オンラインゲームのし過ぎで生活に支障をきたす「ゲーム依存症」。全国初の条例制定を目指す県議会の議員連盟が6月28日に行った研修会で講師を務めた精神科医・岡田尊司氏=観音寺市出身=は、早くからゲームに潜む危険性を警告してきた。世界保健機関(WHO)が国際疾病に認定するなど、国内外で対策の機運が高まる中、岡田氏に依存の実態やリスク回避の方法などを聞いた。
-WHOがゲーム障害を国際疾病に正式認定した。
ゲーム依存が最初に報告されたのが1983年。35年ほど要したが国際的な診断基準ができたのは大きな前進だ。今回の診断基準は対象をさまざまなゲームに拡大している。それだけ問題が深刻で、強い危機感の表れとも言える。
-早くからゲーム依存症に警鐘を鳴らしてきた。最近の実態は。
やはり目立つのはオンラインゲームへの依存。患者の中心は中学生や高校生。中には小学生もいる。かつては敷居が高かったオンラインゲームだが、スマホの普及に加え、携帯ゲーム機もオンライン化が進む。利用する世代のすそ野が広がり、低年齢化が顕著だ。
-ただ、国内のゲーム依存への認識はまだ低い。
国が規制に力を入れている韓国や中国に比べると対策は遅れており、無防備な状態だ。脳への影響などをはじめ、心身の深刻な問題につながることが十分知られていない。
-脳への影響とは。
快楽物質であるドーパミンが過剰分泌される。その放出量は覚せい剤を静脈注射するのと同じといわれる。短期的にはリラックス効果があっても、後から問題が出てきて、より強い刺激を求めるようになる半面、ゲームをしていない間は無気力になり、うつや集中力・記憶力の低下を招く。これらは薬物中毒にみられるのと同じ状況だ。
-中でもオンラインゲームは依存性が強い。
興奮を得られる以外にも、人間の基本的欲求を満たす仕組みが備わっている。大きいのはネットでつながる仲間の存在。ゲームで貢献すれば仲間に称賛され、ゲームをやめることは仲間への裏切りになる。だから、なかなかやめられない。
-依存に陥るリスクに差はあるか。
オンラインゲームに夢中になりやすい男子、早くから始めた子どもほど相対的な危険度が高い。親から子への愛情不足も影響する。
-親子関係も重要だと。
子どもにとって親は安心感を与えてくれる「安全基地」であるべき。親が「危険基地」になると余計に反発を招き、ゲームだけが居場所になってしまう。家庭環境に困難を抱えている患者は、親へのサポートで改善することもある。
-予防の面ではどうか。
予防に勝る治療はない。「ゲームに依存しすぎると危ない」と教えることが必要。一度抜け出せなくなると回復には時間がかかる。成長期の大切な時間だけでなく、将来を失う恐れがあると知っておいてほしい。
-具体的な取り組みは。
依存防止教育の充実やルール作り、親への教育も肝要だ。ゲーム業界にももっと対策に乗り出してもらいたい。例えば、ゲーム機を購入した親子向けに依存対策講習を企業負担で開催してはどうか。健全な共存関係を真剣に考えてほしい。
岡田 尊司(おかだ・たかし) 京大医学部卒、同大大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年に枚方市内に心療内科クリニックを開業。「脳内汚染」「愛着障害の克服」など著書多数。観音寺市大野原町生まれ。大阪府在住。59歳。
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