オンラインゲームなどのし過ぎで学業や仕事、心身に悪影響が出ることが、国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の全国調査で明らかになった。ゲームと生活習慣の相関関係を調べた全国規模の実態調査は初めて。社会問題化する「ゲーム依存」に対し、相談や治療など支援の態勢は遅れている。今回の結果を踏まえ、私たちは依存への対策にどう向き合うべきなのか。同センターの樋口進院長に聞いた。
―あらためて、今回の調査の意義を。
樋口院長 調査の対象がゲームやインターネットへの依存が高いと思われる若者(10~29歳)であることと、初めての国レベルの調査で、実態が数値で示されたことは極めて重要だ。ゲームのし過ぎで生活に悪影響が出るのは経験的に分かっていたが、医学的な研究で証明されたものは見たことがない。今回得られたデータが、患者への相談対応マニュアルや治療指針づくりの根本になるだろう。
―調査では、ゲームに夢中になり過ぎて人間関係が崩壊するなどの事例も明らかになった。
樋口 予想した以上に、ゲームの過剰使用に伴っていろいろな問題の割合が高くなっていた。平日のゲーム時間の長さに焦点を絞ると、6時間以上は特に多様な問題が高率で発生している。ゲームの時間は自己管理では限界がある。他国の事例を見比べながら、何らかの「規制」を導入することも必要だと感じた。
―1日6時間以上ゲームをしている若者は、過半数が昼夜逆転の生活を送り、2割が引きこもりになっていたことも示された。
樋口 あらゆる機会を通じて「ゲーム時間が長いと問題が起きる」ということを啓発しなければならない。長時間に及ぶのはオンラインゲームが多いので、親子の一対一という指導ではなく、集団で啓発していかなければならない。一方で、依存傾向が出ている人をどう手当するかということも重要。本人でも家族でもいいから、気軽に適切な相談を受けられるシステムと、各地で受診できる医療機関の整備が欠かせない。
―香川では、人材育成や相談窓口の充実に向けた対策に乗り出している。「オール香川」で、どう施策を進めていくべきか。
樋口 健全にゲームを楽しんでいる人から依存症になっている人までの間には、使用時間などの「階段」がある。どこで区切るかは難しいが、学業や仕事のパフォーマンスなどを見極めて指導できるようにしたい。学校現場では、情報を伝達する媒体を使いこなせるよう「メディア・リテラシー」に力を入れているところもあるが、マイナス部分についても正確な知識を伝えることが大事だ。例えばクラスで話し合う参加型にすることで効果が出る。地域でも、子どもを持つ親に対する啓発ができるような雰囲気の醸成が大事だ。
―香川県議会で全国初のゲーム依存症対策条例の策定作業が進んでいる。先月には樋口院長らの助言も踏まえた骨子案が示された。この条例への期待を。
樋口 条例により、実効性のある取り組みを香川から全国、世界へと発信してもらいたい。策定後には、対策に取り組んでいる教育関係者や地域の人たちの声を集めてほしい。どのような活動に本人たちが効果を感じてきたかを示せれば説得力が増すだろう。