高松市内の県立高校の30代男性教諭が7~9月、立憲民主党の小川淳也衆院議員(比例四国)を取り上げた映画を、3年生の世界史の授業中に見せていたことが6日分かった。18歳の生徒は次期衆院選の選挙権を得ており、小川氏が出馬を予定している総選挙も間近に控えている。同映画は、映画監督自らが「小川氏が主人公」と話し、教育基本法が定める政治的中立を逸脱する不適切な教材に当たるとして、県教委は事態を重視。生徒だけでなく、5日には保護者説明会を開いて直接謝罪する異例の対応を取ったほか、男性教諭への処分を検討している。
教育基本法では、教員自らの言動が生徒に与える影響が極めて大きいことから、教員が個人的な主義主張を述べることは避け、中立かつ公正な立場で生徒を指導することが求められている。文科省や総務省は、政治に関する授業に関して、「特定の政党の情報だけを生徒に配ると、公職選挙法に違反する恐れがある」と指摘している。
県教委によると、上映した映画は昨年公開の「なぜ君は総理大臣になれないのか」(大島新監督)。映画のDVD版を自ら購入し、7月~9月の世界史の授業で、3年生2クラスの計70人程度にみせた。
教諭は「民主主義について理解を深めてもらおうと使用した」と釈明している。しかし、県教委は「特定の個人、政党が対象となっており、教材として不適切。加えて、近く行われる選挙に出馬予定の候補者がおり、またその選挙区内の生徒が見ていた」と謝罪した上で、「主権者教育の取り扱いは周知をしているが、それが伝わっていなかった」と非を認めた。
同映画は、大島監督の妻が小川氏夫妻と同級生だったことをきっかけに撮影が始まった。映画については、「結果的に映画によって小川さんの知名度が上がった」(同監督)「小川氏にフォーカスした映画」(映画評論家)などとされており、県教委はこうした点も含めて「政治的中立を欠いた」と判断した。小川氏は現在立憲民主党県連代表で、次期衆院選にも立候補する意向を示している。 同映画の公式ホームページによると、映画を番組で取り上げたテレビ局は小川氏の地元・香川県では、NHKや民放計6局のうち、瀬戸内海放送の1局だけ。小川氏の書籍に関しても、岡山・香川の民放局に対して今年8月ごろ、CM放映の依頼があったが、「選挙前の売名に当たる広告は受けられない」などと断った。書籍内容から慎重な対応を取った。
県教委は現時点で、全校調査までは行わないとしているが、あらためて各高校には政治的中立性を順守するよう通知する。県教委の担当者は「社会科の教員なら使う教材の取捨選択はできて当たり前。当然身につけておくべきことだ」との認識を示した。(写真は工代祐司教育長)