オンラインゲームなどにのめり込み、日常生活に支障が出るゲーム依存症について、世界保健機関(WHO)が25日に「ゲーム障害」として国際疾病に正式認定した。国内のゲーム依存症治療の第一人者で、WHOに疾病認定を働き掛けてきた久里浜医療センター(神奈川県)の樋口進院長=写真=に、認定の意義や今後への期待などを聞いた。
-WHOがゲーム障害を依存症の一つとして正式認定した。率直な感想を。
樋口院長 とても喜ばしい。ゲーム産業が盛んな韓国や米国も認定に賛同したことは、苦しむ患者が世界中で増え、問題が深刻化しているということを表している。
-国際疾病に認定されることの意義は。
樋口 世界共通の疾病となることで、予防対策が大きく前進するだろう。同時に、治療に向けた研究も今までに増して進む。WHOからは今後、より分かりやすいガイドラインが示される。多くの医療機関が患者を診断、治療することにつながっていく。
-ゲーム業界では自主規制の動きが出る一方、反発の声が上がっている。
樋口 ゲームに依存し大変な状況に陥る子どもや家族がいることを真摯(しんし)に受け止めてほしい。例えば、ゲームの腕前を競う「eスポーツ」で依存症に陥る若者が実際にいる。こうしたゲームの「負の側面」を周知する責任がある。
-日本政府の今後の対応に関してはどうか。
樋口 まずは実態調査をしっかり行うこと。常々言っているが、ゲーム依存の相談・治療の場は不足しており、専門家に相談できる場所を見える形でつくることが大切だ。精神保健福祉センターなどに、相談機能をしっかり付与してほしい。医療機関については質と数の向上を期待する。社会への啓発も大事だ。
-啓発では幼少期のアプローチが不可欠だ。
樋口 幼児期からスマートフォンやゲームに触れることにはリスクがある。WHOは4月に、テレビやゲームの画面を見るのは2歳未満は推奨できないとし、5歳未満も1日1時間未満にとどめるべきとの指針を出している。家庭任せにせず、行政による発信や教育現場で正しい情報を伝えることも欠かせない。
-香川は人材育成などの対策に全国に先駆けて乗り出しており、WHOの認定を歓迎する声が目立った。
樋口 県単位、地域単位の方が子どもやその親との距離が近い。認定を追い風とし、現場の声を拾いながら、人材育成を含む予防・治療対策をどんどん進めて全国に示せる香川モデルを確立してもらいたい。
◎ズーム
ゲーム障害 オンラインゲームなどのやり過ぎで睡眠障害や引きこもりなど、日常生活に支障が出る状態。世界保健機関(WHO)は、▽ゲームの時間をコントロールできない▽日常生活よりゲームを優先する▽問題が起きてもゲームを続ける▽家族や学業、仕事に重大な支障が出る-といった症状が続くと定義している。ゲーム障害を依存症の一つとして加えた「国際疾病分類」の最新版は2022年1月から施行され、世界中の医療関係者が診断や調査に使用する。
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