〔プロフィル〕池谷敏郎(いけたに としろう) 池谷医院院長、医学博士。1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局、血圧と動脈硬化について研究する。専門は内科、循環器科。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。現在も臨床現場に立つ。血管、血液、心臓などの循環器系のエキスパートとして、数々のテレビ出演、雑誌・新聞への寄稿、講演など多方面で活躍中。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医
連休も終わり、いよいよ夏が近づいてきました。薄着になり、そろそろお腹回りが気になる頃ですね。これまでダイエットに挑戦してもリバウンドを繰り返し、挫折してきた方にお薦めしたい1冊がこれ。
『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド』(池谷敏郎著、東洋経済新報社) メディア記者会見で、トレードマークの白パン&ネイビーVネックTシャツに白ジャケでさっそうと現れた池谷敏郎先生に、会場はどよめきました。「先生、若っ!」。「このTシャツ、ユニクロなんですよ」とスタイルが良い人しか言えない台詞をさらっと言ってしまう爽やかさ。とても56歳には見えません。
とにかく若い池谷先生ですが、実は私たちと同じ「無謀なダイエットとリバウンド」の長い長い失敗の歴史があるんです。
それは「ダイエット黒歴史」から生まれた!
31歳のとき、奥様の友人から人生初「ぽっちゃりしてる人だね」と言われ、大ショック。結婚式までに痩せて見返したい、という一心で、1日にフランスパン1本と水だけの最悪のダイエットで体重は70㎏から60㎏へ、何と2カ月で10kg減を達成(その当時は「糖質制限」という概念がなかったそうです)。
でも、結婚式が終わった途端、リバウンドで体重が10kg以上戻るどころか、さらに太って36歳では体脂肪23%の見事なメタボ体型に!(女子に多し!結婚式あるある。個人的にも経験あり)。ただ、医者という立場上、「この体形の医師が生活習慣病の改善を患者に求めても説得力がない」と、一念発起。そこから糖質制限をして15kgに及ぶダイエットに成功。しかし、今度は痩せ過ぎて「みすぼらしい体」に(これも、糖質制限あるある!シワが増えるんですよね)。
そこで、50歳を過ぎてからタンパク質の摂取を増やして筋トレを取り入れ、56歳の現在は「血管年齢28歳、体脂肪率10%!」という若いボディを手に入れました。その池谷先生が現在も続けているのが、このメソッド。目の前にいる先生がその証明。説得力が違います。
左が36歳のときの池谷先生(血管年齢は45歳、体脂肪率は23%だった)、右が56歳のときの池谷先生(血管年齢は28歳、体脂肪率は10.6%)
予防医療の現場で患者さんの声を聞いて「練り直し」
池谷先生は現在も東京あきるの市の池谷医院の院長として、予防医療、つまりメタボ予防のスペシャリストとして多くの肥満患者さんのダイエット指導を行っています。「忙しくて運動する時間がない」「外食続きで自炊ができない」「甘いものがやめられない」。。。そんな、今まで痩せたくても痩せられなかった人たちの無理難題、高いハードルのリクエストに合わせて、繰り返し練り直してできたのがこの「池谷メソッド」。先生いわく、「最高傑作」。とにかく、無駄なく効率を上げる工夫が満載です。
病気に直結する「内臓脂肪」に特化。リバウンドなし
もう1つは、「内臓脂肪」に特化したダイエット法という点。
脂肪にはたまる場所の違いにより3種類がある。皮下脂肪と内臓脂肪、異所性脂肪だ。このうち、ぽっこりお腹とは主に内臓脂肪の蓄積が原因。過剰な内臓脂肪の蓄積は、見た目が「カッコ悪い」以上に、さまざまな病気のリスクを高めてしまいます。そして、私たちアジア人は、欧米人に比べて内臓脂肪がつきやすく、それに伴う生活習慣病になりやすい人種。
さらに、最近増えているのがメタボよりも怖いサルコペニア肥満。一見痩せているように見えるが、筋肉量が少なく、内臓脂肪の蓄積が目立つ。極端なダイエットによって脂肪だけでなく筋肉が減少し、その後のリバウンドで脂肪だけが増えることによって生じる、女性に多いタイプの「隠れ肥満」だ。ただ単に、「体重を落とす」という考え方では、健康的なダイエットは実現できない。スペシャリストの最新メソッドを知ることが重要なのだ。
ダイエットに大切なのは「モチベーション」。だから、完全な糖質制限はNG!
ブドウ糖は体を動かしたり、脳を働かせたりするために必要なエネルギー源の1つ。厳しい糖質制限をすると、エネルギー不足になりやすく、「だるくなる」「やる気がなくなる」などの症状が出ることもありますよね。体重は減るものの、モチベーションをキープするのが難しい。そんな経験がある方も多いはず。
池谷先生も糖質制限によってエネルギー不足となり、痩せこけた老人のようになってしまった経験があり、極端な糖質制限は長続きしないことを実感。その頃は今のように「若い」と褒められなかったそうです。
健康になりたい!長生きしたい!とダイエットのモチベーションはいろいろありますが、先生のモチベーションはズバリ「モテ」褒められたい、好感度を上げたい、お洒落を楽しみたい、など。ダイエットして、先生は「人生が変わった」。オシャレが楽しくなり(ディーゼルが好きだそう)、お嬢さんや息子さんにとっての「恥ずかしいオヤジ」といった存在から卒業した。子供たちから、気軽に友人を紹介してもらえることがうれしいという。
最近では、ゴルフ場で、はるかに年下の人から、同世代と勘違いされて「タメ口」で話し掛けられることが「快感」とか。令和を57歳で迎えた池谷先生。その人生、とっても楽しそう。
そういえば、先生は驚異的な「美肌男子」。これも「若さ」や好感度への重要なファクター。この秘密も本書の中に書かれていますが、内臓脂肪を減らすことはトータルで、見た目の若さに直結するのですね。
一方で、実は甘党で、午後のおやつタイムが何よりの楽しみという先生。モチベーションは高いけれど、ストイックではない工夫もポイントです。
(松田真紀)
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