件で世界全体の施術数の7.2%を占め、第3位だった。トップは431万180件のアメリカで18.4%、2位は242万7535件のブラジルで10.4%だった。

技術だけではなく日本のやり方が信頼される

 サフォクリニックは、1940年に白壁武彌が大阪で開業した「外科白壁病院」が始まり。当時は難しかった“盲腸の手術跡を少しでも消してあげたい”などといった思いから美容整形が始まった。その後、息子の白壁征夫が2代目として「白壁美容外科」の院長に就任(その間に改称もあった)し、1989年に東京・恵比寿にサフォクリニックを開設。2008年に現在の六本木に移転してきた。今は白壁雷太が3代目のトップとしてクリニックの運営を行う。

「私が中国に行き始めたのは2011年に上海の美容整形に関するパーティーに招待されたのがきっかけです」と白壁CEOは話す。また、台湾系の母親をもつ白壁CEOは、4分の1の台湾の血が入ったクォーターでもあり「中華」というルーツを持っていたことが中華系の市場に関心を寄せた要因でもあると考えた方が自然だろう(本人も中華圏に初めて行ったときに、違和感もなく、感じるものもあったという)。それ以降、白壁CEOは中国で美容整形に関する講演を積極的に行い、日本の美容整形について語る他、中国の美容整形の底上げを図ろうとしてきた。
 翌年からは中国人客が来始め、2014年ごろには来院者の70~80%は中国人だったと言う。「ひっきりなしに電話がかかってきましたし、最初は院内で食事されたり、当院の診察結果を持って、他の病院に行かれたりすることもありました。今ではノウハウも得て、お客さまを大量に受け入れるのではなく、手術が3回目以上の患者さんは対応しないなどした結果、全体の30%くらいに落ち着いています」
 白壁CEOは、国による美容整形文化の違いについて次のように語る。「アメリカと韓国は、整形することによって『ニューライフが始まる』と言います。つまり、過去を消すのです。日本は今あるものから向上させようという考えで、過去をなかったことにするという考えはありません。中国はその中間にある感じです」
 その中国人がなぜ日本に来るのかを聞いてみると、自国の先生を信用しにくいのと、韓国で手術すると同じような顔になってしまう可能性があるからだという。「整形手術というのは、(個々に応じてではなく)メソッドを決めて手術をすることが可能だからです。メソッドで手術をしてしまえば個人によっては、不釣り合いに仕上がるケースがどうしても出てきます。日本はそれがないのです」と話す。このように韓国は資本主義的にお金を稼ぐことが中心となるが、日本の場合は患者の立場になって施術をすることに主眼を置くことも評価されている(技術の高さが信頼を勝ち取っていることは言うまでもない)。
 ただ、どうしても言葉の壁が存在するという。サフォクリニックでも中国人スタッフを2人ほど雇っているが、普段は別の業務をこなしており、診療の中でコミュニケーションがおかしくなったときに軌道修正をするべく「念のため」という形で出てくるのみだ。「通訳も患者さんが雇う形でお願いしています。医療行為ですから、誤訳により手術をしたとしても、結果的に当方の責任になってしまうからです」。
 中国人患者の受け付け方法は、サフォクリニックのウェブサイト(中国版を用意している)、コーディネーターやエージェントを介する形を取っている。美容整形も医療行為でありミスが許されないことから契約しているコーディネーターはわずか数人に絞るなど「質」にこだわっている。

事実上、精神科医も兼ねる

 美容整形手術は、美しくなりたいという気持ちから行うため、「患者さんには美しくなる=頑張るという思いがあり、追い込まれ感がある人が少なくなりません。その結果、心が崩れていくケースが多々あります」。ここに整形を繰り返す、整形中毒的な人が現れる原因の一部があるといえるだろう。「父である白壁従夫は『美容整形の医者だけど精神科医みたいなもの』と表現していました」と白壁CEO。上述の3回目の施術となる患者は断るという理由は「3回以上整形しようとする患者の心は既に乱れていて、正解がなくなってしまうからです」と、何回やっても整形の結果に満足しないということを教えてくれた。
 それはどの先生に外科手術をしてもらうかという患者との相性が非常に大きな要素になるということでもある。「患者が先生と話して気持ちが良かったかどうかというのが第1ステップです。当方では、コーディネーターからの情報やウェブサイトを通じて送られてくる相談内容などから総合して判断して『この患者さんにはこの先生がいいだろう』と私がディレクションしています」
 美容整形はどうしても費用が高額になるが「価格は中国人価格で高く設定しています。海外での安全はお金で買うと思いますが、それと同じです。また、医者の人たちにもベストのパフォーマンスをしてもらうには、それなりの技術と知見を出してもらわなければなりませんから、それに見合った価格にしました」。
 筆者が中国とのビジネス経験から考えると支払いをちゃんとしてもらうという与信管理が重要なのだが、その辺りについて聞くと「先払いのシステムとなっています。そのため、クレジットカードを業界で初めて使えるようにしました」と経営者としてのオーガナイズは抜かりない。
 サフォクリニックでも、JSAPSのデータと同じようにまぶたや鼻の手術が中心となる。「中国人の最初の手術は、韓国で失敗したと思われる目と鼻の修正でした。基本的に目、鼻がまとまると、その後はどこの手術をしても大丈夫です。私たちには80年以上の歴史があり日本の美容整形の歴史みたいなところもありますから、昔から外国の患者さまが私たちを見つけて来院してくれました」と話す。
 日本人は40代以降にフェイスリフトの手術を行うそうだが、中国人の場合は若い人が来院するという。「あごの骨切り手術をした後、時間の経過とともに顎の支えがなくなり、20代でも皮膚がたるんでしまいます。そのたるみを改善するために来るというのは中国のお客さまならではのケースです」と言う。最初に顎だけ削った後の影響を考えずに施術した結果、フェイスリフトに定評のあるサフォクリニックに駆け込むというものだ。

ドクターの輸出を行いたい

 今後について聞いてみると、「インバウンド的なものから、今度はドクターのアウトバウンドを行っていきたいと考えています。人材派遣・紹介の会社などと一緒にできれば可能ではないかと考えています」と語る。白壁CEOからは美容整形をもっとグローバルにしたいという話もインタビュー中に出てきたが、それを体現するものといえよう。
 スポーツでは、外国人選手を日本に呼ぶのではなく、日本人コーチを輸出できればそのスポーツにおいて大国であるといえる。日本の柔道やアーティスティック・スイミング(旧シンクロナイズド・スイミング)などは、日本人コーチが外国で指導してその国のレベルを底上げしているがそれと同じで、日本のドクターの輸出というのは、日本が美容整形のトップレベルの国であることの証にもなるだろう。
(武田 信晃)

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