香川高専詫間キャンパス(三豊市)の学生が、人工知能(AI)を活用して「あおり運転」を検知するシステムの開発に取り組んでいる。日本のAI研究の第一人者として知られる東大大学院の松尾豊教授=坂出市出身=のサテライト研究室「MAiZM(マイズム)」の支援を受けて起業。専門知識とアイデアを生かして社会問題の解決に挑戦する。
マイズムは三豊市と松尾研究室、香川高専が連携して昨年4月に同市財田支所内に開設。研究と並行してAI人材の育成を進めており、起業につながったのは今回が初めて。
起業したのは情報工学科4年の田貝奈央さん(19)。これまでにスマートフォン用のアプリ、カメラを連動させた体感型ゲームなどを開発しており、2018年度の全国高専プログラミングコンテストで高専詫間が最優秀賞を受賞した際にはリーダーを務めた。
昨年、東大の松尾研究室から起業した先輩たちと交流。「失敗もするし、不安も抱く普通の人たちだと知った。課題を乗り越えようと努力を続ける姿勢に刺激を受けた」として、昨年12月に「Panda株式会社」を設立。「後先を考えずに何でも始め、一度走りだすと諦めがつかない」という自身の性格を、木登りは上手だが下りるのは苦手なパンダになぞらえた。
開発を進めているのは、ドライブレコーダーの映像からあおり運転を検知するシステム。運転中のトラブルが各地で相次ぐ中、「香川県は特に車に乗る機会が多い。事故の可能性を少しでも減らしたい」と考えた。AIの先端技術「ディープラーニング(深層学習)」を活用して、車の急接近や急減速などの危険な走行を感知し、自動的に通報するようなシステムを検討していくという。
田貝さんは「身近な問題だからこそ一生懸命に取り組める。後に続く人のためにも起業第1号として走り抜けたい」と意気込んでいる。